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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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双翅目界雑感 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/26(Sun) 20:48:46 No.5412 ホームページ  引用 
私の場合,甲虫屋から転向したので,双翅目界はかなり変わった世界と感じている.

甲虫屋の時代には,甲虫学会や鞘翅学会の同定会に参加すれば,その道の専門家などによる同定が結構気軽に受けられる雰囲気であった.
また,神奈川の平野氏など専門家に近いハイレベルのアマチュアが多数ひかえており,すごいスピードで同定していた記憶がある.

一方の双翅目界は,専門家に見てもらえるような同定会がほぼ皆無であり,アマとプロの接点がほとんど無い.

私のような,田舎のアマはプロに見てもらうようなコネも無く,文献を頼りに苦悩するしかない.

また,埼玉の玉木さんが亡くなった今となっては,広範囲の双翅目を熟知したハイレベルのアマチュアも皆無に近い.

私としては,双翅目ほど種類数の割にアマチュアの少ないグループは無いと思われる.
一方,双翅目談話会も会員数だけは多いが,実動部隊は10人程度と思う.

ところで,先日の総会で有弁類の専門家である倉橋先生に3頭ほどイエバエ科の疑問種を見てもらったが,1頭毎にかなり丹念に見ているのが印象的であった.(倉橋先生に総会でお会いするのは2回目であるが,標本を見てもらったのは初めてであった)

昔,鞘翅学会の同定会の時に,とある先生に数頭の小甲虫を見てもらった際には,殆どの種類を肉眼でざっと同定し,残った種類についても実体顕微鏡でさっと見ただけで即断したような記憶があり,今回の倉橋先生とはかなり対照的であった.

森林総合研究所研究報告の「森林昆虫のモニタリングに必要な経費―カミキリムシ類によるモデルケース―」によると,「1,300 匹あまりの日本産カミキリムシ標本を同定するのに必要な時間は、カミキリムシの分類に精通した研究員の能力であれば、1日ないし2 日と考えられる」と記されているが,果たして双翅目でこのようなモデルを考えるとどのような結果になるか興味深い.

恐らく双翅目の場合,専門家であってもより細かく調べる必要があり,これほどの速度では同定出来ないのではないかと思われる.

Re: 双翅目界雑感 投稿者:バグリッチ 投稿日:2009/04/27(Mon) 22:44:15 No.5414  引用 
市毛さん、こんちは。

 私の場合、同翅目も好きで扱っていますが、やはりかなり苦労しています。斑紋などが発達している種群は小型種でも肉眼でかなり識別できるのですが、斑紋のない小型なグループでは、双翅類と似たような状態です。

 双翅については、色彩の地味な小型の種群が多く、特徴のレベルが人の感性で感じ取りにくい程度である場合が多いので、一見して同定できないこととなり、結果 同定が難解となってしまうものと思います。

 種類数の多い分類群の場合、その分類群の専門家でないと、標本を見て即断するのは、よほど特徴的な種を除き、かなり困難と思います。

 私の場合、イエバエなど文献がある程度しかっりしている群でも、検索結果を最終確認できる図(交尾器など)がないと確定しきれないことが多く、結局 使いきれないでいます。

 アマチュアとして期待したいのは、文章だけでない 絵解き検索表です。
 そもそも、形態を文章で表わして、人が文章を読み取り、頭の中で形態に再編成する、という過程はアマチュアにとってかなり無理があります。(記載は必要ですが、とても難解と感じています。百聞は一見にしかずです)
 
 専門家との橋渡しの役割をアマチュアが果たせたらよいのですが、そう簡単にそこまで到達できないので、皆苦労していると思います。
 わかった種だけでも、全形や特徴部分を写真や図にして取りまとめていくことは重要と思います。
 みんなで作る双翅目図鑑のような活動は、双翅目の同定の普及には大切な一歩となると思います。

