暑中見舞い申し上げます。
ちょっと相談に乗って下さい。 野外で採集した蛾の幼虫を飼育すると、営繭後に寄生ハエの幼虫が脱出してくることがあります。 現在はヨシカレハ、オビガ、マイマイガを寄主とするヤドリバエ?の囲蛹が手元にあります。(プラスチック容器の底に転がっています) ヨシカレハから脱出したのは去年の8月なので、いくら蛹越冬だとしても羽化が遅れてますよね。 私は寄生現象にも興味があるので別に嫌悪感を抱くことも無く気持ちを切り替えているのに、待てど暮らせどハエが羽化してくれません。 成虫が羽化してくれないと名前も分かりません。 囲蛹の飼育には水分が必須なのですか? 囲蛹を裸で飼うと、乾季だと思って休眠状態に入ってしまうのでしょうか? 暗所に置かないといけないのか?など色々と悩みます。 やはり今からでも容器に土を入れてやる(囲蛹を土に埋めてやる)べきでしょうか? 恥ずかしながらこれまで私の虫の飼育の失敗の多くはカビが原因です。 霧吹きしたり土を入れたりすると、特に梅雨時や夏はあっという間にカビが発生蔓延してしまい他の飼育容器までもが全滅してしまった苦い過去がトラウマになっていて躊躇しています。 何かアドバイスがありましたら、よろしくお願いします。 ちなみにドロバチの巣を発掘した際に採集した寄生ハエ(ドロバチヤドリニクバエ?)の囲蛹からは、過去に同様の飼育法(乾燥条件)で問題なく羽化しています。
私はヤドリバエ科の生態に詳しい者ではありません。しかし,本科に最も詳しい研究者に以前お聞きしたところ,ヤドリバエの囲蛹は囲蛹化した位置に置かないと羽化しにくい,囲蛹を動かすとまずい,と言う話をお聞きしたことがあります。ヤドリバエ科の多くの幼虫は寄主から脱出した後は当然地上に落ちるでしょうから,常識的に考えれば地中に潜り込んでそこで囲蛹化するのではないでしょうか。
このような見解を元に考えますと,寄主から脱出してまだ囲蛹化していない蛆は湿り気のある清潔な土を入れた容器に移すことが適当かとおもいます。また容器内(裸出した状態)で囲蛹化してしまったものは,そのまま動かさないで,上記のような湿った清潔な土(電子レンジなどで蒸気消毒したもの)をやさしく掛けるということも考えられます。 一方,オオミノガヤドリバエ等ミノガ科の幼虫に寄生するヤドリバエは,ミノの中で蛹化する場合が一般的のようです。この場合はそのままにしておくと,羽化して,ミノの下口部から脱出してきます。 ご参考になるかわかりませんが,試みたらいかがでしょう。
アノニモミイアさん、貴重なコメントありがとうございます。
とても勉強になりました。 確かに数少ない成功例を思い返してみると、完全に忘れていて放置していたらいつの間にか寄生ハエが羽化して死んでいたことがありました。(寄主イラガ、オビガ) じっくり観察しようと蛹を転がしたりいじくり回すことが致命的なのですね。 まさかヤドリバエの囲蛹がそんなに繊細だとは知りませんでした。 次回からは殺菌した土を入れてみようと思います。
園芸用の赤玉土の細粒(小粒より小さい)と言うのがあります。私はこれを十分に湿らせたうえで電子レンジで蒸気消毒したものを長期休眠(初冬から翌年晩秋まで)するハエの幼虫に使ったことがあります。好成績でした。数か月以上に亘ってカビなどが生じなかったです。ご参考までに。
電子レンジを使って土を殺菌する方法は眼から鱗でした。
その辺から取ってきた土をそのまま使うのでは、失敗するのも当然ですね…。 こういう細かなノウハウを教えてもらえると助かります! 我流ではなく、もっと早くお尋ねすればよかったです。 どうもお世話様でした。 『日本動物大百科9昆虫II』を紐解いてヤドリバエ科のことを勉強してみたのですけど、飼育については載ってませんでした。
しぐまさん。ヤドリバエ科の事を勉強したいとのこと。参考文献で手ごろなものは,東海大学出版会の「ハエ学」にヤドリバエの生態がかなり詳しく記述されています。また,同書の参考文献にもあげてありますが,嶌 洪,1989.寄生生活への道―ヤドリバエの場合ー.インセクタリゥム,26号,100-126 にも詳しく記述されているはずです。嶌博士は舘卓司博士と共に我が国のヤドリバエ科の分類学者です。インセクタリゥムは現在は廃刊ですから,図書館などで蔵書しているところで見たらいかがですか。
土を昆虫の飼育に長期に使うときは,庭の土などはかなり用心して用いないと,中に捕食者の卵や幼虫などが含まれていることがあります。また,トビムシ類もかなり入っていて,繁殖します。土はポリ袋に入れて(密閉しないで)電子レンジで内部が高温になり熱い蒸気で滅菌,殺虫して使うのが安全です。
ご親切に色々とありがとうございます。
『ハエ学』という本も今度読んでみます。 オドリバエの章にも興味があり、昔から気になっていました。 放送大学の特別講義「ヤドリバエの世界」を数年前にTVで見て感動した記憶があります。 講師はその分野の第一人者で確か嶌先生だったと思うのですが、ビデオを探して見直してみようと思います。 土の殺菌法として古い飼育本にはフライパンで乾煎りすると書いてあったように思うのですが、台所のフライパンをそのまま使う訳にもいかないし、ちょっと面倒臭くてやったことがありません。 |
