同定されたとおりHilara melanogyne Freyの雌雄です.第3触角節(第1鞭小節)が赤みを帯びることが大きな特徴ですし,複眼もやや赤みがあります.
本種の配偶行動は私も全く観察したことがありません.雄が夕方暗くなり始めてから林道の2−3m上空をやや群れて飛翔したこと,午後4時ころ渓流の縁の高さ1-2mのところを数頭の雄が疎らに飛翔していたこと,位です.この点,Hilara neglecta Freyの雄の採餌行動,群飛行動,交尾行動,求愛餌の種類などかなり詳しく観察しているのとは対照的です. 多数発生しているのなら,是非観察されて,おおよそのことでいいのですから,「はなあぶ」誌上でも発表してみてください. なお,複眼が赤みを帯びるHilaraは日本にこのほかの種群で数種ありますが,これらの多くは日中の一般的活動は観察されず,採集も渓流沿いの岩陰から,キノコバエ類が飛び出してくるように,採集ネットの動きに驚いて飛び出し,採集されるものです.これらの多くは複眼だけでなく,体色も一般に淡色です.しかし,体色が橙色であっても昼間活動性の種もあります. Hilara melanogyneも上記の種のように昼間岩陰から飛び出してくる(特に雌は)個体が多いようです. なお,北アルプスなどの山地(1,500-2000m)には本種に似て,雌の翅が幅広くなり(色彩は本種同様黒褐色),雌の腹部が白色を帯びた別種が生息し,これは昼間に群飛をするようです.雌の腹部が白っぽいのは他にH. leucogyne Freyと言う種があります.これは小楯板剛毛が4対より多いので区別できます.
アノニモミイア様
詳しい解説をありがとうございます。 多数いたのですが、近所では無いので、残念ながら今年は観察ができそうにありません。 ただ、Dipteraの生態には興味がありますので、これからは 今まで以上に気をつけて観察したいと思います。 引き続き宜しくお願い申し上げます。
今年は再訪できないとのこと残念です.
差し支えなければなるべく詳しい観察場所と日時を教えてください.重要なデータになりますので. |
ブナやホオノキのようになめらかな樹皮上で、走り回ってちいさな虫を捕食しており、交尾も見られました。体長は♂は4ミリくらいです。2008年5月17日青森県下北半島の山にたくさんおりました。お教え下さい。捕食されている虫も見当がつきますでしょうか。
これはオドリバエ科のTachypeza fennica Tuomikoskiクロテンカマアシハシリバエです(研究者によっては別科Hybotidaeセダカオドリバエ科を建て,これに分類します).北隆館新訂原色昆虫大図鑑第三巻,p.407に解説があります.餌は写真だけでは良く分かりませんが,複眼が大型であるらしいこと,腹端の形状,大きさから勝手に判断しますとSciaridaeクロキノコバエ科の1種の雌ではないでしょうか.
Tachypeza属はT. heeri Zetterstedtを含めて日本に数種分布しています.これらの種はいずれもブナなど樹皮表面が平滑な立木や樹皮がはがれた立木,山中の山小屋などの木の壁,ベンチなど上に生息し,そこに飛来,あるいは歩行する小昆虫を餌にしています.求愛給餌行動や群飛は行ないません.走行速度が非常に速いために追っても走り回って逃げ,いよいよの段階で始めて飛びます.翅の臀葉の発達が悪いために飛翔速度は遅く,ゆっくり飛びます. 幼虫はヨーロッパでは朽木や木のうろから採集されています.日本でも朽木などの倒木が堆積した部分では,羽化直後の体が着色していない個体がしばしば採集されますので,一部の種は少なくとも,このような環境に生活し,そこで恐らく小昆虫の幼虫などを摂食していると思われます.いずれも年一化です. 下北半島にたくさん生息しているようでしたら,一部採集しておいていただければ幸いです.