 なかなか進まない双翅目の同定ですが、ここの掲示板の各位のご協力をいただきながら 地道に進めていきたいと思います。

 ところで、私は、この掲示板の敷居は高くはないと思っています。
 わからない種が多いので、投稿される方の期待に応えられないだけと思っています。

 掲示板の前書きに、同定が困難な事情を添えて『わかったらラッキー程度の意識で投稿いただく』ように注意書きをしておいたらいかがと思います。

 

 

 

ハマベホソバエ科(イソベバエ科... 投稿者:バグリッチ 投稿日:2009/04/20(Mon) 22:10:51 No.5402  引用 
こんにちは。

 この前の休みに、東京の浜辺でミギワバエ、アシナガバエ、ヤチバエなど採ってきました。
 ミギワバエは海浜性の初物が2種採れましたが、まだ同定していません。(同属の近似種のようです)

 同じ日、波打ち際の 肉眼では何も見えないあたりでネットを振っていたら、すごい数のハマベホソバエの一種(?)が採れました。肉眼では見えませんでしたが、ほんとにすごい数いました。
 Sasakawa(1986)を参考に、本州に1種いるThetina saigusai と同定してみました。

 画像や図が出ていないので、心配ですが、いかがでしょうか?
 各位のご意見がいただけましたら幸いです。 


Re: ハマベホソバエ科(イソベバ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/25(Sat) 18:09:02 No.5408 ホームページ  引用 
バグリッチ様.

私も実物は初めて見ますが,原記載の交尾器とかなり酷似しているので,バグリッチ様の同定で合っていると思います.

Re: ハマベホソバエ科(イソベバ... 投稿者:バグリッチ 投稿日:2009/04/26(Sun) 16:55:46 No.5409  引用 
市毛様

 コメントありがとうございます。
 マイナーな種なので、web上から比較情報が取れなくて、心配でした。
 
 前回のコメントで 海浜性の2種のミギワバエと申し上げた種は、なんとミギワバエ科でなく、ニセミギワバエ科でした。 クレッソンニセミギワと ウイリアムニセミギワでした。
 (画像はクレッソンニセミギワバエです)

 ミギワバエ科とニセミギワバエ科は 全体の印象がすごく似てますね。
 ではまた。

 


Re: ハマベホソバエ科(イソベバ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/26(Sun) 18:48:13 No.5410 ホームページ  引用 
他のブログで,この掲示板の敷居が高いと言われてしまいますが,このように外見が非常に酷似している種類が多いので,おいそれとは○○の1種とも答えられませんね.

また,図示されたことがない種類ばかりですので,甲虫のように保育社の図鑑のあそこらへんの図版で見た記憶があるというような感も働きません.

今回のイソベバエのように科レベルで図示されていない種類も多いから困りものです.

私の場合,文章だけの記載文から判断することはかなり困難で,交尾器を見て答え合わせをしないと安心出来ません.

写真のヤドリバエは,旧北区の検索やPalearctic computer keyではたどり着けなかったCtenophorinia属です.
dcは3+3ですが,額の幅がやや狭く,♂交尾器のsurstylusが弱く波曲することから,Ctenophorinia adiscalis Mesnil,1963と判断しました.

これなども,一見するとCarcelia属が一番近そうですね.

Ref. Ziegler J., Shima H. Tachinid flies of the Ussuri area (Diptera: Tachinidae). Contributions to the knowledge of East Palaearctic insects // Beitr. Ent. 1996. Vol. 46, No. 2. S. 379-478.


Re: ハマベホソバエ科(イソベバ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/26(Sun) 19:14:12 No.5411 ホームページ  引用 
P.S. 達磨さんのHPにヤスデヤドリバエ科Phaeomyiidaeの画像が出ていますね.
かっこいい種類なので,私も採ってみたいです.

