すみません.ミナモオドリバエでした.失礼しました.
よろしくお願いいたします.
これはミナモオドリバエ属Hilaraの種ではなくて、ホソオドリバエ属のRhamphomyiaのイミャクオドリバエ亜属MegacyttarusのRhamphomyia (Megacyttarus) geisha FreyゲイシャイミャクオドリバエかR. (M.) argyrosoma Saigusaギンパライミャクオドリバエでしょう。本亜属の種の多くはHilaraと同様に水面を滑走するように飛翔をしながら水面に浮いている小型の双翅目などを狩り、雌への求愛餌にしています。本種もHilaraと同様に前脚を挙げながら飛翔して獲物を見つけ次第それに襲い掛かれる体制をしているのが良く分かり、貴重な画像だと思います。本亜属の狩りの画像は見たことが無いので双翅目談話会の「はなあぶ」等何らかの雑誌に投稿されることをお勧めします。そのために正確な同定が必要でしたら、標本を私の方へお送りください。
三枝先生,詳細な説明ありがとうございます.Hilara以外にもこのような飛翔をする種がいることを初めて知りました.ぜひ報告したいと思いますので,同定をお願いします.発送先は昆虫学会のサイトに出ているところで良いでしょうか.
http://www.entsoc.jp/secr.htm シブキバエの同定も確定していただくとありがたいです. 次はHilaraを見つけたいです.
念の為Trichoclinoceraもお送りください
Hilaraは未記録種を含めて日本に200種以上生息しています。5月上旬に多いHilara neglectaは最もポピュラーな種です。大型で個体数も多く、幅2,3mの流れでも淵の上高さ1-2mの空間に大きな群飛を形成するし、その下の流れでは雄が採餌水面飛翔をしています。
ハムシさん:標本は無事到着しました。Rhamphomyiaの方のMegacyttarus亜属の種はR. (M.) geisha Freyゲイシャイミャクオドリバエでした。本種はR. argyrosomaに大変よく似ていますが、♂の後腿節の腹面基部近くに2,3本と先の2/3あたりに1本の長い黄色の剛毛が生えています。R.argyrosomaにはこれがないか、あっても大変短くて周囲の刺毛と区別ができません。R. geishaは近畿地方から四国、九州にかけて分布しています。
それと最新の画像の種は同じMegacyttarus亜属のR. (M.) brunneostriata Freyケズネイミャクオドリバエです。本種は顔面(触角の下)に刺毛を生じ、♂の中脛節と短い第1付小節が肥大して長めの毛を生じています。これにはvar. monstrosaという型があって、通常型と混じっています。この型は中脚の第2付小節が肥大しています。今回の画像にあるような水面狩猟ができない場所の本種の群飛にはmonstrosa型がもっぱらです。あるいはこの肥大した第2付小節は♀に対するニセのnuptisal giftの役目をしているのかもしれません。 R. geisha,R. brunneostriataともに大変精度の良い水面狩猟の画像ですので、是非何らかの雑誌に報文をだしてください。 イミャクの意味は♀の翅脈相で、中室が変形や拡大をするので、♂の翅脈相と異なることに依拠しています。なお、Megacyttarusとは「大きな翅室」の意味でこれも拡大した雌の中室に依拠していると思います。 |
KURO様.
写真のハナバエは,クロオビハナバエAnthomyia illocataではなく,近縁のA. latifasciataの可能性が高いと思います. 詳しくは, Suwa, M. 1987. The genus Anthomyia in Palaearctic Asia (Diptera: Anthomyiidae). Insecta matsumurana 36:1-37. をご覧になってください.