アノニモミイア様、ありがとうございます。現場で見たときは捕らえた獲物を前足で抱えているように見えたので、ややカマバエ的な足と思ったのですが、実体顕微鏡でみれば膨らんでいて少しだけ鎌っぽいなと感じていました。和名そのものに納得しました。獲物を吸汁しているときの映像を見てみますと大半は前肢を全く使っていない状態でしたが、左の前肢だけを鎌のように使って抱え込んでいるのが1シーン写っていました。獲物を刺しているときに、幹ごと加減しながら平手打ちしてとりあげた獲物には極小のハチの一種もおりました。標本は近日中にお送りします。
追伸です。両前肢で獲物をかかえているところが写っていましたので追加します。ここにその動画をのせておきました。http://snowmelt.exblog.jp/7964104/
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今日、久しぶりに山に出かけ、ハナアブやら雑虫やらを少々採集してきたのですが、シラオビシデムシモドキの集まるような発酵しオレンジ色になった樹液?の周りに、以前このBBSで話題になった種と同じやや大型のハナブトハナアブが集まっており、3♂2♀を採集する事ができました。
発酵し、えげつない臭いを発する物体には多くのハネカクシやらケシキスイが汁の中を泳いでおり、現地でより分けていると見落としがあるので一緒にタッパーに詰め込んで帰ってきました。 残念ながらタッパーに詰めた物は酸欠で中の虫が全部死んでいたのですが、よく見ると3mmぐらいの尾長ウジ形の幼虫も表面に浮いており、もしかするとハナブトハナアブの幼虫なのか?と考えていたら、一匹だけ生かして持ち帰ったメスが多数の卵を産んでいることに気づき、なんとかして飼育してみたいと思った次第です。 ハナブトハナアブの幼虫はこのような発酵した樹液?菌類?の中で育つのでしょうか? どうか宜しくお願いします
ゆーちゃん,こんにちは.
外国の文献によると,ハナブトハナアブは樹液食のハナアブです. フタモンハナアブ属やケコヒラタアブ属も樹液(Sap runs)で幼虫が得られるようです.
有難うございます。
今日ケースを見たら小さなウジが沢山わいていました。 とりあえず持ち帰った樹液を冷凍した物と昆虫ゼリーと二つに分けて飼育してみたいと思います
現在冷凍した樹液を使い飼育しています
結局ゼリーを買おうと思ったのですが、とりあえず買いに行くまで樹液で・・・と思い入れた発酵樹液が上手くいってるみたいなのでゼリーは買いませんでした 幼虫は尾長ウジ形の幼虫にミズアブの呼吸管を付けた様な独特な格好をしています。 呼吸管はほとんど伸ばせないらしく水を入れすぎると溺れて死ぬみたいです… とりあえず少し成長して2mmほどの大きさになったので報告まで☆ |
このアブは双翅目(ハエ目)短角亜目のシギアブ科に属するChrysopilus属の1種です.恐らくキアシキンシギアブかその近縁種でしょう.シギアブはアブの語尾がついていますが,アブ科とは異なり一般に吸血することはありません.Chrysopilus属も同様です.幼虫は地中や朽木の中などで生活して,他の軟弱な昆虫の幼虫などを摂食します.Chryso=金,pilus=毛,という学名で,この種にはふさわしい名称です.
アノニモミイアさん、ありがとうございます。
学名に金毛の意味があるなど、分かりやすく説明していただき、ありがとうございます。 |
こんちは。
クロバネキノコバエ科・・・までが私の限界です。 詳しい方のフォローを期待いたします。
Sciara thoracica Matsumuraセアカクロキノコバエ(セアカキノコバイ;セアカクロバネキノコバエ;セアカクロカ)です.
属の所属は諸説あるようですが,和名は松村先生がキノコバエ科として命名したセアカキノコバイのセアカを踏襲して,これが属するSciaridaeにはクロバネキノコバエ科,クロキノコバエ科,クロカ科,と三通りの呼び名がありますので,セアカにそれぞれの語尾をつけることができます. クロバネキノコバエは本種などのように翅が暗色の少数の種に基づいたもので,伝統的な名称. クロキノコバエは本科の大部分の種で翅は無色透明だからクロバネはそぐわないということと,ほとんどの種の体色が黒色であることに基づき,最近しばしば用いられている.短くて的確なので私はこれを採ります. クロカは双翅目の糸角亜目の大部分でガガンボやブユなどを除いて体が蚊のように細長いものの語尾をすべて「カ」とするという伊藤修四郎先生のご提案(タケカ(茸蚊),タマカ(球蚊),エゾカ(蝦夷蚊),クチキカ(朽木蚊),ゴミカ(芥蚊)などなど;タマは「虫えい」の「えい」の漢字でしょうか)ですが,使用者はすくない. 本種の幼虫は枯れ草や落ち葉のやや湿った堆積の中で幼虫が生育し,本州中央部平地では5月上旬頃に年一回の成虫の発生が見られます.成虫は特に不潔とは思いませんし,また刺したり,毒を持っていたりはしません.か弱い短命の虫です.
バグリッチさん
アノニモミイアさん ありがとうございました。 アノニモミイアさんの詳しいご説明は興味深く拝読させていただきました。重ねてお礼申し上げます。 |
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