Re: ハマベホソバエ科(イソベバ... 投稿者: 投稿日:2009/04/27(Mon) 19:25:48 No.5413 ホームページ  引用 
あのPhaemomyiidaeは宇都宮市内の雑木林に設置しているマレーズトラップに今年最初の獲物として(3月後半の2週間分)3個体採集されたもので、当初喜んで写真撮ったりしていたのですが、同じトラップの次の回収(4月前半の2週間分)では300個体を超え、ソーティングの際、少々うんざりしました。生態写真を撮りたいと出かけてみたのですが、いざ探すと見つからない。難しいものですね。

横浜のツヤムネオビヒラタアブ 投稿者:pakenya 投稿日:2009/04/21(Tue) 20:01:29 No.5404  引用 
こんにちは

横浜市内でEpistrophe nitidicollisツヤムネオビヒラタアブを採集しました。はなあぶ24号には、「本種の本州産の標本はほとんど見られず、採り難い種なのかも」とされています。

近似種が多いですが、額の前半が黄色く、胸背は青みを帯びた金属光沢が強くて縦帯を欠き、羽のbrとbmの前半が無毛、後脚腿節の基部は黒くないので正しくnitidicollisと同定されます。


Re: 横浜のツヤムネオビヒラタア... 投稿者:pakenya 投稿日:2009/04/21(Tue) 20:06:21 No.5405  引用 
後脚の写真もつけます。

会社の隣の緑地で、4/13の昼休みに採集したものです(横浜市都筑区)。

同所で採集されているオオショクガバエモドキやニセツヤムネオビヒラタアブよりも少し高いところ、樹林に沿うようにホバリングしていました。5mの竿で目いっぱいの高さです。

残念ながらこの1個体のみしか得られていません。個体数は少ないのかもしれません。

ではまた。


Re: 横浜のツヤムネオビヒラタア... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/23(Thu) 20:13:17 No.5407 ホームページ  引用 
pakenya様.

たぶん,E. nitidicollisなのでしょう.
昔,田無市の東大農場での複数の採集例があったのですが,偶産か大分悩みました.

土手のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/19(Sun) 01:31:08 No.5389  引用 
田んぼ周りの土手の草むらで見つけました。体長は15ミリ弱くらい。背中が朱色で翅はベッコウ色をしています。何ガガンボでしょうか。
2009.4.8 三重県津市


Re: 土手のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/19(Sun) 01:32:58 No.5390  引用 
オスの個体です

Re: 土手のガガンボ 投稿者: 投稿日:2009/04/19(Sun) 23:50:12 No.5398 ホームページ  引用 
Indotipula属の一種のようです。
この属の最普通種はIndotipula yamata (マエキガガンボ)ですが、写真からは種までの同定はできません。

Re: 土手のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/20(Mon) 04:05:38 No.5401  引用 
達磨様、ありがとうございます。
その後、あちこちの水田横の土手でたくさんの個体を見ましたので、普通種だとは思いますが、たとえマエキガガンボだとしても写真による同定は出来ないということですね。
ガガンボの場合、オスの交尾器を解剖せずに、交尾器外観の写真を撮ることによって同定が可能になることはありえますでしょうか?


Re: 土手のガガンボ 投稿者: 投稿日:2009/04/21(Tue) 14:55:21 No.5403 ホームページ  引用 
ガガンボでは乾燥するとしぼんだり、生殖肢がギュッと閉じた状態で固まることが多いので、標本の交尾器の外観からだと同定はちょっときついかもしれません。もちろん、外観の写真だけではっきりとわかるということもありますけれど。

Re: 土手のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/21(Tue) 20:40:31 No.5406  引用 
達磨様、教えていただきありがとうございます。機会があれば交尾器も覘いてみたいと思います。

庭のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/19(Sun) 01:44:54 No.5391  引用 
庭の植木周りを飛んでいます。体長は25ミリ近くあります。キゴシガガンボではと思いますが、いかがでしょうか。
2009.4.17 三重県津市


Re: 庭のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/19(Sun) 01:46:36 No.5392  引用 
オスの個体です

Re: 庭のガガンボ 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/19(Sun) 12:15:27 No.5393 ホームページ  引用 
田中川様.

キゴシガガンボLeptotarsus(Longurio) pulverosusは,翅が暗色で非常に長い脚を持ったガガンボです.
生時の腹部のオレンジ色も顕著で,日本産ガガンボの中でベストテンに入る美麗種だと思います.
みんなで作る双翅目図鑑のガガンボ頁に画像があります.

