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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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我家のユスリカ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/10(Tue) 00:54:45 No.5193  引用 
軒に止まったユスリカです。雌ですよね。ユスリカの仲間は種類数が多いらしいのに、なかなか紹介されていませんね。この個体の正体はどこまで判りますでしょうか。
2009.3.9昼前 三重県津市


Re: 我家のユスリカ 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/10(Tue) 01:57:52 No.5196  引用 
まだテネラルな印象で十分着色していないのでしょうか.今頃オオユスリカがたくさん羽化します.あるいはこの種では.なお,あなたのTrichoceraに関する投稿について,同定の困難さに関してNo.5174に書き込んでいますが,読まれましたか?

Re: 我家のユスリカ 投稿者:エリユスリカ 投稿日:2009/03/10(Tue) 08:57:12 No.5199  引用 
体の大きさはどのくらいなのでしょうか?三枝先生の井おっしる通り、今頃からオオユスリカが沢山出てきます。特に冬期から初春期にかけて発生するオオユスリカは体色が強く黒化しています。5月頃には斑紋の明瞭な淡色のものが多数発生致します。写真はテネラルなので種までははっきりしません。が、前脚の脛節と第1跗節の割合から、ユスリカ属Chironomusであることは間違いないでしょう。腹部に節を横切る細いバンドが見られることから、セスジユスリカの可能性が高いようです。
オオユスリカには沢山の同胞種がいて、形態での識別はとても困難になってきています。日本のオオユスリカもヨーロッパのものとは種が異なるのではと指摘されています。事実、諏訪湖の個体群に対して幼虫の染色体、DNA解析からヨーロッパのものから異なるとの判断から、Chironomus suwaiと言う名前が、つい最近与えられました。とりあえず私はこれに対してスワオオユスリカという和名を与えています。これは、従来のC. plumosusと区別するために与えたものです。C. suwaiはあくまでも諏訪湖周辺部の個体群に対して命名されたもので、九州、北海道と同一種であるとの確証は無いためです。この事は、C. suwaiの命名者にも了解済みです。
なお、写真は雌個体のようです。特徴のはっきりしたものを除き、雌のみで種を同定することは、ユスリカでは、特に日本では、まだまだ困難な情況にあります。

Re: 我家のユスリカ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/10(Tue) 23:45:32 No.5203  引用 
三枝豊平様、エリユスリカ様ありがとうございます。
体長は5ミリは超えるが10ミリには遠いというような感じで見ておりました。ユスリカの写真撮影は初めてでしたので、こんなに彩りが鮮やかなものとは知りませんでした。テネラルの個体たちに共通した彩りなのでしょうか。ユスリカというと集団での活動を思い浮かべますが、この時期の彼らは個体数が少ないのですね。周りには他の個体の姿が見られませんでした。また、腹部に毛が生えていたのにも驚きでした。ユスリカには普通のことなのでしょうか。
「第1跗節」は文字化けしているのでしょうか。
今度ユスリカを見つけたら、雄の個体を撮るように心がけたいと思います。
三枝豊平様、No.5174の書き込みはもちろん読ませていただいております。共感していただいた部分があると知っただけでも恐縮しております。底なしの深井戸を覗かせていただいたような気持ちです。奥が深すぎて私ごときには返す言葉もありません。

Re: 我家のユスリカ 投稿者:エリユスリカ 投稿日:2009/03/11(Wed) 11:43:50 No.5213  引用 
体長が10ミリを超えないのなら、セスジユスリカにほぼ間違いないでしょう。セスジユスリカの幼虫は家の周囲のやや流れのある溝や、水田脇の水路などに生息しています。このセスジユスリカに外見のそっくりなヒシモンユスリカというユスリカも沢山います。私もユスリカを見始めた頃は両種の違いが全然判りませんでした。セスジユスリカと異なる幼虫を採ってきて飼育したはずなのに、羽化してきた成虫は皆セスジユスリカなのは何故だと随分悩んだ事があります。今は、雄の生殖器、斑紋のパターンで識別は出来ますが。この両種の幼虫はうまく棲み分けています。セスジユスリカは流水中に、ヒシモンユスリカは止水中に生息します。例えば、5月頃この両種は水田などで沢山出現しますが、水田脇の側溝にはセスジユスリカが水田内にはヒシモンユスリカがすんでいます。また、ミクロネシア、小笠原にはヒシモンユスリカにそっくりなミナミヒシモンユスリカ(Chironomus samoensis Edwards)と言う種が分布しています。沖縄や八重山にいる種がヒシモンユスリカなのかミナミヒシモンユスリカなのかはまだ結論が出ていません。私は後者だと思うのですが。これについてはオーストラリアの研究者が今、染色体、DNAで解析を行っているところです。彼には、本土産のヒシモンユスリカを飼育して、全ステージのサンプルを送ってあります。結論を楽しみにしているところです。
ユスリカに興味を持って頂ける方が、一人でも増えて下さるのはとても嬉しいことです。先の文章で文字化けしたもの:前脚のケイ節とフ節の割合、です。

フンバエsp. 不安の同定 投稿者:バグリッチ 投稿日:2009/03/08(Sun) 22:19:01 No.5180  引用 
こんにちは。

 市毛さんに刺激されて手元のフンバエを見直してみました。
 これまで未同定の中に、Parallelommaと思われる種、Cordyluraと思われる種のほかに、4.5mm程度の小型のScathophagaらしき種がありましたが、これまで知っているScathophaga属の種とは印象がかなり異なるので 属の同定に自信がありません。

 外観からわかる同定のヒントがあればご教示お願いいたします。

 なお、画像からわかりにくいおもな特徴としては、Palpusには強い剛毛はなく、中胸下側板の剛毛は上部に1本、胸側には長い剛毛は多数あります。
 
 画像ではかなり無理があると思いますが、わかる範囲でお願いいたします。


Re: フンバエsp. 不安の同定 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/10(Tue) 07:57:12 No.5198  引用 
私はこれに相当する種や近似種の標本を持っていません.特に頬(顴)がよく発達している点は特徴的だと思います.しかし,写真では属を特定する形質が十分に現れていないし,本科でも属の差異が微妙な形質に基づいていますので,私には所属の見当がつけかねます.

