採集場所は滋賀県米原市曲谷,標高430m,採集日は2014年8月14日,体長11mmです.
先日の投稿と同じ姉川ダムの公園で,ダム湖の縁の石の上やアスファルトの上にいました. 投稿した個体と一緒に計5頭採集しており, 同日,姉川沿いをさかのぼり標高540m付近でも1頭,リョウブの花に来ていたものを採集しています.
山まで行ってモトミセラニクバエかと思いきや,尾角も前・後の生殖片も細いようです.
手持ちのduxを片っ端から見直してみても,今まで見た事のあるやつはもっと太いです. Fauna Japonicaを見てみると,尾角の先端はtuberosaのようには尖らず,harpaxの形状に似ていると思いました. phallusの形状は,Fauna Japonicaと,Flesh Fly Generic Navigatorと,中国蝿類とでは多少異なるようです. 尾角先端の形状は共通しています. 前生殖片は中国蝿類の1610ページの図は輪郭が重なっていますが,途中で太さが変わっている辺りは似ていると思います.
Fauna Japonicaの当時で言うmiseraのRemarksには,近縁のbrevicornisやharpaxやtuberosaとの違いが書かれていて,
ゲニタリアの違いと,頬の前の縁に白毛がある事が挙げられています. 毛の色を写真に写し込むのは光の加減などで難しいですが, duxでは頬の後角だけでなく前のほうも白毛のはずが,この標本では黒毛が生えています. じつは採集した翌週,今度は名古屋市港区の公園でも同じ種と思われるものを2頭採っています. やはり頬の毛は黒いので,ゲニタリアのパーツが細いduxというわけではないようです. あちこちで採れたのはそういう時期だったのかもしれません. とりあえずharpaxだと思っています. 日本昆虫目録では, Parasarcophaga (Liosarcophaga) harpax (Pandelle, 1896) クサニクバエ ということになります.
大宮様.
これがクサニクバエですか. 確かに,Fauna JaponicaやRohdendorの図と合致しますね. Flesh Fly Generic Navigatorの図は,別種の間違いのような気がします. http://sarcophagidae.myspecies.info/taxonomy/term/2346 手元のモトミセラとした標本を見直してみようと思います.
大宮様
茨城@市毛様 おはようございます. ニクバエ科が投稿されるととてもうれしいです. 私もクサニクバエに1票. これも多くない種のようですが,名古屋の市街地で採集されているのが興味深いです.自分は森の中の渓流的なところで採集しました. ご指摘のサイトの図,たしかに少し違いますね.有用なサイトをお教えくださいまして,どうもありがとうございます. この仲間は交尾器までよく似通っていて,しかも海外を含めるとたくさんの種類があって困っています.今後シノニムとして消えてゆく種もありそうです.イソニクバエP. brevicornisの学名も変わるという説もあります. 海外のものは持っていないのでよくわかりませんが,国産に限って言えばは,Cercusの前縁と後縁(背縁と腹縁?)が,先端ちかくまで並行に伸びてソーセージのように曲がり,先端にとがりがあるこの形が,本種の最大の特徴なのかなと考えています. それにしてもきれいに仕上げられた標本ですね. また面白い画像・面白い情報を投稿してください.よろしくお願いします.
茨城@市毛様
さんご様 コメントを下さりありがとうございます. 図は別種かもしれないのですね.勉強になります. 教えていただいたサイトはお気に入りに登録しました. Rohdendorの著作はSystema Dipterorumで検索するとたくさん出てきますが,ロシアの検索の事かと思いました. Fam. Sarcophagidae. Pp. 624-670. In Bei-Benko, G. Ya. (ed.), Keys to the insects of the European part of the USSR. 5(2), ???? 図書館にあるのは出版年が違うかもしれませんが,今度見てみようと思います. 名古屋の採集場所は,ふ頭として海に飛び出していて,その中に緑地があり,河川も恐らく用水もないです. 曇りがちの日でアスファルトの上にいました. そこで以前に採集した中で自分としては珍しいものとしてカワユニクバエが1頭採れており, 他では岐阜県各務原市の木曽川に近い林で採っただけなので意外でした. 今まで3回くらいしか行ったことがありませんが,もしもおかしなものがどんどん採れるとなってきたら, 船に乗ってどこかから運ばれてきたものが飛来した可能性を考えなくてはいけないと思いました. 近縁種の難しい状況も教えて下さりありがとうございます. 中国蝿類にも教えていただいたサイトにもよく似たものがありますね. そのうちまた変わったものが採れるのではないかと期待してしまいます. 何か見つけたらまた投稿しようと思います.ありがとうございました. |
