![]() 高一になって、以前より採集に行ける回数が減ってしまった、虫キョロリスです。 それでも、最近は、 ヤドリバエのProdegeeria属、キモグリバエのTogeciphus属、ニセヒメコバエのTenuia属など、、とてもカッコイイ双翅目を採集できていて、 楽しい毎日を過ごしております。 そして、今回も、再び ヤドリバエについて質問させてください。 採集日時:2021年6月20日 採集地:福井県嶺南地方 ![]() 観察してみると、Dexia属とは特徴がところどころ異なりました。 その後、Twitterで、小須田貴延様から、 「Dexia属ではなく、Estheria属かDinera属だろう」とのご指摘をいただき、 旧北区のマニュアルで同定したところ、 31番目の項目がよく分かりませんでしたが、 おそらくDinera属にたどりつくようでした。 ![]() (https://www.researchgate.net/publication/265966479_A_systematic_study_of_the_genus_Dinera_Robineau-Desvoidy_from_the_Palaearctic_and_Oriental_regions_Diptera_Tachinidae) 腹部第1・2背板の溝は 背板の後縁まで届いているので、検索表の2に進み、 側顔が裸のため、3に進みます。 Palpusの長さは普通なので、4に進み、 そして、dc3+3なので、5に進みました。 そこから、D. angustifrons か D. orientalis のどちらかになると思うのですが、 この個体(♀)は、「pc orb sが1本である」、「mid tibiaが1 ad setaeである」などの特徴を持っていて、どちらの種類とも合わないに思えてしまいます。 このヤドリバエは何者でしょうか? そもそも、属が間違ってるでしょうか? もし知っておられる方おられましたら、ぜひ教えていただきたいです。
虫キョロリス 様
couplet 31については図105-106を見比べてください. 後胸気門の蓋状の覆いが,前後に対称か非対称かが問題です. Zhang & Shima(2006)で多数のDinera属が解説されていますが,日本に分布しているのはfuscataとtakanoiの2種だけです.
虫キョロリス 様
前のAnechuromiya のスレッドに書いた,Shima(1979) Blondeliini I. のほうの文献に, Prodegeeria もちょうど載っていますね. 自分はDinera を2種3頭しか持っておらず,どちらもZhang & Shima(2006) で落ちず, もっと採りたいと思っているところです. ![]() couplet 31について説明してくださり、ありがとうございます! 早速、後胸気門の部分を見てみました。 それが、この写真です。 画像中央の、平均棍の右に写っている丸っぽい形をしたのが、 「後胸気門の蓋状の覆い」なのかなと思ったのですが、 これを見ると、どうも前後に対称なように思えてしまいます。。 とすると、、couplet 32の方に進むべきなのでしょうか?? そもそも、見る場所を間違えてたら すみません。 大宮 様 Prodegeeria属の検索表が載っている場所を教えてくださって、ありがとうございます! この論文に載っていたとは、、気付かなかったです ^^; 僕が捕まえた個体は、3 stplで、中脛節に強い v setaがあるので、P. japonicaのようです! > 自分はDinera を2種3頭しか持っておらず,どちらもZhang & Shima(2006) で落ちず,もっと採りたいと思っているところです. なるほど。。日本には、Zhang & Shima(2006)に載っていないDineraが意外とたくさん生息しているのかもしれませんね! 興味深いです!
図の106は前の覆いと後の覆いとが別々にあって,大きさも形もほぼ同じです.
105のほうは後ろの覆いのみ発達しており,前のものは確認できません. これらの図とは別に,後の覆いが大きく,前の覆いが小さいため非対称であるケースがあります. 写真のように丸く見える場合は非対称であると判断できます.
大宮 様
なるほど、、そういうことだったんですね! すると、この個体は、Dinera属として良さそうですね。 お二方、 この度はありがとうございました!
こんにちは.4年前の投稿に訂正します.