Re: フンバエsp. 不安の同定 投稿者:バグリッチ 投稿日:2009/03/10(Tue) 21:23:28 No.5202  引用 
三枝先生

 ご教示ありがとうございます。
 
 もしかして似た標本をお持ちなら・・・と思いましたが、やはり画像だけでは無茶ですね。

 今後も注意して追加個体を見つけてみます。
 文献にも注意して検討してみます。

 引き続き ご教示の程 よろしくお願い申し上げます。

双翅目談話会 第14回総会の御案... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/09(Mon) 13:09:29 No.5190 ホームページ  引用 
日時:2009年 4月 4日(土)午前10時より
  
10:00〜 同定会
12:00〜 昼食・休憩
  なるべく弁当を御持参下さい.
  (近所にコンビニ・ほかほか弁当があります.)
13:00〜 事務報告・会計報告
13:30〜 講演
14:15〜 ミニ講演
15:00〜 休憩・写真撮影
15:30〜 一人一話

<懇親会を午後6時半頃から予定しています(居酒屋 ニュー汐屋)>

◆場所:大阪市立自然史博物館 実習室

博物館へは職員通用門より入館してください.

Re: 双翅目談話会 第14回総会の... 投稿者: 投稿日:2009/03/09(Mon) 18:56:16 No.5191  引用 
市毛様、総会の案内ありがとうございます。

なお、遠方から来られて前日および当日に宿泊を予定している方のために、主要なメンバーが宿泊する予定のホテルをお知らせしておきます。

ホテル名:スーパーホテル梅田・肥後橋
電話番号:06-6448-9000
宿泊費:無料朝食付きで1泊6,090円(税込)

写真で双翅類はどこまで同定でき... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/06(Fri) 14:12:44 No.5171  引用 
この掲示板(一寸のハエにも五分の大和魂)では,双翅目の主に生態写真に基づく同定の依頼が多く寄せられています.このような同定については,これまで幾度か同定する側からの問題点が寄せられています.今回も田中川さんからTrichoceraが翅脈だけで同定可能かどうかの問い合わせが行なわれています.アーチャーンさんからは被写体を殺さずに(標本にしないで)おきたいという意向も示されています.

この問題について添付書類に私の見解を示してありますので参照ください.


添付:5171.txt (8KB)

Re: 写真で双翅類はどこまで同定... 投稿者:アーチャーン 投稿日:2009/03/07(Sat) 13:39:30 No.5175 ホームページ  引用 
三枝豊平様:

 三枝先生には何度も御世話になって居りますし、また、私の名も出ていますので、一筆書かざろうを得ません。
 
 先生が双翅目の普及の為、非常に努力されておられるのは、私の様な素人にとって大変有難いことだと常々思っております。特に標本の写真をその時々に応じて出して下さることなど、大変な労力を取られていることが察せられ、痛み入ります。それ故、先生がこの様なことを書かれるのも至極当然かと愚察致します。
 
 しかし、このサイトが専門家かそれに近い埼玉県昆虫誌くらいの文献は最低持っている虫屋だけを相手とするのではなく、一般人にも公開していると言うことは、必然的に昆虫に付いての基礎知識を全く欠いた人が投稿すること、例えば、ボヤボヤのハエの写真や、時にはハチの写真を出して「何バエでしょうか?」と言う類の投稿があるのを覚悟しなければならないと思います。
 
 私自身は、此方で見た頂いた結果をWeblogに載せることで、専門家と全くの素人との間の中継ぎになるのではないかと思って居ります(私のWeblogを見て虫嫌いが虫好きになった例がかなりあります)。小型の双翅目の場合、普通の人が見る生きた状態(生態写真)と翅を背側に揃え横向きに台紙や微針にマウントした標本とでは、余りに姿が違って見えます。双翅目に慣れた人以外は、図鑑に載っている横向きの図から、生きているときの姿を想像することは殆ど不可能であろうと思われます。生きたままの写真を示すことで、漸く普通の人でも比較が出来、また、虫に対しての親しみを感じる様になるのではないでしょうか。失礼ながら、先生の仰られる昆虫を殺さないで麻痺させる方法では自然状態での姿は撮れず、より正確な同定は出来ても、一般人への双翅目の普及には余り役に立たないのではないかと存じます。
 
 虫の生態写真を精緻に撮るのは決して容易ではありません。私の写真は、生態写真としては比較的精緻で写真としても良く調整された方に属すと思っておりますが、私は大学時代は写真部と虫研の両方に所属しており、その頃から虫の写真を撮っておりました(以前も書きましたが、北大虫研の機関誌「蝦夷白蝶」第1巻の冒頭にある交尾中の蝦夷白蝶の写真は私が撮ったものです)。ストロボはかなり以前よりTTLになっていますし、最近はデジタルカメラなので、接写に伴う露出倍数やストロボとの距離などを計算する必要もなく、直ぐに結果を見ることが出来非常に楽になりましたが、それでも精緻な写真を撮ることが容易でないのは、此処に投稿されてくる方々の写真を見ればお分かりかと存じます。
 