Re: 庭のガガンボ 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/04/19(Sun) 14:00:51 No.5394  引用 
これはキリウジガガンボなどの属するTipula属に近縁のホソガガンボ類Nephrotomaの1種です。本属は北隆館の新訂図鑑に掲載されている以外に多数の種が日本からも記録されています。

Re: 庭のガガンボ 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/19(Sun) 17:38:31 No.5396 ホームページ  引用 
三枝様.

確かに,Rs脈が短いのでNephrotoma属ですね.

田中川様.

ガガンボ科については,「日本産水生昆虫―科・属・種への検索 」に属までの検索が収録されていますので御一読下さい.

Re: 庭のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/19(Sun) 21:14:00 No.5397  引用 
三枝豊平様、茨城_市毛様、ありがとうございます。
類似種が多くて、種の同定は諦めなくてはならないということですね。
大きな個体だから、いろんな方が写真に撮られているのかなと思いましたが、ネット検索しても同じような個体はなかなか見つかりませんでした。私のようにキゴシガガンボと間違えてしまうこともありそうです。
ご紹介いただいた図書は一度図書館にでも行って見てきます。

Re: 庭のガガンボ 投稿者: 投稿日:2009/04/20(Mon) 00:11:27 No.5399 ホームページ  引用 
断言はできませんが、胸部や翅の模様から、
Nephrotoma pullata (Alexander, 1914)
のように見えます。


Re: 庭のガガンボ 投稿者:田中川 投稿日:2009/04/20(Mon) 03:18:52 No.5400  引用 
達磨さん、ありがとうございます。
標本写真まで用意していただいて恐縮です。
オオマキバガガンボという和名ですね。
まさしくこれだと感じております。

このハエ知りませんか? 投稿者:asahi_sh 投稿日:2009/04/14(Tue) 21:29:18 No.5380  引用 
今年の春になって、ある敷地内で写真のハエが大量発生しています。
原色図鑑などを使って調べてみたものの、結局分からないままでした。

体長は4〜5mmです。
なぜか人の頭、特に後頭部につきまとってきます。

このハエってなんなんでしょうか・・・

背中に毛はなく、金属光沢が見えています。
複眼は赤。
頭が大きく、ずんぐりした体型をしています。

群れているわけでもなく、どこからともなく集まってきます。
一時間で300匹ほどとれました。

できれば、種類の特定をお願いします。

習性としては、ブッシュフライに似たような感じです。


Re: このハエ知りませんか? 投稿者:エリユスリカ 投稿日:2009/04/14(Tue) 21:34:11 No.5381  引用 
4−5mmは少し大きいような気がしますが、Cryptochetidaeでは無いでしょうか?

Re: このハエ知りませんか? 投稿者:asahi 投稿日:2009/04/15(Wed) 18:14:55 No.5385  引用 
クロメマトイでした。ありがとうございましたっ

アグイホソイエバエHelina aguii... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/14(Tue) 07:54:39 No.5375 ホームページ  引用 
先日,水戸近郊で採集した体長8mm程のイエバエです.

日本のイエバエによると,北海道に分布するアグイホソイエバエHelina aguiiのようですが,本州でも普通種なのでしょうか?


Re: アグイホソイエバエHelina a... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/14(Tue) 07:56:49 No.5376 ホームページ  引用 
同,交尾器です.
Text-fig.32.b-cにほぼ合致すると思います.


Re: アグイホソイエバエHelina a... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/15(Wed) 01:08:13 No.5383  引用 
アグイホソイエバエは、2000年に中国沈陽師範学院の張春田さんと倉橋弘先生が感染研の所蔵標本を洗いなおして、連名で安居院宣昭さんに献名して記載されたばかりの種です。

タイプシリーズも、ホロタイプが1966年に倉橋先生が登別温泉で採集された個体、パラタイプがホロタイプと同じ場所で同じ日に採集された個体と1963年に加納六郎先生が札幌の円山で採集された個体です。

