干潮の海岸。海藻の付着した岩場に体長約4ミリ程度のハエがたくさんいました。彼らのほとんどは忙しく歩き回っていました。また5個体くらいが絡み合うように団子状になっていることもありました。何バエでしょうか。
2009.3.10昼頃 三重県津市
海岸の磯に生息するTelmatogetonイソユスリカ属の1種でしょう.脈相が不明瞭にしか写っていないので,私には種の同定はできません.本属には場所によっては渓流性の種もあります.しかし,渓流に生息し,Telmatogetonに形態や行動がよく似ているのがDiamesaヤマユスリカ属です.早春から羽化しますので,渓流のぬれた岩の表面を走り回って雌を探している雄を観察できます.
Telmatogetonは海生のユスリカの1群で,成虫は飛翔かのうですが,われわれが観察するのはもっぱ磯を走り回っているすがたです.かたまりになっているというのは交尾したペアにほかの雄がまとわりついている状況ではないでしょうか. ほかに海生のユスリカはClunioウミユスリカ属がありますが,これはずっと小型で,雌は翅を欠き,雄はオドリバエ科のミナモオドリバエ属Hilaraの種のように水面を滑走するように飛翔して,雌を探します.凪いだ磯近くの海岸の海面を凝視して,白い微小な昆虫が水面を流れるように滑っている(実際は飛んでいる)のが観察できたら,それはおそらくClunioの雄です.ただし,Hilaraの中には海面で求愛餌の捕獲行動をとるものがあるので,Clunioと間違えるかもしれません. さらに,海生のユスリカにはPontomyiaオヨギユスリカ属があり,これも雌は無翅蛆状で,雄は翅が飛翔には適さない特殊な形に変形し,著しく長い脚を持っており,おそらくこれらを用いて海水面を滑走するのでしょう.この仲間は日没後に潮溜まりなどに現れるとのことですが,私は残念ながら観察したことがありません.紀州の沿岸にぎょう産するとの記述があります.
三枝先生のおっしゃられる通り、Telmatogeton(イソユスリカ属)の一種です。この属は日本から2種、T. japonica(ヤマトイソユスリカ)とT. pacificus(ミナミイソユスリカ)が知られています。紀伊半島ですとこの2種が混生している事があります。翅脈が判れば種の判定は可能です。一般にjaponicaに比べてpacificusは見た目、かなり小さく感じられます。また、紀伊半島ならイソユスリカ属の仲間であるハマベユスリカThalasomya(T. japonica:ヤマトハマベユスリカ)も見られるかも知れません。
イソユスリカは岩に付着した藻の中で、ハマベユスリカは潮溜まりの中で幼虫を見いだすことが出来るかも知れません。ハマベユスリカはしっかりと空間を確保できる容易な岩の隙間などで沢山の雄が集合して群飛します。 立て続けにユスリカの報告が出てきて、喜んでおります。
Thalassomyaです。
またまた訂正.Telmatogeton japonicusです。
三枝豊平様、エリユスリカ様、ありがとうございます。
種名が判明する可能性があるならと、翅脈を撮影したく、今日もイソユスリカたちに会いに行ってきました。 これらの写真で判らないようでしたら、捕まえてみようと思います。
いずれエリユスリカさんから専門的な回答があるでしょうが,翅のいわゆるCu fork(翅の後方に位置する二分岐した脈)の分岐点がr-m crossvein(Cu forkの分岐部の前方,翅の前縁に近くボヤーと暗色に見える斜めの短い帯に相当)とほぼ同じ位置ですから,ヤマトイソユスリカTelmatogeton japonicus Tokunaga でしょう.
なお,Cu forkの分枝の前の脈はM4脈,後の脈はCuA脈です.これらは従来伝統的にそれぞれCuA1, CuA2脈と同定されていた脈です.
