最近,気になっているのですが,国有林などで採集を行う場合,営林署に入林届けを出しているのでしょうか?
私は,採集は山菜採りやキノコ採りのようなものだから,届出がいらないと思っていたので,出したことはありません. ところが,営林署によって違いがあるようですが,原則的には届出をしないといけないような話です. 甲虫学会等の剣山?の採集会の案内で,入林届けの話が記されており,剣山は面倒な山なのだなと思っていましたが,どこでも届出が必要となると困ったことになります. 色々と,御意見をいただければ幸いです.
とりあえず南信州の国有林(特にアカマツ林を除く)では入林届けは今のところ必要ないそうです。アカマツ林に関してはいわゆるマツタケ採取の権利云々である時期には入林が制限される場合がありますが、南木曽、大鹿などにある国有林では昆虫採集にかんする入林届けの指定はありません。(基本的に国有林はそういう制限はないことになっています。・・・ただし熊が多数で目撃されている場合、入山、入林が制限される場合もあります。)
ただ、最近は山菜なども乱獲される傾向にあるので、山菜の時期やキノコの時期には制限される場合があるとも聞いています。 採集は山菜やキノコ採りのようなものだからと届出はいらないという考えは産地ではあてはまらず、むしろ入山・入林の届けが必要になることも考えられます。(山菜採りやキノコ採りに対する規制が最近厳しくなりつつあります。)
古い本ですが「新しい昆虫採集案内I」のP.5には「国有林には許可証のない者は立入りできない」というような記述があります。しかし一般登山者は許可なく入林している訳で理屈があいません。
Webで「国有林 入林許可」で検索をかけてみるといろんなケースがあることがわかりました。 例えば関東森林管理局では次のような目的で入林される場合は事前に申請等が必要だそうです。(ttp://www.kanto.kokuyurin.go.jp/works/nyuurin/index.html) ・入林の目的 (1)踏査・測量・調査等 (2)測量・有害鳥獣捕獲等(地方公共団体が行うもの) (3)狩猟 これは「特定の行為を行う場合は許可が必要」ということですね。他の地域では学校行事、林道工事、学術研究を許可対象にしている例もありました。あと層雲峡のペンションが黒いオオイチモンジの採集者に入林許可証の取得を呼びかけている例とかがありました。 個人的な虫とりはともかく、剣山のように学会や同好会での調査は(1)に該当しそうです。 他に、地域によっては国有林での林産物(山菜、キノコ等)の採取のための入林許可を市町村が代行する制度があるようです。また知床や白神山地など特別な保護指定制度があるところでは登山だけでも許可が必要な例がありました。 その一方レクリエーションのため国有林の利用を促すHPは多く、そこには入林許可のことなど書いてありませんので、「国有林に入る時はどんな場合も許可を取れ!」という訳でもないようです。 結局、『場所と目的によっては許可が必要な場合がある』ということではないでしょうか。あらかじめ関係機関に相談するか、文句を言われてから対応するかのどちらかですね。マレーズトラップの常設とかは当然許可がいりそうですね。
ハエ男様.