下記のサイトにオオイシアブに近縁の生態写真が載っていますが、南西諸島にはオオイシアブもチャイロオオイシアブも分布しておらず、中間的な模様をしています。 http://koitarou2006.blog112.fc2.com/blog-entry-946.html 一体、何者なのでしょうかね。
どなたからもコメントがないので、あえて連絡致します。大変遅くなって申し訳ありません。
オオイシアブについては最近出版された日本昆虫目録によると南西諸島での記録は記載されていません。ただし分布には台湾が挙げられていますので、南西諸島で記録されてもおかしくはないと思います。 自分では採集したことがないのですが、南西諸島のオオイシアブに類似した種は何個体も見ています。HPの写真にあるように オレンジ色の毛が鮮やかな個体ばかりです。 本州産のオオイシアブと同種かどうかは今後の課題です。 1916年に松村松年博士がオキナワイシアブという種を記載していますが、これは口吻の基部が部分的に赤褐色をしている種のようで採集されることがあれば確認してみてください。 Laphria属であることは間違いないでしょう。
haruka様
お忙しい中、ご連絡頂きありがとうございました かなり複雑で面倒なグループなのですね。 南西諸島に遠征した際には、気をつけて確認してみます。 |
日本昆虫学会から日本産昆虫総目録の改訂版第2弾として
以下の双翅目2冊が刊行されましたのでお知らせします. 2冊で124科1668属7658種となったようです. 日本産昆虫総目録よりも1500種以上増加しています. 値段は1冊13000円になります.六本脚で購入できます. 少々高価ですが双翅目の報文を書く際の和名学名など の拠り所となる文献となるため,ハエ屋は購入を検討する 必要があると思われます. 日本昆虫目録第8巻双翅目(第1部長角亜目-短角亜目無額嚢節) 日本昆虫目録第8巻双翅目(第2部 短角亜目額嚢節) ということで.
ケンセイ様
ご無沙汰いたしております.さんごです. いつも有用な情報を教示くださいまして,ありがとうございます.発刊されたことを完全に見落としていました. さっそく入手手配しました.内容を早く見たいです. 今後ともよろしくお願いいたします.双翅目談話会の秋の同定会でお会いできることを楽しみにいたしております.
日本昆虫目録第8巻双翅目の刊行について,編集委員長である私から紹介しなければと思っていましたら,ケンセイさんからのご紹介がありました。有難うございます。
ケンセイさんの紹介の通り2部に分かれていて,総ページ数1101頁です。所載種数などはケンセイさんの紹介の通りです。全31名の著者により執筆されています。ハナアブ科は双翅目談話会の大石さん,市毛さん,大原さんの共著になっています。 内容は日本産昆虫相目録が学名と和名各1に分布だけだったのですが,それより遥かに詳細で,学名,和名,原公表(原記載)の出典,タイプ産地,シノニム,和名の異名,分布(旧目録より詳しい),備考から構成されています。 各部13,000円ですが,双翅類関係者にとりましては価格を遥か上回る情報が得られることは必至であると自負しています。 双翅類研究者,愛好者に限らず環境関係の企業では今後調査でのリストなどはこの目録に依拠することになるでしょうから,必携の書になります。この巻の出版には著者各位のご尽力はもとより,本掲示板でガガンボ関係でお世話になっている中村剛之編集委員の絶大な努力によって刊行にたどりついたこともお知らせしたいと思います。 なお,本目録は10数年前に日本昆虫学会で企画されたものですが,当初の予想より編集に難航しまして,昨年は蝶類の号(鱗翅目の巻の一部)を発行し,本年9月1日に双翅目を刊行することができました。引き続いて来年以降半翅目,長翅目・毛翅目・脈翅目等の巻が刊行される予定です。価格が高価ですので一度にたくさん刊行されると購入しにくいのですが,今後毎年1-2巻の刊行を予定していますので,引き続き購入をお願いします。 販売は福岡市の櫂歌書房(とうかしょぼう)ですが,日本昆虫学会の日本昆虫目録編集委員会が編集して,同書房が印刷販売しています。同書房から直接購入も可能です。 櫂歌書房 811-1362 福岡市南区皿山4-14-2 TEL: 092-511-8111, FAX: 092-511-6641 E-mail: e@touka.com http://www.touka.com こちらからの購入の場合の送料などをお尋ねください。あるいは送料が割引になるかも知れません。
ケンセイさんのご紹介の中で,日本昆虫目録が日本産昆虫総目録の改訂版とありましたが,これは改訂版ではなくて,踏襲はしていますが,全く別の刊行物です。念のため。
日本昆虫目録第8巻双翅目について編集サイドから本書の利用をされる本掲示板の双翅類研究者(職業的、非職業的を問わず)並びに愛好者にお知らせします。
