日本産Atherigona属の亜属の検索表 1.中胸背前半部でのacr刺毛は2-3列;2対の小楯板側剛毛のうち前方のものは後方のものの長さの    約1/3;♂前腿節背面は一様で亜端部にえぐれを欠き,先端近くに特別の繊細な毛を生じない;    ♂の小腮鬚は短く,先端は鬚刺毛角(vibrissal angle)よりかなり手前にしか達しない;♂は    上雄板突起(尾節突起)と三葉状突起を生じる・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona)   中胸背前半部でのacr刺毛は4-5列(後方で顕著);2対の小楯板側剛毛のうち前方のものは後方の    ものの長さの約1/2;♂前腿節背面は亜端部が弱くえぐられ,端部には繊細な毛を密生する(日    本産種に限る);♂小腮鬚は長く,鬚刺毛角にほぼ足する;♂は上雄板突起と三葉状突起を欠    く)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Acritochaeta)                日本産Atherigona亜属の種の雄の検索表                 (三枝の所持標本に基づく, 2009) 1.小腮鬚は黄色,その基部が狭い範囲で黒色になることもある・・・・・・・・・・・・・・・・2  小腮鬚は黒色,その先端部が狭い範囲で淡色のこともある・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2.前脛節は部分的に黒色;前額帯は黒色と黄色(または橙色)の二色か,前縁部を除いてほとんど全 面的に黒色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 脚は全面的に黄色;前額帯は全面的に黄色ないし橙色,単眼部に向かって徐々に淡褐色に暗化する こともある.雄交尾器の三葉状突起の側葉は大型で角が丸みを帯びたほぼ三角形,突起の柄に対 してほぼ水平,中央葉は亜基部から先端までほぼ幅が等しく,帯状(九州)・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) falcata 3. 前付節の第1付小節は通常の横臥した小刺毛で覆われるだけで,長くほぼ直立した細毛を生じない; 雄の前付節第3付小節は長く,円筒状;雄交尾器の三葉状突起の側葉はその内縁から突き出すよう な突起を生じないので,背方から見るとその内縁はほぼ一様に丸みを帯びる;前額帯は細い前縁部 を除いて全面的に黒色または黒色で前部1/3程度が淡化し,その境界は不鮮明・・・・・・・・4   前付節の第1付小節は全面を覆う通常の横臥した小刺毛に加えて,やや直立した細い長毛を前面及び 後面に粗生する(前面のものが顕著);雄の前付節第3付小節は短く,腹面が丸みを帯びて張り出 す;雄交尾器の三葉状突起の側葉は内面の亜基部に三角形の板状突起を生じ,背方から見るとそれ は側葉の内縁を越えて張り出している;前額帯は前半が黄色ないし橙色,後半部が暗褐色,両部の 境界はかなり明瞭.三葉状突起の中央葉は突起の軸に対してほぼ直立し,先端部は幅広くイチョウ の葉状に広がり,端縁の中央は弱い欠刻を刻む(本州(近畿,中国),九州,西表島)・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) reversura 4.前額帯は二色,上部(後部)2/3は黒色,下部(前部)1/3は黄色ないし橙色,両部の境界は明確で はない;上雄板突起(尾節突起,hypopygial process)は単純,先端の両側はわずかに膨出する のみで,突起状ではない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 前額帯はほとんど全面的に黒色ないし黒褐色,触角基部近くの前縁部が狭く褐色になることもあ る;上雄板突起は1対の横向きの短い三角形の側突起を生じ,これは先端がやや尖るか,あるいは 斜め側方を向く1対の長めの丸味を帯びた円筒型分岐を生じ,その先端は円く終わる・・・・・6 5.上雄板突起は左右にいぼ状に膨出するとともに中央部がわずかにいぼ状に張り出す;三葉状突起は    中央葉や側葉のごく基部は白色,中央葉は突起軸に対してやや寝ていて,細長く,先端はわずかに    拡大し,その幅は基部の幅の約2倍以内(西表島1♂,南風見田浜,990405)・・・・・・・・・    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) sp. 6)   上雄板突起は左右にかすかにいぼ状に突出するが,中央部は弱く窪み,突出しない;三葉状突起は全    面的に黒色,その中央葉は突起軸に対してほぼ直立し,先端はイチョウの葉状に拡大し,その幅は    基部の幅の数倍(福岡市1♂,四箇田四箇田小学校080519)・・・・・・・・・・・・・・・・・    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) sp. 7 6.上雄板突起(尾節突起,hypopygial process)は1対の横向きの短い三角形の側突起を生じ,これ    は先端がやや尖る;雄交尾器の三葉状突起の中央葉は黒色,側面から見ると強く円弧を描き,背面    からみると先はイチョウの葉状に拡大し,端縁は円弧を描くか中央が極めて弱く凹み,数本以上の    顕著な刺毛を生じる;三葉状突起の3葉の分岐部の下面は舌状の板を張り出す;三葉状突起の軸は    一様に細長く,針金状(本州(関東,近畿,中国),九州)・・・ Atherigona (Atherigona) sp. 1  上雄板突起は斜め側方を向く1対の長めの丸味を帯びた円筒型分岐を生じ,その先端は円く終わる;    雄交尾器の三葉状突起の中央葉は白色,側面から見ると緩やかに湾曲し,背面から見ると先は弱く    拡大し,端縁は裁断型ないしやや突出し,そこに生じる刺毛は短く目立たない;三葉状突起の3葉    の分岐部は板状に張り出さない;三葉状突起の柄は先半部は細く針金状,基半部で多少幅が広くな    る(本州(近畿,中国),九州・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) oryzae 7.