腹部背面の模様は、何種か紛らわしいものもあります。本州以南から本種の名で記録されていたりしていますが、きっとそれらはフタホシヒラタアブかナミホシヒラタアブだろうと思っています。
横顔は、顔面下部が顕著に突出していて特徴的です。
このほか、翅にはミクロトリキアが極めて少ないのが大きな特徴のようです。
本種の♂の採集記録は見当たらないですね。採ってみたい!
阿寒の森ではオオハナブトハナアブが採れています。
これはまた別にスレを立てようと思います。
pakenya様.
何となく額がやや膨らんでいるように見えるのですが,いかがでしょうか?
マガリモンヒラタアブEupeodes lunigerのメスの額は,真横から見るとほぼ平坦で中央部分がやや窪んで見えます.
Eupeodes属の種別の特徴が出やすい部位は,額と腹部腹面の暗色斑の形状,翅の微毛の分布状態等ですので,注意してみてください.
Eupeodes属は,Syrphinaeの中でも分類が難しいグループの一つであり,古くからの権威者であったJindra Dusekが2009年に亡くなり,共著者であったPavel Laskaが若手を指導しているようですが,ヨーロッパでさえ未だに10年に1種ぐらいのペースで新種が出たり,シノニムになったりと混乱しているようです.
昨年Encyclopedia of Swedish Flora and FaunaのSyrphidaeを執筆したHans Bartschも今年の4月に偉大な遺作を残して亡くなるなど,第1戦で活躍していた研究者が減っている感じがします.
一方,ヨーロッパなどでは若手も育っていますが,DNA解析による系統論にこだわる傾向があり,高校しか出ていない私にとっては,今一つ敷居が高く感じております.また,若手の研究者は古い原著を読まずに孫引きをする傾向があり,私が日本産シマハナアブ科のまとめた際に書いたように普通種の交尾器さえ自分では調べないで系統を論じる軽率な著者もいるので,困ったものです.
日本産Eupeodes属は,9割方まとまっているようですが,大雪山系で見られるEupeodes nitenusに近似した種類が,寒冷地特有の暗色型として斑紋が安定して分離しているだけのか,日本固有の別種となるのかという宿題が残っています.
特に,オスの発生が早いようで,残雪が多く残っている時期の大雪山の銀泉台からの第1-2花園によく見られます.コマクサ平まで上がってしまうとほとんど見かけませんでした.ちょっと時期を逃すとメスばかりで全く比較同定用のオス標本が集まりなりません.第3雪渓を上って赤岳-小泉岳-白雲岳間では,風が強いとウスバキチョウ等が風を避けてネットに止まって休むので監視員に怒られるのではないかとヒヤヒヤさせる迷惑なじょうたいです(^_^;)
今年は,父親の介護から解放されましたので,再来年ぐらいから北海道の調査が再開できると考えています.
市毛様、皆様。
指摘されて見直したところ、誤同定でしたので訂正します。
正しくはイイジマホシヒラタアブEupeodes lundbeckiでした。
極東ロシア」;はなあぶ11号を見て、額の膨らみはこれほど強くないと感じたのです。実際、横顔はlunigerとして描かれたものに似て見えます。スウェーデンの図鑑でもふくらみが検索のkeyになっているので、大陸のものはもっと膨らむのかもしれませんね(というより日本の標本は膨らみがあまり強くないと言ったほうがいいかも)。
翅は第1、第2基室がまったく微毛を欠いているので、その他の特徴と併せてlundbeckiの特徴を満たすようです。はなあぶ17号の横濱さんの記述とほぼ一致しました(腹部腹面の斑紋は薄いですが、色彩はあてにしない方針なので深追いせず)。
ところで、はなあぶ10号に飯島さんがマガリモンとして載せた写真と17号に横濱さんがイイジマの♀として載せた写真は同一個体なのですね。とすると、マガリモンヒラタアブの写真は国内には見当たらないってことになりますね。本当に分布しているのだろうか?九大目録に北・本・四・九の分布が載っていますが、出典は何なんだろう。気になります。
pakenya様.
参考までに,ヨーロッパ産の両種標本の側頭部の写真を載せておきます.E. lunigerはオーストリア産,E. lundbeckiはノルウエー産です.
E. lunigerの額は,普通に見られるナミホシヒラタアブE. bucculatusやフタホシヒラタアブE. corollaeのメスの額と同じようにフラットです.
九大目録は,出典が一切不明なので困りものです.恐らく旧北区の双翅目目録あたりから抽出したのだと思いますが,こちらも出典が書いてないので結局世界中の古い文献を片っ端から当たるしかないようです.