お世話になります。このハエは今月、マレーシアの川辺にいたものです。歩行中は片時もなく翅を動かして、ディスプレイしていました。ミバエかハネフリバエに近いのかと思うのですが、どのような仲間であるか、ご教示願えませんでしょうか? どうぞよろしくお願いいたします。
投稿されたハエは,おそらく東洋区の目録にリストアップされているミバエ科のEuphranta (Staurella) maculifemur (de Meijere, 1924)か,これに大変近い種でしょう.
本種はde Meijere,1924. Studien ueber suedostasiatische Dipteren XV, dritter Beitrag zur Kenntnis der sumatranischen Dipteren. Tijdschrift voor Entomologie (suppl.), 67の39-40ページで Staurella maculifemurの学名のもとに,Fort de Kockで10月に採集された1頭の雌で記載されたものです.原公表(原記載)の翅の図を貼っておきます(バックの濃淡はコピー上のため).図では翅の先の暗色部の前縁と後縁が明るくなっていますが,この形質にはおそらく個体変異があるでしょう.標本画像でも後縁部はやや淡色化しているし,また前縁にも小さい単色部があります.
本種は東洋区の双翅目のカタログでは Euphranta (Staurella) maculifemur (de Meijere, 1924)の学名になり,ミャンマー,フィリピン,スマトラ,タイが分布に挙げられているので,マレーシアはこの範囲に入ります.
画像に出ている範囲の形質は原公表の記載文と一致します.
どうもこの画像に返信がないので,一仕事終わった時間を使って,特徴のある翅の斑紋をもとに,de MeijereのXVI部に亘り数百ページ以上のStudien ueber suedostasiatische Dipterenをひも解いていたら行き当たりました.ミバエ科の専門の人がより正確な回答を寄せてくれるといいですね.
やまちゃんさん:
あまり解像度は良くないけれど,本種の原記載の最初のページのコピーを付けておきます.記載内容と標本画像を比較してみてください.添付画像を解像度をある程度保ちながら100kB以下にするのは難しいですね.
三枝先生:
これは大変詳しいご解説と資料を頂戴しまして、また大変お時間を割いて頂きましたご様子で、感謝にたえません。どうもありがとうございました。マレーシア産ということで、よく判明しないのでは?と案じておりましたが、明らかにして頂きまして、頭が上がりません。実は、ミバエに近縁な別の類でしたら大変うれしかったのですが、ご教示いただきました事実を受け入れたく存じます!
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