HM様.
写真のガガンボは,Elephantomyia属クチナガガガンボの1種と思われます. ガガンボに限らず双翅目の場合,よほど特色のあるわずかな種類以外は生態写真での同定は不可能で,○○の1種との回答となります.
茨城@市毛様
同定していただきありがとうございました。 たいへん勉強になりました。次回は採集しての同定を試みたいと思います。 |
そうです。写真の個体は♀です。幼虫は様々な腐敗植物質を摂食します。
アノニモミイア様、ありがとうございます。ほっとしました。
ところで本種の越冬体は何でしょうか?腐敗植物も冬場は凍りそうなので、成虫越冬でしょうか?
本種の越冬態は知りません。もともと熱帯系のキノコバエで(沿海州にも1種分布しますが)、どの程度日本本土で越冬しているかわかりません。九州でも春にはほとんど見られず、夏に増えてきます。特に、前日までまったく見なかったのにある朝突然、庭の草木に多くの個体が静止している、というようなこともあって、私は自力か風に乗るのか知りませんがmigrationの可能性も否定できないのでは、と思っています。
なお、昆虫の幼虫は周囲が凍結する温度になっても、体液のグリセリン濃度を上げるとかいろいろな対処で、凍結を防いでいたりしますので、腐食植物質を幼虫が摂食すると言っても、冬季に必ずしも凍死するとは言えません。ただし、Allactoneura属はもともと熱帯系のものなので、対凍性をもっているかどうか、この点が問題でしょう。 地球高温化にともなって、ナガサキアゲハやキマダラカメムシなどの北上のように、双翅類も熱帯系の種を含めて、我々が気付いていないだけで、当然北上しているはずです。この点Allactoneuraの生息記録は重要なデータになると思います。
アノニモミイア様、ありがとうございます。
なにはともあれ、採集し、記録することが「温暖化」を検証する一助にもなるかもしれないということが分かりました。それと緻密な調査や観察も大事ですね。 |
お忙しいところ失礼いたします。
ヒトリガの幼虫を飼育していた際、双翅目の幼虫が表皮を食い破って出てきました。それの成虫を同定しようとしたのですが、絵合わせくらいしかできず挫折しました…。 出来れば種名まで教えて頂けると幸いです。 宜しくお願い致します。 ヒトリガ幼虫の採集場所は北海道札幌市で、 採集日は2011年6月21日-7月14日です。 個体は70%アルコールで保存しており、状態は良くありません。
A-2
上個体と同じ個体です。
写真の寄生蠅はすべてヤドリバエ科Tachinidaeの種であることは間違いないでしょう。日本には数百種以上のヤドリバエ科のハエが生息していると言われています。そして、ヤドリバエ科の同定はごく一部の顕著な種を除くと、専門家が標本を検して初めて可能だろうと思います。
この科の分類学の研究論文から判断しますと、日本でヤドリバエ科を的確に同定できる専門家は九州大学に2名おられるだけでして、しかもその方たちは本掲示板には出てきていません。 研究論文作成などのために同定が必須であるという場合に限って、彼らに同定を依頼すればしてもらえる可能性はあります。 このように、現在(おそらく将来何十年も)日本でヤドリバエ科の「名前を単に知りたい」という希望は、一部の顕著な特徴を持っている種を除くと、叶えられない状況です。生物多様性の重要性が一見強調されているような昨今ですが、残念ながらわが国では双翅目に限らず昆虫分類学を専攻できるようなポジションや研究費の支給を国や地方自治体がほとんど行っていないというのが現状です。
質問様.
アノニモミイア氏が述べているようにヤドリバエ科は他のハエに比べ多数の種類が日本に分布しています.当然,属数も多く検索が非常に厄介です.旧北区の双翅目マニュアルでのヤドリバエ科の検索表は,549ものcoupletから成り立っているので,これを見ただけで大半の人は投げ出します. また,毎度のことながら,体全体の毛の配列を見ないと属を調べるための検索表を使えません.ヤドリバエ科の場合,人間に例えると首の付け根にある前胸腹板の形状や剛毛の有無などまで見なければならないので,時には乾燥標本の頭部を外して観察することもあります. 今回の場合,ヒトリガArctia cajaがHostとのことですので,H. Shima(2006)A Host-Parasite Catalog of Tachinidae (Diptera) of Japan(ヤドリバエ科の寄主目録)を元に推測していくと,A及びBはCarcelia属の1種の可能性が高いと思います.Dの種類も見た記憶はあるのですが,標本が出てきません. 実際には,この寄種目録に記録されていない種類も寄生する可能性があるので,標本を精査しないと属を特定することすら困難です.