Telmatogeton2種の図を示しておきます。三枝先生のご指摘通り、翅のfcuを矢印で示しました。これとr-m横脈との位置関係から2種を識別することが出来ます。参考にして下さい。
添付:5229.pdf (36KB)
三枝豊平様、エリユスリカ様、ありがとうございます。
イソユスリカについて、物知りになった気分です。 2種の比較図もすごく参考になりました。
三枝先生がオヨギユスリカPontomyiaのお話をされていました。海浜性のユスリカには色々なものが知られています。イソユスリカはイソユスリカ亜科というまとまった群となっています。また、ウミユスリカClunioはかつてはウミユスリカ亜科と言う一群が認められていたこともあります。現在はエリユスリカ亜科に包含されており、ニセビロウドエリユスリカ属Pseudosmittiaに近いとされています。エリユスリカ亜科の中にも幾つか、海岸で見られる種がいます。オヨギユスリカはユスリカ亜科、ヒゲユスリカ族に含まれています。また、ヒゲユスリカ属の中にも海浜性の種がいます。多岐にわたって海への進出が見られます。
オヨギユスリカ属は日本から2種が知られています。紀伊半島なら、セトオヨギユスリカPontomyia pacificaでしょう。私は、この種は観察したことがありませんが、西表島でおそらくサモアオヨギユスリカP. natansだと思うのですが、この種については実際に採集しております。時期は2月中旬でした。新月の夜8時ごろ、星砂ビーチです。真っ暗な中、懐中電灯を頼りに採集をしました。潮溜まりでは見ることは出来ませんでした。波打ち際で盛んに海水面を走り回っているのを見ています。極々狭い範囲を活発に動いていました。残念ながら、雌を採集することは出来ませんでした。紀伊半島なら成虫を観察することが出来るかも知れません。ただ、大変小さい、1ミリちょっとの大きさですので、注意しなければ見逃すかも知れません。 知り合いから、頂いたセトオヨギユスリカの雌の写真を貼付しておきます。
言い忘れましたが、幼虫は昼間、潮溜まりで採集致しました。ですから、潮溜まりでも活動しているのかも知れません。
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まだテネラルな印象で十分着色していないのでしょうか.今頃オオユスリカがたくさん羽化します.あるいはこの種では.なお,あなたのTrichoceraに関する投稿について,同定の困難さに関してNo.5174に書き込んでいますが,読まれましたか?
体の大きさはどのくらいなのでしょうか?三枝先生の井おっしる通り、今頃からオオユスリカが沢山出てきます。特に冬期から初春期にかけて発生するオオユスリカは体色が強く黒化しています。5月頃には斑紋の明瞭な淡色のものが多数発生致します。写真はテネラルなので種までははっきりしません。が、前脚の脛節と第1跗節の割合から、ユスリカ属Chironomusであることは間違いないでしょう。腹部に節を横切る細いバンドが見られることから、セスジユスリカの可能性が高いようです。
オオユスリカには沢山の同胞種がいて、形態での識別はとても困難になってきています。日本のオオユスリカもヨーロッパのものとは種が異なるのではと指摘されています。事実、諏訪湖の個体群に対して幼虫の染色体、DNA解析からヨーロッパのものから異なるとの判断から、Chironomus suwaiと言う名前が、つい最近与えられました。とりあえず私はこれに対してスワオオユスリカという和名を与えています。これは、従来のC. plumosusと区別するために与えたものです。C. suwaiはあくまでも諏訪湖周辺部の個体群に対して命名されたもので、九州、北海道と同一種であるとの確証は無いためです。この事は、C. suwaiの命名者にも了解済みです。 なお、写真は雌個体のようです。特徴のはっきりしたものを除き、雌のみで種を同定することは、ユスリカでは、特に日本では、まだまだ困難な情況にあります。
