![]() 体長5mmで、茨城の県南でフキの葉の上でうろうろしていました。 体長、翅の模様などからは、タンポポハマダラミバエと思われます。問題は中胸盾板のやや細い3本の筋模様などですが、図鑑では、明確には記載されていません。 しかしながら、クサギハマダラミバエははっきりした4本の黒条だけ(みんなで作る双翅目図鑑)ですし、市田忠夫さんも関係している「あおもり昆虫記」のタンポポハマダラミバエも拡大すると筋模様が入っているように見えます。 タンポポハマダラミバエでよいでしょうか、それとも、未知の種なのでしょうか?また、尾部の形状からこの個体は雄なのでしょうか? よろしくご教示のほどお願いします。
手持ちの資料によると、タンポポハマダラの場合は胸背は全体的に褐色とあるので、タンポポには?がつきます。
翅の向きが微妙なので紋の詳細な検討は出来ないのですが、胸部を拡大して確認できる紋からすると、タテジマハマダラミバエかシラホシハマダラミバエになるのではないでしょうか。 とりあえずタテジマハマダラミバエに一票入れておきます。 ![]() 翅の写真を添付します。 なお、タテジマハマダラミバエ及びシラホシハマダラミバエについては、以下の写真から、絵合わせですが、該当しないのではないかと考たところです。 タテジマハマダラミバエ♂ については、 Kazu’s Digital Insects Photo Gallery 「moth2001.hp.infoseek.co.jp/5-48.html」 シラホシハマダラミバエについては、あおもり昆虫記の「www.toonippo.co.jp/photo_studio/insects/abu_hae/abu_hae_ka/pic101.html」
翅の模様だけを見ると、タンポポかタラノキハマダラミバエのように見えますね。
ただ、胸部の拡大画像を見る限り、タテジマとせざるを得ません。 同定する側としては、文献を参考にせざるをえませんので、悩んでしまいますね。やはり、胸部、翅の紋、頭部の剛毛配列、♂ゲニ等を総合的に判断するよりほかにはなさそうですね。 個体変異や近縁種のハイブリッド、未記載種、未記録種などの可能性もゼロではないだけに、外見だけの画像で掲示板で断言するのは、少し考えてしまいますね。
タンポポマダラミバエHelmilea infuscata Hering, 1937についての伊藤修四郎先生のミバエ科の総説を貼付しておきます。胸部背面の縦筋の記載があなたの写真の個体とは異なる点が気にはなります。
添付:6328.pdf (29KB)
翅の図です。
Lenitovenaの2種の記載や翅の図も伊藤修四郎先生の総説についていますが、写真の種とは全く異なっています。これらの種では触角刺毛の上下(背腹)にかなり長めの分岐が多数生じていますが、タンポポマダラミバエでは触角刺毛はほとんど裸です。Parahypenidium polyfasciataクサギマダラミバエやPseudhemilea longistigmaタラノキハマダラミバエもタンポポに類似した翅斑をあらわしているようですね。 添付:6330.pdf (15KB)
ハエ男さま、三枝先生 ありがとうございました。
学問的には、見た目ではなく、文献などを参考に、しっかり確認しなければならないことが、なんとなく分かりました。厳しいものですね。 さて、添付していただいた図(頭部及び翅)については、この個体についても確認できるようです。特に、下額眼縁剛毛については、どれだか良くわからなかったのですが、3対、後向きであることが確認できました。 ドイツ語の解説のほうはお手上げなのですが、肩から翅の付け根まで淡い黄色、肢は明るい黄褐色などは同じようですが、中胸盾板については、鮮やかな赤黄色とはいえても、2対の縦の打ち跡?などは分かりません。何か模様があるようなのですが、この記載では4本の模様のように読めます(訳があっているのか不明)? タラノキハマダラミバエは、大きさや翅の模様なども似ているようですが、中胸盾板前端から後端に達する1対の暗色条を持つとされているようです(原色昆虫大圖鑑3)。 この綺麗なミバエ科の類も、名前までは、なかなかつかないようですが、色々ご教示ありがとうございました。