久しぶりにこの標本を改めて調べたのですが,一般的なDineraと見た目が違うと感じ,別属の可能性を考えていました.Dineraは基本的に黒褐色の見た目なのです.しかし,旧北区の検索ではやはりDineraに落ちます.Billaeaという見た目でもないですし,実際形態は違います.むしろ見た目はDexiaのようです(細かい形態が異なりますが). 先日,似たようなハエの写真が,iNaturalistで,マレーシアとインドネシアからあがっているのを見て,東洋区の検索表を調べる必要を感じました.Crosskey(1976)の検索表をひいた結果,Dineraと非常に似た特徴を持つPhilippodexia属に行きつきました.Philippodexiaは,2nd costal sectionが無毛な点やpropleuronが有毛な点を満たしています.そこで,Townsend(1926), Townsend(1926), Mesnil(1953)の原記載を調べました.いずれもメスの記述はないですが,額が前方で急速に広がる・翅にcostal spineはない・脚が黄色・頭部胸部背面が明るい金色の粉で覆われる・胸部に4つの黒線があり横線後で内側二つが合併する…など非常に一致します.Mesnil(1953)でのP. pallidulaの記載文には,腹部の色の詳しい記述もありますが,非常によく似ていると思います. その他 特にわかりやすい特徴が,2nd costal sectionの長さです.Philippodexiaでは非常に長いと記述されていますが,実際本個体で1st costal sectionと同長程度あります.他のDexiiniを確認してみても,ここまで長いものはなかなかいないようです. そのため,DineraでなくPhilippodexia sp.の可能性が高いと考えました.本属は,インドネシア・マレーシア・フィリピンから4既知種が記録がありますが,日本に生息することが認識されているかはわかりません.未記載種でまだ発表されていないだけかもしれません.No.11703の芋虫のつぶやきさんの写真も同属のようです.iNaturalist上には中国からも同属と思われる写真があげられていました. 自分の手元の標本は,少し腐ってしまったのか,一部が黒く変色してしまっています.追加個体を得たいところです.
虫キョロリス 様
東洋区の属ですか,素晴らしいですね. 日本で研究されているかどうか分かりません. Philippodexia 属の記載(Townsend, 1926β: 533-)の中の,腹部第1節に中縁剛毛があるという記述が多少の違いですが.それ以外はよさそうですね. 相違点が少ないのはP. longipes Townsend, 1926 あたりでしょうか. 他の細かな違いを拾っていくと, P. pallidula Mesnil, 1953 は,内外の頭頂剛毛がとても細く短い, P. sumatrensis Townsend, 1926 (γ: p.30)は,見かけ上の腹部第4節の両脇に強い側心剛毛がある,胸部の縦条は横線後で合流しない. 両者はst の数が異なるようです(P.pallidula は2). P. montana (Townsend, 1926) の当初のMalayodinera 属の記載(γ: p.27)は色々と違い, メスの額帯幅は側額の2倍,横線後dcは通常4,横線前ac4,r5室は翅端の少し前で閉じる,腹部は最初の2節に中縁剛毛がない. 他には世界の種目録のPhilippodexia 属の所には,Kurintjimyia jacobsoni Townsend, 1926 (γ: p.38) というのが挙がっているのですが, これがTachina 属の亜属不定の所にも出てくるので不思議です. この機会に調べたところ,旧北区と東洋区の検索に収録されていないDexiini の属として,中国の両方の地理区から報告されているPseudodexilla O’Hara, Shima & Zhang, 2009 というのがあるようです. もとはPseudodexia Chao, 2002 という属だったのがホモニムで無効のため変更になりましたが,記載の内容は海南森林昆虫(Chao, Liang & Zhou, 2002) を見ないと分からないようです. 近いうちに複写依頼を出すついでがあるので,頼んでみようと思います.
大宮 様
返信ありがとうございます. そうなのです,腹部第1節の中縁剛毛の有無が違うのですが,雌雄の違いだろうかなどと思っています.仰せの通り,P. longipesが相違点が少ないようです.そして,各種の細かな違いを整理してくださってありがとうございます.まだ十分精査しきれていないところもあるので,近いうちに細かいところまで観察して文献と比較しようと思います.いずれの記載文も古いため,脚の剛毛など細かい部分の特徴までは十分載っていなかったり,図も一切なく,強い確信を持って属を断定できないのが少し歯痒いですが… それから,P. longipesのシノニムとして,P. majorとP. separataが,Malloch, J.R. (1935) Exotic Muscaridae (Diptera) [concl.].-XXXIX. で記載されていることに今気づきました.メスの特徴が載っていないだろうかと気になりますが,Malloch(1935)はネット上で見れなかったので,今後 複写申し込みのついでに頼んでみます. P. montanaはかなり特徴的に違いますよね.元々別属にされていたのも納得ですし,本当に現在のように同属としてふさわしいか少し気になります. Kurintjimyiaについては全く気づいていませんでした.たしかに,Philippodexiaの箇所にもTachina の箇所にも載っています.不思議です.記載文を読むとPhilippodexiaとは違うように思います.Eudoromyiaと比較されているあたりも,Tachinaのほうであると考えた方が自然です… なぜPhilippodexiaのシノニムとしても掲載されているのか謎です. >この機会に... Pseudodexillaというのもいるのですね.これは知りませんでした.比較的最近記載されていますね,この属の可能性もまだありますね.気になります. |
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