こんばんは。
ドロバチに寄生するハエについてお尋ねします。 この夏、借坑性の蜂を観察するために竹筒トラップを2束仕掛けました。(里山の麓@山形県) 8月上旬、泥で封じられた一本を割ってみました。 独房内に蜂の子や貯食物は残っておらず寄生虫の蛹が数個転がっているだけでした。 同じ頃、隣の竹筒束ではオオフタオビドロバチの営巣活動を直接観察していますので、寄主はおそらくこれだろうと思っています。
ドロバチヤドリニクバエですかね?
http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/seibut/bamboohymeno/species/amobia-distorta/0001.html
そうですね、たぶんドロバチヤドリニクバエでよいと思います。少なくとも、外形からはAmobia属に見えます。今のところ、国内のAmobia属はドロバチヤドリニクバエ1種だけのようなので、いいかな?とも思うのですが、ニクバエの同定は♂交尾器を見ないと安心できないので、たぶん・・・です(^^;)。参考として、♂ゲニタリア画像を貼っておきます。
ちなみにAmobia属は、他のヤドリニクバエ類に比べて、頭の形が丸っこいのと、額の幅が狭くて、細くて短めの眼縁剛毛が列生しているのが特徴的です。Kurahashi(1970)に頭部の図があります。CiNiiで閲覧できますので、ご覧になってみるとよいでしょう。 Kurahashi Miltogramminae をキーに検索するとその論文がヒットします。 なお、ドロバチヤドリニクバエの学名について、 T. Pape氏の説に従えば Amobia distorta (Allen, 1926) は Amobia oculata (Zetterstedt, 1844) のシノニムということなので、現行では A. oculata ってことになります。
猫又さん
とても丁寧に解説していただきましてありがとうございます。 交尾器を自分で調べるスキルは未だありませんが、どうやらドロバチヤドリニクバエで良さそうですね。 今回、羽化直後の成虫が翅を延ばす様子を観察することが出来ました。 気になったのは、頭頂部で風船のような膨らみが脈動していた点です。 本で調べたらこれを使って蛹の殻を中から割り、更にはドロバチの巣も破るのだそうですね。 一見弱々しいハエにそんな力があるとは俄には信じがたいですけど、ツリアブの仲間とはまた違った脱出戦略に感動しました。 蜂の泥巣に寄生するヤドリバエやツリアブの生き様はまるで密室殺人の鮮やかな完全犯罪トリックのようで、とても面白いです。 |
ちょっと暗くて解りづらいですが・・・
画像を色調補正して見ると、各腿節の大部分が黒く額が黒色なので、ニセスズキのほうの可能性が高く見えます。が、色だけでは正確に判定できません。一般にニセのほうが小さくて全長8mm前後、スズキは10mm以上ありますが個体差もあってこれも確実ではありません。 形態的に差が出るのは、Fauna Japonica Syrphidae IIの記述によれば、頭頂の幅がスズキは頭幅の1/9、ニセは1/6ですので、頭部が背面からはっきり映っている画像があれば判別できそうです。 このほか、触角第三節の形状がスズキのほうが長めですから、tosakaさんの画像の個体はニセの可能性が高いです。 両種とも珍しい種ではありませんが、時々識別に悩みます。オスなら交尾器で確実なことは、過去ログを参照してください。
pakenya様
カクモンハラブトハナアブ、ニセスズキフタモンハナアブに関して早速ご教示いただきありがとうございました。ノハラアザミやセイタカアワダチソウなどの秋の花が咲き始め、これからも何種類か初見のハナアブについて質問させていただくことがあるかと思いますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。 |
コンニチワ。
科は、フンコバエ科(ハヤトビバエ科)Sphaeroceridaeになりますが、詳しい種までは私には判りません。 あとの書き込みをお待ちください。
とまつ様
これはフンコバエ科(Family Sphaeroceridae)のカドマルフンコバエ属(genus Terrilimosina)の1種です。日本には4種知られています。メスは尾端の構造や貯精嚢の形態を詳細に調べないと種の同定は困難で、画像からでは種までは分かりません。興味がおありでしたら下記論文を見て下さい。CiNiiの文献検索で無料で見れると思います。 Hayashi, T. : The genus Terrilimosina Roháček from Japan (Diptera: Sphaeroceridae). Japanese Journal of Entomology, 60: 567-574. (1992) このグループはやや湿った地面すれすれや林床、河畔・湖畔等をスイーピングすると普通に採れます。4種共にそれほど珍しい種ではありません。