1.本書は一昨年から本格的な原稿集約を行いました。それ以前に原稿を提出していただいた著者もかなりありました。一昨年から昨年にかけての時点で各著者との連絡を行い,基本的にはその時点での原稿作成とご理解ください。しかし,本巻でもデータの締切を特にある時点で決めたわけではないので,各著者並びに同一著者でも担当科によって異なります。 2.データをどのような文献から収集したかは,著者及び科により差があります。例えば双翅目談話会の「はなあぶ」誌上の記事を参照している科はあまり多くないと思います。私が執筆した北隆館の新訂原色昆虫大図鑑第3巻の内容についても,私以外の著者によっては引用されていない種もあります。 3.学名の無い種(いわゆるsp.で示された種)で,記述内容からその種の同定が可能な種は本目録に含めても良いことになっていますが,これも著者の任意になっています。私が担当したオドリバエ科及びセダカバエ科は基本的には本書マニュアルにかなり忠実に従っています。例えば,原記載(原公表)が不完全でその後良い再記載がある場合は同定の便宜を考慮してそのような文献を備考欄に示してあります。 4.原記載などの文献の表記も著者によって必ずしも統一されていません。この点に限らず,著者や科によって内容にかなりの不統一があることをご理解ください。 その他の点については折々本掲示板に投稿しますので参照ください。 5.本書利用者にお願いがあります。もし,本書について追加訂正すべきと思われる点にお気づきでしたら,編集担当の中村剛之編集委員に是非ご連絡ください。
日本昆虫目録第8巻双翅目の購入については,櫂歌書房に直接注文した場合には送料無料(櫂歌書房負担)で受注するそうですので,お知らせしておきます。
三枝豊平先生
いつも大変お世話になっております. 日本昆虫目録第8巻双翅目について,詳細に解説していただきまして,誠にありがとうございます.昨日入手致しました. すごい情報量ですね.日本産既知種のおそらく全種について,今までよくわからなかったシノニムや原著がみな網羅してあり,感動しております. 第1部と第2部に分かれていますが,解説や科の索引は第1部に,学名・和名の索引は第2部にまとめてあるので,両方セットで入手して正解でした. 未入手の方はぜひ両方セットでの購入をお勧めします. 編集委員長として多大な労をとられたこと,1アマチュアとして心より御礼申し上げます. 先日ご指示いただきました某ハエのトラップの件ですが,今春より続けておりますが未だ成功しておりません.申し訳ございませんが今しばらくのお時間をいただけますと幸いです. 今後ともご指導のほど,なにとぞよろしくお願いいたします.
福岡の三枝先生、札幌の諏訪先生とともに、本目録の編集に加えていただいた青森の中村です。
三枝先生も述べられている通り、本目録は31人もの著者による分担で執筆されました。専門家のいない科もあり、編集委員や他の著者に無理に担当していただいた部分もあります。全ての科について、統一した方針や書式を貫くことはできず、ある程度の不統一は目をつぶることにしました。完璧を目指していたずらに時が過ぎるようなことはせず、とにかく出版する。これが基本方針です。とはいえ、著者はみなさん協力的で、基本的な情報は全て網羅されているはずです。 先日の国際双翅目会議(ドイツポツダム市)でこの目録の宣伝ビラを配ったところ、ロンドンのディプテリスツ・フォーラムのメンバーから扱っている種数を問われました。誇らしげに7600種と伝えたところ、「だいたい、ブリテン島と一緒だな」といわれ、大変ショックでした。調査の進んでいるイギリスでは既にこのくらいの種が判明しているのですね。他の分類群では、日本には普通ブリテン島の3倍くらいの多様性がありますから、単純に見積もって日本には少なくても2万種くらいの双翅目がいるのじゃないかと思います。私も大変仕事の遅い男ではありますが、この目録が良い刺激になって調査や記録,種の記載が活性化することを期待しています。 そうした意味でも、皆さん、是非、お手元に1セットご購入ください。 この目録に掲載される種のリストはいずれ、形が整い次第インターネットで閲覧できるようになりますが、1. この目録の間違いや加除訂正すべき事項、2. この目録の出版後に記載、記録、報告された追加種については情報を集めていきたいと考えておりますので、お気づきのことがありましたら、私あてにご連絡ください。 いろいろな心配事もあります。この目録の著者の多くは既に退職し現役を退いている方々です。近年分類学を学べる研究室やこの分野を志す学生が減少していることもあり、将来このような目録を編むことができるか、改訂ができるか、私ははなはだ懐疑的です。このような多数の専門家集団で事に臨むのはこれが最後かもしれません。
「目録に掲載される種のリストはいずれ、形が整い次第インターネットで閲覧できるようになります」と書きましたが、公開される予定になっているのは種名(学名と和名)のリストだけです。原記載やタイプ産地、分布、シノニムなどの重要な情報は今回出版された目録でしかみることができませんので、是非一度ごらんください。
三枝先生、中村様、いろいろとコメントありがとうございました。作成者からのコメントなので大変参考になります。
先日自宅にも2冊届きました。取り急ぎ、ざっとガガンボからヤドリバエまでななめ読みして、ものすごい情報量に圧倒されています。 今後はこのリストが報文を書く際の種名や学名などの準拠文献になると思います。現在八王子市史の資料編でハエ目のリストを作成中なのですが、さっそくこのリストに準拠したいと考えています。 ケンセイ@東北のハエ目と格闘中・・・ |
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