以前もどなたかの指摘があったところですが,同定などの依頼を含む場合は,特に秘匿にする必要がない限り詳細な観察(採集,撮影)場所とその年月日(と必要なら時間)を示してもらいたいと思います.これらのデータによって,同定がより正確になると共に,その種の分布記録としての価値がはじめて生まれることになります.昆虫の標本でも,データラベル(採集地,採集年月日,採集者)は一つ一つの標本に必須のものでして,この原則は観察記録や撮影記録などの他の記録にも必要なことです.
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Pselliophora bifascipennis ホリカワクシヒゲガガンボ♀です。体色に変異があり、この個体よりかなり黒いものもいます。
達磨さん、同定ありがとうございました。
1.双翅目(ハエ目)の同定は,外観の画像でおおよその見当が付く蝶や蛾,あるいは甲虫類などとは違って,翅にある翅脈の細かな走り具合(翅脈相)や,体に生じている毛(刺毛,剛毛),触角の細かな特徴などを顕微鏡で観察して,その形態学的形質を把握しないと,正確を期すことはできません.
2.双翅目の同定ができる一般的な図鑑類はほとんど皆無です.そのために双翅目のそれぞれの科などの専門家が,その学識に基づいてボランティア的に同定に協力することになりますが,日本では専門家の数が著しく少なく,かつこのサイトでの同定に協力している専門家はごく少数で,限定された科に留まっています.たとえば3番目のユスリカ科の場合では2,3名しかこの科全般の専門家はいなくて,いずれもこのサイトには登場されていません. 3.このような状況ですので,ハナアブ科のように非職業的研究者の協力が得られやすい少数の科を除いて,かなり同定を依頼する目的がはっきりしていないと,回答があまり期待できないと思います.デジカメの発達によって片っ端から写真を撮って,ご自分で図鑑類などでの予備的な調査を行わずに,尋ねられても,蝶や蛾のように簡単に回答が得られる可能性は少ないと思います. 4.それと,1で述べたように,双翅目の同定には細かな形態の顕微鏡での観察などを必用とするので,同定を強く期待するのであれば,必ず撮影した虫体そのものを標本として採集,保存しておくことが必須です.採集道具がない場合は手で軽くつぶして紙包みにしておいたものでも,参考になる場合があります. 5.以上の点を考慮して,ご自身でせめて科までは同定して,その上でさらに詳細な同定を依頼する,というのがご自身にとっても勉強になるし,また双翅類に対する興味が一層増すのではないかと思います.科までの検索表は日本でもいくつか出ています.最近のものでは北隆館の新訂原色昆虫大図鑑第3巻に日本産の双翅目の科の検索表があります.これは20倍くらいのルーペや双眼実体顕微鏡(たとえばニコンのファーブルシリーズなど3−5万円台の簡易のものもあります)を用いれば検索可能です. 6.それと双翅目の多くの科では,2で述べたように研究者が少なく分類学の研究が大変遅れていて,日本に生息する種の半分以上がまだ学界に未発表の未記載種(発表されたばあいに新種となる)や未記録種があります.このような種が,双翅目では特に珍しいものではなくて,人家の庭に普通に生息している種の場合さえも稀ではありません.ですから,ハネカクシ科などを除く甲虫類の多くや,小蛾類の一部の科を除く鱗翅目のように,普通に接する昆虫がほとんど名称を持っている,というようなことは双翅目では一般的ではありません.日本におそらく数百種は生息すると推定されるアシナガバエ科の場合でも,庭先や近隣の低山の路傍の湿地などにいるものの,ほとんどは名称がないか日本未記録の種です.このような点も他の昆虫の同定とは違った困難さがあります. 7・最近のtumumasiさんの4647の同定依頼に対する6月27日の市毛さんの4649の投稿も参照下さい.