茨城@市毛 様
回答ありがとうございます。 ご紹介いただいた文献はPDFで公開されていましたが、よく分かりませんでした。 でも、ハナバエ科Anthomyia属まで絞り込めただけでも良かったです。 どうもお世話になりました。 |
![]() 針は微針を刺しました. はなあぶ誌37号の検索表で調べるとHebecnemaになります. 116ページのcouplet 16で,「♂の頭部上方はしばしば平圧される」とありますが,なかなか微妙なカーブだと思います. 日本のイエバエ科のクロヒカゲイエバエの説明では,”側額と亜側顔が横顔では見えない”という内容の事が書かれています. 中国蝿類の1071ページの図版231の2425では横顔が出ていて,カーブは多少違うものの雰囲気は似ていると思います. 37号の解説によると少ない種だそうで,採集地でも今までに数えるほどしか見たことがありません. 今回の採集地は標高が低いので山地性というよりは森林性という事になると思います. 冬だからかもしれませんが,ヒカゲではなく日の当たる葉の上にいました
日本のイエバエ科の検索表でも,はなあぶ誌28号の種類が増えた検索表でも,胸背と腹背に明瞭な縦線はないという選択肢になります.
一方で詳しい記述では,胸部に4本のはっきりしない暗い縦条と,腹部第3と第4背板に暗い中央の縦線があります. 手元の標本は暗い線も見当たらず,胸部と腹部で多少の質感の違いはあるものの,およそ黒一色に見えます. もっと違いが目立つのは鱗弁の色で, 教科書通りなら褐色で,黄色い平均棍とは異なる色彩で,Plete 18-12を見ても上下とも暗色なのですが, 手元の標本は明るい色をしています. しかし色彩についてはいろいろあるようで,例えば脚の色を見ると, 日本のイエバエ科では腿節が黒色,脛節が暗褐色であるのに対して, 中国蝿類のH. fumosa では中脚と後脚の脛節は黄色で,ある時には暗褐色で,検索表でも基本的には黄色という事になっています. 異なるカラーバリエーションがあってもいいかもしれないと思います. 今回はゲニタリアは未処理なので,追加個体が採れたら見てみようと思っています. ついでになりますが中国のMydaeinaeの文献を見つけました.英文です. http://jinsectscience.oxfordjournals.org/content/14/1/22 |
HY様.
HY様のご指摘通り,ヨツボシヒラタアブXanthandrus comtusです.ヨーロッパから台湾まで広く分布しておりますが,南西諸島では少ないようです.
市毛 様
沖縄島に分布の資料が見いだせなかっため、同定依頼しました。 ご教示ありがとうございました。 |
やまちゃん様.
写真のハエは,ハモグリバエではなく,キモグリバエ科Chloropidaeの仲間です. 恐らく,Dicraeus phyllostachyusオオササノミモグリバエではないかと思われます.
これは早速にどうもありがとうございました。検索表を見ながら考えたつもりですが、なかなか難しいですね・・・。もっと修業が必要ですが、またご教示をよろしくお願いいたします。
キモグリバエ科はどちらかと言えば無弁翅類のなかでも一番識別しやすい科です。
1)Sc脈の発達が悪い。 2)R1脈が前縁に達する少し手前に顕著な前縁の切れ目がある。 3)後(第二)基室と中央室の境の脈が消えて,両室が合一する。 4)上記合一した室の後縁になる脈がやや手前でわずかではあるが特徴的に弱いカーブを示す。 5)頭頂に通常は無毛で光沢のある大型の単眼三角部がある。 6)翅にcua室(伝統的な臀室)を欠く。 とくに,4と5は重要な特徴です。
アノニモミイア様:
これはご丁寧な解説を、どうもありがとうございました。よく覚えておきまして、これから活用したいと存じます。いつもご親切なご教示を賜りまして、お礼申し上げます。 |
お世話になります。
沖縄県国頭村西銘岳(2014.12)で夜間灯火で採集しました。体長は6mmです。 三枝氏のオドリバエ図解検索表で検索した結果、Phyllodromia 属にたどりつきました。 検索の経過は以下の通りです。 1.前脚は捕獲脚に変形している→54.翅にR4脈を欠く→57.翅は中室を欠く→58.翅のM2脈はその基部が存在し、M1脈と分岐する。 顔が細長く、複眼も細長いです。また、腹端の形状から雌だと思われます。 同定・ご教示、よろしくお願いします。
