Shiraki & Edashigeの論文の中でのジョウザンナガハナアブの記録に関する記述は下記引用の通りです.
54. Temnostoma jozankeanum (Matsumura, 1915) Nom. Jap.: Jozan-naga-hanaabu Mt. Ishizuchi, (S. Miyamoto, 1934)** すなわち,著者等はこの論文の中の多くの種のように実際彼らの手元の標本に基づいて記録したものとは異なって,本種の場合には出版された記録に基づいています.なお,**のついている文献は: Miyamoto, S. (1934). Ent. World, Tokyo, 2(9):300. です.こちらは論文を今手元に持っていませんので,詳しい論文題名は分かりませんが,半翅類や長翅目の研究者の宮本正一先生がお若い時に中国地方や四国のハナアブを研究されていたので,その頃の論文でしょう. 本種はなぜか九州大学の赤本の目録にも四国が分布に記録されていません.顕著な種なので,宮本先生の誤同定とは思えませんが,目録のこの部分をチェックされていた徳島県博の大原賢二さんがどのようにこの記録を扱ったのでしょうか. Shiraki & Edashigeの論文では記載年が1915となっていますが,これは多分誤まりで,かなりの種が松村松年先生の1915年に出版された「昆蟲分類学下巻」で記載されており(新種とは表記がないが原記載),それらの種が同先生の「新日本千蟲圖解,巻のニ」で新種としてまた記載されています.この場合は1915年のが新種の有効な記載になります.しかし,本種の場合は昆蟲分類学では記載されていないので,1916が本種(ジョウザンナガハナアブ,Spilomyia jozankeana Mats.として)の記載になるでしょう.一点注意しなければならないのは,1916の著書では,和文の記載では本種雌の図は「第十六圖(13)(♀)」となっていて,図版の絵に相当しますが,英文記載のところでは「(PL.XVI, Fig. 18, ♀」となっていて,Fig.18はMallota japonicaの図です.宮本先生は当然1916の著書の記載と上記した図はごらんになっているはずですから,誤同定はないとおもいます. |
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