達磨大師が紹介すべきことですが、僭越ながら第一報をお先に。日本産の種などについて更に詳しい情報が彼から出ることを期待しておきます。
今日、アメリカのアイオワ州立大学のPetersenらのガガンボ上科についての系統、分類の論文が送られてきました。ガガンボ上科は最近4科に分類される傾向がありますが(北隆館の新訂原色昆虫大図鑑第3巻)、これとはまた別の分類体系が示されて、ヒメガガンボ科やなんとシリブトガガンボ科までガガンボ科に統合され、ガガンボ上科はガガンボ科とオビヒメガガンボ科の2科に分類されています。そして、ガガンボ科の中には多数の亜科が設けられています。シリブトガガンボ科はいわゆるヒメガガンボ類よりTipulaなどの真正ガガンボ類に最も近縁であるとされています。 もちろんこれが最終的なものではないでしょうし、今後の変更も起こるでしょうが、一先ず、形態(全ステイジ)と分子のデータを組み合わせた結果だそうです。 なお、原文をご覧になりたい方は私や達磨大師に申し込まれればこの論文のpdfをメール貼付で送ることが出来るでしょう。ファイルが大きいのでここには貼付できません(私や達磨大師の連絡先はハエ男さんに尋ねると教えてくれるかもしれません)。
三枝先生。Mattからのメール、まだ開いておりませんでした。面目次第も御座いません。科の扱いがしょっちゅう変わると混乱の元なのでもともとの広義のガガンボ科一つとするあつかいが一番落ち着きがいいように個人的には思います。この場合、亜科の扱いで混乱することになりますが。
Pediciidaeが外れて、Tipulidae(狭義の)とCylindrotomidaeが近縁というのは腑に落ちます。 PDFがお入用の方はご連絡ください。
論文を概観しました。現在のLimoniidaeヒメガガンボ科で亜科と扱われているLimnophilinaeがLimnophilinaeとEpiphragminaeに、ChioneinaeがChioneinaeとEriopterinaeに分けられています。ただそれぞれのまとまりは過去にも族などとして指摘されたことがあるので、属のまとまりを再認識してそれぞれ並記した形になり、結局のところ系統関係はよくわからないままでした。これまで側系統群と考えられていたLimoniidaeヒメガガンボ科を単系統と考えられるグループに分割し、Tipulidaeガガンボ科という大きな傘の下におさめたということのようです。
さらに、過去に族の所属が変更されたことがあるなどの問題の属Dicranoptycha, Atarba, Helius, Elephantomyiaがそれぞれ独立に示されていて、やっぱり難しいグループなんだなと感じました。 |
連続で恐縮ですが、また、複眼の緑が綺麗なハエがいました。
体長5mmで、茨城の県南でフキの葉の上でうろうろしていました。 体長、翅の模様などからは、タンポポハマダラミバエと思われます。問題は中胸盾板のやや細い3本の筋模様などですが、図鑑では、明確には記載されていません。 しかしながら、クサギハマダラミバエははっきりした4本の黒条だけ(みんなで作る双翅目図鑑)ですし、市田忠夫さんも関係している「あおもり昆虫記」のタンポポハマダラミバエも拡大すると筋模様が入っているように見えます。 タンポポハマダラミバエでよいでしょうか、それとも、未知の種なのでしょうか?また、尾部の形状からこの個体は雄なのでしょうか? よろしくご教示のほどお願いします。
手持ちの資料によると、タンポポハマダラの場合は胸背は全体的に褐色とあるので、タンポポには?がつきます。
翅の向きが微妙なので紋の詳細な検討は出来ないのですが、胸部を拡大して確認できる紋からすると、タテジマハマダラミバエかシラホシハマダラミバエになるのではないでしょうか。 とりあえずタテジマハマダラミバエに一票入れておきます。
ハエ男さま レスありがとうございました。
翅の写真を添付します。 なお、タテジマハマダラミバエ及びシラホシハマダラミバエについては、以下の写真から、絵合わせですが、該当しないのではないかと考たところです。 タテジマハマダラミバエ♂ については、 Kazu’s Digital Insects Photo Gallery 「moth2001.hp.infoseek.co.jp/5-48.html」 シラホシハマダラミバエについては、あおもり昆虫記の「www.toonippo.co.jp/photo_studio/insects/abu_hae/abu_hae_ka/pic101.html」
翅の模様だけを見ると、タンポポかタラノキハマダラミバエのように見えますね。
