次は先週採集のもの
腹部が特徴的です。
あちこちの拡大です。
後徑節にはpreapical lobeとか言うのがあるようです。
生時の複眼は、緑から赤に光ってキレイでした。
「日本のイエバエ科(篠永先生)」を読んだのですがうまく種までたどり着けませんでした。
ひょっとして翅の斑紋が欠如したリュウキュウシリボソハナレメイエバエでしょうか?
種の記載のところには翅の紋の話はでてますが、検索には翅の紋については出てこないのが味噌ですね・・・私にもリュウキュウシリボソハナレメイエバエに見えます。
ただ、リュウキュウシリボソハナレメイエバエの分布記載を見る限り、西表&東京、インドネシア、タイ、台湾となっており、本州にも分布する可能性は十分にあるとおもいます。
一応、中国蝿類に出ていた♂ゲニの図を出しておきますので、ご参照ください。
ハエ男様、いつもありがとうございます。
お礼が遅れまして申し訳ありませんでした。
貴重な文献の図をありがとうございます。
篠永本にはリュウキュウの図がなかったのでありがたいです。
早速ゲニを抜いてみました。
リュウキュウシリボソハナレメイエバエで違和感なさそうです。(素人目には、、、、)
どんなもんでしょうか?
ついでに第5腹板も貼っていきます。
ベタベタたくさん貼ってスイマセン。
ゲニを見る限り、リュウキュウシリボソハナレメイエバエで良さそうですね。
篠永先生による国立科学博物館専報第43号『皇居の動物相モニタリング調査』および39号『赤坂御用地と常盤松御用邸の動物相』によると、日本では1990年に西表島で1♂が採集されて以来採集記録がなかったのが、皇居(南部敏明先生採集)で2002年3月14日に1♂、2005年10月24日に1♀、2004年6月14日に1♀、赤坂御用地に設置したマレーズトラップで2003年9月30日に2♂♂が採集されたのだそうです。日本列島に広く分布している可能性が高そうですね。実は中部地方某所由来の同定依頼サンプルで、1個体が私のところに来ています。
ちなみに、『日本のイエバエ』のシリボソハナレメイエバエ属の日本語検索表は、英文検索表と比較していただくとわかるのですが、他の部分と比較しても誤植率が非常に高いので、ご注意ください。
参考文献
篠永哲, 2005. 赤坂御用地と常盤松御用邸のイエバエ科,クロバエ科,ニクバエ科. 国立科博専報, (39):375-386.
篠永哲, 2006. 皇居の双翅目昆虫. 国立科博専報, (43):255-267.
ハエ男さん、ありがとうございます。
翅の紋は地域によって変わるということで納得します。
ウミユスリカさん、たくさんの情報ありがとうございます。
>『日本のイエバエ』のシリボソハナレメイエバエ属の日本語検索表
確かに、出だしから真逆になってますね。
英語が苦手な私には読み解くのがきついです。
> >『日本のイエバエ』のシリボソハナレメイエバエ属の日本語検索表
> 確かに、出だしから真逆になってますね。
> 英語が苦手な私には読み解くのがきついです。
出だしが真逆だし、背板と腹板が入れ替わっているキーはあるしで・・・
あの本を使いこなすには、英文と和文の検索表の双方と個々の種の記載文を読み比べ、40年前の"Fauna Japonica"、『中国蝿類』と従来の文献をフル動員し、なおかつ参照標本を地道に蓄積し・・・と周到に足元を固めてかからねばなりません。
まぁ、確かにひとつの検索表や図鑑の絵合わせに頼るのではなく、そうするのが生物の同定というものの王道なのですけどね。でもあれだけ校正が甘いと、出版社や著者の篠永先生には是非とも正誤表を出してもらいたいと思ってしまいます。
ただ、あの本のあの状態のおかげで、イエバエ科の分類の勉強に甘えが入りにくくなっていることを考えると、篠永先生の親心なのかも・・・・・
Aclerisさんが神戸で採集された”リュウキュウハラボソハナレメイエバエ”Pygophora maculipennisについて,この場での同定結果に少し疑問が残ったので,それらの標本をAclerisさんから複数送っていただきました.
これらの標本の交尾器を含めた形態を篠永先生の「日本のイエバエ科」と「中国蝿類」の記載,検索表,図を参考にして,検討した結果は以下の通りです.
1.両書とも翅の前縁に暗色紋がP. maculipennisにあるが,神戸の標本の翅は雌雄ともに全面的に無色透明で暗紋の痕跡さえもない.ただし,中国蝿類によると雌は無紋とのことです.斑紋の発達に地理的変異がないとは言えませんし,雌が無紋なのであるいは種内変異がありうるかもしれません.
2.中国蝿類では雄後脛節の後腹剛毛はP. maculipennisでは3-4本とあるが,神戸のは1本.同書で記載されたP. submacularisでは1本.ただし,この種でも翅は有紋.「日本のイエバエ科」では,後腹剛毛の数やその有無については記載がない.
3.神戸の雄交尾器のphallusはsurstylusより明らかに長く,またその湾曲はP. maculipennisよりずっと弱い.この点はP. submacularisに類似している.No. 4054で中国蝿類のP. maculipennisの交尾器の図をハエ男さんが示しています.
4.神戸の交尾器のphallobaseはP. maculipennisよりずっと大型で,その背後縁に生じる突起(図ではPhallobaseの最も下に見えている小型で暗色の突起)は台形で先が広がるが,P. maculipennisではほとんどこの突起が現れず,P. submacularisでは三角形で先がやや尖る.
5.神戸の交尾器のsurstylusの背縁(後縁)は緩やかな弧を描くが,P. maculipennisでは丸みを帯びた山形に張り出す.神戸のはsubmacularisに類似する.
6.側面から見たepandrium上雄板の基部背方の角が神戸では直角ないし鋭角であるが,P. maculipennisでは鈍角.P. submacularisでは鋭角.
少なくとも以上の相違点がみられるし,本属では類似種の雄交尾器の形態差は比較的わずかなので,神戸のPygophoraは単純にP. maculipennisとは同定できないと思います.
篠永先生がその後,皇居などで採集されてP. maculipennisと同定・記録された標本は採集データのみで形態の記述がないので,どのようなものか判断できませんが,何も注意書きがないということは,西表島の1雄(「日本のイエバエ科」で図示)と大差なく翅に斑紋がある個体だろうと推測しています.
No. 4059でウミユスリカさんが示されている中部地方某所の1個体というのが,どのようなものか知りたいところです.
なお,以上の内容の大部分はすでに1月11日から12日にかけて投稿したのですが,消えたものです.