 精緻且つ調子も調整された写真を得る為に、私がどの様なことをしているかを書くのも、何かの参考になるかと思いますので、一寸書いておきます。微小な虫を精緻に撮るには、ハンマー氏の様に、コンパクトカメラにクローズアップレンズを付ける方法が被写界深度(焦点の合う範囲)が深くて一番良い様ですが、私は仕事で使うカメラを流用しているので、一眼レフに100mmのマクロレンズを付けて撮って居ります。
 レンズの焦点距離が100mmなので、被写体(虫)からかなりの距離を取ることが出来、逃げられる機会は少なくなりますが、その反面、被写界深度が浅くなります。絞り(F値:焦点比)を大きくすれば深度は深くなりますが、回折により解像度は低下します。この辺りのバランスが難しいところです。小さな虫を等倍且つ高解像度で取る必要があるときは、普通F16(このカメラでは撮影時のレンズ中心からの比率なので、等倍接写の場合、レンズ自体の焦点距離に対する比率は半分のF8)に設定しますが、この時の深度は0.5mm位ではないでしょうか。この0.5mmの範囲に虫の手前側を入れなくてはいけないのです。人が立ったままの姿勢の場合、自分では気が付きませんが、頭は数mmの範囲でフラフラしています。そのフラフラしている間の焦点が合う一瞬を狙ってシャッターを切る訳です。合ってからでは遅いので、次の瞬間に合う、と思った時に切ることになります。射撃と同じです。この立った儘の姿勢の場合、F16の「命中率」は10%以下になります(現実的でないので、立った儘の場合は普通F20以上に設定します)。膝をついたり、しゃがんだ姿勢の場合は20〜30%になりますが、何れにせよ、一方向のみでも安全を見込んでかなりの枚数を撮る事になります。私は可能であれば最低限、背面、側面、正面、斜め前の4方向から撮ることにしていますので、虫1頭を高精度(F16)で撮ろうとすると、全部で30〜50枚撮ることになります。先日先生に同定していただいたチビクチナガハリバエの1種Siphona paludosaの場合は、深度もずっと浅く、また、焦点合わせの難しい2倍の超接写システムを使いましたので、全部で200枚以上撮ったと思います。
 撮った写真のデータは全てraw形式で保存しています。接写の場合、カメラが妙な判断をしてとんでも無い色調にしてしまうことが屡々あり、jpgにすると色の調整が不可能になってしまうからです。rawで撮った写真はサイズが大きいので、表示にも時間がかかりますし、jpgその他の形式に変換する現像処理をしなければなりません。
 撮った後は、先ず、沢山の写真の中から使える写真を選び出します。全てピクセル等倍に拡大し、精緻度、深度を比較しながら不要な写真を削除して行きます。精度が同程度の写真が複数枚あるときは、選択にかなり時間がかかることもあります(優劣の付かない写真は全て残しておき、後の段階で1枚を選びます)。この時、虫全体の写真としては使えなくても、翅脈がハッキリ写っていたり、同定に必要と思われる剛毛が良く写っているコマは残しておきます。この取捨選択は、写真の枚数が多い場合、かなり疲れる作業です。
 次にraw形式の写真を現像してjpg形式に変換します(TIFFの方が劣化がないので良いのですが、大き過ぎるのでjpgにしています)。色温度、コントラスト、アンシャープの度合い等(それぞれに複数の設定項目があります)を個々の写真に合わせて設定し現像します。この時、出来る限り色調その他を統一しておく必要があります。複数種のカメラを使っていますので、現像には汎用のSilkypixを使っていますが、このソフトウェアは複数の写真を大きく表示出来ないので、調子の比較が出来ません。人間の眼は随分いい加減で、見るときによって随分調子が違って見えます。そこで次に、Nikon Scanと言うニコンのフィルム・スキャナー附属のソフトウェア(これがメモリーも食わず、操作性も非常に良い)に、標準として定めている写真と新たに撮った虫の写真を同時に表示させ、主にトーンカーブ補正を使って調子を揃えると共に、同じ様な写真の取捨選択を行います。
 このNikon Scanには、調子を整える機能しかありませんので、掲載に必要なトリミング機能は付いていません。そこで、最後にカメラ附属の「Adobe Photoshop Elements 2」を使って、必要な部分を切り出し、最終的な仕上げ(部分を切り出すとまた調子が少し違って見えます)をして、Web用の高圧縮jpgファイルに落とします。これで終わりとなります。
 写真の枚数が少ない場合(仕上げが1枚)は大したことはありませんが、枚数が多いと、これはかなりの労力を要す作業となります。私のハードディスクの中には、一昨年や昨年撮って未だに選択すらしていない写真がかなり残っています。丁度、採集はしても、三角紙の中に標本にしていない虫が残っているのと同じです。
 
 この様な作業の他に、更に虫を採集して標本にするとなると、これは、もう職業的な昆虫写真家でないと、時間的にも出来ないことだと思います。
 
 ・・・と言う訳で、私としましては、今後はより解像度が高く、同時に検索に必要な部分が良く見える写真を撮るべく一層の努力致したいと思っております。私も大学1年までは採集をして居りましたから、特徴の少ない双翅目昆虫の場合、ゲニタリアを見ないで種を判別できるとは始めから思っておりません。属まで落ちれば、万々歳です。
 
 また、問い合わせをするときには、せめて科まで落としておくのが、訊ねる側の然るべき態度だと思います(落ちない場合もありますが・・・涙!!)。幾ら写真が精緻でも、自分で何も調べずいきなり「何でしょうか?」と訊ねるのは、全くの素人は仕方ありませんが、多少は虫に関係している者のすることではないと思います。

 以上、甚だ僭越不遜かも知れませんが、私の思うところを述べさせて頂きました。先生におかれては御不満かと存じますが、今後とも何卒御見捨てなく御指導下さる様、切に御願い申し上げます。

Re: 写真で双翅類はどこまで同定... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/07(Sat) 14:08:26 No.5176  引用 
アーチャーンさんの写真が精緻なことはいつも感心していましたが,このような努力の賜物であると初めて知ることができました.撮影や画像の処理の方法など全く私の及ぶところではありません.このような方法があるのか,と感心しています.

また,投稿される方が,名前を知りたい,と言う意向が,必ずしも分類学的に種まで,ということではないとは常々思ってはいますが,こちらではつい種までと,みずからの努力目標にしてしまうところです.このあたりの認識の違いがでるのかもしれません.

私は従来のカメラを用いていた時代には,かなり精緻な写真が撮影できたのですが,デジタルになってからは,次々と新しい機種が出てきて,いったい何を使ったらよいか,途方にくれます.時々良い写真を撮影している方に撮影機材などをお聞きして,それを購入して使うこともありますが,なかなか使いこなす域に達しません.

そのようなわけで,ピクセル数のいたってすくないCOOLPIX 990をほとんど愛用しています.これに顕微鏡の接眼レンズを逆付けするとか,少しは工夫をしているのですが,どうしても解像度にはおのずと限界もありますし,また球面収差や色収差が出てしまいます.新訂原色昆虫大図鑑に使った写真もほとんどすべてこのカメラで撮影したものです.
もちろんこれらは標本写真ですから,あなたのように生態写真を撮影する場合はさらに困難な問題があることは理解しています.

双翅類の名前がわかる側としては,掲載された写真について,わかる範囲で答えておくということにしておくのがでいいのかと思っています.

ご意見の:
[失礼ながら、先生の仰られる昆虫を殺さないで麻痺させる方法では自然状態での姿は撮れず、より正確な同定は出来ても、一般人への双翅目の普及には余り役に立たないのではないかと存じます。],

と言う点については,あなたの志しておられる自然状態の生態写真についてあれこれ言っているわけではありません.被写体のより詳細な同定を希望されるのであれば,自然状態の写真を撮影した後に,その個体を採集して麻酔状態で識別形質が分かるような写真を,同定のために撮影したらいかがだろうか,という意味です.撮影後に麻酔が醒めたらば,また野外に放してやることで,被写体を殺さずにすむからです.しかし,この場合でも麻酔の度合いを深くしすぎたり,また冷媒が体につくなどをすると,毒殺または凍殺(こんな言葉はないですね)してしまうことになります.この場合に,私が紹介している吸虫管を使うと便利です.