ただ、胸部の拡大画像を見る限り、タテジマとせざるを得ません。 同定する側としては、文献を参考にせざるをえませんので、悩んでしまいますね。やはり、胸部、翅の紋、頭部の剛毛配列、♂ゲニ等を総合的に判断するよりほかにはなさそうですね。 個体変異や近縁種のハイブリッド、未記載種、未記録種などの可能性もゼロではないだけに、外見だけの画像で掲示板で断言するのは、少し考えてしまいますね。
タンポポマダラミバエHelmilea infuscata Hering, 1937についての伊藤修四郎先生のミバエ科の総説を貼付しておきます。胸部背面の縦筋の記載があなたの写真の個体とは異なる点が気にはなります。
添付:6328.pdf (29KB)
翅の図です。
Lenitovenaの2種の記載や翅の図も伊藤修四郎先生の総説についていますが、写真の種とは全く異なっています。これらの種では触角刺毛の上下(背腹)にかなり長めの分岐が多数生じていますが、タンポポマダラミバエでは触角刺毛はほとんど裸です。Parahypenidium polyfasciataクサギマダラミバエやPseudhemilea longistigmaタラノキハマダラミバエもタンポポに類似した翅斑をあらわしているようですね。 添付:6330.pdf (15KB)
ハエ男さま、三枝先生 ありがとうございました。
学問的には、見た目ではなく、文献などを参考に、しっかり確認しなければならないことが、なんとなく分かりました。厳しいものですね。 さて、添付していただいた図(頭部及び翅)については、この個体についても確認できるようです。特に、下額眼縁剛毛については、どれだか良くわからなかったのですが、3対、後向きであることが確認できました。 ドイツ語の解説のほうはお手上げなのですが、肩から翅の付け根まで淡い黄色、肢は明るい黄褐色などは同じようですが、中胸盾板については、鮮やかな赤黄色とはいえても、2対の縦の打ち跡?などは分かりません。何か模様があるようなのですが、この記載では4本の模様のように読めます(訳があっているのか不明)? タラノキハマダラミバエは、大きさや翅の模様なども似ているようですが、中胸盾板前端から後端に達する1対の暗色条を持つとされているようです(原色昆虫大圖鑑3)。 この綺麗なミバエ科の類も、名前までは、なかなかつかないようですが、色々ご教示ありがとうございました。
ちなみに参考にされていたサイトのKazu’s Digital Insects Photo Galleryのタテジマハマダラミバエとされている画像の個体はキバラハマダラミバエの誤同定だと思います。
シラホシハマダラミバエの方については大丈夫だと思います。 画像に種名をつけて公開しているサイトの場合、同定者名がわからないサイトや同定につかった文献または根拠がわからないサイト( 特に個人でいろいろな目を幅広く掲載しているサイト)の場合を参考にする場合は注意が必要です。
ハエ男さま
なんにでも興味があるほうですので、耳が痛いです。 これまで以上に注意をしていきたいと思います。
こんにちは。
このあたりの種を採った つたない経験からしますと、標本になった時に、胸部背面の斑紋がすっかり消える種がいます。 たとえば画像は Vidalia sataeに似た翅斑の不明種ですが、この種の胸部背面の斑紋は、標本にすると完全に消失します。 (画像は 針に刺した直後の個体で、まだ斑紋ははっきりしてます) このような、生時だけの斑紋が、どのように記載されているかはわかりませんが、ミバエの場合には注意が必要と思っています。 yamasanaeさんのミバエも標本なった後では斑紋が変化するかもしれません。どうでしょうか? |
皆様こんばんは。またお世話になります。
週末に山形県飯豊町の里山(標高〜600m地点)で撮りました。 新鮮な獣糞(おそらくニホンザルの物)に集っているハエが交尾を始めたので、物好きにも動画に撮ってみました。 http://www.youtube.com/watch?v=ZyQXKJ7Aqys
写真のハエはフンバエ科Scathophagidaeのヒメフンバエ属Scathophagaの1種です。本属には日本にも数種が生息していて、私には写真だけでは同定できません。ヒメフンバエScathophaga stercoraria (Linnaeus)の可能性が高いでしょうが、雄は大型の個体ではいま少し黄色の長軟毛が体や脚に密生しています。
なお、確か本属では後に交尾した雄が、雌の体内にある前に交尾した雄の精子を抜き出す行動を行なう、と言われています。 幼虫は糞の中で生活し、成虫は糞の上や周囲で他の軟弱な昆虫を捕らえて摂食します。
三枝さま
