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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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ツリアブ2種の翅 投稿者:田中川 投稿日:2008/10/06(Mon) 02:49:07 No.4886  引用 
クロバネツリアブとマエグロツリアブ、この2種の右翅を同じサイズに加工して比較図を試作してみました。マエグロツリアブの翅にはクロバネツリアブと誤同定されやすい雌のものを使いました。この図で見るように、2種の翅脈は明瞭に異なると思っています。
脈や室の名称については私には良く分かりませんので教えていただきたいと思います。
第1肘室の位置と名称は正しいですか。
M1室とM2室の位置は正しいですか。
M1室の末端の位置は正しいですか。
M2脈の位置は正しいですか。
径室はそれぞれ第○径室ですか。

「みんなで作る双翅目図鑑 画像一括閲覧ページ」のツリアブ科に載っているクロバネツリアブの画像のうち、ひとつはマエグロツリアブ♀と思います。マエグロツリアブの翅脈と一致します。クロバネツリアブの腹部第3節には白色の鱗毛帯がありますが、第2節には白色ないしは黄色の鱗毛は生えていないはずです。マエグロツリアブは「腹部第2節後半の側方と第3節は黄色鱗毛で被われる」と北隆館の古い図鑑に記されています。


Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:三枝豊平 投稿日:2008/10/06(Mon) 09:53:34 No.4887  引用 
田中川さん.
双翅目の翅脈相は多くはMNDのMcAlpineの解釈に従っていますが,これは多くの根拠から明らかに部分的に間違いでして,彼の

CuA1脈はM4脈
CuA2脈はCuA脈
CuP脈はCu偽脈(Cu pseudovein)
A1脈はCuP脈
A2脈はA1脈
cua1室はm4室
cup室はcua室
a1室はcup室
a2室はa1室
にそれぞれ対応します.

正しい解釈に基づくツリアブの脈相と,この基本になるガガンボダマシの脈相の新訂原色昆虫大図鑑第3巻に載せた図の原図(サイズは縮小)を添付しておきます.ご質問ですが,

第1肘室の位置と名称は正しいですか.
 この室は正しくはm4室です.
M1室とM2室の位置は正しいですか.正しいです.
M1室の末室の位置はただしいですか.正しいです.
M2脈の位置は正しいですか. 正しいです.
径室はそれぞれ第○径室ですか.図を参照下さい.


Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:三枝豊平 投稿日:2008/10/06(Mon) 09:54:47 No.4888  引用 
ガガンボダマシの翅脈相です.

Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:三枝豊平 投稿日:2008/10/06(Mon) 10:39:53 No.4890  引用 
ガガンボダマシの翅脈相は貼り付けてある画像をクリックして,それでも文字がかすれていたら,現われた画像をもう一度クリックして大きくしてください.そうすれば判読できるでしょう.

またツリアブの翅脈相の図でpsedoveinと誤記したのは正しくはpseudoveinです.訂正しておきます.

Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:田中川 投稿日:2008/10/06(Mon) 11:34:42 No.4891  引用 
三枝豊平様、ありがとうございます。
いろんな疑問が氷解しました。
ツリアブ2種の翅脈に対応する翅脈相の図がなかなか見つからなくて、難儀しておりました。
ツリアブの図で、r4が2室あります、またM3脈とm3室が見当たりませんが、何か理由があるのでしょうか。

Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:三枝豊平 投稿日:2008/10/06(Mon) 12:58:06 No.4892  引用 
「r4が2室あります、またM3脈とm3室が見当たりませんが、何か理由があるのでしょうか。」ということですが,

R2+3とR4の間,R4とR5の間にそれぞれ1本の二次的な横脈がはいったために,r2+3室とr4+5室がそれぞれ基部と端部に2分されたと言うことです.なお,翅室の名称はその前の翅脈の名称を使うことになっていますので,翅室の間に2次的な横脈が入っても,二分された室の名称は変わりません(もちろん,基部とか端部とか,basal section, apical section; proximal section, distal sectin等と分けることは可能です).

M3脈とM4脈の同定は大変難しい問題です.下に示したオドリバエ科の場合のように,これらの脈のどちらかが退化しつつある状態の種があると,同定がやりやすいのですが,中間的なものは概して見付かりません.それで,これらの脈の本来的な位置を考えて適宜,いずれかに推定しているわけです.R2+3脈の場合のように,M3+4脈とするのが最も無難な措置のはずですが,そのように行なうことが少ないようです.

オドリバエ科のLeptopeza属では中室からのM脈が2本です.本来はオドリバエ科では3本ですが,本属では中室の前端に短いM1脈の痕跡が現われるので,2本の脈は前からM2,M3と同定できます.同様にHybos属では中室からでる2本の翅脈の間に,中室横脈から短い脈が痕跡的に現われる個体があります.このことを一つの根拠として,前の脈はM1,後の脈はM3と解釈しています.すなわち中室の前から出るM脈がLeptopezaとHybosでは異なる翅脈ということになります.両属で中室前端の形も少し違っていて,これも上記M脈解釈の根拠になります.なお,オドリバエ科ではM4が消えたと言う解釈で,この科の原始的状態での3本のM脈を前からM1, M2, M3と解釈しています.

Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:田中川 投稿日:2008/10/06(Mon) 14:06:59 No.4893  引用 
三枝豊平様、懇切な説明をいただき、ありがとうございます。
良く理解できました。

Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2008/10/06(Mon) 18:32:36 No.4895 ホームページ  引用 
田中川様,三枝様.

わかりやすい解説ありがとうございます.

確かに,ハンマーさんが撮影したツリアブはマエグロツリアブのようですね.
大阪湾からは30km近く離れているようなので,移動個体かも知れません.
マエグロツリアブは,大阪近郊でも稀に採れているようです.

双翅目関連は参考書が少ないので,下記の書籍を参考にするのが良いと思われます.図書の収蔵先は「NACSIS Webcat」や「NDL-OPAC」で調べられます.

・Manual of Nearctic Diptera 1981-1989

・Contributions to a Manual of Palaearctic Diptera. 1997-2000

双方とも,双翅目全体についての形態の解説や,各科の解説が収録されています.

Re: ツリアブ2種の翅 投稿者:田中川 投稿日:2008/10/06(Mon) 21:43:59 No.4896  引用 
茨城_市毛様、マエグロツリアブの情報、ありがとうございます。また、参考図書も紹介いただき、ありがとうございます。

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