再び ヤドリバエについて、お尋ねしたいことがあります。
2020年4月6日、福井県にて、 石をひっくり返したりして、虫を探している時、コブハサミムシを見つけました。 そのすぐそばに、寄生蝿の蛹がありました。 そして、コブハサミムシと寄生蝿の蛹を持ち帰ると、4日後、左写真のヤドリバエが羽化しました。 ハサミムシの寄生蝿ということで、Anechuromyia nigrescensだろうと思い込んでましたが、 最近、旧北区マニュアルで同定した結果、Elfia属になりました。 Elfia属は、現在は Phytomyptera属に組み込まれているようです。 Phytomyptera属は、日本からは、1種のみ(種はまだ特定されていないらしい)が見つかっているとのことです。 ↑「埼玉県のヤドリバエ」の文献を参考にしました。 この、日本から確認されている種について、特徴などを教えてください。 また、Phytomyptera属とハサミムシの関係についての論文がありましたら、そちらについても教えていただきたいです。
虫キョロリスさま
見た事が無い種類です. Phytomyptera は埼玉の報告の2年前に皇居からも不明種が報告されており,ヨーロッパ産のPhytomyptera vaccini (Meigen)に似るが♀しか得られておらず種名を確定できないそうです. Diptera.info やMoschWeb に出てくる写真を見ると,採集された個体とよく似ているようです. 寄主については過去の記録が全てではないとは思うのですが,旧北区の寄主のリストを見るとこの属は鱗翅目の色々な科に寄生した記録があるようです. 状況からしてコブハサミムシに寄生していた事が確かならAnechuromyia が気になりますね. そこで問題になるのが,旧北区のマニュアルの192番です. 頭部の後腹部の毛の色が完全に黒色なら193番へ,白色か,およそ黒色でも少しの淡色毛が縁にあるなら197番となっています. しかしAnechuromyia の属の記載を見ると,この部分の毛の色が主に黒色で,褐色の毛が腹面中部に限定されているという趣旨のことが書かれています. なので旧北区のマニュアルとは完全には一致しないか間違えやすく,ここの毛の色を無視して197番も試してみる必要がありそうです. 他には,Anechuromyia が記載された事によりBlondeliini の検索表の12番が改訂されているのですが,そちらも試してつじつまが合うようなら,詳細な記載と比べてみるのはいかがでしょうか. どちらも同じ年に出された文献で,オンラインで見られます. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10387610?tocOpened=1 Shima 1979. Study on the Tribe Blondeliini from Japan (Diptrera: Tachinidae) I . Kontyu,47(2):126-138. Mesnil and Shima 1979. New Tribe, Genera and Species of Japanese and Oriental Tachinidae (Diptera), with Note on Synonymy. Kontyu,47(4):476-486.
大宮様
色々教えてくださり、有難うございます!! 頭部後腹部の毛の色を見てみました。横方向から見ると、黒い毛しかないように見えたのですが、 後方のある角度から見ると、淡色毛がはっきりと見えました(左写真)。 なので、旧北区の197番に進み、197⇨201⇨202⇨203へと進み、 Anechuromyiaに辿り着きました!! 大宮様が教えてくださった文献でも、Anechuromyiaに辿り着きました!
Mesnil and Shima 1979. New Tribe, Genera and Species of Japanese and Oriental Tachinidae (Diptera), with Note on Synonymy. Kontyu,47(4):476-486.
に書かれている A. nigrescensの形態と 完全に一致しました。 正体がわかってよかったです。 ただ、 上記論文の検索表訂正部分の12の項目に書いてある 「Arista thickened at least on its basal 1/2」の所の意味がよく分かりませんでした。 ご教示ください。
言葉の上で褐色が淡色の扱いになるかどうか,微妙だったのですが,写真を見るとかなり白っぽく写っていますね.
arista についての記述は,「少なくともその基部1/2が厚くなる」という意味なのですが,今回の採集個体は先端近くまで,ほぼ全長にわたって太くなっています.なのでこれだけ見ているとどの程度で太いというのか分からないかもしれませんが,他の種類では途中から太さが変わっているものが多いので,見比べると感覚がつかめると思います. この種は2006年の日本の寄主カタログの段階では,原記載のみからしか知られていない希少種とされていて,その後2015年に発表された追加記録では長野県からクギヌキハサミムシより得られています. 素晴らしいものを採りましたね.もし学業の合間に余裕がありましたら,例えばはなあぶ誌に報告されるなどご検討されてはいかがでしょうか.ご相談等ありましたら,この掲示板でも,直接メールでもご連絡ください.
> 言葉の上で褐色が淡色の扱いになるかどうか,微妙だったのですが,写真を見るとかなり白っぽく写っていますね.