Re: 写真で双翅類はどこまで同定... 投稿者:アーチャーン 投稿日:2009/03/08(Sun) 17:32:46 No.5178 ホームページ  引用 
三枝豊平様:

 先生が特にお怒りではない様なので、胸を撫で下ろしております。
 後半の麻痺させる方法についてのお話は了解致しました。

 今後も宜しく御指導賜るよう御願い申し上げます。

Re: 写真で双翅類はどこまで同定... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/08(Sun) 20:36:57 No.5179 ホームページ  引用 
三枝様,アーチャーン様.

私は,昆虫写真が高じてこの道に迷い込みました;^_^)

周りにプロやセミプロクラスの方が多かったので,人とは違った地味な昆虫を撮影するようになったのですが,普通の図鑑では種類が判りません.
しかし,リバーサル時代ですのでフィルムだけでも毎月何万円という金額が掛かっており,出来の良い写真の虫の名前をどうしても知りたいと思いました.

そこで,当時世田谷の東京農大前にあったTTS昆虫図書などで色々な本を片っ端から購入すると共に,出来る限り撮影した昆虫を採集して標本にするようになりました.

結局,写真のほうは才能が無いとあきらめましたが,採集だけは続いております.

この生態写真を撮影した後に採集するというスタイルは,現在でもいくつかのグループで行われているようで,番号分けした容器で持ち帰るようです.

なお,昆虫写真のパイオニアだった佐々木昆氏は,微小昆虫を撮影する際に軽い麻酔をかけて動きを鈍くすることもあったと思います.(当時,写真集団の飲み会で麻酔は邪道かとかいう論議で盛り上がったような覚えがあります)

Re: 写真で双翅類はどこまで同定... 投稿者:アーチャーン 投稿日:2009/03/09(Mon) 11:58:08 No.5185 ホームページ  引用 
茨城_市毛様:

 写真の方が先であったとは存じ上げませんでした。人様々であることを今更の如く実感致しました。

 私は高校〜浪人時代に5,000以上ものヒメバチを採集し、標本にもしたのですが(ハチ用展翅点足板と言うものを考案してそれを使って標本を作っていました)、北大に都落ちしている間に全てカツオブシムシに食べられてしまったので、無駄に虫を殺してしまったと言う慚愧の念が強く、以降は虫を殺すのに抵抗を感じる様になりました。

 写真の方は、田中光常氏の動物写真や佐々木昆氏のマクロ撮影(当時唯一オートベローズを使えたミノルタSR7を使われていたと記憶しています。ミラーが大きくミラー切れが生じ難い代わりに後退ミラーの為故障が多かったと聞いています)に興味をそそられていました。しかし、田淵行男氏の「アシナガバチ」を見て、やはり昆虫の写真を撮るならばlife cycle全体を撮らなければ無意味に近いと思い、それ以降虫の写真は余り撮らなくなりました。しかし、この時期に写真に関する光学理論や現像理論等を随分勉強しましたので、これがその後非常に役に立っています。
 大学の研究室に入ってからは、膨大な各種顕微鏡写真その他(合計フィルム約1000本)を毎日の様に撮っており、殆ど写真屋みたいなものでした。とても趣味で写真を撮る気になる様な状況ではなく、暫く趣味の写真は全く撮りませんでした(結婚式の写真撮影等は屡々頼まれましたが・・・)。
 (中略)
 虫の写真を再度撮り始めたのは、フィルム代のかからないデジタルカメラになってからです。ただ虫の写真を撮っただけでは昆虫写真家としては殆ど無意味に近いとは今でも思っていますが、私は写真家でありませんし、Internetの普及に伴って、ただの虫の写真でも図鑑的な意味合いが出て来たので、最近はまた虫の写真を撮っている様な訳です。

 ハンマーさんも写真ばかりでなく採集もされている様ですし、過去ログを見ると、バグリッチさんも初めは写真だけだった様な感があります。「同定」という言葉の本来の意味に準じる同定をするには、標本を作る、或いは、三枝先生が仰る様な麻痺させてゲニタリアを含む必要部分をシッカリ撮る必要があることは重々承知しておりますが、時間的な問題もあり、実現は中々難しいところです。

Re: 写真で双翅類はどこまで同定... 投稿者:pieris 投稿日:2009/03/09(Mon) 12:59:27 No.5189  引用 
皆様こんにちは

私は若い時は昆虫採集、今は昆虫写真のほうを楽しんでおりますが、ハエの分類に関するまったくの知識不足から、少し前までは、アーチャーンさんと似たともいえる考えを抱いておりました。そして私のBBSでしたが、ハエ研究の世界は門外漢に非常に不親切で、素人には写真では同定不可とにべもない門前払いを食らわせる敷居が非常に高い閉鎖空間である。このままの状態では周囲からの善意の知識や情報提供は期待できなく、外部との交流のなさは次世代の人的資産の育成を阻み、結果的にジリ貧に陥ってゆくであろうという大変な暴言(大恥だ)を吐いた者です。

私も自分で撮影した昆虫は名前がわかったほうが楽しいし、また、撮影した写真が昆虫学に対して何らかのプラス要素になれば、あるいは一般人が自然に対して興味を持つきっかけにでもなればすばらしいと考えています。
しかし、大型の比較的同定の簡単なグループの昆虫あるいはその分類研究分野にいらっしゃる研究者に対するのと似た目線でしばしばハエ界を見ていたものですから、ハエは生態写真で科あるいは属レベルぐらいまでは簡単に同定できると誤解することもしばしば。ひいては研究者の知識不足や研究不足や怠慢ではないかとのうがった見方もしたりしていました。
しかしそのときに三枝先生から、日本あるいは世界のハエ研究の実情と現状ならびに研究対象となるハエ目の膨大さや同定の困難さなどを詳しく説明していただき、目からうろこが落ちたように感じ入りました。
このハエのBBS運用に関しての研究者側からの説明あるいは考えは上の三枝先生の説明でもよくわかります。
あとはこのBBSに接するにあたっての生態写真撮影者側の考え方がどのようなものかが重要なポイントであろうと思います。これはまったくに個人個人で異なるもので、どうあるべきかなどひとつにくくれるものではないだろうと思います。投稿者の考え方つまり要求が多岐にわたるわけです。ただ、よそ様の座敷にあがるのですから最低限のマナーは必要ですね。

