双翅学会は数年間活動を休止しておりましたが、
この度、琵琶湖博物館の桝永氏、森林総合研究所の末吉氏と私で会務を引き継ぎ、当学会の活動を再開することとなりましたので、ご案内いたします。私は庶務を他の二人が編集を担当いたします。 会員の方々にはすでにご挨拶と新体制の紹介をお送りしています。会誌の発行や小集会の開催をはじめとした活動を着実に継続していきたいと思いますので、皆様のご協力をいただけますよう、よろしくお願いいたします。 学会の活動が再度軌道に乗って会誌などが発行され始めるまで新規の会員を募集するのも気が引けるのですが、ご入会いただける方、当学会の活動に興味をお持ちの方がありましたら中村までご連絡いただきたく存じます。 この掲示板は双翅目談話会の会員の方が多く利用されていることは重々存じておりまして、他の会の紹介を書き込むことを躊躇したのですが、管理人様のご了解を頂きましたので紹介させていただきました。 |
これはガガンボ(ガガンボ科とヒメガガンボ科)ではありません.一見体形がガガンボに類似していますが,これとは類縁性が遠いガガンボダマシ科(Trichoceridae)の1種です.翅後縁基部近くに湾曲した短いA1脈(伝統的A2脈)がはっきり写っていますが,これがこの属の重要な特徴です.
なお,このように翅に顕著に発達した斑紋を持つ種はT. maculipennis群に属するものです.詳細な種の同定には達磨大師のお出ましが必要でしょう.
アノニモミイア先生のご意見の通り、ガガンボダマシ科の一種で、翅の模様からTrichocera maculipennis Meigen,1818ウスモンガガンボダマシそのものと思います。この個体もご自宅で見つけたとのことでしたが、畑の周りや公園、庭、墓地などで見られるものです。
アノニモミイア様、達磨様、ありがとうございます。
科名にたがわず、すっかりだまされてしまいました。 ガガンボダマシが身近なところに生息していることが分かりました。 |
予定が狂って時間が余ったので,内職に新訂大図鑑のオドリバエをまとめてみたのですが,日本産昆虫総目録でClinocerinaeに入っていたAcanthoclinocera dasyscutellum Saigusa, 1965の所属がわかりません.
Clinocerinaeは,Brachystomaがタマオオドリバエ亜科として独立し,他はすべてオドリバエ亜科に移ったので,Acanthoclinocerもオドリバエ亜科と思われますが如何でしょうか? 色々と,お世話になっているのでオドリバエ科も盛り上げたいと思います;^_^) よろしくお願い致します.
市毛さん.ご苦労様です.新訂原色昆虫大図鑑第3巻担当部の各所にミスなどあるので,気づかれたらよろしくお願いします.
本種は, Sinclair, B. J. & Saigusa, T. (2005). Revision of Trichoclinocera dasyscutellum group from East Asia (Diptera: Empididae; Clinocerinae). Bonner zoologische Beitraege 53(2004), Heft 1/2: 193-209. の論文でAcanthoclinoceraをTrichoclinoceraのシノニムにしましたので,学名は現在は Trichoclinocera dasyscutellum (Saigusa, 1965) となります.
三枝豊平様.
いつの間にか,属が変更となっていたのですね. ありがとうございました.
市毛さんが「いつの間にか」との意味がわかりました.新訂原色昆虫大図鑑ではAcanthoclinocera属の種が出ていないばかりか,Trichoclinocera属の記述の中でもこの属について全く触れていなかったからですね.この点は一人合点していて,書き落としました.
三枝様,お言葉に甘えていくつか新訂大図鑑の疑問点を質問させて頂きます.