とても早い回答有難うございます。
同定が難しいとは思っていましたが、 ヤドリバエ科がそこまで属数、種数が多く、困難なものだとは初めて知りました。 述べてくださった内容を知れただけでもとても勉強になりました。 アノニモミイア様、茨城@市毛様有難うございました。 |
皆様,双翅目談話会 関東同定会の日時が正式発表となりました.
場所:神奈川県立生命の星・地球博物館 日 時 平成23年11月19日(土) 午前10時より <懇親会を6:00頃から予定しています(小田原駅周辺の予定)> ◆ 持ち物:同定してほしい標本(双翅目)、筆記用具、ルーペ、弁当 会員以外でも参加出来ますので,興味のある方は覗いてみてください. |
まあ様.
いつも通り,撮影は阿武隈山地南部ですか? エダシゲオビヒラタアブかシバカワオビヒラタアブだと思います.判別には,高倍率で翅の第2基室周辺の微毛の分布状態を見る必要があります.(腹部斑紋と脚部の色には変異があります.)
茨城@市毛様、
コメントどうもありがとうございます。 そしてまた忘れてしまいました。 その通り、阿武隈山地標高550mぐらいです。 エダシゲオビヒラタアブかシバカワオビヒラタアブ、はずれじゃなくてほっとしてます。 でも確実な相違点が翅の第2基室周辺の微毛の分布状態にあるのですね。 私としては肉眼で何とかわかる違いを見つけたいと探してみるのですが、標本写真を見比べてみましたら、触角の上から複眼の付け根にかけて(部分名称がわかりませんが、鼻筋とでも言いましょうか・・汗!) シバカワ→黒い毛が筋状にあるように見えます。 エダシゲ→黄色い毛が同じく筋状にあるように見えます。 これもある程度の相違点になるのなら、嬉しいんですけど。 この写真ではそれもあまりはっきりしませんので、エダシゲオビヒラタアブかシバカワオビヒラタアブということで納得です。 もっとたくさんの個体をみないとだめですね。 種の差なのか、個体差なのかもまだ全然ピンときません・・; どうもありがとうございました。 |
前スレで、ハエに興味が・・・と書かせていただきました。
アブ以外はじめて意識してハエを採集いたしました。 今までは、毒瓶にハエが入ってしまっていてもぽいしていました。さて、採集品ですが今回は半翅目の調査の折に採集した3品です。
KT様.
最初の一歩は,標本作成です. 翅脈が見えないと,よほど特徴的な種類でない限り,科や属が判別出来ません. 通常は,翅が上側に来るようにマウントします.また,脚はある程度伸ばすようにします. 一度,みんなで作る双翅目図鑑 画像一括閲覧ページの標本を見てください. http://homepage3.nifty.com/syrphidae1/diptera_web/issun_photo.htm 同定会で,甲虫のようにタトウに並べた標本を持ち込む方がおりますが,以前にアノニモミイア氏が「双翅目は三次元昆虫」と述べているように360°色々な角度から見えるような標本を作製する必要があります.したがって,適切に作られてない標本の場合,同定に無駄な労力を必要としたり,普通種でありながら種の特徴が見えないため,○○の1種としか判別できないことがよくあります. 1枚目は,翅脈などの特徴が全く把握できないので,科すらわかりません. 2枚目は,シマバエ科Lauxaniidaeかクロツヤバエ科Lonchaeidaeのように見えます. 3枚目は,アシナガバエ科Dolichopodidaeの1種です.翅脈が見えるともう少し絞れるかもしれません. P.S. 投稿時には,採集時期,採集場所,体長を明記するようにお願いします.
市毛様、ありがとうございます。
採集場所等失礼いたしました。千葉県印西市の雑木林で本日(10月2日)採集です。 皆様の標本画像拝見いたしました。私も翅が上に(バタフライのような)かえるようにしてみたいのですが、難しいですね。 2枚目のやつは翅が上になかなか行ってくれません。壊れることを覚悟して練習してみようと思います。 1枚目のやつもちょっと翅がよれてしまっていて、残念です。なんとかきちんとしてみようとは思います。まだ柔らかいのでもう少し硬くなった方が整形しやすいのでしょうか。 とりあえず1枚目のもうすこしましな翅の画像です。
KT様.