こんな考えをしてる人物も中にはいるんだという情報提供のために私の考えを述べておきましょうね。
私はいわゆる『やらせ写真』は好みません。あくまでも自然状態での生態写真にこだわっています。撮れなければそれで結構。そこにこだわるからこそ私自身チャレンジの目標もできまたそのための作戦や面白い取り組みもできるわけです。これはまったくの自己満足の世界であって、他の方に決して強制するものではありません。
子供向けのカブトムシ・クワガタの図鑑の定番に、クヌギの樹幹に昼間堂々ととまっているオオクワガタの写真が出たりしますが、本当は夜行性のオオクワガタは昼間はよほどのことがない限り木のウロからは出ません。カミキリムシのある生態図鑑にシイの樹幹に昼間とまっているベーツヒラタカミキリが掲載されていますがこれもまたしかりです。撮影の困難な種に対してはごく軽い麻酔をして撮影、あるいはスタジオに持ち込んでの撮影、または飼育してからの撮影も方法としてはありますが、わたしはやりません。私にとっては現在必要がないからです。でも、一般人向けにはこの手の作られた写真は昆虫の生息環境を理解させるにはもってこいの写真だとも思います。私が自分に課している写真の撮り方ではないのでそうしてまでは生態写真モドキは撮りたく思っていないだけです。もし将来、子供たちなどに説明するために必要な機会が増えてきたら着手するかもしれません。
今現在どうしても写せない写真のひとつはクロコノマチョウの翅の表なんです。標本写真を写せば表を撮影するのは簡単なのですが自然状態ではこのチョウはとまった時は必ず翅を閉じます。羽化のときなどに瞬間的に表が見えるかもしれないと、万一の機会をいまだに窺っています。
昆虫は生きているときと標本にしたときはまったく違って見える種が多いです。生きているときはどのように翅をたたんでいるか、生きているときの複眼の色は何色か、擬態の姿勢など、標本からは窺い知れない多くの情報が生きている写真から得られます。これも昆虫を研究するに当たっての重要な分野だと私は思います。そのためにはいろんな方法を駆使しての生体写真(生態写真ではない)も必要なのだとは思います。ただ前述のとおり私には必要がないから撮らないだけなのです。もし私に時間がたっぷり、機材も資金もたっぷりでしたら取り組むかもしれません。

アーチャーンさんがおっしゃった「失礼ながら、先生の仰られる昆虫を殺さないで麻痺させる方法では自然状態での姿は撮れず、より正確な同定は出来ても、一般人への双翅目の普及には余り役に立たないのではないかと存じます。」というくだりに関しましては、事実誤認ではないかと思います。標本やより正確で詳しい写真ならびにその同定やデータなどは分類学や形態学など多くの学術分野の発展に寄与するものであり、その基礎的情報の集積や分析結果が一般人に知識としてフィードバックされ、一般人への問題提起や一般人の興味を奮い立たせたりあるいは疑問解決に役立つのだと思います。そういったシステムが文化だと考えます。

私自身はこれからも野外でハエ目の写真は機会あるごとに撮影していこうと思っております。これだけ学術が高度になりまた研究分野が広く深くなっていくと人の一生でやれる作業時間には収まらずに分業の世界になってゆかざるをえないと思いますから、とりあえずは撮影した写真を自分でストックだけはしておこうという魂胆です。将来なにか活用できる場があればそのときにホコリを振るいながら取り出そうと考えています。

で、このBBSに対しては私はどのように接していくかですが、後ろ向きではありますが、BBSは時々訪れて、種々の書き込みを読ませていただき、我が貧相な頭に少しでも活を入れておきたいです。

きっとガガンボダマシ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/04(Wed) 21:11:54 No.5161  引用 
翅後縁基部近くに湾曲した短いA1脈が見て取れる。間違いなく、ガガンボダマシでしょう。(分かるようになってきたぞ)
もう一種、我家で見つけました。窓ガラスと網戸の間にいました。斑紋はありません。体長は約7ミリ。画像一括閲覧ページのニッポンガガンボダマシの翅脈と合致しましたが、ガガンボダマシ科は翅脈だけで同定できるものでしょうか。
ニッポンガガンボダマシの生息状況など、さっぱり情報が見つかりません。


Re: きっとガガンボダマシ 投稿者: 投稿日:2009/03/04(Wed) 23:09:32 No.5162 ホームページ  引用 
触角が短くニッポンガガンボダマシTrichocera japonica Matsumuraである様にも見えますが、ガガンボダマシを写真から同定することは困難です。T. japonicaは北海道から九州まで分布していてこれも市街地でよく見られる種です。

Trichocera japonicaがニッポンガガンボダマシでT. nipponensisがヤマトガガンボダマシというのは紛らわしいですね。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/05(Thu) 00:46:11 No.5165  引用 
達磨様、ニッポンガガンボダマシに関する情報ありがとうございます。
ニッポンガガンボダマシの同定ポイントはどこにあるんでしょうか。
ガガンボダマシ科では翅脈に相違が見られない複数の種が存在するということでしょうか。
種の検索表はないんでしょうか。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/05(Thu) 12:02:28 No.5166 ホームページ  引用 
田中川様.

門外漢ですが,過去ログ等を見ると翅脈である程度のグループに絞った後,交尾器などで区別できるようです.なお,通常の写真での区別は一部の特徴的な種類を除いて困難なようです.

過去ログにニッポンガガンボダマシを含め色々なガガンボダマシの検討結果がありますので,参考にしてください.

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者: 投稿日:2009/03/06(Fri) 20:06:43 No.5172 ホームページ  引用 
田中川様
ガガンボダマシの翅脈はどれも大同小異で写真に写った翅脈から区別できるものは大変限られます。
翅の特徴だけから種が特定できる(ことがある)種は
ウスモンガガンボダマシの仲間(翅に模様がある)
コンゴウガガンボダマシ(翅の膜に毛が生えている、これは世界的に見ても本種だけの特徴)
チビガガンボダマシ(M1+2脈が枝分かれしない、恐らくタイプ標本以外には採集されていないもので、何かの種の翅脈の異常かもしれない、タイプ標本は行方不明)
イマニシガガンボダマシ(雄雌ともに翅が退化する)
くらいです。

もちろん、翅以外の外見的な特徴から種が特定できるものもいくつかありますが、ガガンボダマシの同定にはどうしても雄の交尾器を見なくてはなりません。それも生体や乾燥標本の写真ではなく、詳細が観察できるようにアルカリ処理を施したうえでの観察が欠かせません。
ガガンボダマシの交尾器は雄雌ともに構造が単純な種が多く、拾える特徴も少ない厄介な虫なのです。

