交尾器です。
同じく、panグループに属すると思われる種類で、E.(Plan.) latro Frayと思われる種類です。
体長12.5mm 5月上旬に茨城県水戸市近郊の雑木林(alt.60m)で採集しました。
交尾器は、E.(Plan.) pulchraの図に似ています。
E.(Plan.) latro Frayと思われる種類の交尾器です。
国際双翅目会議で返答の時間がとれません.来月までお待ち下さい.なお,同会議にはカナダのハナアブ学者Vockeroth博士や米国のThompson博士も来日.Vockeroth博士は10月下旬まで九州などで採集されます.両博士に御会いしたい方がありましたらご連絡ください.
アノニモミイア 様。
了解致しました。
急ぎではありませんので、お時間のあるときによろしくお願い致します。
Empis (Planempis) 亜属はヨーロッパに1種を産するほかは全て東アジアの種から構成される群です.属内で著しい分化を遂げている割には北米に全く進出していない点が不可解です.恐らく基本的にはアジアの暖温帯起源で,ここで著しい分化を起こして,こく一部の種が後氷期以降に東北アジア冷温帯に進出したものと推定されます.これらの種群のなかで,pan, xanthomelas, holocleroides, laccotheca, microtheca等の典型的なPlanempis型の雄交尾器を具える種群がありますが,syusiroianaや itoianaのようなヨーロッパのLeptempisに類似した雄交尾器をもつ群,これら2群の中間に位置するclausipygaヤautumnalisのような種,更にはこのラインから逸脱したluteipilosaのような群まで,複眼の離眼性,前胸腹板の被毛性,胸部の刺毛状態,脚の膨大化と下面の棘の状態,雌の脚の羽状剛毛の発達,翅の中室の拡大などに極めて著しい多様性が生じています.
北海道,沿海州から台湾,インドシナ半島北部,ヒマラヤからカラコルムにいたる地域に数知れぬ種が生息しています.現在150種あまりの種をこれらの地域から確認していますが,中国の調査が進めばこの数も飛躍的に増えると思われます.異所的な種分化を研究する上でも大変面白い群です.
さて,ご質問の最初の種ですが,これはpan群に属するxanthotibiaではなくて,未命名の仮称vitrea群に入るものと思います.本群の多くの種は腹部が暗色で,しかも灰白色のpollinosityで覆われ,翅の基半部のmicrotrichiaが著しく消失するために翅がガラス様透明で,後腿脚は一般に肥大しなくて光沢があり,その下面の棘も節の後半部に集中する傾向があります.本群も東北地方南部から中部山岳(日本アルププスの高山帯にもいる),四国,九州まで多くの地方種(亜種)的なものに分化しています.
第2の種はほぼEmpis (Planempis) latroに同定できるものと思います.E. pan, latro, pulchra, xanthotibiaを含むpan群は大雑把に本州南岸に分布するlatro,九州,四国に分布するpanがありますが,中部山岳で分化がおこり,これらがxanthotibiaやpulchraです.私の手元にも未記載の本群の中部山岳の種がありますが,今後新しいものが発見される可能性が高いt思います.
いずれにしても,写真の個体は貴重なものですから,将来東アジア全体のPlanempisを扱う機会に調べさせていただければありがたいです.
E. microtheca群や仮称vitrea群は一般に平地では早春カエデの花に飛来しているのが採集しやすいので,ハナアブの採集と同時に採集されるものです.一方pan群は平地で5月上旬頃が最盛期で,雄は高木の頂きに大型のケバエをnuptial giftにして集まり,時折数頭で群飛しては休むと言う行動を繰り返し,雌が飛来するとそれを一斉に追って交尾します.ですから採集はやや困難ですが,適当な位置に群飛場所があるとまとまった材料の採集が可能です.いずれにしても両群とも個体数はあまり多くなくて,holocleroides-seminitida群のようにまとまった数は採集しにくいものです.
なお,Planempisについては,T, Saigusa (1992). Systematic study of the subgensu Planempis of the genus Empis from Shikoku, Japan (Diptera, Empididae). 徳島県立博物館研究報告第2号77-107があります.
アノニモミイア様。
詳細な説明恐れ入ります。
また、徳島県博の論文については全く気がつきませんでした。早速取り寄せて読んで見たいと思います。
ありがとうございました。