![]() よろしくお願いいたします。 HM ![]() 採集場所 静岡県裾野市 標高約200メートル 体長 約3ミリ 採集日 平成26年2月7日
写真のハエはハモグリバエ科Agromyzidaeの1種です.画像だけからでは同定は困難ですが,スイカズラにも寄生するハモグリバエがあります.少なくともスイカヅラハモグリバエChromatomyia suikazurae Sasakawaという種があり,これはLoniceraの各種に潜葉します.本種は新訂原色昆虫図鑑第3巻361ページや幼虫などは北隆館の日本幼虫図鑑の679ページにNapomyza xylostei Kaltenbach の学名で解説されています.
ハモグリバエ科は一般に雌が葉の組織内に1個産卵し,孵化した幼虫,要するに蛆は葉の葉肉内に坑道を作りながら葉の表皮だけを残して葉肉の組織を摂食します.十分に摂食して老熟すると,葉から離れて地上で蛹化するものや,スイカヅラハモグリバエやセンニンソウハモグリバエなどのように潜葉痕の最後の部分で蛹化します.蛹化と言ってもハモグリバエ科のようなハエの仲間は幼虫の皮膚が一般に俵型に変形して囲蛹殻にかわり,その中に蛹の本体が形成されます.そして羽化するときには成虫が頭部の前端を膨らませてその力で囲蛹殻の前部をあたかもマンホールの蓋をあけるように押し開いて脱出してきます.上記のハモグリバエの場合には葉の表皮の直下で蛹化するので,その部分の表皮を押し開けるようにして羽化してきます. 今回の場合は,おそらくスイカズラの葉に白っぽい細い曲線を引いたような模様が見えるかと思います.これが幼虫が摂食しながら穿孔したあとの潜葉痕で,その先によく注意すれば中に囲蛹殻が見えて,その部分の葉の表皮がごく小さく破れているはずです.この破れ目がハエが脱出した穴です. なお,最初の画像が雌,2番目の個体が雄です.腹端部の形状は雌雄で異なり,雌の腹端は強く骨化した細い円筒状になっていて,この部分の内側に産卵用の腹端部があり,ここで葉に傷をつけて産卵やまた種によってはそこから染み出る葉の汁を舐めたりします.雄の腹端部のくびれの先についているのが雄の外部生殖器,すなわち交尾器です.
アノニモミイア様
たいへん詳しい解説をありがとうございました。 翅脈からハモグリバエではないのではないかと勝手に判断していました。穿孔のあとも見つけることができませんでした。 以前にハモグリバエの幼虫を観察したことはあり、囲蛹殻も探したのですが、見つかりませんでした。 http://www.youtube.com/watch?v=ysOZ-2SAgVA 探し方が悪かったようです。今日も続けて3匹目が羽化しました。囲蛹殻探しをこのあともう一度してみようと思います。 ハモグリバエの生態や雌雄の別など、たいへん勉強になりました。 今後ともご指導よろしくお願いいたします。 HM |
ご無沙汰しております。
シマバエ科を調べてみようと標本を一箱に集めてみたのですが、文献が散発的でなかなか種が決定できません。 その過程でネット上の文献を見つけたので貼っておきます。 http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010813734 これで兵庫県が1種増。 ついでに東京のTKM未記録種もひとつ。
Arge様、御無沙汰してます。東京都の記録をご紹介いただきありがとうございます。こういう文献はなかなか気づかないので助かります。
Okadome, T.,2011,Genus Itomyia and a new species from Japan (Diptera, Lauxaniidae), Scientific reports of the Faculty of Agriculture, Meijo University,(47):1-4 東京からはItomyia atrifronsという種が記録されました。 東京都本土部の双翅目は現在1454種で埼玉県昆虫誌を越えました。(昆虫全体で10087種) 今後ともご協力をお願いいたします。 |
![]() 初めて投稿させていただきます。 京都市で採集したキノコ食の双翅類についてご教示お願いします。 Manual of Nearctic Dipteraを調べたところ キノコバエ科のDitomyia属へたどり着きましたが自信がありません。 この掲示板でも以前にDitomyia属についてのスレッドが あったようですが、成虫の見た目はだいぶ違うように思えます。 写真の固体は2012年8月5日に採集したクジラタケから 8月24日に羽化した固体です。
TK様.
ヤマトケヅメカ Asioditomyia japonicaかそれにかなり近い種類だと思います. 参考としては下記の論文があります. http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/bulletin/419/documents/419-4.pdf
このキノコバエはAsioditomyia japonica (Sasakawa)の♀でしょう。この属はDitomyia属に比べて口器がかなり退化し,小腮鬚はたった1節になっていますので,標本でこの点も確認してください。もし,1節なら確実にAsioditomyiaです。
![]() 参考文献ありがとうございます。referencesも含めて大変参考になりました。 三枝さま ありがとうございます。小腮鬚を観察したところ1節からなるようです。Asioditomyiaで間違いなさそうです。 ![]() なお,Asioditomyia属は日本のほかに,ネパールヒマラヤ,ミャンマー,中国,台湾からの標本を持っていまして,これらはいずれもA. japonicaにかなり類似したもので,たとえjaponicaとは別種であっても異所的な種分化をしたものと思われます。一方スラウェシの高地に分布するCelebesomyia inocellata Saigusa, 1973は上記のような東アジアに分布するAsioditomyiaの祖先種がスラウェシに侵入して特化したものと思われます。種小名の通りキノコバエ類としては例外的に単眼をまったく失った種です。ボルネオやマレー半島などにもおそらくこの仲間が生息すると思われますが,まだ材料が得られていません。 |
最初の個体はRhamphomyia (Calorhamphomyia) formidabilis Frey, 1951の♂です。
2番目の個体は私が越佐昆虫同好会会報50号慶祝論文集の「新潟県の昆虫」に出した「馬場博士採集の新潟県のオドリバエ科」の185ページに,Rhamphomyia (Calorhamphomyia) sp. 4 (complicans 種群)として記録してある未記載種です。本種は本州のほぼ全域に分布し,R. (C.) complicansと同所的で,これより約一か月早く成虫が発生する種です。♂交尾器の第7腹節腹板に生じる突起の形状などにcomplicansとの相違がみられます。新訂原色昆虫大図鑑第3巻にcomplicansの交尾器の写真を出していますので比較されるとよろしいかと思います。
三枝先生.
早速, 新訂原色昆虫大図鑑第3巻で交尾器を比較して違いがよく分かりました. とても分かりやすく教えて頂き,ありがとうございました. |
- Joyful Note -
- Antispam Version -