ニッポンガガンボダマシは中でも厄介な問題を抱えた虫で、原記載文(原文日本語)は
”体は褐、胸背は暗黄、翅は半透明、少しく暗黄を帯ぶ、脈は暗黄、平均棍は黄白、その先端は暗黄、腹部は扁く、尾端の付属物は褐色、脚は暗黄、付節は少しく暗色を帯ぶ、体長一分五厘、此は頗る細き触角を有するを以て他と区別すること容易なり”
という簡単なものです。これはニッポンガガンボダマシという種の特徴というより、ガガンボダマシ属に広く共通する特徴を述べているにすぎません。触角は細くて他と区別が簡単とありますが、この「他」は他のガガンボダマシのことではなくガガンボ一般のことを言っています。記載がこのようにあいまいなうえ、タイプ標本が行方不明で、現在は「タイプを見た」という人の記述や北海道大学に残されたガガンボダマシの標本からT. japonicaという種を推定しているという何とも頼りない状態です。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/07(Sat) 00:19:47 No.5173  引用 
茨城_市毛様、達磨様、いろいろ教えていただきありがとうございます。
実は私はしばらく愕然としておりました。
こちらにある画像と比較して翅脈が完全に一致していたのでニッポンガガンボダマシに間違いないと信じ込んでいました。投稿したのは念押しのつもりと身近なところでも見られたよとの情報提供の意図もあったのです。
ニッポンガガンボダマシはとにかく翅脈の一致を見たので同定できたけど(思い込みでしたけど)、他のガガンボダマシ科もきっと翅脈がみんな異なるものだろうと勝手に思い込み、こちらの目録にある14種くらいの検索表なら、どこかにきっとあるに違いない、研究者たちはなぜ隠そうとしているのかと疑心暗鬼に陥っていました。
今日も図書館や博物館を回って調べていたのですが、新訂の第3巻はどこにもなく、古い第3巻に5種のガガンボダマシを見つけ、平凡社の日本動物大百科に「冬に現れるガガンボダマシ科」の記述があるのを見つけただけでした。
ネット上もガガンボダマシの関係はほとんど見つかりませんでした。
ガガンボダマシの季節がやってきたのに、公開されている情報があまりにも少なすぎます。
種の違いなど、少しでも分かりやすく公にしていただけないと、いつまでもこんな状態が続いてしまいます。
双翅目に関してはこの掲示板を誰もが頼りにしていると思いますます。駆け込み寺みたいなところもあります。ここで解決できないことはどこへ持っていってもダメでしょう。とにかく頼りにしているのです。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/07(Sat) 03:03:40 No.5174  引用 
田中川さんの双翅目の同定についての不満,心情は理解できます.生態写真でどの程度同定できるかは別に書きました.

  日本での昆虫分類学の歴史の浅さ,特に記載分類学を研究できる大学の研究室の少なさ,分類学の研究を行なえる研究機関の少なさ,標本の蓄積をする博物館の少なさ,簡単に言えば昆虫分類学に対する社会の投資のあまりにも少ない状況が,あなたが今直面している現実の大きな原因です.

  しかし,自国の双翅類が容易に同定できると言う国は世界的に見ても決して多くはありません.おそらくそれらはヨーロッパの大部分の国だけである,と言っても過言ではないでしょう.カナダやアメリカ合衆国でも,状況は双翅目の科によっては日本と大同小異の場合さえあります.例えば,オドリバエ科のRhamphomyia属についてみると,おそらく北米の未記載種の方が日本のそれより多いでしょう.

  私がこれまでも折にふれてこの掲示板にも書いてきましたが,日本での双翅目の分類学的研究はヨーロッパなどでの研究に比べて,
(1)歴史が浅いこと,すなわち研究の蓄積がすくないこと,
(2)歴史の浅さと自然史博物館の歴史や数の少なさに起因する標本の蓄積が少ないこと,
(3)前述の通り研究者を養成する大学の研究室が少ないこと,
(4)研究者を雇用する場(大学,研究所,博物館など)が少ないこと,
(5)出版事情が悪く研究成果の出版がままならないこと、
(6)それに加えて,日本列島は昆虫の種数がヨーロッパなどに比べて著しく多いこと(一般的には英国の約3倍の種数があると概算できます),
 などなどの悪条件によって,結果的に著しく遅れています.

  その結果,多くの未記載種が自然に存在する,総説的な研究の出版が少ない,ということで双翅目の同定に困難をきたす状況が生まれています.

  現在でも日本列島に著しく多数(数十から数百種)の未記載種・未記録種がある科は,ガガンボ科(広義),ユスリカ科,ヌカカ科,キノコバエ科(広義),クロキノコバエ科(クロバネキノコバエ科),タマバエ科,ニセケバエ科,チョウバエ科,オドリバエ科,アシナガバエ科,ノミバエ科,ヤドリバエ科などです.さらに,種数の少ない科でも未記載種や未記録種の方が多い科はこれらに加えて,例えばホソカ科,クチキカ科,ヒメカバエ科,ヒラタアシバエ科,ヤリバエ科,クロツヤバエ科,アブラコバエ科,フンコバエ科,フンバエ科などたくさんあります.

  比較的手に入りやすい形で日本産の種がかなり同定できる出版物が出版されているのは,カ科,ユスリカ科,ケバエ科,コシボソガガンボ科,アブ科,アタマアブ科,ハナアブ科(不十分ですが),ショウジョウバエ科,ミギワバエ科,キモグリバエ科,ハモグリバエ科,クチキバエ科,ヤチバエ科,ツヤホソバエ科,ミバエ科,ハナバエ科,イエバエ科,ニクバエ科,クロバエ科,などで,ほかの科では亜科や属などに分かれて学術雑誌などに発表されている文献を集めればなんとか同定の手引きになる,と言う程度です.

  私が主に研究しているオドリバエ科(広義)でも日本産の既知種は200種足らずですが,実際には1000種以上は生息しています.残り800種以上についてそのほとんどは未記載種ですから,これらの新種の記載をしないと,日本のオドリバエ科の全貌は分からない,ということです.ヨーロッパはこれとほぼ同じ数の種をリンネの時代から2世紀半にわたって幾代ものヨーロッパ各国の研究者が研究して現在の研究状況になっているわけです.日本のオドリバエ科については,ほとんど私1代で標本の収集とこれまでの記載を続けてきたのが現状です.