Acleris@会社 様ありがとうございます。とても参考になりました。私は最近双翅目の同定を始めたばかりでまたわからないことが多いものでまたご指導して頂ければと思います。
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2枚目のハエはOdiniidaeトゲアシモグリバエ科のTraginops orientalis naganensis Kato, 1952、カトウトゲアシモグリバエです。Odiniidaeで本掲示板を検索してみてください。No.3811-3814(2007年8月31日)に関連記事が出ています。
アノニモミイア様
ありがとうございます。 関連記事も確認させていただきました。 とっても可愛い種類ですね。 動いている姿を想像してしまいます。 今後ともご教授下さい。
なみは さま
ミバエの方は難しいです。 Shiraki (1933) A systematic study of Tripetidae in the Japanese Empire Ito (1983-1985) Die japanischen Bohrfligen には似た種がありません。 Wang (1996) The fruit flies of the East Asian region, Acta Zootaxonomica Sinica, 27 Han & Kwon (2000) Economic insects of Korea 3, Diptera, Tephritidae 他 持っている範囲の東南アジア、ヨーロッパ、北米の文献なども ちらちら眺めた限りでは似たものはないようです。 ちゃんとしたミバエの専門家が来ないと、どうしようもなさそうです。
Nabita様
ミバエ類にも未記載らしき種がいるのですね。勉強になります。ハエ類は奥が深すぎて、自分の能力では1つの分類群でも全貌が見えません。 今後ともご教授頂ければ幸いです。 ありがとうございました。
なみはさま
はじめまして。ほげと申します。ミバエが好きです(どんどん忘れていっているような…)。 ええと、おそらくこの個体は玉木(1997)にてPseudacidia sp. として記録しているものと同じです。また、末吉(2000)にてAcidiella sp.として記録された1♀(皇居敷地内のサンプル)とも同種と思われます。 本種はミャンマーから記載されたAcidiella funesta (Hering, 1938)と翅紋が酷似しており、同様のことが末吉(2000)にも書かれています。しかし、両者には翅紋の「色」に明らかな違いがありまして、A.funestaが雌雄ともに同じ茶褐色(No.6447のTrypeta luteonotaのような)の翅紋なのに対して、本種ではオスのみ黄褐色(No.6466にあるとおり)になります。つまり、本種には翅紋色に雌雄の差があります。 …と、断定口調で書いてますが、実ははっきりしたことは分かっていません(-_-;)。末吉(2000)の個体は♀ですし、確か玉木(1997)の個体も♀だったような(すいません、いま手元に文献がありません…)。A.funestaの原記載は♂のみで、メスの形状については触れられていなかったはず。なので、文献中の個体はA.funestaそのものである可能性も捨て切れません。 そういえば、Wang(1996)でもA.funestaが四川省から記録されていますが、これも♀なので、♂がどうなっているのか気になるところです…。 何だかややこしくなってしまいましたが、お写真の個体はたぶん♂なので、少なくともA.funestaとは一応区別できる種、ということになります。 幼虫の寄主植物が分かれば、もう少しクリアになるかもしれません。♀交尾器(aculeus)を精査したことがありますが、その形状から推測するに、幼虫は潜葉性(葉もぐり)の可能性が高いです。採集された付近で、葉潜りのウジを探したら面白いかもしれません。いまはもしかしたら時期を外しているかもしれませんが…。 とりあえず、こんなところです。 …… 末吉昌宏 (2000) 皇居のミバエ科昆虫. 国立科学博物館専報, 36: 437-443. 玉木長寿 (1997) 埼玉県の双翅類.埼玉県昆虫誌 II 双翅目.1-405. 埼玉県昆虫談話会. Wang, X.-J. (1996) The fruit flies (Diptera: Tephritidae) of the East Asian region. Acta Zootaxonomica Sinica, 21, suppl.: 1-419.
ほげ様
返信が遅くなり、申し訳ございません。 また、詳しくご説明頂きありがとうございます。 Wang, X.-J. (1996) は未入手なので、出来るだけ手に入れたいと思います。 今後とも、ご教授よろしくお願いします。 |
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