南信州は大丈夫そうですね. TKM事務局様. その入林目的の「調査」というのが曲者です. 採集の目的が,虫を集めて分布や分類を調べるためという場合,「調査」に該当するのではないかと危惧しています. 屁理屈を言えば,採集した結果珍しい虫を見つけたので,雑誌や同好会誌に投稿した段階で,「無許可入林」になるのでは? 単なるコレクションのため採集し,成果を一切公表しないのであれば,大半の国有林での許可は要らないという屁理屈も成り たちそうです. 現在,とある保護地での採集許可申請を交渉していおり,研究実績を示すことで門前払いは避けられたようです. 申請書自体の記入内容は簡素だったのですが,申請書や図面以外に,「研究計画書」や「捕獲調査を行う必要性」の文書の提出を求められました. 文書に「公益上の必要性?」や「捕獲対象の動物がその保護地で絶滅の恐れが無い動物であること」を入れなければならないとのことで頭を抱えています. 調査地の選定理由として,過去に今回の保護地の周辺で行った採集結果などを引用しようと思ったのですが,結果として国有林への無許可入林とクレームを付けられるのではないかと,ヒヤヒヤしています;^_^) 当然,今回は調査になりますので,各営林署にも届出を出さなければなりません. その他に,層雲峡のペンションの人が書いている入林許可の話も気になっていました. 実は,大雪湖周辺等の林道?際でネットを振り回して採集しているときに,営林署の車と何回も合いましたが,全く何も言ってきませんでしたので,今頃になってこのような記述を見つけて冷汗をかいているところでした. また,トラップなども,普通無届で仕掛けていると思いますが,これなども常々やばいと思っています. たしか,利尻岳のトイレにトラップに使用したコップが捨てられているという記事を見た覚えがあります. 地元の八溝山でオサムシの新種?が出た後は,あちこちに放置された?トラップがかなり目立ちました. 以前,近郊のとある公園でトラップ調査をした時に,公園管理者に届出をしましたが,設置場所の細かい図面や,保存液の説明などかなり面倒でしたね. 保存液がアルコールや洗剤だったので,受け入れてもらえましたが,特殊な薬品だと有害性とか環境に与える影響とかで揉めそうですね. 学会などで,このような採集等についての統一した指針や書式などを作ってくれればと思います. 大学等で調査したことがある人だけが知っている門外不出の情報なのですかね? とりあえず,ありがとうございました.
市毛様、どうもです。
プライベートでは入林許可の届け出をだしたことはほとんどありませんが、環境調査の業務の際にはほぼ間違いなく入林許可証を発行してもらい、それを携行するように言われています。 したがって、任意採集ならいざしらず、ベイトやライト、マレーズなどを行う場合は何かあったときの保険として入林許可の届け出を出した方が無難ではないかと思われます。 |
ケンセイ様.
Nephrotoma属は,Oosterbroek(1985)The Nephrotoma species of JapanやTangelder(1984)The species of the Nephrotoma dorsalis-group in the Palaearcticに,検索表や交尾器が出ているので,ガガンボ入門編に良いかもしれません. 達磨様. 2編の論文に記されていない日本産Nephrotoma属の注意点がありましたら,御教授頂ければ幸いです.
市毛様、コメントありがとうございます。
Nephrotoma(ホソガガンボ属)は、ぱっと見は良く似ていますが、♂交尾器などが種特異性が高いため、Oosterbroek(1985)The Nephrotoma species of Japanを用いれば案外簡単に種に落とせる場合が多いように思われます。種によっては♀交尾器も特徴的な奴がいますし、私には同定の流れがニクバエ的で楽しいガガンボのグループの一つです。 とりあえず、普通種と考えられるキイロホソガガンボとエゾホソガガンボをアップしましたが、実は両種ともまったく同じ場所で得たものです。発生時期が1ヶ月程度ずれているのは、何か生態的な違いがあるのかなあとちょっと生態的な部分も気になったりしています。 これから、暇を見ては他のホソガガンボ属もアップしていこうと思っています。
昨年の同定会を土壇場でキャンセルして皆さんにご迷惑をおかけしましたが、あの時、Nephrotoma属をまとめたP. Oosterbroekさんのいる博物館に研修に行っておりました。どうやって集めたのかと思うほど、世界中のNephrotomaが一堂に会しておりました。お話を伺ったところ、↑の論文をまとめるときに日本のいろいろな方から送っていただいたNephrotomaにはAlexanderやSavchenkoが触れてもいない種がいくつも見つかって驚いたとのこと。まだまだいるだろうとの印象だったそうです。
Nephrotomaに似たものでNigrotipulaというのがいます(Oosterbroekさんにいわせると実質的に同じもの)。ヨーロッパでは普通で、極東ロシアまで分布していますが、日本ではまだ見つかっていません。翅脈はNephrotomaに似ていて全身こげ茶色(チョコレート色)、後胸の背板が黒くて太い剛毛に覆われます。こいつの発見には懸賞をつけたいところです。
達磨様,ありがとうございます.
やはり,Nephrotoma属にも未記載種がいそうなのですね. Nigrotipulaについては,極東の昆虫の検索によると,N. nigraの基亜種がヨーロッパからアムール州まで,亜種のN. nigra liguliferaが南沿海州に分布しているようですね. 日本初記録の属を見つけてみたいものです.
