キモグリバエ科は、日本では上宮健吉博士によって詳細に研究され、その結果は1983年にワシントン昆虫学会の紀要に発表されています。しかし、英文である上に全形図などもほとんどないので、気軽に同定に使える文献ではありませんでした。
全形図も含めた和文の検索解説が是非欲しいものと思っていましたら、昨年同博士が久留米昆蟲研究會の会誌KORASANA,No.83に「キモグリバエ科の属の検索表絵図解説(その1)」を発表されました。本号ではケブカキモグリバエ亜科Siphonellopsinaeとナガミャクキモグリバエ亜科Oscinellinaeが扱われており、次号でその2としてキモグリバエ亜科Chloropinaeが出版される予定です。 本号ではキモグリバエ科の形態の一般解説と、両亜科の属の検索表、主要属の全形図や検索に必要な形質についての写真が含まれています。 キモグリバエ科の同定に苦労されている方々には朗報になりますので、紹介しておきました。学会誌ですし、第3者が勝手にpdfを作って学会の許可なく頒布することはできませんが、上宮博士が個人的にpdfを作成されて、必要な方にお送りいただけることを期待しています。また、個人的に同博士に依頼すれば、あるいは別刷などをお送りいただけるかもしれません。 |
ハムシさん。画像のオドリバエはClinoceraシブキバエ属の1種です。この属の種は一般にTrichoclinoceraケミャクシブキバエ属の種より小型で、より一層緩慢な流れや細流、あなたが撮影されたような岩清水で生活しています。日本に少なくとも数種はいるのですが、未研究です。現在Trichoclinocera属の研究が終わって出版段階にきているので、その後本属の研究に移ることになっています。いずれもカナダのClinocerinae亜科の専門家であるSinclair博士との共同研究です。
昆虫と自然の2005年9号に「岩清水に棲む昆虫たち」の特集がありその中でもこの生息環境に特異的に生活する双翅類が紹介されています。 山地の細流には、多分あなたが撮影された種より大型の種や同様に大型で翅に多くの短条紋を表わす種などがいます。 Clinocera属とKowarziaマツゲシブキバエ属の間では、後者が顔面の眼縁に繊細な刺毛を生じることが検索の特徴になっていますが、日本産の有毛の種は交尾器の構造から判断するとヨーロッパの真のKowarziaとは異なり、Clinoceraのようです。 岩清水性の種はほぼ年間を通じて現れ、岩清水が氷結していても部分的には活動するものもあります。
アノニモミイア様.
コメントありがとうございます.Clinoceraの1種とのことで,今後の研究に使ってもらえるよう標本を蓄積しておきたいと思います. 昆虫と自然の特集号も読んでみます. ありがとうございました. |
マエグロシギアブRhagio costimacula (Matsumura, 1916)です。詳細はあなたの別のスレッドに示してあります。
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知人からこのサイトを教えていただきました。4月15日に鹿児島市の自宅の玄関にとまっていたアブです。シギアブの一種だろうと教えていただきましたが,写真から名前がわかるようでしたらよろしくお願いいたします。
画像のシギアブは、マエグロシギアブRhagio costimacula (Matsumura, 1916)です。日本産のRhagioシギアブ属としては色彩斑紋の豊かな種です。決して稀な種ではありませんが、市街地には普通は生息していません。林や森のある場所に生息しています。
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Brachycara yukawai Nagatomi, 1977をインターネットで調べておりましたら,Synonym of Brachycara latifrons James, 1960 とあるのを見つけました.日本昆虫目録第8巻にはB.yukawaiと出ています.いつどこでシノニム扱いとなったのか私にはわかりません.目録が間違っているのでしょうか?
田中川様.
恐らく,下記のカタログだと思います. Woodley, N.E. (2001) A World Catalog of the Stratiomyidae (Insecta: Diptera). Backhuys Publishers, Leiden, 473 pp. ハワイに分布するB. latifronsのシノニムというのも思い切ったものです.
茨城@市毛様
お調べいただきありがとうございます. 10年以上も前にシノニム扱いされていたにも関わらず,そのような情報をわれわれアマチュアが入手することは容易ではありません.たとえば昆虫目録執筆担当者の方々から双翅目談話会の会誌に,そのような新しい情報を提供していただけると助かるのですが.
田中川様.
中々,専門家といえどもすべての情報に目を通すのは困難と思われます. 昨今,大学図書館での学会誌の購読停止が相次いでいますので,今後増々困難になると思われます. また,今回のようなケースでは,収録漏れでない場合もあります.単純に言えば,研究者の見解の相違です. これだけは,難しいですね. |
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