またお願いします。
ヤドリバエの難しいのを採ってしまいました。 採集場所は愛知県津島市、採集日は2013年3月15日、体長7.5[mm]です。 公園の芝生やタンポポなどの背の低い植生の上で、高さ1[m]くらいの所で空中戦をしていました。 二匹がぶつかるとそのまま一緒に真下に急降下し、地面に衝突する前に離れるというのを何度もしていました。 だいたい毎年3月の初めごろから見かけ、4月の初めごろには見なくなります。 体長については何年か前にはもう少し大きいのもいたと思います。 何だろうかと気になっていて、今回初めて採集しました。
「MOSCH WEB」で調べました。
以前は「Tachinid Recording Scheme」というサイトからダウンロードしたプログラムを使っていましたが、 パスした形質は後で戻って再挑戦できないので、やり直しもきくMOSCH WEBは使いやすいと思いました。 緑色の優先順位の高い所をやっていくと、 1 眼には毛がある 14 側顔は裸 18 facial ridgeは1/5に刺毛がある 24 頭の後腹側の毛は黒のみ 31 aristaは裸 32 aristaは1/4厚くなる 37 palpusは黒 40 前胸腹板は裸 47 線後翅内剛毛は3本 48 最初の線後翅背剛毛は長い 49 下前側板の剛毛は3本 78 r4+5室は開く 82 中脚脛節の前背剛毛は2本 これでMacquartiaだけが残り、早く決まったほうだと思います。 Diptera.infoのForum Searchで検索すると、少し似通ったのが出てくるので、合っているのではないかと思いました。 時期が早い春の種だという事も時々言及されていました。 「日本産昆虫目録データベース」で検索しても出てこないので、日本で研究されているかどうかわかりません。 他に調べる方法はあるのでしょうか。 それで中国蠅類で調べてみようと思いました。 2043ページから6種の検索表があります。 1(0)-腹部第2背板の凹みは後縁に達しない 3(1)-中脚脛節には2-3本の前背剛毛を具える(今回は2本) 第3背板は僅か2-4本の中縁剛毛を具える(反対の句のように列ではない) 4(3)-側顔は裸か或いは上半分だけ毛に被われる(今回は裸) 腹側片(下前側板)の剛毛は2+1 脚は全部黒色 ここまでは良かったのですが、次は選択できませんでした。 腹部第二背板は中縁鬚を具える、側顔は裸で、触角第三節の幅、palpusは黒、腹部は粉に被われる。 こういう組み合わせがないので該当種なしになりました。
2匹採ったのですが、写真は第5腹板だけ別の個体のものです。
写りが少しでもましだったのと、開きかけのaedeagusが腹側から見られます。 6種中3種については交尾器の図が載っているのですが、どれも似ていないのです。 たとえばExoristaのように同じ属内でも何パターンかあるように思える場合もあるのですが、 少しでも似た雰囲気の図がないと属も外れのような気がして残念です。 他に調べられるものを探しました。 図書館には極東ロシアの検索はないのですが、ヨーロッパ部のロシアの検索はあったので見てみました。 索引とは違うのですが1258-1259ページがMacquartia属の検索で、7種載っています。 最初からいきなり鱗弁の開き方の判断が難しいのですが、全体を見て、 腹部第2背板のへこみが半分まで達している事、basicostaは黒、脚は黒、側顔は裸、 といった特徴から、M. praefica の可能性がありますが、 しかしこの属については図がないので、確認のしようがありません。 「Systema Dipterorum」でpraeficaで検索すると、引用の所に、Meigen 1824というのが載っていました。 タイトルと年号で検索すると、たまたまだと思うのですがネット上で見られましたが、 該当ページを見ても読めず、参考になるような図も無いようでした。 ロシアの検索には、ハムシ科のいくつかの属の幼虫に寄生することが書かれています。 今回は寄主から得られたわけではないですし、そこから推測したいわけではないのですが、 日本の寄主のカタログ、Shima(2006)A Host-Parasite Catalog of Tachinidae (Diptera) of Japanは、今でも入手可能なのでしょうか。 CiNiiでも国会図書館の検索でも出てきませんでした。 ヤドリバエそのものを調べて名前が分かっている場合に、同じフィールドで見られたほかの虫との関連付けができるかもしれません。 長々と書いてかなり苦しい展開になり申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
Shima(2006)A Host-Parasite Catalog of Tachinidae (Diptera) of Japan.