達磨様、ご教示ありがとうございます。
以前岐阜県高山市で採集したNephrotoma属の同定にとても悩んだことを思い出しました。どうもOosterbroek(1985)の記述とあわないところがあり結局リストはsp.で逃げました。 標本は残っていますので、そのうち見直したいと思います。Nephrotoma vana nigrovanaに良く似た種だったと思います。 Nigrotipulaについても注意したいと思います。わかりやすい全形図のようなものがあると有り難いですのですが・・・・
ケンセイです。
先日何気なく自分も参加しているTKM(東京都本土部昆虫目録)を見ていたら、何とエゾホソガガンボが東京都未記録種であることが判明しました。他にも狭山丘陵などでいろいろガガンボを採集しているので、少し標本を見直さねばと思っています。そのためには膨大な文献と標本を整理しないと・・・・ |
![]() 撮影地も福岡県で、シナサワグルミの木に留まっています。 どうかご解答お願いします。
ひよどりさん>ようこそ 管理人のハエ男です。
私たちもできるだけわかる範囲でお答えしたいと思いますが、質問する際の留意事項がありますので、「上の方にあります留意事項をお読みの上投稿をお願いします。」 双翅(ハエ)目の同定(種名を調べる事)は結構大変な作業です。なぜなら良く似た種類が多くてぱっと見では決定できない場合がほとんどなのです。よほど特徴的で、近縁な種が少ないグループでないと生態画像からの同定はかなり難しいといわざるを得ません。 双翅目の場合は、撮影→採集して現物を確保→翅脈や♂交尾器をはじめとして体の各部分の形質の検討→種名が決定といった流れになります。 また昆虫の同定のはじめの一歩として「昆虫は硬い甲羅状の皮膚の内側に筋肉を持つ外骨格の昆虫であり、♂と♀の交尾器がカギと錠の関係になっていて、その形は種によって固有である」という考え方があります。(つまり、模様が似てても交尾器の形が違えば別種であるということです。) 双翅目は大変種類数が多く、約120科、種数では5000種は軽く超えている大きな分類群なので、外見が良く似ている物が大変多いのです。模様だけでなく、体の剛毛、刺毛、軟毛などの状況や♂交尾器の形状がわからないと正確な種が特定できない場合が大変多いのです。 調べる側として、絶対に欠かせない情報があります。それは採集(撮影)データです。いつ、どこで撮影したかという情報は昆虫の種名候補を絞り込んでいく上で大変重要な情報なので、それらについては必ず書き込んでくださいね。 記事No4050のAclelisさんの一連の投稿のような感じで投稿していただくのが理想的といえると思います。 それでようやく本題ですが・・・ガガンボ類は種類数が大変多く、また未記載種(新種とも呼ぶ)や日本未記録種も大変多い分類群なので、一方向のみの画像では同定は難しいと思われます。ガガンボは双翅目を普段追いかけてる私たちですら難しい分類群です。達磨さん(ガガンボの師匠)のご登場をお待ちしませう・・・
昆虫を調べていくのに文献集めは欠かせません。そのやり方については下記サイトをご参照ください。
http://matumusi.afz.jp/bunken1.html
待たれて登場。達磨です。
ハエ男さんのおっしゃるように通常は生態写真から種を特定するのは難しいことなのです。特徴を示す部分の写真があってもわからないことも多いんですけどね。 しかし、今回の場合、見当がつきました。この個体は後脚の基部近くに白い部分が一か所あり、フ節の大部分が黒いので、Tipulodina joana (Alexander, 1919)の♀だろうと思います。 この種にはまだ和名がありません。Joanaという名前はAlexander博士の母(Ms Jane Paker Alexander)に献名されたものです。 幼虫は木の洞の水たまりにすみ、成虫はその木の周りをまとわりつくように飛び回ります。
大変遅くなりまして、すみません。
留意事項を読まず、普段からの「掲示板には情報を書きすぎてはいけない」といった勝手な考えだけで投稿しご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。 まずはその掲示板のルールを知ってから書き込むということ、今後気をつけます(他の板にいく時も) ハエ男さん、達磨さん、大変参考になりました。僕らには「同じ種類」としか見えないものであっても、実際に双翅目を判別するとなると非常に細かいところで判別しなければならないということが身にしみるように感じました。 今更、と思われるかもしれませんが、この写真は2007年3月31日、福岡県小郡市にて撮影したものです。 「和名がない」と聞き、大変驚きました。そんな種類もあるのですね。一度、外国の蛍で和名がないものは聞きましたが、日本にいるもので和名がないというのも・・・なんか不思議な感じです。 いきなり失礼なことをしてしまいましたが、今後もどうかよろしくお願いします。
ひよどりさん
そんなにお気になさらないようにしてください。 >「和名がない」と聞き、大変驚きました。 >そんな種類もあるのですね。一度、外国の蛍で >和名がないものは聞きましたが、日本にいるもので >和名がないというのも・・・なんか不思議な感じです。 和名は付けたほうがいいですかね。ガガンボだけでも500種以上名付けないといけないので二の足を踏んでいますが、やはりあったほうが便利でしょうね。皆さんどうお考えですか。 いったん付けた名前はその後しばらくは使われ続けることを考えると、変な名は付けられず、結構苦しいものです。
和名はあったほうが便利とは思いますけどねぇ。いちいち学名で言うのも大変ではないですか?・・・
ひよどり様.