  イエバエ科にしても,戦前からの研究暦があり,さらに戦後,加納先生,篠永先生のほぼ3代にわたる研究の末に,日本産250種ほどの総説として「日本のイエバエ科」が最近出版されたわけです.それでも,例えばクキバエ属については私が自分の採集物を少しばかり取り出しただけで,既知種より多い新しい種が見出されると言うのが現状です.

 本掲示板でしばしば同定の依頼があってもどうしようもないのが,ヤドリバエ科です.この科は高野先生が戦前に初期的な研究を行なった後に,嶌先生が私と同様にほとんど1代で日本列島の標本の収集を行い、相当数の新種などを記載していますが,まだまだ多くの未記載種や未記録種があります.次の代に相当する舘博士が安定して研究を続けうる状況になれば,本科の分類学的研究の将来はあるのですが,これも未定です.ヤドリバエ科のように分類が極めて難しく,かつ応用的にももっとも重要な双翅目の1科の研究状況がこのような現状になっています.

  10年ほど前には10数名の双翅類分類学者が大学や博物館に在籍していたのですが,現在は1/3以下の数になってしまっています.今後も増える可能性は大変小さいでしょう.

  田中川さんが,双翅類の同定について不自由を感じておられるのは,あなただけではありません.私たちも同様なのです.本掲示板でも,現職あるいはすでに退官,退職された双翅類の分類学者がいろいろな問い合わせに対応してくださると本当はありがたいのですが,今それは望むべくもない,といういところでしょうか.
  おそらくこれらの大部分の方々は本掲示板をご覧になっていないか,時折見られてもそのままになっているのでしょう.私も物好きで自分の専門に研究している科以外の質問などに可能な限り応えようとしていますが,これもおのずと限度があります.おそらく,私を知る人々は,そのような時間があれば(今これを書いている時間も含めて),もっと専門の研究をしたらどうか,と思われているでしょう.この機会に,明らかにしますが,アノニモミイア(Anonymomyia=無名のハエ)の名前で投稿しているのは私です.これまで,本名で示さなければならない場合に限って本名で投稿していました.

  自分の専門とする昆虫群だけに視野を絞っていると,ほとんど現状に不自由を感じないのですが,いったん他の昆虫群の同定の必要性を感じたときに,私も田中川さんと同じ思いをしてきました.例えば,イネの大害虫のセジロウンカ,セジロウンカモドキ,ヒエウンカ,ヒメトビウンカ,トビイロウンカなどを正しく同定しようとしたときに,自分の周りの文献をみて,ハタと行き詰ってしまいました.頼りになると思った北隆館の原色昆虫大図鑑では,ウンカ類の同定はほとんど不可能なのです.やむを得ず中国経済昆虫誌飛虱科を入手して,そこで日本産の種が載っているのを参照して初めてなんとか同定ができたか,と思っています.その困難さを感じたものですから,依頼を受けた財団法人九州環境管理協会のホームページに,ウンカ・ヨコバイ類の写真を載せる作業を始めるような状況になっています.

縷々厳しい現状を述べましたが,愚痴を言っても全く始まらないわけで,日本列島の双翅類の記載分類学をどのように発展させていくか,皆さんと共に考え,行動を起こしていきたいと思っています.

添付書類の拒否がありました 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/06(Fri) 11:27:45 No.5168  引用 
32KBのワード文書を添付しようとしましたが,拒否されました.どうしたらいいでしょうか.文中には♂交尾器という単語が入っていますが(市毛さんは5166で「交尾器」をつかっています),それ以外は引っかかりそうな言葉は使っていません.文書がながいので,本文は避けようとして,添付にしたのですが.ただし学名は斜字体,一部の文章はゴシック(太字)を使っています.

Re: 添付書類の拒否がありました 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/06(Fri) 13:44:32 No.5169 ホームページ  引用 
三枝豊平様.

掲示板の使用を見ると,
 添付可能ファイル : GIF, JPEG, PNG, TEXT, PDF, MIDI
 最大投稿データ量 : 100KB
となっていますので,ワード文書は添付出来ない設定のようです.

Re: 添付書類の拒否がありました 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/06(Fri) 14:03:03 No.5170  引用 
市毛さん.有難うございました.テキストファイルにしました.

沖縄のMyolepta 投稿者:pakenya 投稿日:2009/03/02(Mon) 17:21:44 No.5146  引用 
久しぶりにハナアブの話題です。

沖縄で簡単に採集できない種を、那覇在住のS本氏に協力してもらって標本撮影しています。まとめて貸していただいた標本の中に、見慣れない種がありました。まずまちがいなく日本初記録の種でしょう。

沖縄本島北部の大宜味村で1996年秋に採集されたものです。


Re: 沖縄のMyolepta 投稿者:pakenya 投稿日:2009/03/02(Mon) 17:24:42 No.5147  引用 
翅の基部の画像です。

R脈基部に顕著な剛毛列があります。


Re: 沖縄のMyolepta 投稿者:pakenya 投稿日:2009/03/02(Mon) 17:33:20 No.5148  引用 
前脚腿節を後方から見た画像です。

末端に向かって2列の棘が確認できます。

これらの特徴からMyolepta属であることは間違いありません。
ネット上で色々Keyを入れてググッて見た結果、東洋には少なくとも2種のMyoleptaがいて、特にTompsonが1971に記載したM. orientalisが臭そうってところまで来たのですが、同定資料になりそうな文献はダウンロードできませんでした。

お分かりの方がおられたら、是非ご教示ください。


Re: 沖縄のMyolepta 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/04(Wed) 23:37:45 No.5164 ホームページ  引用 
pakenya様.

おそらく,Myolepta属だと思います.
ぜひ,論文を調べてみて下さい.

なお,pakenya様が使っているMyolepta属の形質は,かなり昔の偏った形質のようですので,近年の論文に記されている属の記載を参考にするようにしたほうが良いと思います.特に,南西諸島方面の種類を調べるのであれば,多数の論文から属の特徴を考えないと誤った結論となります.

ギボシフンバエモドキでしょうか... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/02(Mon) 21:44:42 No.5149 ホームページ  引用 
8月に茨城県北部の山間部(alt.800m)で採集した,体長5mm程のフンバエです.

写真ではわかりづらいですが,翅の先端1/4ほどが暗化しています.