はい、結構白っぽいです。。確かに、、「褐色」とは言えない色ですね。 aristaの太さに関することについても、教えていただき有難うございます。 今日、また標本を見ていたのですが、1つ気になる点が出てきました。 論文には、reclinate orbital setaeが1つあると書いてあるのですが、この個体は2つあるような気がするのです(写真)。 これについては、どう考えたらいいでしょうか? >この種は2006年の日本の寄主カタログの段階では,原記載のみからしか知られていない希少種とされていて,その後2015年に発表された追加記録では長野県からクギヌキハサミムシより得られています. そうなのですか。。結構珍しいんですね! そして、クギヌキハサミムシからも得られているのですか。。コブハサミムシだけだと思っていました。 > 素晴らしいものを採りましたね.もし学業の合間に余裕がありましたら,例えばはなあぶ誌に報告されるなどご検討されてはいかがでしょうか. ちょうど今、双翅目談話会に入会しようとしているところです。入会した後に はなあぶ誌へ報告してみようかなと思いました。
これは同じ大きさのものがはっきりと2本ありますね.本来ここはぴったり決まってほしい所ですが,稀に変異もあり,どうなんでしょうね.
改めてElfia・Phytomyptera と比べると,頭部後下半分の毛の色の違い以外にも,小盾板亜端剛毛が集中方向なのと,オスの前向きの眼縁剛毛が2本らしいので,やはり採集個体はそれらとは異なるようです. 旧北区のヤドリバエ全体で見ても,オスの前向きの眼縁剛毛が1本である事と,R4+5脈基部の刺毛が大きく1本である事の条件が割ときつく,この二つでほとんど絞られるようです. なので,交尾器の検討で問題が無ければ,文献との相違点を明記した上でAnechuromyia としてもよいのではないかと思います.ひとつしか採れていなければ躊躇するかもしれませんので,追加個体が得られるまで保留にするのもよいと思います.なかなか採れないかもしれませんが. 双翅目談話会への入会を検討されているとのこと,歓迎いたします! すぐには同定できない事が多いですが,取り組みがいのある理由でもあると思います. 一緒にハエを楽しみましょう.
大宮様
右側のreclinate orbital setaeが2本だったのですが、、 今、左側の方も見てみたら、左側は1本でした。 ソケットも見あたりません。 これだと、変異の可能性が高いでしょうか。 > 旧北区のヤドリバエ全体で見ても,オスの前向きの眼縁剛毛が1本である事と,R4+5脈基部の刺毛が大きく1本である事の条件が割ときつく,この二つでほとんど絞られるようです. そうなのですか。ならばAnechuromyiaの可能性は高そうですね。 > 双翅目談話会への入会を検討されているとのこと,歓迎いたします! すぐには同定できない事が多いですが,取り組みがいのある理由でもあると思います. 一緒にハエを楽しみましょう. 有難うございます! 3年後の大学受験の勉強で忙しくなるので、同定会などにはほぼ参加できないとは思いますが、入会してハエを楽しもうと思います!
ええと,
前の5枚の写真が合わせてある投稿を見ると,左側も2本写っていると思うのですが,もしかしたら見にくいのかもしれませんね. 受験勉強は大切だと思うので,無理をせず頑張ってください.
大宮様
あの写真だと見にくく分かりにくかったと思いますので、斜め上から撮ってみました。 あの写真で、rc orb sの後ろにぼんやりと写っていた毛(水色)は、 setaeではなくhairのような気がします。 分かりにくい写真ばかりで本当にスミマセン。
大宮様
すみません。僕が悪かったです。 実は、6日に投稿した画像は、元の画像を左右反転させたものなんです。 pagesというアプリを用いて、画像を5つ並べた際に、間違えて、左右反転ボタンをクリックしてしまいました。 「まあ、いいか。」と思って、そのまま直さずに投稿しました。 なので、大宮様が赤矢印で示してくださったのは、実際は、頭部右側のrc orb sです。 そして、元の画像は、9日の0時4分に投稿したやつです。 混乱を招いてしまい、本当に申し訳ございません。 頭部左側のrc orb sに関しては、9日の0時12分に投稿した画像で、 ソケットがないので、1本のように思います。
なるほど気づきませんでした.
本来はそのままの向きが良いと思います. 結局毛序としてはAnechuromyia で落ち着きそうですね. これからシーズンが始まるので楽しんでいきましょう.
> なるほど気づきませんでした.本来はそのままの向きが良いと思います.
そうですね。混乱を招いてしまい、申し訳ございませんでした。 これから 写真を投稿する際は、気をつけます。 > 結局毛序としてはAnechuromyiaで落ち着きそうですね. 今回も、色々教えていただき、有難うございます。 あの論文に書かれている特徴と一致するので、A. nigrescensでよさそうですね。 > これからシーズンが始まるので楽しんでいきましょう. 最近、有弁翅類のハエがどんどん飛び始めているようなので、 これからがとっても楽しみです! |
- Joyful Note -
- Antispam Version -