茨城県南部霞ヶ浦水系の湿地で採集した体長7mm程のフンバエです.
当初,ヒザグロフンバエCleigastra apicalis ではないかと考えていましたが,先の同定会でバグリッチさんと話した際に,玉木さんがNanna属として記録した種類と同種ではないかとの話になりました. (Sifner,2003 でNanna属は無効名とされ,現在ではAmurosom属となっています) *)田悟敏弘・玉木長寿, 2005, 埼玉県,千葉県,茨城県,東京都で,2003−2005年に採集された双翅類の記録(2). 寄せ蛾記 118:39-49. 再度,旧北区の検索で属を調べてみると,couplet3の"Postpronotal lobe anteriorly with erect spines"という記述がありますが,写真のように肩瘤にspineと言えるほどの太い剛毛はありません. ヒザグロフンバエについても,日本産昆虫総目録で本州に産すると記されているだけで,具体的な記録が出てきません.ネットで調べてみると,まあさんが阿武隈山地で撮影した画像が見つかるだけでした.http://mitikusakuttemiyo.blog70.fc2.com/blog-entry-876.html この個体は,どちらの属なのでしょうか? 御教授頂ければ幸いです.
市毛様
こんにちは。 同定会の際にお話ししました通り、画像の種は、手持ちの標本とよく似ています。 肩瘤には、非常に強い刺毛があります。 市毛さんの標本で欠損の可能性もあると思います。 ただ、その位置がanteriorlyでなく、postetirolyな点が異なっています。 いくつも持っていますので、この週末でも標本をお送りします。比較してみてください。 また、あす以降、画像と標本と詳しく比較してきたいと思います。 ではまた。
市毛様
良く似た手持ちの標本で検索してみました。 ご指摘の『肩瘤にspineと言えるほどの太い剛毛はありません.』の部分ですが、確かに、そのようなものはありません。 私が前のコメントで書きましたものは、強い刺毛で、spineでなありませんでした。 旧北区の検索ではNannaには落ちずに、Orthachetaに行ってしまいました。 Nannaではないように思います。 一方で、Cleigastra にも行き着きませんでした。 画像を添付しましたが、成虫全形画像の左はオス、右はメスです。オスは白い長い毛を体の下面〜脚のたくさん備えていて、大変きれいです。 というわけで、結論できませんでした。 詳しい方のフォローがいただけますとありがたいです。
バグリッチ様.
確かに小楯板剛毛が2対あり,CMPDではOrthacheta属に行きつきますね.(脱落してたのと,日本にいないだろうと思って見落としてました) 改めてSifnerのフンバエ科カタログで極東ロシアの記録を調べてみたところ,20属近くが記録されており驚きました.(一部,Cordilura属等を細分化しているような傾向もあります). 中国の記録は,中国蠅類からあまり増えていないので,調査不足のようです. CMPD(旧北区の検索)に載っていない,1999年に極東ロシアから新属として記載されたLangechristia属が気になります. やはり,フンバエ科は難しいですね.
市毛様
手元に、未同定の小型のフンバエ科を結構持っています。 小型種は情報が少なく、難しいです。 今回の種は、本日、2オス、1メス送りましたので、比較してみてください。 ではまた。 |
Fly Timesの今秋号51号が本日オンラインされました。多くの新知見が盛られ、また北米の双翅類の生態写真も含まれています。
http://www.nadsdiptera.org/News/FlyTimes/issue51.pdf |
蝿野様.
最初の種類は,クチキバエ科と思われます. 触角第2節の前縁中央が張り出していませんか? (絵解き検索 couplet 74 ) 2頭目は,破損が激しく頭部などの情報が無いので,私のレベルではわかりません. 前回,書き忘れたのですが,笹川の絵解き検索は解説文が書かれていないので,保育社の原色日本昆虫図鑑(下)等にある検索表を参考にして下さい. また,双翅目全体の図鑑としては,Flies: The Natural History & Diversity of Diptera という図鑑が出ています(この本の巻末にも絵解き検索があります). http://www.amazon.co.jp/Flies-Natural-History-Diversity-Diptera/dp/1770851003
2番目のハエはアタマアブ科PipunculidaeのChalarus属の♂でしょう。
M1+2脈がほとんど消失するという顕著な翅脈上の特徴を持っています。 アタマアブ科の♂の腹端部は第9腹節背板が顕著に瘤状に肥大していますが、♀の腹端部は産卵用に細くとがっています。 日本産のChalarus属については、次の論文が参考になりますが、画像の標本の状態ですと、種までの同定は交尾器を調査しない限り難しそうです。 Morokote, R. & Hirashima, Y., 1990. A systematic study of the Japanese Pipunculidae (Diptera) Part II. The genus Chalarus Walker. J. Fac. Agr. Kyushu Uni., 34(3): 161-181. なお、蠅野さんの10月23日投稿された質問に回答してありますが、ご覧になっているのでしょうか。ご覧になったならそれなりの返信をされないと、質問そのものの必要性について疑念を持たざるを得ません。 |
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