旧北区の双翅目マニュアルでは,Parallelomma属となりました.
HeringのZwei neue Cordyluriden aus Japanを調べてみましたが,比較標本も無く,胸側部の暗色帯はC. hostaeに似ているとしか判りませんでした.
(検索にPraalarborsteが出てきますが,中胸背盾板外縁部にある1剛毛がPraalarborsteなのかSupraalaborsteなのか判りません)

これが,ギボシフンバエモドキなのでしょうか?

よろしくお願い致します.


Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/03(Tue) 14:31:37 No.5153  引用 
この標本の前胸の前側板(episternum)は完全に裸でしょうか?しばしばこの部分の毛は淡色できわめて細いために見逃してしまうことがあります.このような毛があればParallelommaではなくてCordyluraの可能性があります.

私のところにはP. sasakawaeと同定できる標本しかありませんが,これでは前胸前側板は完全に裸です.この標本は第3触角節(第1鞭小節)は褐色で,黄色の基部の2節とは色調がはっきりと異なっています.

学研生物図鑑(学研中高生図鑑)で,Chilizosoma hostaeと私が解説した標本は,私の記憶では,私の標本ではなくて,学研の方でどなたかに依頼して作成した標本であって,(無責任な話ですが)私自身は標本そのものを見ることなく,解説だけを書いたと思います.そのために,写真の標本が真のParallelomma hostaeであるという確信は,今はありません.日本に何種も生息しているCordyluraの種の可能性も否定できないと思います.

Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/03(Tue) 20:13:50 No.5155 ホームページ  引用 
三枝豊平様.

学研中高生図鑑に,そんな裏話があるとは驚きです.

先に掲示した写真の種類は,前胸前側板に長毛を欠き,prementumに比べ小顎鬚がかなり短い特徴を備えているので,Parallelommaと判断しました.

笹川様がCordylura属の1種している種類は,こちらの写真のような種類では無いかと思います.(実は,こちらのほうがC. hostaeに似ています.)

前記の種と酷似しているのですが,三枝様が指摘しているように前胸前側板には10本ほどの淡色の長毛が生えており,prementumに比べ小顎鬚が長い特徴を備えています.


Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/04(Wed) 01:29:45 No.5158  引用 
Parallelomma sasakawaeと同定できそうな標本を示しておきます.福岡県英彦山5月6日採集の♂です.触角の第3節が暗色の状態がなんとか写っています.

Parallelommaの方はCordyluraに比べると第5腹節腹板の葉状突起がはるかに小型のようですね.その点からも市毛さんが最初に図示した標本はParallelommaのようですね.P. hostaeの可能性がたかいと思います.


Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/04(Wed) 04:00:39 No.5159  引用 
P. hostaeもP. sasakawaeも共に旧北区のカタログには出てこないし(シノニムとしてもでてこない;かなりフンバエ科の部分は雑な印象を受けます),Fauna EuropaeaとかThe leaf and stem miners of British flies and other insectsでは,両種ともにSifner, 1978によってヨーロッパのP. vittatum (Meigen, 1826)のシノニムとされています.

しかし,新訂原色昆虫大図鑑第3巻ではこの属は笹川先生が改定を担当されていて,旧版(これも同先生の執筆)の学名Chylizosoma sasakawae HeringをParallelomma sasakawae (Hering)と改定されています.旧版で付記されていたChylizosoma hostaeについては,新訂版では削除されています.いずれにしても,少なくともsasakawaeについては2008年段階で笹川先生は本種をvittatumのシノニムにされていないので,3種の関係は未解決ということでしょうか.なお,九州大学のカタログではP. sasakawaeのみでhostaeが抜けています.(私も原稿段階で一通り目を通したことになっているのですが,膨大な種数でとても完璧は期待できるものではありませんでした.長生きすると自戒せざるをえない機会が多くなる).

フンバエ科はこのほかにも日本列島にはかなりの種が生息していますが,属などがわかりにくいものです.私の標本(といっても一部しかマウントしてないのですが)は,以前Vockerothさんが来訪された折に属までは同定してもらっています.それによると,Bucepharina, Megaphthalma, Nanna, Neorthachetaなどの属も日本にいるようです.久留米の平地で採集された小型種は新属であるとのことで,彼の手元にありますが(多分カナダ国立昆虫コレクション中),未記載です.フンバエ科の属の総説はVockerothさんの確か学位論文で,分厚い原稿を見せてもらったことがありますが,まだこれは出版されていないと思います.あまり大きな科ではないので,どなたか早めに日本産のものをまとめていただきたいものです.

Re: ギボシフンバエモドキでしょ... 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/04(Wed) 23:27:10 No.5163 ホームページ  引用 
三枝豊平様.

色々と驚く情報ばかりです.
また,多数の未記録属が日本に分布するとのことも驚きです.

双翅目は,まだまだ未解明なグループが多いので面白いと思うのですが,研究者が減る一方で残念です.

ぜひ,長生きして色々と教えて頂けると幸いです.

ありがとうございました.

双翅学会活動再開のお知らせ 投稿者: 投稿日:2009/03/04(Wed) 15:40:35 No.5160 ホームページ  引用 
双翅学会は数年間活動を休止しておりましたが、
この度、琵琶湖博物館の桝永氏、森林総合研究所の末吉氏と私で会務を引き継ぎ、当学会の活動を再開することとなりましたので、ご案内いたします。私は庶務を他の二人が編集を担当いたします。
会員の方々にはすでにご挨拶と新体制の紹介をお送りしています。会誌の発行や小集会の開催をはじめとした活動を着実に継続していきたいと思いますので、皆様のご協力をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

学会の活動が再度軌道に乗って会誌などが発行され始めるまで新規の会員を募集するのも気が引けるのですが、ご入会いただける方、当学会の活動に興味をお持ちの方がありましたら中村までご連絡いただきたく存じます。

この掲示板は双翅目談話会の会員の方が多く利用されていることは重々存じておりまして、他の会の紹介を書き込むことを躊躇したのですが、管理人様のご了解を頂きましたので紹介させていただきました。

マガリスネカ 投稿者: 投稿日:2009/03/03(Tue) 21:56:43 No.5157 ホームページ  引用 
マレーズトラップの材料をあさっていて、栃木県日光市(旧栗山村)奥鬼怒温泉近くのマガリスネカを見つけました。
最終的に10個体ほど。これまで新潟の妙高高原で採集したことはありましたが、栃木県では初めて見ました。環境省のレッドリストにリストアップされていますので、今後栃木県版のレッドデータリスト改正の際には掲載を検討しなくてはなりません。
「今年は生態写真と幼虫を採る(撮る)ぞ!」という目標ができました。

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