これはPyrgotidaeデガシラバエ科ではなくて,メバエ科Conopidaeの1種です。どなたか詳しい方のコメントがその内あるでしょう。
アノニモミイア様:
これは早速に6種のハエにつきましてご教示頂きまして、誠にありがとうございました。種名まで分かりましたら幸いではありますものの、私にとりましては、ひとまずこの程度の上位分類でも十分に満足なものです。#6のハエにつきましては、できましたら標本をお送りしたかったのですが、あいにく1匹しか採集しておらず、しかも解剖してしまいましたので、残っておりません…(私共は内臓の構造に興味をもっておりまして、外部形態のおおよその写真が得られましたら、すぐに解剖してしまいます)。しかしやはり努力して複数個体を採集せねばならないな…と反省しています次第です。今後もお世話になります機会があるかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします(非公開でメールアドレスを付けさせて頂きました)。どうもありがとうございました。
やまちゃんさん:
双翅類の内臓構造に興味をお持ちとのことですが,どのような形態や生態,あるいは分子情報の研究・調査であっても,材料の正しい名称が分からなければ,その研究結果はしばしば半減してしまうのではないでしょうか。双翅類は画像等だけでは時には科名さえもはっきりしない場合がしばしばあります。たとえ現時点でご自分の下では材料の名称を調査する方法がなくても,同定の基礎になる外部形態は何らかの形で残しておくことは必須でしょう。内臓と言われたので,双翅類では主に腹部に収まっています(もちろん消化器官の前方の部分などは胸部や頭部に収まっていますが)。内部構造を調べるためにたとえ胸部や腹部の外骨格を破壊したとしても,脚や翅はほとんど傷めることはないでしょう。これらの残された部分はたとえ部分的な破壊・損傷があっても同定に必要な特徴は多くは残されているものです。乾燥でもエタノールなどの液浸状態でもいいですから,今後は是非残されるようにすることをお勧めします。御研究・調査の進展を期待しています。
アノニモミイア様:
いろいろ用事に追われておりまして、遅くなりまして恐縮です・・・。確かに、どのような研究におきましても、材料の正確な帰属が分かることが必須の前提条件になるでしょうから、今後は肢や翅など、残りのパーツを証拠としてできるだけ残しておきたいと存じます。それにしましても、画像では科名さえはっきりしない場合がある!とは、なかなか奥が深く難しいものですね・・・重要なご教示を賜りまして、どうもありがとうございました。 |
多分ハナバエ科Anthomyiidaeの1種。多分と言うのは翅のCuA+CuP脈(伝統的な臀脈)が翅の縁まで達しているようにも見えるので。しかし,専門の人でないとこの画像だけでは同定は難しそうですね。
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これはシマバエ科Lauxanidaeの1種。どなたか詳しい方のコメントがその内あるでしょう。
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多分イエバエ科のLimnophora属ミスギワイエバエ属の1種です。種までの同定は写真では無理でしょう。
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クロバエ科のツマグロキンバエです。よく訪花します。また♂は樹間などの空間でホバリングします。
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おーやぎ様,相変わらず珍しい虫の写真が多いですね.
シマバエ科のNoeetomima属の1種で,以前も国後から記載されたN. fulgensではないかとした個体と同種と思われます. 昨年,モンゴル・USA・中国の研究者が共著で4新種を記載し, 備考に"Checklist of the Noeetomima of the world"がついています.今のところNoeetomima aberrans Shatalkin, 1992が北海道から記録されているだけのようです.
茨城@市毛さま
ありがとうございます。これはミバエだと思っていましたら、やや似ているのが、Web東奥のシマバエの一種http://www.toonippo.co.jp/photo_studio/insects/detail.asp?daibunrui=abu_hae&chubunrui=hae&pic=84と云うのがありまして、シマバエなのかなと質問した次第です。 |
NH様.
写真で細かいことが見えないことのほかに,体長が書かれていないのでより辛いです. なんとなく,細長いほうがチョバエの幼虫のような気がします.
早速ありがとうございます。
体長は約8ミリと5ミリの2匹です。 もう一匹(茶色っぽい方)は約3ミリ程度です。 40℃程度の湯でも死なずに生きているのが驚きです。 重ねてありがとうございます。 駆除を考えます。 |
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