ですから、まだまだ基本的な分布データがあまり出てきていない種だと思います。

あと、雄交尾器は、第5腹板により強く種の特徴が出るようなので、これもチェックする必要があるかと。

ちなみに、私の手元にはおそらくアグイホソイエバエの雌だと思われる標本が1個体あります。後で写真を紹介いたします。

ロクモンホソハナレメイエバエ 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 13:32:20 No.5362  引用 
双翅目談話会から戻ってきて、ほぼ1週間寝たきり状態でした(飛行機の機内の気圧が飛行中に低くなるのが、かなりひびきました)が、ようやく少し痛みも多少ましになってきたので、硬直した筋肉をほぐしに土曜日にフィールドに出てみました。

これは札幌市の西岡水源池の周囲で採集したものですが、ハナレメイエバエ亜科のロクモンホソハナレメイエバエ Caricea pallipalpis です。おそらく北海道では未記録かと。


Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 14:21:55 No.5363  引用 
ここを見ておられる方には本格的にハエの同定をしたことのない方も多いと思いますので、どういうプロセスでこの種の同定に至っているかを、ごくごく簡単に示しておきたいと思います。とりあえず、イエバエ科までは落ちているところからはじめます。

まず、下前側板(腹胸側板)の剛毛の配列が二等辺三角形になっているので、ハナレメイエバエ亜科のハナレメイエバエ族であることがわかります。


Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 14:23:44 No.5364  引用 
次に、頭部を側面から見ると上部額剛毛が2対あります。

Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 14:27:05 No.5365  引用 
また、後脚の脛節の末端部以外の剛毛を見ると、前背剛毛が2本であることが確認できます。

写真の脛節の右側が背面で左側が腹面です。そして手前を向いている面が前面で裏側を向いている面が後面です。ですから、右側を向いていて、かつ手前に向かっている剛毛が前背剛毛となります。


Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 14:29:22 No.5366  引用 
次に、中脚の脛節を見ると、後背剛毛が2本ではなく1本だけです。写真の真ん中あたりに右の方向に突き出ている剛毛がそれです。

Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 14:31:27 No.5367  引用 
また、頭部の額帯の単眼三角域は大きく発達しています。

Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 14:33:24 No.5368  引用 
さらに、小盾板をみると、強剛毛は2対4本です。

胸部の後方の逆三角形の部分が小盾板です。

ここまでの形質で、Caricea ホソハナレメイエバエ属まで落ちました。


Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 14:51:25 No.5369  引用 
「日本のイエバエ科」の検索表を使うと、Caricea の中で、この個体は腹部に黄色の部分(地色が黒ではく黄色の半透明になっている部分)がなく、全体が黒色で灰色の微粉を装っていること、脚の腿節が完全に暗褐色になっていることから、ロクモンホソハナレメイエバエまで落とすことができます。

ただ、ほかにも同定する上で重要な形質があります。

ひとつは最初の全形写真で示されているように、r-m横脈とm-m横脈の周囲の翅面が黒ずんで斑紋になっています。

また、胸部の盾板の横溝より前に、正中剛毛が存在しています。


Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:ウミユスリカ 投稿日:2009/04/13(Mon) 15:02:33 No.5370  引用 
最後に、和名の由来となっている、腹部背面の斑紋を示しておきます。

Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/13(Mon) 21:53:11 No.5374 ホームページ  引用 
腹部背面に6つの黒紋があるのが特徴的なのに、同定というものではそれを一切無視なのがウーーーン…と思いました。
この辺りのハエは腹が灰色一色か灰色と黒のああいう模様が多いので、この模様はけっこう目立つ特徴のような気がします。
科か亜科に落とせばあとはここで決められそうです。

Re: ロクモンホソハナレメイエバ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/14(Tue) 08:17:38 No.5377 ホームページ  引用 
ウミユスリカ様.

大作ご苦労様でした.

新屋様.

この属では,腹部に6つの黒紋を持つ種類が多いようです.

他の分類群と違い,和名=特徴とは早合点しないほうが良いと思います.
酷似した種類が大半のハエに対して,各々に和名を付けてほしいという要望があり,それに対して研究者が頭をひねって考えているので,特異な点を確実に表しているとは限りません.

