田中川さん.
双翅目の翅脈相は多くはMNDのMcAlpineの解釈に従っていますが,これは多くの根拠から明らかに部分的に間違いでして,彼の
CuA1脈はM4脈
CuA2脈はCuA脈
CuP脈はCu偽脈(Cu pseudovein)
A1脈はCuP脈
A2脈はA1脈
cua1室はm4室
cup室はcua室
a1室はcup室
a2室はa1室
にそれぞれ対応します.
正しい解釈に基づくツリアブの脈相と,この基本になるガガンボダマシの脈相の新訂原色昆虫大図鑑第3巻に載せた図の原図(サイズは縮小)を添付しておきます.ご質問ですが,
第1肘室の位置と名称は正しいですか.
この室は正しくはm4室です.
M1室とM2室の位置は正しいですか.正しいです.
M1室の末室の位置はただしいですか.正しいです.
M2脈の位置は正しいですか. 正しいです.
径室はそれぞれ第○径室ですか.図を参照下さい.
ガガンボダマシの翅脈相です.
ガガンボダマシの翅脈相は貼り付けてある画像をクリックして,それでも文字がかすれていたら,現われた画像をもう一度クリックして大きくしてください.そうすれば判読できるでしょう.
またツリアブの翅脈相の図でpsedoveinと誤記したのは正しくはpseudoveinです.訂正しておきます.
三枝豊平様、ありがとうございます。
いろんな疑問が氷解しました。
ツリアブ2種の翅脈に対応する翅脈相の図がなかなか見つからなくて、難儀しておりました。
ツリアブの図で、r4が2室あります、またM3脈とm3室が見当たりませんが、何か理由があるのでしょうか。
「r4が2室あります、またM3脈とm3室が見当たりませんが、何か理由があるのでしょうか。」ということですが,
R2+3とR4の間,R4とR5の間にそれぞれ1本の二次的な横脈がはいったために,r2+3室とr4+5室がそれぞれ基部と端部に2分されたと言うことです.なお,翅室の名称はその前の翅脈の名称を使うことになっていますので,翅室の間に2次的な横脈が入っても,二分された室の名称は変わりません(もちろん,基部とか端部とか,basal section, apical section; proximal section, distal sectin等と分けることは可能です).
M3脈とM4脈の同定は大変難しい問題です.下に示したオドリバエ科の場合のように,これらの脈のどちらかが退化しつつある状態の種があると,同定がやりやすいのですが,中間的なものは概して見付かりません.それで,これらの脈の本来的な位置を考えて適宜,いずれかに推定しているわけです.R2+3脈の場合のように,M3+4脈とするのが最も無難な措置のはずですが,そのように行なうことが少ないようです.
オドリバエ科のLeptopeza属では中室からのM脈が2本です.本来はオドリバエ科では3本ですが,本属では中室の前端に短いM1脈の痕跡が現われるので,2本の脈は前からM2,M3と同定できます.同様にHybos属では中室からでる2本の翅脈の間に,中室横脈から短い脈が痕跡的に現われる個体があります.このことを一つの根拠として,前の脈はM1,後の脈はM3と解釈しています.すなわち中室の前から出るM脈がLeptopezaとHybosでは異なる翅脈ということになります.両属で中室前端の形も少し違っていて,これも上記M脈解釈の根拠になります.なお,オドリバエ科ではM4が消えたと言う解釈で,この科の原始的状態での3本のM脈を前からM1, M2, M3と解釈しています.
三枝豊平様、懇切な説明をいただき、ありがとうございます。
良く理解できました。
田中川様,三枝様.
わかりやすい解説ありがとうございます.
確かに,ハンマーさんが撮影したツリアブはマエグロツリアブのようですね.
大阪湾からは30km近く離れているようなので,移動個体かも知れません.
マエグロツリアブは,大阪近郊でも稀に採れているようです.
双翅目関連は参考書が少ないので,下記の書籍を参考にするのが良いと思われます.図書の収蔵先は「NACSIS Webcat」や「NDL-OPAC」で調べられます.
・Manual of Nearctic Diptera 1981-1989
・Contributions to a Manual of Palaearctic Diptera. 1997-2000
双方とも,双翅目全体についての形態の解説や,各科の解説が収録されています.
茨城_市毛様、マエグロツリアブの情報、ありがとうございます。また、参考図書も紹介いただき、ありがとうございます。