ちなみに参考にされていたサイトのKazu’s Digital Insects Photo Galleryのタテジマハマダラミバエとされている画像の個体はキバラハマダラミバエの誤同定だと思います。
シラホシハマダラミバエの方については大丈夫だと思います。 画像に種名をつけて公開しているサイトの場合、同定者名がわからないサイトや同定につかった文献または根拠がわからないサイト( 特に個人でいろいろな目を幅広く掲載しているサイト)の場合を参考にする場合は注意が必要です。
ハエ男さま
なんにでも興味があるほうですので、耳が痛いです。 これまで以上に注意をしていきたいと思います。 ![]() このあたりの種を採った つたない経験からしますと、標本になった時に、胸部背面の斑紋がすっかり消える種がいます。 たとえば画像は Vidalia sataeに似た翅斑の不明種ですが、この種の胸部背面の斑紋は、標本にすると完全に消失します。 (画像は 針に刺した直後の個体で、まだ斑紋ははっきりしてます) このような、生時だけの斑紋が、どのように記載されているかはわかりませんが、ミバエの場合には注意が必要と思っています。 yamasanaeさんのミバエも標本なった後では斑紋が変化するかもしれません。どうでしょうか? |
![]() 週末に山形県飯豊町の里山(標高〜600m地点)で撮りました。 新鮮な獣糞(おそらくニホンザルの物)に集っているハエが交尾を始めたので、物好きにも動画に撮ってみました。 http://www.youtube.com/watch?v=ZyQXKJ7Aqys
写真のハエはフンバエ科Scathophagidaeのヒメフンバエ属Scathophagaの1種です。本属には日本にも数種が生息していて、私には写真だけでは同定できません。ヒメフンバエScathophaga stercoraria (Linnaeus)の可能性が高いでしょうが、雄は大型の個体ではいま少し黄色の長軟毛が体や脚に密生しています。
なお、確か本属では後に交尾した雄が、雌の体内にある前に交尾した雄の精子を抜き出す行動を行なう、と言われています。 幼虫は糞の中で生活し、成虫は糞の上や周囲で他の軟弱な昆虫を捕らえて摂食します。
三枝さま
コメントありがとうございました。 あれから私も自分なりに少し調べてみました。 ヒメフンバエにしては♂があまり黄色くないのが気になっていました。 それから素人目には羽に紋が無いように思うのですが、キアシフンバエ(Scathophaga mellipes)の可能性はどうでしょうか? http://www.hegurinosato.sakura.ne.jp/2bangura/vi_abu_hae/himefunbae.htm せっかく交尾ペアを採集したのですけど、あり合わせのフィルムケースに入れて持ち帰ったらお恥ずかしいことに容器が汚れていて体中がゴミ(蛾の鱗粉など)にまみれてしまいました。がっかりしてあまりよく観察もせずに死骸はすぐに捨ててしまいました。 >確か本属では後に交尾した雄が、雌の体内にある前に交尾した雄の精子を抜き出す行動を行なう、と言われています。 とても興味深い行動ですね。機会があれば映像に撮ってみたいと思います。
♂個体も採集しているようなので、♂ゲニをごらんになってはいかがでしょうか。フンバエ類は結構はっきりした違いが出ていると思います。
過去ログにヒメフンバエとキバネフンバエの♂ゲニの画像が出ていますので、ご覧ください。 ページ上部にあるワード検索で、「ヒメフンバエ ゲニ」と検索すると出てくると思います。
Scathophagaについては、福原・倉橋が「昆虫Kontyu」34巻(1966)に4回に分けて「日本産フンバエ科に関する知見」をだしています。この中で、S. scybalariaキバネフンバエ, S. suillaニセキバネフンバエ, S. squalidaクモマヒメフンバエ (3種ともに属をScopeumaとしているので原文では種名の語尾は中性名詞型になっている)を記録しています。私も数種以上の標本を持っていますが、一部は同定できていません。上記論文では、触角がキバネは橙褐色、ヒメフンバエは全体黒色、キアシフンバエは第3節のみ黒色、なので区別できると書いてあります。(昆虫の論文は、日本昆虫学会のホームページで、学会誌(昆虫の目次)、無料一般公開で必要な巻に進むとPDFがとれます)。