三枝豊平様、エリユスリカ様ありがとうございます。
体長は5ミリは超えるが10ミリには遠いというような感じで見ておりました。ユスリカの写真撮影は初めてでしたので、こんなに彩りが鮮やかなものとは知りませんでした。テネラルの個体たちに共通した彩りなのでしょうか。ユスリカというと集団での活動を思い浮かべますが、この時期の彼らは個体数が少ないのですね。周りには他の個体の姿が見られませんでした。また、腹部に毛が生えていたのにも驚きでした。ユスリカには普通のことなのでしょうか。 「第1跗節」は文字化けしているのでしょうか。 今度ユスリカを見つけたら、雄の個体を撮るように心がけたいと思います。 三枝豊平様、No.5174の書き込みはもちろん読ませていただいております。共感していただいた部分があると知っただけでも恐縮しております。底なしの深井戸を覗かせていただいたような気持ちです。奥が深すぎて私ごときには返す言葉もありません。
体長が10ミリを超えないのなら、セスジユスリカにほぼ間違いないでしょう。セスジユスリカの幼虫は家の周囲のやや流れのある溝や、水田脇の水路などに生息しています。このセスジユスリカに外見のそっくりなヒシモンユスリカというユスリカも沢山います。私もユスリカを見始めた頃は両種の違いが全然判りませんでした。セスジユスリカと異なる幼虫を採ってきて飼育したはずなのに、羽化してきた成虫は皆セスジユスリカなのは何故だと随分悩んだ事があります。今は、雄の生殖器、斑紋のパターンで識別は出来ますが。この両種の幼虫はうまく棲み分けています。セスジユスリカは流水中に、ヒシモンユスリカは止水中に生息します。例えば、5月頃この両種は水田などで沢山出現しますが、水田脇の側溝にはセスジユスリカが水田内にはヒシモンユスリカがすんでいます。また、ミクロネシア、小笠原にはヒシモンユスリカにそっくりなミナミヒシモンユスリカ(Chironomus samoensis Edwards)と言う種が分布しています。沖縄や八重山にいる種がヒシモンユスリカなのかミナミヒシモンユスリカなのかはまだ結論が出ていません。私は後者だと思うのですが。これについてはオーストラリアの研究者が今、染色体、DNAで解析を行っているところです。彼には、本土産のヒシモンユスリカを飼育して、全ステージのサンプルを送ってあります。結論を楽しみにしているところです。
ユスリカに興味を持って頂ける方が、一人でも増えて下さるのはとても嬉しいことです。先の文章で文字化けしたもの:前脚のケイ節とフ節の割合、です。 |
日時:2009年 4月 4日(土)午前10時より
10:00〜 同定会 12:00〜 昼食・休憩 なるべく弁当を御持参下さい. (近所にコンビニ・ほかほか弁当があります.) 13:00〜 事務報告・会計報告 13:30〜 講演 14:15〜 ミニ講演 15:00〜 休憩・写真撮影 15:30〜 一人一話 <懇親会を午後6時半頃から予定しています(居酒屋 ニュー汐屋)> ◆場所:大阪市立自然史博物館 実習室 博物館へは職員通用門より入館してください.
市毛様、総会の案内ありがとうございます。
なお、遠方から来られて前日および当日に宿泊を予定している方のために、主要なメンバーが宿泊する予定のホテルをお知らせしておきます。 ホテル名:スーパーホテル梅田・肥後橋 電話番号:06-6448-9000 宿泊費:無料朝食付きで1泊6,090円(税込) |
この掲示板(一寸のハエにも五分の大和魂)では,双翅目の主に生態写真に基づく同定の依頼が多く寄せられています.このような同定については,これまで幾度か同定する側からの問題点が寄せられています.今回も田中川さんからTrichoceraが翅脈だけで同定可能かどうかの問い合わせが行なわれています.アーチャーンさんからは被写体を殺さずに(標本にしないで)おきたいという意向も示されています.