ハナアブ屋の市毛です. ハナアブ科の場合,日本産の9割を越す種類に和名がついていますが,仲間内では学名で呼ぶことが結構あります. 実は,私たちが普段読んでいる文献のほとんど(9割以上)が外国語で書かれているので,和名に触れる機会が殆どありません. したがって,同定会などでラベルを書くとき等に,和名が思い出せずに困ることが良くあります(^_^;) また,ハナアブ科の場合でも,新しく見つかる種類は似通っている場合が多く,外見的な特徴で和名を考えることが困難な場合が多く,毎回難儀しています.(全国に広く分布している種類に地名を付けるのはおかしいですし,人の名前もやたらに使えません.) 私の場合は,人より記憶力が悪いので,普段使わない和名を言われてもわからない時があったりして,意外と和名のほうが不便です. 学名の場合は,○○ △△(属名+種名)という形で使う場合が多いので,種名がわからない場合でも,○○属の仲間であると絞りこめるので便利です.
それもまた驚きです。僕は野鳥から始めたほうなので、和名が主流なので・・・
それなら和名はなくてもよさそうですねぇ。。。
確かに和名で言われても何のことだか咄嗟には分からないって時はありますね。
美しい名前をつけるとその名前使いたくなりますが、何百もいる虫にそれはつらいことなのです。和名を付けたもののセンスが問われることもあります。誰が名付け親か知りませんが、スミナガシとかサビキコリ、カネタタキ、カマドウマなんていい名前ですよ。今更、種名の語幹に「ガガンボ」がつかない名前をガガンボにつけたらひんしゅくを買うでしょうね。ガガンボって濁音が3つもついているから、虫を知らない一般の人にはあまり印象がよろしくないようです。
確かに。
野鳥でも「ヒタキ」と書いているのにツグミ科とか、「ツリスガラ」と書いているのにカラ科ではないなど、違和感を感じるところがあって・・・。 そしてまた、印象がよくないといえば、「アホウドリ」。正式名称なのがかわいそう。。。 和名のネーミングも難しいところがありますね。 その点ではやはり2つ(3つ)の節で名前をつけられる学名も便利ですね。 ![]() ひよどりさんの写真と達磨さんの「幼虫は木の洞の水たまりにすみ」という解説をみて、以前撮った写真を思い出しました。 写真は2006年4月30日、兵庫県三田市で撮影しました。コナラの洞内に産卵しているガガンボです。水たまりというよりはフレークに産卵しているようでしたが、形態的にも生態的にも一致しているように思えます。 ひよどりさんの写真と同じ種と考えてよろしいでしょうか?
