みなさま、はじめまして。
愛媛で虫をやっている千尋と申します。今回は、みなさまにお聞きしたいことがあるので、投稿させていただきます。 私は、今年の6月初めに石鎚のふもとにある面河渓に採集に行ったのですが、その時の採集品のなかに、ジョウザンナガハナアブと思われる種が含まれていました。 自分で調べた限りでは、本種の分布は北海道と本州になっており、四国は含まれていません。 もし、いままで四国から記録がないのなら、然るべきところに報告しようと思います。 ただ、図鑑で分布に四国が含まれない種でも、実は四国から見つかっているということが、ままあるようなので、本種ももしかするとすでに四国から見つかっているかも知れません。 また、もし本種が四国に分布しないようでも、近似の別種が分布しているのでは? とも考え調べてみたのですが、結局よく分かりませんでした。 これらのことについて教えてください。よろしくお願いいたします。
双翅目談話会会誌「はなあぶ」の記事タイトルの検索は当サイト内のみんなで作る双翅目Web図鑑http://furumusi.aez.jp/diptera_web.htmの「検索」でキーワードを入れる事である程度できます。
しかし、これまでのところジョウザンナガハナアブが関連しそうな記事は見当たりませんでした。 双翅目の図鑑はこれまではごくごく少数の研究者によって書かれていますのでどうしても分布記録についての記述は不十分なものにならざるを得ません。あくまでも目安程度に考えると良いと思います。 また初記録かどうかは判断できなくても、記録が少ないことは確実だと思われるので発表されることをお勧めします。 現在、当サイト内においてハナアブの記録をまとめようとしてハナアブネットというコーナーを作りつつあります。http://furumusi.aez.jp/fly/hanaabu-net/hanaabu_net.htm この中で、近畿、関東、中部の一部の記録はすでに公開されてますが、四国はまだ手を付けていません。ぜひ四国の県のハナアブ記録情報がありましたらお知らせください。
ハナアブネットで近畿などの記録を作っているArgeと申します。
近畿が終わったら四国も作る予定で情報を集めていたのですが、まだ全部集まっていません。 四国のハナアブ科の記録としては2つぐらいしか大きなものはなさそうです。 一つは愛媛県から出ている「小田深山の自然」という本で2分冊になっていてたぶん2のほうに載っています。大阪市立自然史博物館にはあるので私は一部見たことがあるのですが、ハナアブのところはまだちゃんと見ていません。今月中に博物館に行く予定があるので確認してみます。 もう一つは古い記録で、素木博士と枝重博士による面河と石鎚の調査の記録です。これも実物は見たことがないのですが、九州大学の昆虫学論文データベースで検索ができます。以下のURLで、「昆虫学文献データベースの検索」から、簡易検索でジョウザンナガハナアブで検索すると、記録が出てきます。 http://konchudb.agr.agr.kyushu-u.ac.jp/konchur/index-j.html SHIRAKI, T., EDASHIGE, T, 1953. The insect fauna of Mt. Ishizuchi and Omogo Valley, Iyo, Japan. Trans. Shikoku Ent. Soc., 3(5-6): 84-125. ここからは詳細なデータ等はわかりません。 また、この記録がなぜその後の図鑑等に反映されていないかも不明です。 それに、ハエ男さんも書いておられるように、記録例も少ないようですし、古い記録ですので、新たに記録を発表したほうがいいかもしれません。
みなさま、ありがとうございます。
記録はないか、あってもごく少数で古いものであるということで了解しました。 やはり、どこかへ記録を出したほうがよいようですね。 >一つは愛媛県から出ている「小田深山の自然」 実は、私は某LOVE大の学生で昆虫学研究室の関係者です。 先輩が小田深山の調査に絡んでいるようなので、たぶん文献もあると思いますので、こんど見てみます。
大阪の自然史博物館で、ハチの研究会の行事に参加したついでに、各地のハナアブの分布試料も集めてきました。
「小田深山の自然」ですが、やはりジョウザンナガハナアブも記録されていました。 大原賢二・山本栄治, 2000. 小田深山およびその周辺のハナアブ類. 小田深山の自然II: 907-931. 1994年と97年に計3個体が採集されています。写真もありますし大原氏の同定ですので間違いはないと思われます。 とはいえ、やはり記録例の少ない種のようですので、発表したほうがいいと思われます。 |
Shiraki & Edashigeの論文の中でのジョウザンナガハナアブの記録に関する記述は下記引用の通りです.
