こんにちは、田悟と申します。
昨年”はなあぶ No.30-2”にアシナガバエ科の記事を載せていただいたのですが、大変申し訳ないミスを見つけました。 この掲示板をご覧の皆様には、はなあぶ誌をお読みの方が多いと存じますので、訂正記事に先立ち、ご連絡申し上げます。 <マダラホソアシナガバエの学名> 誤 : Condylostylus luteicoxa Parent, 1929 ↓ 正 : Condylostylus nebulosus (Matsumura, 1916) ミスの原因は、同定の判断ミスのような思考に基づいたものでなく、学名の取り扱い時の 単純なとり違いです。 本種は有名な種ですので、お読みの皆様の混乱の原因となりやすいものと思い、心配しております。 訂正させていただきますと共に、深くお詫び申し上げます。 |
画像の双翅類は、アブに近いシギアブ科(鳥のシギ類のように脚が長い虻の意味)のシギアブ属Rhagioに属するRhagio miyonis Nagatomi, 1952の♀です。大変特徴的な翅の斑紋からそのように同定できると思います。シギアブ類は基本的には吸血性ではありません。
本種にはまだ和名がありません。公表すべきものではありませんが(新和名の提唱にはなりませんが)、もしあなたが学名は苦手だというのなら、ご自分のメモの目的だけで、たとえばミヨシギアブなどと勝手に呼ぶことも可能でしょう(miyonisという学名の種名(種小名)は命名者永冨昭博士の親友であるMiss Miyo Maruyamaさんに捧げて命名された、と原記載(新種を発表する論文)に示されています。The trivial name is dedicated to Miss Miyo Maruyama, my very best friend)
三枝豊平様、ご丁寧なご回答、ありがとうございます。
撮影地の地区の目録には本種の記載はありませんでした。 採集しておけばよかったと思っております。 なかなか双翅目も面白いですね。 また、よろしくお願いいたします。 |
写真のオドリバエはキバネオオヒラオオドリバエEmpis (Planempis) latro Frey(以前はキバネオドリバエとも言いました)という種でしょう。オオヒラオオドリバエ群で中国地方に生息するのは本種です。
♂はケバエなどを捕えて、♀への求愛餌にして、林内の高い樹の梢などで群飛して、♀にこの餌を与えて交尾します。 一方、この仲間の多くは♂♀ともに訪花して蜜を吸います。
三枝豊平先生 おはようございます
菜の花に、このようなハエは、初めて見ました。 詳しく教えて頂き、ありがとうございました。 以前は、ハエの事はさっぱり分かりませんでしたが、 写真を撮るうち、この掲示板を拝見しながら、 少しづつ特長が分かってまいりました。 今後もよろしくお願い申し上げます。 |
見た目だけですが、ハグロケバエ Bibio tenebrosusの雌に似ている気がします。
yamasanae様、早速の回答有難うございます。
頭部が小さいので何なのか判りませんでしたが、ハグロケバエBibio tenebrosusで検索したところ、ハグロケバエ♀そのもののように思われました。 |
手元のホソショウジョウバエ科の標本の調べていたのですが、気づいたことがあるので書き込んでおきます。
みんなで作る双翅目図鑑の参考文献であるOkada(1960)はCiniiで見ることができますが、その中にOkada, 1956. Syst. study of Drosophilidae and allied familiesというのが書かれていたので、検索してみたところ、PDFが見つかりました。 ttp://www.dgrc.kit.ac.jp/~jdd/class/030710/03071097.pdf (入力時には先頭にhをつけてください) これによると、Diastata ussuricaの和名がモンホソショウジョウバエ、Diastata vagansがホソショウジョウバエとなっています。 一方、九大目録(いま手元にないのですが、みんなで作る双翅目図鑑を見る限り)ではD. vagansがモンホソショウジョウバエ、D. ussuricaが和名未定となっています。 なお、北隆館の図鑑にはホソショウジョウバエ科はなし、保育社の原色日本昆虫図鑑下巻の全改訂新版ではD. ussuricaがモンホソです。 混乱の可能性があるのでご注意ください。
なお、このOkada(1956)、東京のGihodo(漢字表記不明)という会社から単行本の形で出ているようです。
ショウジョウバエ科やヒゲブトコバエ科のデータもありますが、東京のデータが結構あります。 Okada(1988)で都道府県別分布表があるので、新たな追加種はないと思いますが、分布票には採集データはないので、こちらも使えるかと思います。
Arge様.
相変わらず,精力的にご活躍していますね. Gihodoは,現在の技報堂出版株式会社の前身である「技報堂」のことです. この本は,「日本産ショウジョウバエ科及びその類縁科の分類学的研究」という和文タイトルが背表紙だったと思います. また,学名についてですが,極東の昆虫の検索の113.Diastatidaeをみると,D. vagansは翅端とm-cu周辺が暗色になる種類で,D. ussuricaが明瞭な斑紋を備える私たちがモンホソショウジョウバエと呼んでいる種類となっています. これは,大きな発見ですね. ・・・・うわー余震が来たー
市毛様
大変な中書き込みありがとうございます。 D. ussuricaはたまに捕れますが、D. vagansは見たことがありません。 もっとも、ussuricaのほうは特徴的な斑紋で分かりやすいのに対し、vagansのほうはよくある斑紋なので、ちゃんと認識されずに未同定の中に混じっていたりするのかもしれません。
Okada, T., 1956. Systematic study of Drosophilidae and allied familes of Japan. pp. 183, Gihodo Co. Ltd., Tokyo.この本では、
Diastata vagrans Loew, 1864.Japanese name: Hoso-shojobae (Shiraki, 1954). Distata ussurica Duda, 1934. Japanese name: Mon-hoso-shojobae. となっています。shojobaeのそれぞれoには長音符がついています。 分布については、 D. vagrans. Specimens examined: Nishikomagatake, Nagano Pref., 1 ♂, 22.VII '52 F. Previous records from Japan: (Shiraki, 1954) Amamioshima, South-West parts of Honshu. D. ussurica. Sepcimens examined: Asakawa, Tokyo, 1 ♂, 12 IV '56 S: Tojo, Hiroshima Pref., 1 ♂, 26.X '55 S. Fはcollected in fruit-trap, Sはcollected by sweepingです。なお、学研の生物図鑑昆虫IIIでは私はD. ussuricaにモンホソショウジョウバエを使っています。九大目録の和名は間違いです。 上記Okadaからは、vagransには素木先生がモンホソショウジョウバエと命名、ussuricaには同書で岡田先生がモンホソショウジョウバエと命名したと判断されます。
なお、岡田先生の1956年の総説は箱に入っていまして、この箱のタイトルが市毛さんのいわれるように日本語で書かれています。ただし、実際は下記の通りで、英文表題と本の中身とは違った和訳になっています。
日本産黒ショウジョウバエの分類学的研究 です。これは箱の表にもまた底面にも同じように印刷されています。この本を購入した当時、奇妙な訳だとは思っていました。箱はもうボロボロになっていますが、今でも残してあります。なお、本のカバーや本体の表紙は英文のみで、SYSTEMATIC STUDYOF DROSOPHILIDAE AND ALLIED FAMILIES OF JAPAN となっています。カバーの背側には同様のタイトルとともにここに初めて技報堂と示されています。 なお、本の奥付けには、 日本産ショウジョウバエ科及びその類縁科の分類学的研究 という、正確な訳がありますので、もし和文タイトルとして 引用する場合にはこの訳を用いるべきでしょう。 |
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