なお、ネットでScathophaga stercoraria と入れれば、F. Sifner(2008)の A catalogue of the Scathophagidae (Diptera) of the Palaeractic region, with notes on their taxonomy and faunistics. Acta Entomologca Musei Nationalis Pragae, 48(1):111-196 のPDFを見ることができます。 日本のフンバエ科も諏訪先生や広永さんたちが早く全貌を明らかにしてもらいたいところです。 ![]() ![]() お忙しいところ懇切丁寧なレスありがとうございます。 ご紹介のPDFは一応ダウンロードしてみたものの、専門的過ぎてとても私には読みこなせないようです。 今回せっかく採集したペアは持ち帰るまでに容器内で体中がゴミだらけになってしまったので、少し写真を撮っただけで捨ててしまいました。 しかし今後はどこに注目すべきか分かっただけでも収穫です。 少しでも自力で観察検討してみることにします。 念のために生前の映像から♀の触角のアップを切り出してみました。どんなもんでしょうか。 今の私に分かるのは「キバネは否定できそう」ぐらいですね。 ワンランク・アップするために「虫♂のゲニ出し」に漠然と興味(憧れ)はあるものの、素人にはやり方が分からないでいます。 どんな器具(ピンセット?)でどこをどう引っ張り出すのかイメージが沸きません。 一度会得してしまえば意外に簡単なのかもしれませんけど。 「猿でも分かるゲニ出し法」を解説してくれるハウツー動画がどこかにあればなー…(無いものねだり)
福原・倉橋ではヒメフンバエの触角が全体黒色であるとしていますが、基部2節は第3節よりやや色彩が淡色です(私の写真でも判断可能でしょう)。あなたのフンバエは、これら3種のうちのどれに一番合うかというと恐らくヒメフンバエと思います。触角基部2節の色彩、それに脚の腿節が暗色になっている点、からそのように判断されます。キアシは触角の第1,2節はかなり明るい橙褐色ですし、脚もほぼ全面的に明色です。
『「虫♂のゲニ出し」に漠然と興味(憧れ)はあるものの、素人にはやり方が分からないでいます。』 これについては近々このスレッドに記入しておきましょう
重ね重ねご教示ありがとうございました。
ヒメフンバエで納得しました。 これからもよろしくお願いします。 |
Dipterist各位
以前、この板にちょっとだけ掲示させていただきましたが、改めまして、転勤のご挨拶。 わたくし「達磨」こと、中村剛之はこれまで勤務していた栃木県立博物館を退職し、2月1日付けで弘前大学白神自然観察園に准教授として勤務することとなりました。博物館在職中は多くの方々に、様々な面で多大なご協力をいただき、感謝しております。また、この2ヶ月ほどの間、双翅学会などの活動も完全にストップしてしまい、ご迷惑をおかけしました。 白神自然観察園は今年度新設された学内共同利用施設で、白神山地の入り口である西目屋村に18Haの土地を借り受け、遊歩道、東屋、宿泊施設を備えた研究棟が設けられる予定です。現在設計中。現在は農生学部の一室に間借りしています。 私は動物分類学担当教員として採用されましたので、カモシカからアメーバまで、要望があれば対応しなくてはなりません。本職はあくまで昆虫分類学ですので自らの研究に、そして学生の指導に力を注いでいきたいと思います。まず、最初には白神山地のことを十分に調べ上げなくてはなりませんが、将来的には国内に限らず、世界各地の温帯〜亜寒帯の極相林の比較研究を行っていきたいと思います。 これからも、かわらぬお付き合い、ご指導をいただけますよう、よろしくお願いいたします。
達磨様.
栄転おめでとうございます. 大学に双翅目の教官が増え大変うれしく思います. 今後,ガガンボについてもガンガン論文や解説を書いて下さい.