54. Temnostoma jozankeanum (Matsumura, 1915) Nom. Jap.: Jozan-naga-hanaabu Mt. Ishizuchi, (S. Miyamoto, 1934)** すなわち,著者等はこの論文の中の多くの種のように実際彼らの手元の標本に基づいて記録したものとは異なって,本種の場合には出版された記録に基づいています.なお,**のついている文献は: Miyamoto, S. (1934). Ent. World, Tokyo, 2(9):300. です.こちらは論文を今手元に持っていませんので,詳しい論文題名は分かりませんが,半翅類や長翅目の研究者の宮本正一先生がお若い時に中国地方や四国のハナアブを研究されていたので,その頃の論文でしょう. 本種はなぜか九州大学の赤本の目録にも四国が分布に記録されていません.顕著な種なので,宮本先生の誤同定とは思えませんが,目録のこの部分をチェックされていた徳島県博の大原賢二さんがどのようにこの記録を扱ったのでしょうか. Shiraki & Edashigeの論文では記載年が1915となっていますが,これは多分誤まりで,かなりの種が松村松年先生の1915年に出版された「昆蟲分類学下巻」で記載されており(新種とは表記がないが原記載),それらの種が同先生の「新日本千蟲圖解,巻のニ」で新種としてまた記載されています.この場合は1915年のが新種の有効な記載になります.しかし,本種の場合は昆蟲分類学では記載されていないので,1916が本種(ジョウザンナガハナアブ,Spilomyia jozankeana Mats.として)の記載になるでしょう.一点注意しなければならないのは,1916の著書では,和文の記載では本種雌の図は「第十六圖(13)(♀)」となっていて,図版の絵に相当しますが,英文記載のところでは「(PL.XVI, Fig. 18, ♀」となっていて,Fig.18はMallota japonicaの図です.宮本先生は当然1916の著書の記載と上記した図はごらんになっているはずですから,誤同定はないとおもいます. |
上の写真はイケザキハイジマハナアブ(?)の採集地点です。この花の周りを飛び回っていました。花に止まったりという明らかな訪花の行動は見られませんでした。
しばらくあたりを探し回りましたが、1個体だけでした。
花はアキノタムラソウとのことです。
あと、ヒガシヒゲナガヤチバエの文献は「日本産水生昆虫」です。いつの間にか「西」が入ってしまってました。 |
知り合いからマレーズトラップで採集したハナアブ科が回ってきました。かなり点数の高い種類が入っていたので、わたしも超簡易型マレーズトラップをブナ林内にセットしてみました。
六本脚で安く売っているマレーズトラップですが、捕虫器がチャチなので捕虫効率が多少低いかもしれません。
1週間後の容器内の写真です。
倒木に沿ってセットしたので、予想通りのハナアブが入りました。 マレーズトラップを安く作るためか、捕虫器部もオールネットなので、アルコールの蒸発や雨水の流入などを心配しましたが、意外と大丈夫でした。 今度は、普通のマレーズのように壁の部分を黒く染色しようと思います。(追加のマレーズは1ヵ月後に入荷予定) ハナアブ以外の双翅目は、キノコバエ類がほとんどです。 勉強の為、同定に挑戦してみようと思います。
トラップの中から見つけた、Ditomyiidaeケズメカ科のSymmerus elongatusという種類です?
5mm程の大きさのキノコバエの仲間で、顕著な翅脈を持っていますが、環動昆研の双翅目昆虫の絵解き検索では収録されておらず、新北区の双翅目マニュアルMNDで調べました。(チャボキノコバエ科Diadocidiidaeも絵解き検索に有りません) 他のキノコバエはどうなったかというと、 ・クロバネキノコバエ科は旧北区のマニュアルCMPDに収録されているのですが、検索キーがpalpiの剛毛だったり、感覚器だったりで、プレパラートを作らないと見えない(T_T) また、日本産昆虫目録を見るとCMPD未収録の属が有ります。 ・キノコバエ科は旧北区のマニュアルCMPDに収録されていません。やはり多様過ぎてまとめきれないのですかね。 ソーティング後の残された双翅目を見ると、キノコバエ類とタマバエ科がほとんどなのですよ。もったいない・・・・
同じく、マレーズトラップで得られたオドリバエ科EmpididaeのTachydromia属の1種です。
体長2mm程のとても小型のオドリバエです。翅に紋があるEmpididaeの現物は初めて見ました。 この種は、科の検索で悩みました。ふつう、オドリバエ科は翅にcup室を持つと思っていたので、絵解き検索ではたどり着けず、CMPDの科の検索で落としました。 埼玉県昆虫誌に同属が載っていますが、この種は中脚の腿節に特徴的な構造を持っているので、たぶん違う種類でしょう。 こんな小型の種類が採れるのもマレーズトラップの有利な点ですね。
Tachydromia sp.の翅脈です。
cup室が無く、A1脈がかろうじて生じているように見えます。 新北区のマニュアルMNDのEmpididaeを見ると、Tachydromiaは、通常帯状の斑紋を持つと書かれています。この個体も、かすかに帯状に紋が流れて見えます。
前の発言で、キノコバエ科は旧北区のマニュアルCMPDに収録されていませんと書きましたが、AppendixにSciaroideaキノコバエ上科として集録されていました。
失礼しました。
ブナ林の山中に設置された、六本脚の格安マレーズトラップ。
前回に続き、カミキリムシにより捕虫部に穴が空いていました。赤テープは前回の穴の応急処置です。 犯人は、今回入っていたコバネカミキリかな。 やはり、格安は短期設置専用かも?