残念ながら,これはオドリバエ科ではありません。触角を見れば分かるように長角亜目のケバエ科の雌です。Bibio属ですが,この時期に沖縄で発生するのはBibio ryukyuensis Hardy et Takahashi, 1960でしょう。色彩の記載は画像に良く合います。本種は1月から3月まで採集されていますが,原記載に用いた標本はRyukyu Is.だけで,正確な産地は分かっていません。原記載の後脚の図では後脛節が今回の画像よりやや先に向かって肥大し,付節もかなり太目です。しかし,原記載の後脚の図の性が示されていないので,あるいは図は雄で,雌は今回の画像のように細いのかもしれません。
オドリバエ科の触角は第1,2節が短く,第3節は長さが多様で,その先には糸状ないし筆状の触角刺毛が付いています。ケバエでは第1,2節の先には少なくとも数節以上に分節した鞭節が付いているので,長角亜目のものと分かります。 新訂原色昆虫大図鑑第3巻の双翅目の概説にこの目の成虫の形態の概要と,科の検索表があるので参照されたらいかがですか。
アノニモミイア 様
早速、触角を実体顕微鏡で観察しました。この個体の触角は、ご教示のように鞭節がついています。オドリバエ科とケバエ科の触角の説明は大変勉強になりました。 ご教示ありがとうございます。
昆虫の触角について,私が2種類の名称体系を混用したので誤解があるようです。
一つは,根元から第1(触角)節(1st antennal segment,1st segment,以下同様),第2(触角)節,第3(触角)節と順次番号を付ける名称。 もう一つは,根元から,柄節(scape:第1触角節に相当),梗節(pedicel:第2触角節に相当),鞭節(flagellum:第3触角節から先端まで)の形態学用語があります。なお,鞭節はそれ自体が一つの節と考えられ,それがほとんどの昆虫のように多数の小節に分節しています。鞭節が分節した一つ一つが鞭小節(flagellomere)です。 ですから,第3(触角)節は通常は第1鞭小節(1st flagellomere)に相当しますが,触角の形態進化上では基部にある複数の鞭小節が融合して単一の節に見える場合もあります。 オドリバエでは,第1(触角)節(柄節),第2(触角)節(梗節)の先に第3(触角)節(第1鞭小節)があり,その先に触角刺毛(antennal aristaまたは単にarista)または触角筆節(antennal style)と呼ばれる2小節から構成された構造があります。オドリバエの触角刺毛または触角筆節の基部の節を第2鞭小節,先の部分を第3鞭小節とみることができます。環縫類(ハナアブやさらに高等ないわゆるハエ類)では触角刺毛(これらの群では触角筆節の形状を取ることは稀)は3節から構成されています。 ケバエなどの長角亜目では,柄節,梗節のさきに多数の鞭小節に分節した鞭節が続きます。ガガンボやキノコバエなどのように鞭小節が細長くてそれぞれの境界が分かりやすいものと,今回のケバエやブユ,ニセケバエ,などのように鞭小節が大変短くて鞭節が全体として圧縮されたように見える群もあります。 一方,短角亜目の中でも,オドリバエや環縫類に含まれる多くの高等ハエ類のように鞭節が大型の第1鞭小節(第3触角節,第3節)とその先の触角刺毛に変形している場合はわかりやすいのですが,多くのアブ類のように数個の鞭小節が圧縮(さらに部分的融合)された触角筆節を形成しているものや,キアブ,クシツノアブのように,外観は長角亜目の触角とほとんど違わないように,多数の同形の鞭小節から構成されているものもあります。 ですから,オドリバエ科でもケバエ科でも梗節(第2触角節,または第2節)の先に鞭節が付いていることは同じですが,鞭節の構造が異なるということです。あなたが「鞭節がついています」と書き込まれたので,誤解がないように詳しく説明しました。更に詳しくは新訂原色昆虫大図鑑第3巻等の双翅目の概説を参照ください。
アノニモミイア 様
触角についての詳細な解説、ありがとうございます。大変勉強になりました。これからは、触角の観察を怠らないようにします。そのためにも、新訂原色昆虫図鑑第3巻を何とか入手したいと思います。 ご教示ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。 |
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