アノニモミイアさんの仰る通り、写真で種が特定できるのはたまたまよく調べられている種か、よほど特徴的な種だけです。承知しておいてください。
上の蚊は胸部の模様からすると、シロカタヤブカAedes nipponicus だと思いますが、写真情報のみによる同定は参考程度とお考えください。
ユスリカ科、モンユスリカ亜科、ダンダラヒメユスリカ属、ダンダラヒメユスリカAblabesmyia moniliformis Fittkau, 1962の雌です。
ユスリカ科は現在まで、訳1100種程が報告されています。この種数はおそらく600から700種程度に整理されるでしょう。しかし、日本列島の豊富な環境から考えて、また私自身の採集等から考えて最終的には2000種を超えると考えています。また、屋久島の北琉球から八重山に至る南琉球までにおそらく1000種を超すユスリカが分布していると思います。我々の身近にも相当な週が見いだせますが、ある程度は写真だけでも見当のつく種もいます。
エリユスリカさん.ユスリカについて,翅に斑紋があったり,顕著な体の色彩・斑紋の種などについて,画像から種とまではいかなくても,属や属群などについて同定して回答していただけると,これからこの場に投書する人が多いかと思います.宜しくお願いします.
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ゴンベ様.
写真のハエはツマグロキンバエです.
茨城@市毛様
ありがとうございます。 ツマグロキンバエですね。 早速、生態などを調べてみます。
ツマグロキンバエについては,成虫は各種の花を訪花すること(腐肉などに集まっているのを観察したことがありません),雄は空中1-数mの高さをホバリング型の飛翔をしていること,土を耕すと雌がここに飛来すること,初夏から晩秋まで成虫が活動すること,などを知っています.しかし,私のたよりない記憶では,最近本種の幼生期についての記録が出ていたように思います.どなたか,これについて正確に出典をご存知でしたらお知らせください.
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アーチャーン様,はじめまして.
ココログを見てきましたが,結構勉強しているようですね. 過去ログも色々と見てくれているので助かります. さて,写真のヤドリバエはCylindromyia pandulata等とは腹部に白色微毛による帯を欠くことや翅脈が異なるので別種です. また,手元に写真のヤドリバエと酷似した標本があるのですが,この標本では触角刺毛は多数の毛が生えているのでCylindromyia属とは別属になるようです.通常,Cylindromyia属は触角刺毛が無毛です. 一応,旧北区のヤドリバエ科の属の検索で調べたのですが,途中で躓いてしまいました.(実は,属の検索で100頁以上あります(^_^;)
早速の御回答有難う御座います。余りに素早いのでビックリしてしまいました。
結果としては、「Cylindromyia属ではないが近縁属(ヒラタハナバエ亜科)のハエである可能性が高い」、と言うことでしょうか。 色々御手数をかけたようです。どうも有難う御座いました。 他にも訳の分からないハエの写真があります。今後とも宜敷御願致します。
アーチャーン様.
Phasiinaeヒラタヤドリバエ亜科ではなく,Dexiinaeアシナガヤドリバエ亜科の仲間でPhyllomya属ではないかと思います.(図鑑に出ているコンボウナガハリバエTorocca mundaもDexiinaeです.) Phyllomya属だとすると,手持ちの標本は,3+3 dc,1+1 stplで腹部に白色微毛を欠くのでPhyllomya nobilisと思われましたが,Mesnilの論文を殆ど持っていないので詳細が良く判らず放置してあります. もっとも,Mesnilの論文自体がドイツ語で各部の詳細が記述されているだけだと思いますので,これだと決めるのはかなり大変です. 双翅目関連の論文では,外形が図示されることは非常に稀です.♂交尾器が図示されていれば良いほうで,文章から形態を読み取らなければなりません. 時には,○○に酷似するが下記の点で異なると書かれていることもあり,正しく同定された○○の標本が無いと完全にお手上げです.
市毛様
重ねがさね有難う御座います。それでは、「アシナガヤドリバエ亜科の仲間でPhyllomya属の可能性が高い」とすることに致します。近々このハエをココログの方に掲載する予定で居ります。
先日、このハエを「アシナガヤドリバエの1種(Phyllomya sp.?)」としてココログhttp://wolffia.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/phyllomya_sp_cb4d.htmlに掲載致しました。御笑覧下さい。
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