応急処置の赤テープを外して前回の穴も写してみました。
前回以上に大きな穴。しかも反対側も穴が空いています。 来年は数を増やして色々やってみたいので、冬の間に対策を練らなくては(^_^;) このブナ林用には、アメリカから2万円程度で買える軽量タウンズ型マレーズを2基購入しようと考えています。 http://home.acceleration.net/jwhock/pd_ift.htm
中脚腿節の切り込みは、交尾の時に雌の翅をつかむため。
ナンテ言うのはうがった見方でしょうか?
Acleris様。
意外と当たっているかもしれませんね。 同じ種類の雌を調べれば解りそうです。 来年も同じ場所にマレーズトラップを設置しようと思うので、雌が採れたら面白いな(^。^)
スレッドが長くなってしまうのですが、画像が勿体無いのでここにコメントします。
昨年掲示したオドリバエの1種Tachydromia sp.で、写真のように中腿節下部に特徴のあるくぼみ(捕獲用?)があります。 Key to the insects of Russian Far Eastに収録されているTachydromiaのKeyを見ると、極東ロシアの種類は胸背に銀色の斑紋を持つものがほとんどで、本個体のような斑紋を持たない種類はT. umbrarum HalidayとT. mongolica Shamshevの2種となります。 しかし、T. umbrarumのような胸背後部黒色刺毛や中脚基付節が特別に長いような特徴はありませんし、T. mongolicaのような翅の斑紋や前腿節中央部の褐色のリングもありません。 アドバイスよろしく御願い致します。
Tachydromia属は私の手元には日本産のものが約30種あります.多くは翅に帯状の斑紋を持っていますが,今回示されたように亜翅端に暗斑をもつ種や翅が全面的に暗色の種など様々です.本属は広い葉(フキなど)の上であたかもアリのように行動して,小昆虫を捕食したり,また岩の上で同様の行動をします.特に岩上で活動する翅に斑紋を持つ種はアリへの擬態と考えられます.通常はゆっくり歩いて獲物をさがしていますが,一旦危険が迫ると敏速に逃げ回ります.吸虫管などで追い詰めると最後は飛翔します.同様の行動はTachypezaにも観察され,本属の場合は捕食の為のパトロール域は主に樹皮がはがれた立ち枯れの木,樹皮がスムーズな木(例えばブナ),電柱などです.腐れかけた木材の堆積でも多数の本属の個体を観察できる場合がありますが,これらの多くはテネラルで,その場で羽化したばかりのものでしょう.
問題の中腿節の抉れですが,本属には雄がここに様々な変形を起こす種があり,これらはいずれも雄に限定されています.そして,Tachypezaと共に,本属は前脚で獲物を確保しますから,雄の中脚は必ずしも捕獲脚としての変形とは思えません.根気強く河原の岩の本属の行動を観察すれば折々交尾個体も観察できます.しかし,大変小形なので果たして雄がこの中脚を交尾の際にどのように使っているかは観察がやや困難でしょう. なお,双翅類ではヤリバエ科で雄の前脚,特に付節が変形するものが多く,この場合は交尾の際にこの変形した付節を雌の翅の前縁部にかけてしっかり掴む機能を持っています. 写真の種は恐らく私も採集していると思いますが,もし,将来研究する場合に標本のご援助をいただければありがたいです. 次はSymmerusですが,本属はelongatus, brevicornis, antennalis, fuscicaudatus, akikoaeの5種が邦産です.ただし,写真で同定されているS. elongatusには,外観的に極めて類似した未記載種があります.これは雄の後脛節腹面に短く且つ太い刺毛がやや直立して密生しています.正確な同定にはこの特徴も含めて原記載の交尾器の図を参照されるのが良いかと思います. Symmerus属の幼虫はやや硬い朽木に穿孔しています.羽化時には雄は日中このような朽木に沿ってあたかもハチがとんでいるように活発に飛翔して羽化する雌を探索します.本属は邦産の未記載種がもう1種あり,これは台湾のS. pectinatusと同様に雄は櫛歯状の触角を持っています.邦産種の多くは幼生期を調べていますが,蛹の胸部突起などに変形があり,種特異的な形質がみられます.中国大陸には多数の未記載種がいて,日本産のものは中国の出店のようなものです.