上の書き込みで「この個体は後脚の基部近くに白い部分が一か所あり」としましたが、「この個体は後脚の『脛節の』基部近くに白い部分が一か所あり」とするべきところ、言葉足らずで失礼しました。
ハンマーさんの写真も本種と考えていいと思います。 しかし、日本から記録のある2種のTipulodinaは原記載時にどの特徴も図示されることがなかったので、もっとも特徴的である脚の模様の記載を頼りに同定しています。あまり多くの種が分布しているとは思えないのですが、実際脚の模様で区別できる2種しかいないのかどうか、今後の調査が必要です(雌は産卵するところをよく目にしますが、どういうわけか雄がなかなか得がたい)。本属は東洋区を中心に多くの種が知られていて、日本でも暖かい地方では種の追加が見込まれます。奄美大島と石垣島で本属の個体を得ていますが、雌ばかりなのと、何点かは採集が荒かったために脚が残っておらず、今後追加の材料が集まるのを待っているような状態です。
達磨さん、どうもありがとうございます。
私のような素人にとっては属が分かるだけでもすごいことです。今後もよろしくお願いします。 |
二つ目,描画の方法です.交尾器などを顕微鏡下でスケッチする場合に方眼ミクロメーターを使って方眼紙に描いていきます.その際にエタノールのシャーレに入れて観察するのが像としてはいいのですが,難しい構造の場合には描画に時間がかかり,時間につれて蒸発して液面が下がって像が視野の中で動きます.水やグリセリンはその心配が少ないか全くないので,私は最近グリセリンを使っています(難点は埃が液面に浮くことです.エタノールでは沈みます;中性洗剤を少量入れると解決するかもしれません).それでも交尾器を期待するアングル(真横とか左右対称の背面とか)に保つのはなかなかうまくいきません.従来は脱脂綿やガーゼをシャーレの底に敷いて,その繊維に材料を絡ませて動かないようにしていましたが,微小な材料の場合は繊維のほうが太すぎて繊維の間に沈んでしまったりしてうまくありません.一時は眼鏡拭き用の超極微細繊維の布を切って繊維を毛羽立てて使っていましたが,あまり感心しません.最近到達したのは,やはり超微細繊維ですが,布ではなくて薄い紙状(?)にしたクロス素材です.これを適当な大きさに切って,尖ったピンセットの先などで繊維をほぐして毛羽立て,これをシャーレの底に動かないように敷いたペフ板に微針などで固定しておきます.これにグリセリンを満たして,グリセリン保存の交尾器などをこの素材の繊維に絡ませると驚くほど安定が良くて,微小な交尾器などでも全く動かないでアングルを保てます.安心して描画が出来るので大変便利です.この素材はたまたま携帯クリーナーとして町角で配布されていたのを用いた結果です.素材が入手できたら是非試みることをお薦めします.描画に限らず写真撮影でももちろん使えます.
アノニモミイア様.
私も交尾器の固定には苦労しました. 色々と試行錯誤を重ねた結果,現在はグリセリンゼリー(glycerin jelly)を使用しています. ホールスライドグラスに,数種類の隙間でカバーガラスを掛けたセットをあらかじめ用意しておき,目的の交尾器よりやや大きめの隙間のセットを少し暖めて交尾器を滑り込ませ,実体顕微鏡下で交尾器の角度を調整しながら冷やした後,描画や撮影をしています. (ある程度調整した後,きれいに拭いた鉄板などの上に載せてやると早く固定出来ます) また,このカバーガラスとの隙間を左右で異なるように設定しておくと,殆ど変形させずにカバーガラス直下に交尾器をセット出来ますので,400倍での検鏡もある程度可能です.(私は,Bioquipのプラスチックスペーサーを使用して,1.0-0.75, 0.75-0.5, 0.5-0.25, 0.25-0等の隙間のセットを作ってスライドグラスボックスに保管してます.)