コメントありがとうございました。 あれから私も自分なりに少し調べてみました。 ヒメフンバエにしては♂があまり黄色くないのが気になっていました。 それから素人目には羽に紋が無いように思うのですが、キアシフンバエ(Scathophaga mellipes)の可能性はどうでしょうか? http://www.hegurinosato.sakura.ne.jp/2bangura/vi_abu_hae/himefunbae.htm せっかく交尾ペアを採集したのですけど、あり合わせのフィルムケースに入れて持ち帰ったらお恥ずかしいことに容器が汚れていて体中がゴミ(蛾の鱗粉など)にまみれてしまいました。がっかりしてあまりよく観察もせずに死骸はすぐに捨ててしまいました。 >確か本属では後に交尾した雄が、雌の体内にある前に交尾した雄の精子を抜き出す行動を行なう、と言われています。 とても興味深い行動ですね。機会があれば映像に撮ってみたいと思います。
♂個体も採集しているようなので、♂ゲニをごらんになってはいかがでしょうか。フンバエ類は結構はっきりした違いが出ていると思います。
過去ログにヒメフンバエとキバネフンバエの♂ゲニの画像が出ていますので、ご覧ください。 ページ上部にあるワード検索で、「ヒメフンバエ ゲニ」と検索すると出てくると思います。
Scathophagaについては、福原・倉橋が「昆虫Kontyu」34巻(1966)に4回に分けて「日本産フンバエ科に関する知見」をだしています。この中で、S. scybalariaキバネフンバエ, S. suillaニセキバネフンバエ, S. squalidaクモマヒメフンバエ (3種ともに属をScopeumaとしているので原文では種名の語尾は中性名詞型になっている)を記録しています。私も数種以上の標本を持っていますが、一部は同定できていません。上記論文では、触角がキバネは橙褐色、ヒメフンバエは全体黒色、キアシフンバエは第3節のみ黒色、なので区別できると書いてあります。(昆虫の論文は、日本昆虫学会のホームページで、学会誌(昆虫の目次)、無料一般公開で必要な巻に進むとPDFがとれます)。
なお、ネットでScathophaga stercoraria と入れれば、F. Sifner(2008)の A catalogue of the Scathophagidae (Diptera) of the Palaeractic region, with notes on their taxonomy and faunistics. Acta Entomologca Musei Nationalis Pragae, 48(1):111-196 のPDFを見ることができます。 日本のフンバエ科も諏訪先生や広永さんたちが早く全貌を明らかにしてもらいたいところです。
福原・倉橋の前記論文に出ている触角の色彩によるScathophaga3種について、左がヒメフンバエ、中がキアシフンバエ、右がキバネフンバエに相当するのかと、思います(少なくとも、ヒメ、キバネはハエ男さんが示した交尾器と一致しています)。これらの標本の翅の色彩、斑紋もほぼそれらの種に該当します。
ハエ男さま、三枝豊平さま
お忙しいところ懇切丁寧なレスありがとうございます。 ご紹介のPDFは一応ダウンロードしてみたものの、専門的過ぎてとても私には読みこなせないようです。 今回せっかく採集したペアは持ち帰るまでに容器内で体中がゴミだらけになってしまったので、少し写真を撮っただけで捨ててしまいました。 しかし今後はどこに注目すべきか分かっただけでも収穫です。 少しでも自力で観察検討してみることにします。 念のために生前の映像から♀の触角のアップを切り出してみました。どんなもんでしょうか。 今の私に分かるのは「キバネは否定できそう」ぐらいですね。 ワンランク・アップするために「虫♂のゲニ出し」に漠然と興味(憧れ)はあるものの、素人にはやり方が分からないでいます。 どんな器具(ピンセット?)でどこをどう引っ張り出すのかイメージが沸きません。 一度会得してしまえば意外に簡単なのかもしれませんけど。 「猿でも分かるゲニ出し法」を解説してくれるハウツー動画がどこかにあればなー…(無いものねだり)
福原・倉橋ではヒメフンバエの触角が全体黒色であるとしていますが、基部2節は第3節よりやや色彩が淡色です(私の写真でも判断可能でしょう)。あなたのフンバエは、これら3種のうちのどれに一番合うかというと恐らくヒメフンバエと思います。触角基部2節の色彩、それに脚の腿節が暗色になっている点、からそのように判断されます。キアシは触角の第1,2節はかなり明るい橙褐色ですし、脚もほぼ全面的に明色です。
『「虫♂のゲニ出し」に漠然と興味(憧れ)はあるものの、素人にはやり方が分からないでいます。』 これについては近々このスレッドに記入しておきましょう
重ね重ねご教示ありがとうございました。
ヒメフンバエで納得しました。 これからもよろしくお願いします。 |
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