は双翅学会の「まくなぎ」Supplement 2に掲載されています。 これは、まだ十分に在庫があるはずなので、弘前市文教町3弘前大学白神自然観察園に会の事務所があるので、そこに問い合わせてみたらいかがでしょうか。多分入手可能です。 なお、同カタログではTribe Macquartiiniの種として、 Anthomyiopsis plagioderae Mesnil 1種だけが記録され、これがヤナギハムシをhostにしていると記されています。 大宮さま、そこまでお調べですから、嶌 洪 先生か、九大比較社会文化研究科の舘 卓司 先生に直接お尋ねになったらいかがでしょうか。お二人とも多忙でしょうから、対応していただけるか否かわかりませんので、その点はお含みください。お二人には余計のお世話をしたといわれるかもしれませんが、単純な同定ではなくて、詳しくヤドリバエを検討された方の依頼には応じていただけるのではと思い、ひとまずお勧めします。
アノニモミイア 様
ご回答ありがとうございます。 カタログについて連絡先を教えていただきありがとうございます。(県を勘違いしないようにしたいと思いました) 問い合わせしてみたいと思います。 カタログ内の同じ族の情報もありがとうございます。Anthomyiopsis というのもいるのですね。 試しにネット上や中国蠅類で見てみました。勉強になります。 自分でもどれだけ分かってやっているのか分かっていないのか、あやふやな状態で調査をしていて、先生方に直接尋ねるというのは思いがけないお勧めです。 そういう事はしたことがありませんので、マナーとして出向いたほうがいいのか、標本をお送りしてご都合の良い時にお返事いただいた方がいいのか、 いずれにしても対応していただけないかもしれいないというのは、ごもっともなことだと思います。 一番心配なのは、標本の状態が万全ではないと失礼になるのではないかという事です。 2匹ともいつものように死ぬまで飼育しましたので、鮮度が落ちるという言い方をするかどうかわかりませんが、その点はいつも思うのです。毛の脱落などもあります。 もし本気で考えるのであれば、もっと状態の良い標本を用意した方がいいと思いました。 せっかくのお勧めですが、来年の3月に再度どうするか考えた方が良いと思いました。 アドバイスに感謝したします。
大宮様.
Macquartiini族では,他にMacquartia pubiceps (Zett.),Gymnomacquartia japonica Mesnil et ShimaとTrichoformosomyia sauteri Baranov(flavicoxa Mesnil)が日本から記録されています. 族等については,Richter,Shima, Oharaと考え方が違うので解り辛いです. PalekeyとMoschはどちらも旧北区のヤドリバエを対象とした検索プログラムですが,Moschが旧北区東部(イタリア?)を中心に311属を収録しているのに対し,Palekeyは日本までを広くカバーした408属を収録しています.大宮様の御指摘通り,使い勝手はMoschのほうが良いのですが,時折近縁の別属に行ってしまいます(^_^;) 旧北区の昆虫の検索など,色々な資料を併用する必要があります. なお,旧北区の昆虫の検索のヤドリバエの部分が公開されています. http://www.naturkundemuseum-bw.de/sites/default/files/forschung/user_129/TschorsnigRichter1998.pdf 日本産の分布状態については,Herting(1984)Catalogue of Palearctic Tachinidaeや極東の昆虫の検索,Annotated catalogue of the Tachinidae of China等を見ないと解りません.
茨城@市毛様
たくさんの情報ありがとうございます。 いろいろと日本の分布記録を調べて下さりありがとうございます。 利用できる資料に収録されているかどうか一通り見てみました。 Annotated catalogue of the Tachinidae of Chinaについては、無料でPDFが見つかりました。 どんどんいろいろな資料が出てきて教えていただけるというのはすごいと思いました。 検索プログラムについては、そんなにも違いがあるのですね。 横文字が苦手な自分はやはりよく分からずに使っているようです。 違いを踏まえた上で使おうと思いました。 Palekeyでもやってみたところ、またMacquartiaになりました。 旧北区のマニュアルについては、図書館にあると教えていただきましたが、まだ見ていませんでした。 パスできるプログラムとは違って、分からない自信のないcoupletで一応両方進んでみて、その中で妥当なのがあるかどうかという事になりますが、 だんだんと分岐先が増えていくことが予想され、躊躇していました。 ちょっと時間がかかるかもしれませんが、少しづつやっていきたいと思います。 ありがとうございました。
意を決して旧北区の検索表で調べましたのでご報告いたします。
選択できなかったcoupletはなく最後まで行けました。テキストファイルをはります。 どこか違うととんでもない結果になるだろうと思っていたのですが、ある意味驚いたことに、Macquartiaになりました。 添付:8395.txt (2KB)
確認しづらいところを撮影して見ました。
ひどい写りで明るさの加工もしてあり、見にくい写真ですみません。 左は前胸腹板で、最初に標本を整形する前に撮ってありました。 これは別の個体で、第5腹板を撮ったのと同じのです。 一対だけでも刺毛がある場合の図がありますが、これは裸だと思います。 真ん中は102に出てくるpostmetacoxal areaですが、後脚の基節あたりから後ろを撮りました。 (触っていて右後ろ脚がとれてしまいました) 右半分が液が出てきたのか汚れたようになっていますが、硬化せずに膜質だと判断しました。 右は138に出てくるanatergiteの毛で、 左上は鱗弁、右下はかなりぼけた平均棍が写っている位置関係になります。 翅と鱗弁を違う角度で開いていればもっと見えるかどうか分かりませんが、このくらいが限界でした。 ちなみに別の属とどこで分岐するか調べました。 (中国蠅類にはMacquartiiniはMacquartiaしかないので、族の検索表はありません) Trichoformosomyiaは5にありますが、1で、aristaは羽毛状か、arista基部よりも長い毛があるようです。 Anthomyiopsisは160にありますが、111で、眼は裸か、小眼2つ分の長さまでの短い毛しかないようです。 Gymnomacquartiaは233にありますが、159でAnthomyiopsisと分岐するのでやはり眼にはっきりとした毛はないようです。 検索表には12種と書いてあるので、資料が入手できていない種がいろいろあることが分かります。 Macquartia sp.としておこうかと思います。 ありがとうございました。 |
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