アノニモミイア様、市毛様
貴重なテクニック情報ありがとうございます。 実は、私も最近グリセリンゼリーを試みてみようと思っていたところでした。私の場合、ハエの幼虫をアルカリで処理して、さまざまな方向から観察するのに際して、特に終気門の形質を幼虫を倒立させて観察するのに、粘性の高い媒体がよさそうだと思ってグリセリンゼリーを考え始めていたのです。 なお、私の古巣の海洋生物の分野ですと、二枚貝の浮遊幼生時代の貝殻をグリセリンゼリーの中に保持して保存・観察を行います。 節足動物分野ですと、昆虫では市毛様以外にグリセリンゼリーを使っておられる方を寡聞にして知らないのですが、ミズダニの標本では通常の封入剤が適せず、グリセリンゼリーで永久プレパラートを作るのが通例です。
市毛さん,グリセリンジェリーの方法,有難うございました.試みてみたいと思います.実体顕微鏡で観察する限りでは,私が示した方法は簡便で,どなたでも容易に入手できるとは思いますが,グリセリンジェリーの方法は光学顕微鏡(透過光の一般的な)での観察の際の材料固定には非常に有効だと推察します.ネットでみると花粉のマウントにはグリセリンジェリーが一般的に使われているようですね.それで二つ質問です.宜しくお願いします.
1.グリセリンジェリーとは何ですか.またその入手方法は. 2.あなたの記述の3番目のパラグラフの部分をより具体的に分りやすく説明してください. ![]() グリセリンゼリーは,市販の家庭用粉末ゼラチンを水に溶かしたものにグリセリン を加えたものです. 防腐剤としてフェノールを少し加えています. 下記HPの,11.グリセリン・ゼラチンの一番上の方法で作っています. http://www2u.biglobe.ne.jp/~gen-yu/recipe.html#B10 ろ過がうまく出来なかったので,繊維状の異物が多少混じっていますが,あまり気にせずに使用してます. 2. 3番目のパラグラフの部分は,"左右で異なる"ではなく"手前と奥側とで異なる"でした. 図のようにスライドグラスとカバーガラスの間に入れるスペーサーを,意図的に手前と奥側の高さを違えたものを用意しておくということです. しかし,これはユーパラルで固定していた時代の名残で,グリセリンゼリーだと非常に短時間で硬化するので,硬化中に交尾器があまり動かないので必要ないようです. 以前は,ユーパラルで硬化中に交尾器が動いてしまう時に,カバーガラスの高さを違えたものに変えてみると,手前と奥とでホールの傾斜等が異なるためか,何箇所か位置をずらしてみると上手く固定できることが何度もあったので,習慣的に使っていました. 当然,カバーガラス直下に交尾器が位置するように固定出来ますので,作動距離の短い40倍の対物レンズでも交尾器の広い範囲を観察できます. (通常の40倍対物レンズは作動距離が0.65mm程ですので,交尾器の上側から約0.48mmの位置までが観察可能) 上手く固定出来るなら,このようなおかしなものは必要ないようです.
市毛様,詳細なご説明有難うございました.実際に使ってみればわかることも多々あるかと思いますので,先ずは試みてみます.それにしても,ご紹介いただいたサイトには多様な封入方法が説明されていて,いずれも参考になります.水あめ法というのもあって,これについては以前に私もハチミツに封入したらどうか,などと考えたことがあるので,納得です.
生物顕微鏡での描画については,安定した角度のものをデジカメで撮影して,この画像をもとにして外形などアウトラインを描いて,それからじっくり細部を観察しながら記入していく,という方法をとっていました.ホールスライドの底面の傾斜とカバーグラスの間隔を適宜利用して,最善のアングルをとるようにしても,どうしても10分,20分とたつと動いてしまうので,上記のようにしていました. 今回の方法ですと,最善なアングルの状態でグリセリンジェリーをどのようにして冷やし,固めるかにテクニックが必要かなと想像しています.
ウミユスリカ様.
確かに,日本では昆虫などの固定にグリセリンゼリーを使用している例は聞いたことがなく,この方法にたどり着くまで色々と試行錯誤しました. 海外のMicroscope-UK等を見ると,結構使われているようです. http://www.microscopy-uk.org.uk/mag/artaug03/wdpart4.html アノニモミイア様. グリセリンゼリーを使うようになってからは,描画中に交尾器が動いてしまうことはかなり減りました. しかし,夏場は室温が高いためか冷却不足となって動く頻度が上がりますので,アイスノンにタオルを巻いた物の上に乗せて十分冷やしてから描画するようにしてました. また,半ば固まった状態でも多少動かせる場合が多いので,これを利用して微妙な角度を調整する場合もあります.調整後に急冷する必要がある場合があります. 一度,描画を中断して翌日に続きを描いたこともありますが,あまり問題なく描けたような気がします. |
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