市毛様
ありがとうございます。青森に移って2週間が経ちますが,諸手続きや研究棟の設計等におわれています。 来年度は学生がつかない(観察園の研究棟が建つのが11月となるため)予定なので,早いうちに論文を書く癖を付けたいと思っているところです。 ぜひ,採集会や勉強会など(飲み会でもいいですが。。)で観察園を利用してください。ちょっと遠いですが,きっと面白いですよ。
達磨様
>ぜひ,採集会や勉強会など(飲み会でもいいですが。。)で観察園を利用してください。ちょっと遠いですが,きっと面白いですよ。 では、いずれ双翅目談話会の調査会or合宿を白神観察園でやりましょう!! 何人参加できるかはわかりませんが・・・白神山地のついでに岩木川のカエルキンバエも観察に行けますし。 早速4月3日の総会の際につぶやいてみます。 ケンセイ@岩木川の双翅目は河口から上流まで面白いですね。
観察園はこういう目的での利用も想定していますので,じゃんじゃん使ってください。とはいえ、まだ,観察園は遊歩道や東屋はあるものの,研究棟がまだ建っていません。採集会、合宿をお引き受けする前に、参加者が増えるように,「こんな面白い虫がいるよ!」ってなことを紹介できるようにしたいと思います。
はじめまして。
栃木県那珂川町在住の伊吹信一と申します。 栃木県のレッドデータブックにてお名前を知り、連絡方法が分からないのでこの欄を利用させていただきました。 地元で動植物の調査をしておりましたところ、ハマダラハルカと思われる固体2匹がマレーズトラップに入りました。 扱いを考えていて中村先生への連絡を思いつきました。 標本としてご入用でしたら送付したいと思います。 確実にハマダラハルカと同定できないので間違えだった場合はご容赦下さい。 突然の投稿失礼いたしました。
達磨こと、中村です。
栃木でマレーズトラップを使って調査をしているような方がいるとは存じませんでした。ハチ狙いでしょうか?ハエ? ハマダラハルカは環境省のレッドリスト掲載種であるため、栃木県のRDBにも揚げたものです。残念ながらと言いますか、嬉しいことにと言いますか、栃木県内では4月中低地〜山地の雑木林でごく普通に見られるものです。栃木県版RDBの分布図には確認地点が数点しか記録されていませんが、これは調査が進んでいないためで実際はかなり後半に分布しているものと思えます。ほかににたものがなく、同定間違いというのはほとんどないだろうと思います。今回捕獲されたものは何らかの形で公表(地元どうこう会誌に投稿するとか)していただけると記録が残っていいだろうと思います。 栃木県版RDBの昆虫の部分では栃木県で絶滅や減少の危惧が全くないものでも環境省リスト掲載種は必ず取り上げるということを決めています。ハマダラハルカは(栃木ではどこにでも見られる)ツマグロキチョウやギンイチモンジセセリ等と同じ扱いをしています。これは、「栃木県内ではまだ大丈夫だけれど、県外で何らかの危惧が生じているような場合は県内の個体群についても注目していきましょう」という考えからのものです。
中村剛之様
ご丁寧な返信をありがとうございました。 採ってしまったし、標本として管理することも出来そうにないので、どうしたものかと考えての連絡でした。 栃木県では珍しくない種ということ、了解いたしました。 ホトケドジョウなどもこの辺りの人達は食べていますし、恵まれた自然の中で暮らせることを感謝しなくてはいけませんね。 私は、永遠のアマチュアなのですが、縁あって栃木ハチの会で は中村和夫先生にもお世話になっていますし、野鳥の会では高松健比古さんと那珂川町備中沢での鳥の調査などもさせていただいています。 今回は、ハバチの調査用に貸していただいたトラップの設置テストをしていてハマダラハルカが入っていました。 栃木県のレッドリストのなかに見覚えがあったので、老婆心を発揮してしまいました。 お忙しいところ本当にありがとうございました。 お仕事の方頑張ってください。 |
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