P.406左中で,「本種からイトウモセブトハシリバエ(2291)まではハシリバエ亜科Tachydromiinaeに属する」と記されており,Symballophthalmus speciosusフタイロオオメハシリバエ(2292)の所属が記されていません.また,P.409右中で, 「本種からヤマトモモブトヒメセダカバエ(2299)まではチョボグチセダカバエ亜科Ocydromiinaeに属する」と記されており,Euthyneura aerea(2300)と,Trichina fumipennis(2301)の所属が記されていません. P.412左中で, 「本種以降は狭義のオドリバエ科に属する」と記されているだけで,2304以降の種類については亜科が記されていません. 図鑑としては,亜科が記されていなくても差し障りは無いのですが,今後地方目録などの資料として新訂大図鑑を利用する場合,最近の亜科の状態を記しておかれたほうが良いと思われます. なお,World Catalog of Empididaeで調べると下記の様になりましたが,このように考えてよいのでしょうか? 2284-2292 Tachydromiinae ハシリバエ亜科 2293-2296 Hybotinae セダカバエ亜科 2297-2301 Ocydromiinae チョボグチセダカバエ亜科 2302 Brachystomatinae タマオバエ亜科 2303 Microphorinae ネジレオバエ亜科 2304 Oreogetoninae 2305,2307 Trichopezinae 2306 Brachystomatinae 2308-2315 Clinocerinae 2316-2317 Hemerodromiinae 2319-2346 Empidinae オドリバエ亜科 よろしくお願い致します.
市毛さん,いろいろご指摘ありがとうございました.
半年足らずの間に,アミカ科からヒラタアシバエ科まで,実際のところ論文を書くような,標本検討,解剖,原記載照合などの調査をした上で,原稿作成,写真撮影などを行なって,なんとか出版に間にあわせたのが,私の担当部分ですので,言い訳がましいのですが,やはり各所に遺漏がありますね.あげくの果てには,双翅目の総論やムシヒキアブ科,ハナアブ科ほかまで押し付けられて,往生しました.いつものことですが,この社の編集体制は・・・・・ さて, 「P.406左中で,「本種からイトウモセブトハシリバエ(2291)まではハシリバエ亜科Tachydromiinaeに属する」と記されており,Symballophthalmus speciosusフタイロオオメハシリバエ(2292)の所属が記されていません.」 とのご指摘はもっともで,イトウモモブトハシリバエ(2291)はフタイロオオメハシリバエ(2292)とすべきです. 「P.409右中で, 「本種からヤマトモモブトヒメセダカバエ(2299)まではチョボグチセダカバエ亜科Ocydromiinaeに属する」と記されており,Euthyneura aerea(2300)と,Trichina fumipennis(2301)の所属が記されていません.」 についても,2290までではなくて,2301までです. 「なお,World Catalog of Empididaeで調べると下記の様になりましたが,このように考えてよいのでしょうか? 2284-2292 Tachydromiinae ハシリバエ亜科 2293-2296 Hybotinae セダカバエ亜科 2297-2301 Ocydromiinae チョボグチセダカバエ亜科 2302 Brachystomatinae タマオバエ亜科 2303 Microphorinae ネジレオバエ亜科 2304 Oreogetoninae 2305,2307 Trichopezinae 2306 Brachystomatinae 2308-2315 Clinocerinae 2316-2317 Hemerodromiinae 2319-2346 Empidinae オドリバエ亜科 」 2318もHemerodromiinaeです.なおオドリバエ上科の系統発生的分類体系(phylogenetic systematics)は双翅目のなかでもどちらかといえば激動的です.Yang君のカタログはひとつの分類体系でしょうが,SinclairとCummingが「The morphology, higher-level phylogeny and classification of the Empidoidea (Diptera). Zootaxa 118 (2006)で示した体系は,以下に列記したように上記カタログとはかなり異なったものです.Incertae sedisは言うまでもなく「所属不詳」の意味です. Incertae sedis (Homalocnemis, Iteaphila gp., Oreogeton) Empididae Incertae sedis (Ragas gp., Brochella, Philetus, Hesperempis gp.) Hemerodromiinae Chelipodini, Hemerodromiini Empidinae Empidini, Hilarini Clinocerinae Atelestidae Nemedininae Atelestinae Hybotidae Incertae sedis (Stuckenbergomyia) Trichininae Ocydromiinae Oedaleinae Tachydromiinae Symballophthalimini, Tachydromiini, Drapetini Hybotinae Bicellariini, Hybotini Brachystomatidae Trichopezinae Ceratomerinae Brachystomatinae Dolichopodidae s. lat. Microphorinae Parathalassiinae Dolichopodidae s. str. 亜科は省略 Iteaphila gp.のIteaphilaやAnthepiscopusは邦産種がありますし,OreogetonもEmpidoideaの中で系統的位置が明確ではない,としています. RagasもHesperempisも邦産種があります. Bicellaria(とHoplocyrtoma)はOcydromiinaeではなくて,狭義のHybotinaeに含まれています. ThalassophorusはParathalassiinaeに含まれます.この亜科にはほかにMicrophorellaとその近縁未記載種が日本にいます.前者は微小なオドリバエでClinoceraと同様に渓流の湿石上で,後者は海岸砂浜で生息します. MicrophorinaeのMicrophorは数種日本にいます. OedaleinaeのOedaleaは数種邦産種があります. XanthodromiaについてはSinclairらは述べていません.これは私が作った属ですが,いわば鵺のようなわけの分からないものです.Brachystomaに近いのかもしれません.