アノニモミイア様、詳細な解説ありがとうございます。
Tachydromia属は日本に約30種もいるのですか!改めて勉強になります。標本については、必要とあればお送りします。 Symmerus属も新たに近縁種が確認されているのですね。交尾器は解剖していませんが、原記載の図とほぼ同一と見えます。また、後脛節腹面に密生した刺毛もありませんのでS. elongatusで良さそうです。 キノコバエ類は北大の博士課程にKeroplatidaeを研究していた若手がいたのですが、就職して線虫の研究に転向してしまったようで残念に思っております。 |
早朝、佐藤正孝先生が亡くなられたという情報があちこちで飛び交っております。
甲虫から遠ざかって大分経っておりますが、先日の佐々治先生などの訃報でも結構な衝撃でしたが、ここまで続くと・・・。
膵臓癌だったそうですね。
ご葬儀はご遺族の意向で、親族だけの密葬にされるそうです。 ご冥福を深くお祈りいたします。 |
こんばんは。今までハナアブをやり始めて5年間ずっとこの事を疑問に思っていたのですが、びみょーな毛の生えた虫や濡らして乾いたら翅べっとり毛がつんつんになる虫の軟化の方法ってどうすればいいんでしょうか??
殺してその日に標本にするのが一番やとは思うんですが、やっぱ旅行とかで展翅が出来ないまま2,3日ほったらかしになってしまったりすると、家帰ってきたらカチカチになっています。で、無理やり羽を広げようとしたら…(´・ω・`) 甲虫は熱湯につける方法でやってるんですが、双翅目は軟化のやり方が分からないので、ゆっくりと関節に力を掛けて広げたりしています。 どなたか簡単に(薬品とか難しいのはできるだけ避けたいです)出来る方法教えてくださいm(_ _)m ちなみに…最近はどこに行ってもGoodなハナアブが採れません。初夏のマロータ&モモブトで幸運を使い果たしたのでしょうか…ヨコジマナガやマツムラナガが採りたいよ〜 やり始めた頃血眼になって探したスズキナガはどこでもお目にかかるようになったんですがねw
私は、正露丸フィルムケースでうまくいく場合があることを確認しています。
まず、フィルムケースのそこに正露丸を3粒入れ、それを丸めたティッシュペーパーでおさえ、ティッシュペーパーには虫がおさまるくぼみをつけます。私はこの状態のものを亜硫酸ガス殺虫管で採集したハエを持ち帰ってマウントするまで保管するのに使っているのですが、これにびしょびしょにならない程度に水を2〜3滴たらし、乾燥した虫を入れて2日ほど放置することで、ハエの整形が可能になることがあります。
双翅目の標本は乾燥したものをどう軟化するかより、いかにして乾燥させず(なおかつ腐らせず)に持ち帰るかを考えた方が良いと思います。
私が泊りがけで採集に行く時は夜、その日の採集品をティッシュで包み小型のタッパーに入れます。その時、ティッシュの小片に包んだ正露丸を一粒入れておきます。たくさんの虫をティッシュに包んでいると虫自体の水分でしっとり湿っていますが正露丸に含まれるクレオソートの強力な防腐効果で虫が腐ることはありません。 今年2泊で行った採集品をこのようにして持ち帰りましたがハチやハエはやわらかい状態で標本にできました。帰宅後そのまま冷蔵庫に保管して少しづつ標本にしましたが甲虫やカメムシは2週間後でも生展足可能でした。ただし微小種は乾燥しやすいので早めに処理したほうがいいです。
私も正露丸を用いて軟化をしています。完全に乾燥してしまった標本でも、水分と正露丸の防カビ効果で軟化出来ます。
密閉できる容器(タッパーなど)に蓋のない小さな器を入れ、これにティッシュを畳んで敷きます。この上に標本を乗せます。器の外側に湿らせたティッシュを入れ、正露丸を一粒入れます。容器を密閉し、このままで1週間ほど常温状態でほおって置くと、ゲニも引き出せる状態になり、毛も濡れません。 正露丸と水分を、虫に直接触れさせないようにするのが吉です。 唯一の難点は、標本が正露丸臭くなることですね ^^;)
皆様わざわざありがとうございます。今度泊りがけで採集に行く事になったのでぜひ正露丸を使ってやってみたいです。
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7月に別寒辺牛湿原で採集したミズアブOplodonta sp.です。
体長7mm。湿原の路肩のフランスギク?にみられました。 Nagatomi,1977,The Stratiomyinae of Japan IIに詳細が載っています(札幌・足寄)。 Nagtomiの写真は腹部末端が明らかに黒ずんでいますが、今回採集した4個体はわずかに褐色を帯びているだけです。 3個体は腹部が生時の色彩のまま標本に出来たのですが、1個体腹部が黄色になってしまいました。 |
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