また,文献に載っているのが全ての種類でないという点にも注意が必要です.
イエバエ科については,「日本のイエバエ」が集大成ですが,この掲示板で議論されているように,まだまだ多数の未記載種が発見されています.

このように,斑紋等の顕著な外見で区別が困難なことも,双翅目がアマチュアに敬遠されてきた要員の一つであり,多量の入手困難な文献を必要とすることと共に敷居を高く感じさせているのだと思います.

出た… 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/14(Tue) 20:13:31 No.5378 ホームページ  引用 
あぁ、後にまさかと思っていましたが「こういう種類は多い」でしたか…

外観の豊かな仲間(ミバエ、ハナアブ、ガガンボ、メバエ、フンコバエ、ヤドリバエ等)も多く、見る分には楽しいのですが、
名前がわからないと撮りたくない側の方が多いようですね…。

私はわからなくても構わないほうで名前のわからない画像がたまっています。中には赤、橙、黄、白、黒の大きく鮮やかな
「これはわかるだろ」と思っているガガンボもありますが見直してみるとそうした目立つ姿のものはわずかでした。

Cu融合脈が翅縁に接しているの... 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/13(Mon) 21:20:22 No.5372 ホームページ  引用 
3月26日、自宅周辺で死んでいるハエを見つけたので、持って帰り撮りに撮りました
(しかし「実はここが重要」という場所を撮っていないというオチかもしれません。今はもう捨てました)。
手でハエの体をつまむと、カリカリともろい殻のような感触と音がしてビビり、翅や脚を捕まえて
動かしていました。素手でないにしろ、あれこれいじって姿を整えるのは私には大仕事のようでした。

今日、学校の図鑑で調べることができ、Cu融合脈(矢印の脈ですよね)が翅縁に接しているようなので
ハナバエ科かフンバエ科、しかし姿からして(本当はよくないそうですが)フンバエではなさそうです。
ハナバエ科で合っているのでしょうか?


この拡大率では足りない? 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/13(Mon) 21:30:16 No.5373 ホームページ  引用 
毛深いのがわかりやすい背中の写真です。目で見ても毛深いのはわかりにくかったです。
カメラの画質が良くなり、これでほとんど分類のわからない種類は減るだろうと思っていたのが、
ウミユスリカ様のロクモンホソハナレメイエバエの写真ほどの拡大(顕微鏡写真でしょうか?)を見て
死がいの劣化のせいだけではなく自分の写真の質ではまだか?など思いました。
あとはどこに着目すればよいでしょうか。

まだらのハエ 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/07(Tue) 13:26:31 No.5342 ホームページ  引用 
ついに北海道も虫の季節になりました。飛ぶ昆虫はハエ・ハチが中心です。

自宅の周辺に飛んできたハエです。翅脈が見づらいですが羽の茶色いまだらが特徴的です。
羽は腹端をかなり越えます。このハエは何でしょうか。4月3日、札幌市、体長約6mm


Re: まだらのハエ 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/07(Tue) 13:31:05 No.5343 ホームページ  引用 
とりあえずもう1枚を貼ります。

Re: まだらのハエ 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/07(Tue) 20:01:13 No.5344 ホームページ  引用 
新屋様.

以前私が尋ねたシマバエ科のHomoneura属の1種に似ています.
[ No.4448 ]

Re: まだらのハエ 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/09(Thu) 20:21:10 No.5346 ホームページ  引用 
茨城_市毛様

確認したところ、羽の模様はほとんど合致していますが体長がだいぶ違います。Homoneuraを調べると、
40種以上が記録されているとありました。そっくりで大きさがかなり違うという別種は時々ありますね。
意味はhomo(同じ)neura(翅脈。メガネウラのneuraですね)?翅脈が単調なのは自分でもわかりましたがその先は…
ありがとうございました。

Re: まだらのハエ 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/04/09(Thu) 21:04:09 No.5347 ホームページ  引用 
新屋様.

体長がだいぶ違うとのことですが,測り方が違うのではないかと思います.