三枝豊平様.
オドリバエ科は,カタログによって科の範囲が異なったりするので,リストにまとめるのが難しいと感じていましたが,このように細分する考えもあるのですね. たいへん詳しく解説して頂きありがとうございました.
No.5142のSinclairらの文献の引用に入力ミスがあったので訂正してあります.
細分ですが,系統発生関係を基にして分類すると,MicrophorやThalassophorusはアシナガバエ科に含まれることになります.しかし,やや概観も異なりますし,それに中室からのM脈が3本もでていて,とてもアシナガバエとはいえません.これを避けようとすれば,彼らがDolichopodidae, s. lat.としているのを分解して,Microphoridae, Parathalassiidae, Dolichopodidaeと三つの科を認めることになります.しかし,前2科は外観的にもきわめて類似しているので,違和感は拭い去れません.このあたりがいわゆる伝統的分類体系(側系統群を分類単位とすることを容認する)と系統発生的分類体系(いわゆる分岐分類体系,単系統群のみを分類単位とする)の齟齬が生じるゆえんです. 全般的に類似しているものは系統的にあまりはなれていないのなら一群としてまとめておいた方が参照する分類体系として[都合]がよい,とするか,全般的類似は時には無視しても系統的なまとまりのあるものだけを一群とすることで進化の道筋がわかる分類体系が[必要]である,とするかの違いでしょう. |
ハマベバエ(ハマベバエ科)に一票.
P.S. 比較しようと思ったのですが,標本が出てきません.
Sphaeroceridaeちゃいますか?
Sphaeroceridaeちゃいますか?
後脚の第1付節が細長いので、Sphaeroceridaeではないと思うのですが、どうでしょうか?
私はハマベバエにもう1票。
市毛さんの投票どおり間違いなくハマベバエです.ただし,Coelopa属には数種あり,しかもこれらの中にはsibling speciesを含んでいるので,日本産に用いられているC. frigidaはおそらく適当ではないのだろうと思いますが,詳細は未検討です.MPDでは東西の旧北区にそれぞれ別の種が2種分布していることになっています.C. frigidaは西旧北区の種とされています.
ハマベバエはKelp fliesといわれるように海岸に打ち上げられた湿った海草に依存しています.幼虫は腐敗しつつある海草を主な食餌にしています.成虫はこのような海草の上,中をあるいたり,近くの空中を飛翔しています.私もかつて利尻島の海岸に膝上ほどまで堆積した海草の浜の空中を無数の個体があたかもミツバチの分封のように群飛状で海岸沿いに空中を飛翔しているのを観察したことがあります.ものすごい数でした. 成虫は大変飛翔力が強く,海岸から遥か(何十キロも)離れた場所でも見かけます.特に有機溶剤に引かれて,海岸で船舶の塗装をするとその面に飛来付着する”害虫”となります.また,クロロフォルムにも強く誘引されます.海岸から数キロはなれた場所に駐車しておいた私の自動車のなかに数頭のハマベバエが進入していたことがあります.うっかりして車の中に入れておいたクロロフォルムの瓶の栓が緩んで車内にわずかの蒸気が出ていただけで誘引されて,窓もとざされていたこの車のどこからか車内に進入してきていました.
茨城_市毛様、エリユスリカ様、Acleris様、アノニモミイア様、調べていただいてどうもありがとうございます。
腐敗しつつある海藻と聞いて思い出しました。標本にしなかった海藻を洗面器に入れたまま庭に放置していたことを。 |
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