前付節の第3,4付小節背面に直立した長毛を生じない;雄交尾器の三葉状突起の中央葉は側葉よ    り明らかに小型であり,楕円形で垂直の葉状ではない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8   前付節は第3‐4(5)付小節背面に直立した長毛を少数生じる.前腿節はごく狭い基部と先端部を    除いて広範囲に黒色;雄交尾器の三葉状突起の中央葉は特異,楕円形で大型,柄に対して垂直,概    形は側葉に似る.上雄板突起は短く,1対の横向きの三角形の突起を生じる(本州(近畿,中国),    九州)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) boninensis 8.後脛節は黄色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9   後脛節は全面的に黒色.上雄板突起は短く,1対のやや斜めを向く短く先端が丸みを帯びた突起を    出す;雄交尾器の三葉状突起の中央葉は先が広くイチョウの葉状に拡大し,側葉は背面から見る    とその内縁はほぼ平行になり,側面から見るとその腹縁は一様に湾曲し,3葉の分岐部は板状に    張り出さない(石垣島1♂)・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) sp. 4 9.上雄板突起は斜め側方を向く1対の側突起のみを生じ,これらの間に中央突起を欠く;前腿節は少    なくとも基半部と先端部が黄色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10  上雄板突起は1対の側突起の間に中央突起を生じる;前腿節は黄色の狭い基部と狭い端部を除いて    広範囲にわたって黒色.雄交尾器の三葉状突起の中央葉は先が広くイチョウの葉状に拡大し尖っ    た先端部から深く細い欠刻で抉られ,側葉はほぼ水平,三日月型(本州(近畿,中国),九州)    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) biseta 10.R1脈の先端部は明色,sc室は先端部も明色で暗化しない;第3腹節背板の1対の黒紋の内縁は    ほぼ直線状で弱く抉られない;雄交尾器の三葉状突起の側葉は一様に暗色,背面または側面から    みて中央よりやや基方で顕著に抉られない;三葉状突起の中央葉は側面から見ると一様に円弧を    描く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11  R1脈の先端部はやや暗色;sc室は先端部が弱く暗化する;第3腹節背板の1対の黒紋の内縁は弱    く抉られる;雄交尾器の三葉状突起の側葉は基部1/3ないし1/2が淡色化し,背面から見ると外    縁が,側面からみると腹縁が,それぞれ中央よりやや手前で弱く抉られる;三葉状突起の中央葉    は側面から見ると基半部がほぼ直線状で,亜端部で顕著に曲がる.三葉状突起の中央葉の端縁は    丸みを帯びるか直線状で中央部に欠刻を欠く(本州(中国),九州,西表島,石垣島)・・・・    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Atherigona (Atherigona) sp. 2 11.第1+2腹節背板は中央暗紋を欠くか,現われる場合は小型台形で,後側方に拡大しない;第3    腹節背板は中央暗紋を欠く;第4腹節背板は淡色で1対の黒紋を持つ;雄交尾器の三葉状突起    の中央葉はイチョウの葉状に大きく拡大し,その端縁は中央に判然とした欠刻を持つ;三葉状    突起の2側葉の内縁は背面から見ると相互に広く離れていく;側方から見ると側葉の背縁は中    央葉の先端に向かって背方に盛り上がる;三葉状突起の分岐部は板状に張り出さず,直線状な    いし極めて弱く抉られる(九州)・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) sp. 3   第1+2腹節背板は後側方に拡大する山形の大型の中央暗紋を持つ;第3腹節背板は明瞭な中央    暗紋を持つ;第4腹節背板は地色が暗色で1対の黒紋を持つ;三葉状突起の先の中央葉は小型    で先端部の端縁は欠刻を欠く;三葉状突起の2側葉の内縁は背面から見ると相互にほぼ平行に    なる;側方から見ると側葉の背縁は背方に盛り上がらず,突起の軸の延長線上にある(本州    (大阪茨木市郡山)1♂)・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Atherigona) sp. 5                日本産Acritochaeta亜属の種の雄の検索表 1.♂前付節の前腹面及び後腹面に直立した細毛を生じ,これらの長さは付節幅にほぼ等しい;♂前    腿節はほぼ全面的に黄色;♂小腮鬚は淡褐色(西表島,沖縄本島)・・・・・・・・・・・・・    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Atherigona (Acritochaeta) flavipalpis   ♂前付節は前腹,後腹面に直立した細毛を欠く;♂前腿節は亜端部が暗褐色;♂小腮鬚は暗褐色    (九州熊本,南西諸島,小笠原諸島)・・・・・・・・Atherigona (Acritochaeta) orientalis