この問題について添付書類に私の見解を示してありますので参照ください. 添付:5171.txt (8KB)
三枝豊平様:
三枝先生には何度も御世話になって居りますし、また、私の名も出ていますので、一筆書かざろうを得ません。 先生が双翅目の普及の為、非常に努力されておられるのは、私の様な素人にとって大変有難いことだと常々思っております。特に標本の写真をその時々に応じて出して下さることなど、大変な労力を取られていることが察せられ、痛み入ります。それ故、先生がこの様なことを書かれるのも至極当然かと愚察致します。 しかし、このサイトが専門家かそれに近い埼玉県昆虫誌くらいの文献は最低持っている虫屋だけを相手とするのではなく、一般人にも公開していると言うことは、必然的に昆虫に付いての基礎知識を全く欠いた人が投稿すること、例えば、ボヤボヤのハエの写真や、時にはハチの写真を出して「何バエでしょうか?」と言う類の投稿があるのを覚悟しなければならないと思います。 私自身は、此方で見た頂いた結果をWeblogに載せることで、専門家と全くの素人との間の中継ぎになるのではないかと思って居ります(私のWeblogを見て虫嫌いが虫好きになった例がかなりあります)。小型の双翅目の場合、普通の人が見る生きた状態(生態写真)と翅を背側に揃え横向きに台紙や微針にマウントした標本とでは、余りに姿が違って見えます。双翅目に慣れた人以外は、図鑑に載っている横向きの図から、生きているときの姿を想像することは殆ど不可能であろうと思われます。生きたままの写真を示すことで、漸く普通の人でも比較が出来、また、虫に対しての親しみを感じる様になるのではないでしょうか。失礼ながら、先生の仰られる昆虫を殺さないで麻痺させる方法では自然状態での姿は撮れず、より正確な同定は出来ても、一般人への双翅目の普及には余り役に立たないのではないかと存じます。 虫の生態写真を精緻に撮るのは決して容易ではありません。私の写真は、生態写真としては比較的精緻で写真としても良く調整された方に属すと思っておりますが、私は大学時代は写真部と虫研の両方に所属しており、その頃から虫の写真を撮っておりました(以前も書きましたが、北大虫研の機関誌「蝦夷白蝶」第1巻の冒頭にある交尾中の蝦夷白蝶の写真は私が撮ったものです)。ストロボはかなり以前よりTTLになっていますし、最近はデジタルカメラなので、接写に伴う露出倍数やストロボとの距離などを計算する必要もなく、直ぐに結果を見ることが出来非常に楽になりましたが、それでも精緻な写真を撮ることが容易でないのは、此処に投稿されてくる方々の写真を見ればお分かりかと存じます。 精緻且つ調子も調整された写真を得る為に、私がどの様なことをしているかを書くのも、何かの参考になるかと思いますので、一寸書いておきます。微小な虫を精緻に撮るには、ハンマー氏の様に、コンパクトカメラにクローズアップレンズを付ける方法が被写界深度(焦点の合う範囲)が深くて一番良い様ですが、私は仕事で使うカメラを流用しているので、一眼レフに100mmのマクロレンズを付けて撮って居ります。 レンズの焦点距離が100mmなので、被写体(虫)からかなりの距離を取ることが出来、逃げられる機会は少なくなりますが、その反面、被写界深度が浅くなります。絞り(F値:焦点比)を大きくすれば深度は深くなりますが、回折により解像度は低下します。この辺りのバランスが難しいところです。小さな虫を等倍且つ高解像度で取る必要があるときは、普通F16(このカメラでは撮影時のレンズ中心からの比率なので、等倍接写の場合、レンズ自体の焦点距離に対する比率は半分のF8)に設定しますが、この時の深度は0.5mm位ではないでしょうか。この0.5mmの範囲に虫の手前側を入れなくてはいけないのです。人が立ったままの姿勢の場合、自分では気が付きませんが、頭は数mmの範囲でフラフラしています。そのフラフラしている間の焦点が合う一瞬を狙ってシャッターを切る訳です。合ってからでは遅いので、次の瞬間に合う、と思った時に切ることになります。射撃と同じです。この立った儘の姿勢の場合、F16の「命中率」は10%以下になります(現実的でないので、立った儘の場合は普通F20以上に設定します)。膝をついたり、しゃがんだ姿勢の場合は20〜30%になりますが、何れにせよ、一方向のみでも安全を見込んでかなりの枚数を撮る事になります。