新屋様の体長6mmというのは,頭部先端から翅端まで長さではないでしょうか?

双翅目の場合,体長は文字通り翅を含まない体の長さだと思います.
この他に,翅の対角の長さを翅長と表すようです.

Re: まだらのハエ 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/10(Fri) 20:49:53 No.5349 ホームページ  引用 
体長とは頭から腹端までの長さと心得ておりますが、それが、翅端までだと8〜9mmあるという大きさです。
けっこう大きいんです。

Re: まだらのハエ 投稿者:ハエ男 投稿日:2009/04/12(Sun) 09:51:12 No.5352  引用 
ハエの体長の標示についてはあくまでも目安とする程度にしたほうが良いと思います。

それは幼虫時の栄養状況などで大きな個体差が出てくる場合があるからです。(ヒメフンバエやニクバエなどではかなりの個体差があることを確認しています。)

また当掲示板の過去ログにもありますようにこの手のハエの同定の基本はあくまでも翅脈であり、刺毛、剛毛の配列であり、♂ゲニタリアであり、ついで翅の紋がくると考えていただいた方が間違いが少ないです。(同定の際に、体長はそれほど当てにしてません。)

新屋さんもお書きのようにそっくりで大きさが違うと言う場合もままありますが、その際も、大きさが評価のポイントではなく、頭部や胸部、前・中・後の各脚の刺毛、剛毛が重要な同定のポイントになります。

頭部の刺毛の配列が見辛いですが、雰囲気から判断すると市毛さんの書かれるようにシマバエ科のHomoneura属の一種であろうと思われます。
シマバエ科については日本ではまだまとめられた図鑑はなく、個別の論文を精査する必要があります。Homoneura属については笹川先生の論文のA revision of the Japanese species of Homoneura (Homoneura) (Diptera, Lauxaniidae), シリーズのPart1からPart3までの論文と「東洋区シマバエ科(双翅目)第 1 報(農学) 」「東洋区産シマバエ科(双翅目)第 2 報 : ヴェトナムのシマバエ相」「 東洋区産シマバエ科(双翅目)第4報 ラオスのシマバエ相 」などを参考にする以外にはなく、これらを読んでみても、翅の紋のみで同定はかなりきびしい状況であり、結局は♂ゲニタリアをみなければ確定はできないというのが現状です。(専門家も少なく、画像のみだと相当きびしいグループなのです。)

また井上 堅さんがシマバエ科の分類の属までの取り扱いの現状と、属までの検索キーの試案をネット公開してくれていますが、これも、翅脈と刺毛・剛毛配列が中心になっているはずです。よければご参照ください。

上記の論文はCiNiiで公開されていますので、そちらもご参照ください。

Re: まだらのハエ 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/12(Sun) 20:26:35 No.5354 ホームページ  引用 
ヤドリバエで体長にかなり差が出るとは知っていました。他にもそうした例があるのですね。

>翅の紋のみで同定はかなりきびしい状況であり、結局は♂ゲニタリアをみなければ確定はできないというのが現状です。
例えば、東洋区シマバエ科(双翅目)第 1 報(農学)
http://nels.nii.ac.jp/els/110000033109.pdf?id=ART0000360458&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1239533053&cp=
をさっと見ると(家に電子辞書のような便利なものがなく)Homoneuraが17種ほど載っていますが、
全てどこかしこの色や翅の紋がほとんど同じか2、3通りしかないということでなかったり、
ミナミアオカメムシやナミテントウ並に1つの種で何通りもの色彩があるわけでなければ、外観で絞れる気がしますが…
初心者なもので文章で姿が具体的に想像できませんが、blackとbrownとyellowが多いものの差はあるようです。