双翅目でも,ハエ類の仲間の軟化は難しいです. 軟化展翅は出来ますが,体の剛毛の脱落が起きやすく,剛毛の有無や長さの比率を必要とする種類の同定が困難となります. 軟化方法はNo.5240,No.2574 等を読んでみてください. 新訂大図鑑の科の検索でも,多数の用語が出てきますが,初心者には解り辛いので,概念的な絵解き検索のHPを紹介しておきます. Key to the Families of Diptera Associated with Cow Dung http://www.nadsdiptera.org/FFP/dungfly/dungfly.htm 1枚目の写真の種類をこの絵解き検索で調べると, ・触角の形から,(Brachycera短角亜目) Go to 11 ・Ptilinal fissure(額のう溝)の有無でkey 16と11に分かれます.(ここでは,写真からの印象で16へ行きます) ・Couplet 16で,また写真では見えない特徴を判別しなくてはなりません.ここで有弁類17と無弁類22に分かれます.(ここでも,写真からの印象で17へ行きます) ・Couplet 17で,meron(下側板)に剛毛列があるかどうかでkey 18と19に分かれます.残念ながらKT様の写真では判別できません. この検索では,18はCalliphoridaeクロバエ科,19はSarcophagidaeニクバエ科がゴールとなっていますが,KT様の翅の写真から翅脈R4+5とM1+2がほぼ並行で,翅端でわずかに閉じ気味になるので,仮に有弁類であるとしたらMuscidaeイエバエ科の1種の可能性が高いと私は思います.
2番目はクロツヤバエ科のLonchaeaの1種の可能性が高く、1番目もあるいはこれと同じかも知れません(頭部の刺毛、中脛節端の背刺毛など)が、光沢が写真に写っていませんので、あまり自信がありません。3番目はもちろんアシナガバエ科です。
多くの双翅類は採集して死んでからあまり時間がたっていない(数時間以内)時には、胸部筋肉が死後硬直していて、翅が静止しているタテハチョウのように背中に立ててあるか、あるいは「はがいじめ」のように腹側になっている場合があります。この時間内では、体が硬直していて、翅は二つのいずれかの姿勢を取っていて、翅がだらだらとは動きません。前者の場合にはそのままの状態で標本作成ができます。後者の場合には字で書くのは少々難しいのですが、体を仰向き(背中を下)にして)、紙の上に置き、細いピンセットで両翅の根元のすぐ上(体が仰向きですから、翅の根元の上になります)を軽く挟んで、そのまま胸を弱く紙に押しつけると、瞬間的に翅は背中側に反転します。これは何度か大型のハエ(クロバエ、ニクバエなど)で練習してみると習得できます。なぜこのようになるかと言いますと、ハエの翅の根元の関節には弾力性のあるクチクラの構造があって、胸部の飛翔筋の収縮との関連で、この部分で翅が上下に瞬間的に反転するようになっているからです(詳しいことは説明が錯綜するのでやめておきます) 。 このようにして、翅を背中側に反転させておくと、そのままの姿勢で乾燥します。 ただし、死後半日以上位たつと、胸部の筋肉が弛緩して(その前は死後硬直している)、弾性クチクラの働きがうまく利かなくなり、翅はだらだらとなります。もちろんこの状態で、翅を背中側にピンセットで合わせて、その姿勢で三角紙などに挟めば、その状態で乾燥します。 なお、乾燥してしまったハエは以上のことはできません。当たればあたるほど標本を傷めるだけです。乾燥したハエは脚でも触角でも大変壊れやすいので丁寧に扱わなければなりません。
市毛様、アノニモミイア様、ありがとうございます。
早速、翅をくるんとさせようといろいろ頑張ってみましたが、 足が取れたり、頭が取れたり、ぼろぼろになってしまいました。悔しいですが、そのまま台紙に貼り付けて標本にしようと思います。もう少し大きなハエで練習してみます。アノニモミイア様のおっしゃるようにニクバエ辺りで…。 悔しいですが・・・ ボロボロになっても翅が反転してくれなかった2枚目の画像の翅です。 不器用な私ですが、懲りずにこれからもご指導くださいませ。
2枚目は今回の翅の写真からもLonchaeaまたはその近縁属でしょう。
アノニモミイア様、ありがとうございます。
そこまででも分かって一歩前進です。 今後ともよろしくお願いいたします |
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