私は可能であれば最低限、背面、側面、正面、斜め前の4方向から撮ることにしていますので、虫1頭を高精度(F16)で撮ろうとすると、全部で30〜50枚撮ることになります。先日先生に同定していただいたチビクチナガハリバエの1種Siphona paludosaの場合は、深度もずっと浅く、また、焦点合わせの難しい2倍の超接写システムを使いましたので、全部で200枚以上撮ったと思います。 撮った写真のデータは全てraw形式で保存しています。接写の場合、カメラが妙な判断をしてとんでも無い色調にしてしまうことが屡々あり、jpgにすると色の調整が不可能になってしまうからです。rawで撮った写真はサイズが大きいので、表示にも時間がかかりますし、jpgその他の形式に変換する現像処理をしなければなりません。 撮った後は、先ず、沢山の写真の中から使える写真を選び出します。全てピクセル等倍に拡大し、精緻度、深度を比較しながら不要な写真を削除して行きます。精度が同程度の写真が複数枚あるときは、選択にかなり時間がかかることもあります(優劣の付かない写真は全て残しておき、後の段階で1枚を選びます)。この時、虫全体の写真としては使えなくても、翅脈がハッキリ写っていたり、同定に必要と思われる剛毛が良く写っているコマは残しておきます。この取捨選択は、写真の枚数が多い場合、かなり疲れる作業です。 次にraw形式の写真を現像してjpg形式に変換します(TIFFの方が劣化がないので良いのですが、大き過ぎるのでjpgにしています)。色温度、コントラスト、アンシャープの度合い等(それぞれに複数の設定項目があります)を個々の写真に合わせて設定し現像します。この時、出来る限り色調その他を統一しておく必要があります。複数種のカメラを使っていますので、現像には汎用のSilkypixを使っていますが、このソフトウェアは複数の写真を大きく表示出来ないので、調子の比較が出来ません。人間の眼は随分いい加減で、見るときによって随分調子が違って見えます。そこで次に、Nikon Scanと言うニコンのフィルム・スキャナー附属のソフトウェア(これがメモリーも食わず、操作性も非常に良い)に、標準として定めている写真と新たに撮った虫の写真を同時に表示させ、主にトーンカーブ補正を使って調子を揃えると共に、同じ様な写真の取捨選択を行います。 このNikon Scanには、調子を整える機能しかありませんので、掲載に必要なトリミング機能は付いていません。そこで、最後にカメラ附属の「Adobe Photoshop Elements 2」を使って、必要な部分を切り出し、最終的な仕上げ(部分を切り出すとまた調子が少し違って見えます)をして、Web用の高圧縮jpgファイルに落とします。これで終わりとなります。 写真の枚数が少ない場合(仕上げが1枚)は大したことはありませんが、枚数が多いと、これはかなりの労力を要す作業となります。私のハードディスクの中には、一昨年や昨年撮って未だに選択すらしていない写真がかなり残っています。丁度、採集はしても、三角紙の中に標本にしていない虫が残っているのと同じです。 この様な作業の他に、更に虫を採集して標本にするとなると、これは、もう職業的な昆虫写真家でないと、時間的にも出来ないことだと思います。 ・・・と言う訳で、私としましては、今後はより解像度が高く、同時に検索に必要な部分が良く見える写真を撮るべく一層の努力致したいと思っております。私も大学1年までは採集をして居りましたから、特徴の少ない双翅目昆虫の場合、ゲニタリアを見ないで種を判別できるとは始めから思っておりません。属まで落ちれば、万々歳です。 また、問い合わせをするときには、せめて科まで落としておくのが、訊ねる側の然るべき態度だと思います(落ちない場合もありますが・・・涙!!)。幾ら写真が精緻でも、自分で何も調べずいきなり「何でしょうか?」と訊ねるのは、全くの素人は仕方ありませんが、多少は虫に関係している者のすることではないと思います。 以上、甚だ僭越不遜かも知れませんが、私の思うところを述べさせて頂きました。先生におかれては御不満かと存じますが、今後とも何卒御見捨てなく御指導下さる様、切に御願い申し上げます。
アーチャーンさんの写真が精緻なことはいつも感心していましたが,このような努力の賜物であると初めて知ることができました.撮影や画像の処理の方法など全く私の及ぶところではありません.このような方法があるのか,と感心しています.