Re: まだらのハエ 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/04/13(Mon) 00:43:30 No.5355  引用 
  サイドから一言。新屋さん、市毛さん、ハエ男さんがHomoneuraだろうとお考えのハエの写真による同定を巡って、論議されていますが、横で見ていて大変気になるのは、新屋さんはこのハエを採集されたのでしょうか?もし採集しているのなら、ハエそのものをメジャーで測定した結果の体長6mmと言うことであれば、その測定値も理解できます。
  しかし、生きたハエの目測だけによる測定値であったとしたら、私の場合ではとてもハエの体長(しかも腹端は斑紋のある翅の下にボヤーと見えている)を肉眼やカメラのレンズを通してだけで、mm単位で正確に言い当てる能力はありません。もちろん人によってはある程度目から離れたものの長さをmm単位で言い当てる訓練をされているかとも思います。
  しかし、新屋さんは「翅端までだと8〜9mmある」と言っており、そこにはすでに1mmの誤差の幅を読んでおられますね。さらに、写真に基づくと、体長がもし6mmであるとすれば、翅を含めた長さは10mmをやや越える値でなければなりません。新屋さんはその長さを8−9mmと言っていますので、8mmとしたらそこにはさらに2mmの誤差が生じています。
  私はメジャーをもたなければ、長さを測る場合に、手のひらを一杯に開いた場合の親指と中指の先端の間隔が”約”20cmといえるのが精一杯です。今目の前で1cmの間隔を書いてごらん、と言われたら、おそらく2−3mmは間違ってしまうでしょう。ましてや、6mmと8mmの違いはとても言い当てられません。

  この点を市毛さんやハエ男さんはどのように(というのは新屋さんの測定値にたいして、いささかの疑念ももたずにか、あるいはそれを承知の上でか)お考えになって、写真のハエのサイズについて論議されているのでしょうか?データの吟味の前にデータの信頼性の問題かと思いますが、いかがでしょうか。

 なお、双翅目の場合に、腹部の余り硬くない種(腹部背板が軟弱で、腹部の節間膜が長い種)では、同一個体であっても羽化直後とか、満腹状態とか、卵巣の発達具合とか、その個体のいろいろな状態で腹部の長さ(結果的には体長)がかなり変わります。
 また、オオミノガヤドリバエ(1頭のオオミノガ老熟幼虫に1-70頭が寄生する)やハマダラハルカ(変化の著しいネムノキの朽木の含水量)などのように、ある程度限りある餌資源量や餌資源の多様な質に依存し、幼虫の成長期が短い種では限定された期間内に生育を完了するために成虫のサイズ(翅長)にかなりの変異が現れます。一方豊富な、しかも質的に顕著な相違がない餌資源のなかで長い幼生期を成長するような種ではーー例えば渓流性のシブキバエ類(Clinoceraと近縁属)ーー成虫のサイズに大きな個体変異が現れません。
  それと、これは大事なことですが、双翅目では種間などの相違として、なにより体の大きさの比較を行なうための指標となる構造は翅であって、この長さを用いれば同一個体でも状態で変化する体長よりもはるかに良好な指標になります(短翅型の種では、翅長は信頼できない場合もあります)。

  個体変異について一例を示しますと、私が昨年の日本昆虫学会大会で講演し、今論文を書いているチーズバエ科の新属新種では♂の翅長が4.2mmから7.1mmまでの変異幅があり、翅長による最小個体は最大個体の6割に満たないほどの差があります。これは腐敗終期のミイラ化した大型動物のわずかに残存した水分の少ない骨髄や干からびつつある肉などを餌資源とせざるを得ない状況に依存した生育状態の相違によって生まれた結果であろうと思います。

Re: まだらのハエ 投稿者:新屋 投稿日:2009/04/13(Mon) 20:49:16 No.5371 ホームページ  引用 
>今目の前で1cmの間隔を書いてごらん、と言われたら、おそらく2−3mmは間違ってしまうでしょう。
指で1mmや1cmをつくれるのでそれをあてにしています。1cm以下なら誤差は1mm未満と思います…が
やはり定規などは使うべきですね。
写真は横から撮れませんでしたが横から見ることはできて、その時6mmくらいと思いました。
しかし全長8〜9mmという値は少なすぎました。あてにならないことは書かないべきでした。
採集に関してはhttp://furumusi.aez.jp/joyful1/joyful.cgi?list=pickup&num=5372#5372に書きました。

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