また,投稿される方が,名前を知りたい,と言う意向が,必ずしも分類学的に種まで,ということではないとは常々思ってはいますが,こちらではつい種までと,みずからの努力目標にしてしまうところです.このあたりの認識の違いがでるのかもしれません. 私は従来のカメラを用いていた時代には,かなり精緻な写真が撮影できたのですが,デジタルになってからは,次々と新しい機種が出てきて,いったい何を使ったらよいか,途方にくれます.時々良い写真を撮影している方に撮影機材などをお聞きして,それを購入して使うこともありますが,なかなか使いこなす域に達しません. そのようなわけで,ピクセル数のいたってすくないCOOLPIX 990をほとんど愛用しています.これに顕微鏡の接眼レンズを逆付けするとか,少しは工夫をしているのですが,どうしても解像度にはおのずと限界もありますし,また球面収差や色収差が出てしまいます.新訂原色昆虫大図鑑に使った写真もほとんどすべてこのカメラで撮影したものです. もちろんこれらは標本写真ですから,あなたのように生態写真を撮影する場合はさらに困難な問題があることは理解しています. 双翅類の名前がわかる側としては,掲載された写真について,わかる範囲で答えておくということにしておくのがでいいのかと思っています. ご意見の: [失礼ながら、先生の仰られる昆虫を殺さないで麻痺させる方法では自然状態での姿は撮れず、より正確な同定は出来ても、一般人への双翅目の普及には余り役に立たないのではないかと存じます。], と言う点については,あなたの志しておられる自然状態の生態写真についてあれこれ言っているわけではありません.被写体のより詳細な同定を希望されるのであれば,自然状態の写真を撮影した後に,その個体を採集して麻酔状態で識別形質が分かるような写真を,同定のために撮影したらいかがだろうか,という意味です.撮影後に麻酔が醒めたらば,また野外に放してやることで,被写体を殺さずにすむからです.しかし,この場合でも麻酔の度合いを深くしすぎたり,また冷媒が体につくなどをすると,毒殺または凍殺(こんな言葉はないですね)してしまうことになります.この場合に,私が紹介している吸虫管を使うと便利です.
三枝豊平様:
先生が特にお怒りではない様なので、胸を撫で下ろしております。 後半の麻痺させる方法についてのお話は了解致しました。 今後も宜しく御指導賜るよう御願い申し上げます。
三枝様,アーチャーン様.
私は,昆虫写真が高じてこの道に迷い込みました;^_^) 周りにプロやセミプロクラスの方が多かったので,人とは違った地味な昆虫を撮影するようになったのですが,普通の図鑑では種類が判りません. しかし,リバーサル時代ですのでフィルムだけでも毎月何万円という金額が掛かっており,出来の良い写真の虫の名前をどうしても知りたいと思いました. そこで,当時世田谷の東京農大前にあったTTS昆虫図書などで色々な本を片っ端から購入すると共に,出来る限り撮影した昆虫を採集して標本にするようになりました. 結局,写真のほうは才能が無いとあきらめましたが,採集だけは続いております. この生態写真を撮影した後に採集するというスタイルは,現在でもいくつかのグループで行われているようで,番号分けした容器で持ち帰るようです. なお,昆虫写真のパイオニアだった佐々木昆氏は,微小昆虫を撮影する際に軽い麻酔をかけて動きを鈍くすることもあったと思います.(当時,写真集団の飲み会で麻酔は邪道かとかいう論議で盛り上がったような覚えがあります)
茨城_市毛様:
写真の方が先であったとは存じ上げませんでした。人様々であることを今更の如く実感致しました。 私は高校〜浪人時代に5,000以上ものヒメバチを採集し、標本にもしたのですが(ハチ用展翅点足板と言うものを考案してそれを使って標本を作っていました)、北大に都落ちしている間に全てカツオブシムシに食べられてしまったので、無駄に虫を殺してしまったと言う慚愧の念が強く、以降は虫を殺すのに抵抗を感じる様になりました。 写真の方は、田中光常氏の動物写真や佐々木昆氏のマクロ撮影(当時唯一オートベローズを使えたミノルタSR7を使われていたと記憶しています。ミラーが大きくミラー切れが生じ難い代わりに後退ミラーの為故障が多かったと聞いています)に興味をそそられていました。しかし、田淵行男氏の「アシナガバチ」を見て、やはり昆虫の写真を撮るならばlife cycle全体を撮らなければ無意味に近いと思い、それ以降虫の写真は余り撮らなくなりました。しかし、この時期に写真に関する光学理論や現像理論等を随分勉強しましたので、これがその後非常に役に立っています。 大学の研究室に入ってからは、膨大な各種顕微鏡写真その他(合計フィルム約1000本)を毎日の様に撮っており、殆ど写真屋みたいなものでした。とても趣味で写真を撮る気になる様な状況ではなく、暫く趣味の写真は全く撮りませんでした(結婚式の写真撮影等は屡々頼まれましたが・・・)。 (中略) 虫の写真を再度撮り始めたのは、フィルム代のかからないデジタルカメラになってからです。ただ虫の写真を撮っただけでは昆虫写真家としては殆ど無意味に近いとは今でも思っていますが、私は写真家でありませんし、Internetの普及に伴って、ただの虫の写真でも図鑑的な意味合いが出て来たので、最近はまた虫の写真を撮っている様な訳です。 ハンマーさんも写真ばかりでなく採集もされている様ですし、過去ログを見ると、バグリッチさんも初めは写真だけだった様な感があります。「同定」という言葉の本来の意味に準じる同定をするには、標本を作る、或いは、三枝先生が仰る様な麻痺させてゲニタリアを含む必要部分をシッカリ撮る必要があることは重々承知しておりますが、時間的な問題もあり、実現は中々難しいところです。
皆様こんにちは
私は若い時は昆虫採集、今は昆虫写真のほうを楽しんでおりますが、ハエの分類に関するまったくの知識不足から、少し前までは、アーチャーンさんと似たともいえる考えを抱いておりました。そして私のBBSでしたが、ハエ研究の世界は門外漢に非常に不親切で、素人には写真では同定不可とにべもない門前払いを食らわせる敷居が非常に高い閉鎖空間である。このままの状態では周囲からの善意の知識や情報提供は期待できなく、外部との交流のなさは次世代の人的資産の育成を阻み、結果的にジリ貧に陥ってゆくであろうという大変な暴言(大恥だ)を吐いた者です。 私も自分で撮影した昆虫は名前がわかったほうが楽しいし、また、撮影した写真が昆虫学に対して何らかのプラス要素になれば、あるいは一般人が自然に対して興味を持つきっかけにでもなればすばらしいと考えています。 しかし、大型の比較的同定の簡単なグループの昆虫あるいはその分類研究分野にいらっしゃる研究者に対するのと似た目線でしばしばハエ界を見ていたものですから、ハエは生態写真で科あるいは属レベルぐらいまでは簡単に同定できると誤解することもしばしば。ひいては研究者の知識不足や研究不足や怠慢ではないかとのうがった見方もしたりしていました。 しかしそのときに三枝先生から、日本あるいは世界のハエ研究の実情と現状ならびに研究対象となるハエ目の膨大さや同定の困難さなどを詳しく説明していただき、目からうろこが落ちたように感じ入りました。 このハエのBBS運用に関しての研究者側からの説明あるいは考えは上の三枝先生の説明でもよくわかります。 あとはこのBBSに接するにあたっての生態写真撮影者側の考え方がどのようなものかが重要なポイントであろうと思います。これはまったくに個人個人で異なるもので、どうあるべきかなどひとつにくくれるものではないだろうと思います。投稿者の考え方つまり要求が多岐にわたるわけです。ただ、よそ様の座敷にあがるのですから最低限のマナーは必要ですね。 こんな考えをしてる人物も中にはいるんだという情報提供のために私の考えを述べておきましょうね。 私はいわゆる『やらせ写真』は好みません。あくまでも自然状態での生態写真にこだわっています。撮れなければそれで結構。そこにこだわるからこそ私自身チャレンジの目標もできまたそのための作戦や面白い取り組みもできるわけです。これはまったくの自己満足の世界であって、他の方に決して強制するものではありません。 子供向けのカブトムシ・クワガタの図鑑の定番に、クヌギの樹幹に昼間堂々ととまっているオオクワガタの写真が出たりしますが、本当は夜行性のオオクワガタは昼間はよほどのことがない限り木のウロからは出ません。カミキリムシのある生態図鑑にシイの樹幹に昼間とまっているベーツヒラタカミキリが掲載されていますがこれもまたしかりです。撮影の困難な種に対してはごく軽い麻酔をして撮影、あるいはスタジオに持ち込んでの撮影、または飼育してからの撮影も方法としてはありますが、わたしはやりません。私にとっては現在必要がないからです。でも、一般人向けにはこの手の作られた写真は昆虫の生息環境を理解させるにはもってこいの写真だとも思います。私が自分に課している写真の撮り方ではないのでそうしてまでは生態写真モドキは撮りたく思っていないだけです。もし将来、子供たちなどに説明するために必要な機会が増えてきたら着手するかもしれません。 今現在どうしても写せない写真のひとつはクロコノマチョウの翅の表なんです。標本写真を写せば表を撮影するのは簡単なのですが自然状態ではこのチョウはとまった時は必ず翅を閉じます。羽化のときなどに瞬間的に表が見えるかもしれないと、万一の機会をいまだに窺っています。 昆虫は生きているときと標本にしたときはまったく違って見える種が多いです。生きているときはどのように翅をたたんでいるか、生きているときの複眼の色は何色か、擬態の姿勢など、標本からは窺い知れない多くの情報が生きている写真から得られます。これも昆虫を研究するに当たっての重要な分野だと私は思います。そのためにはいろんな方法を駆使しての生体写真(生態写真ではない)も必要なのだとは思います。ただ前述のとおり私には必要がないから撮らないだけなのです。もし私に時間がたっぷり、機材も資金もたっぷりでしたら取り組むかもしれません。 アーチャーンさんがおっしゃった「失礼ながら、先生の仰られる昆虫を殺さないで麻痺させる方法では自然状態での姿は撮れず、より正確な同定は出来ても、一般人への双翅目の普及には余り役に立たないのではないかと存じます。」というくだりに関しましては、事実誤認ではないかと思います。標本やより正確で詳しい写真ならびにその同定やデータなどは分類学や形態学など多くの学術分野の発展に寄与するものであり、その基礎的情報の集積や分析結果が一般人に知識としてフィードバックされ、一般人への問題提起や一般人の興味を奮い立たせたりあるいは疑問解決に役立つのだと思います。そういったシステムが文化だと考えます。 私自身はこれからも野外でハエ目の写真は機会あるごとに撮影していこうと思っております。これだけ学術が高度になりまた研究分野が広く深くなっていくと人の一生でやれる作業時間には収まらずに分業の世界になってゆかざるをえないと思いますから、とりあえずは撮影した写真を自分でストックだけはしておこうという魂胆です。将来なにか活用できる場があればそのときにホコリを振るいながら取り出そうと考えています。 で、このBBSに対しては私はどのように接していくかですが、後ろ向きではありますが、BBSは時々訪れて、種々の書き込みを読ませていただき、我が貧相な頭に少しでも活を入れておきたいです。 |
32KBのワード文書を添付しようとしましたが,拒否されました.どうしたらいいでしょうか.文中には♂交尾器という単語が入っていますが(市毛さんは5166で「交尾器」をつかっています),それ以外は引っかかりそうな言葉は使っていません.文書がながいので,本文は避けようとして,添付にしたのですが.ただし学名は斜字体,一部の文章はゴシック(太字)を使っています.
三枝豊平様.
掲示板の使用を見ると, 添付可能ファイル : GIF, JPEG, PNG, TEXT, PDF, MIDI 最大投稿データ量 : 100KB となっていますので,ワード文書は添付出来ない設定のようです.
市毛さん.有難うございました.テキストファイルにしました.
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