田中川さん.画像のオドリバエはEmpis属Planempis亜属の1種です.この亜属にはEmpis (Planempis) autumnalis Saigusa, 1964があり,これも晩秋の種です.画像の種はこれとは別種で,静岡で採集した個体と同一のようです.よろしかったら標本をご提供ください.
この仲間はこの時期,日本各地(北は東北から九州まで)に生息しているようで,少なくとも5種は確認しています.おそらく中部山岳,近畿地方,中国山地,四国山地には別の種が生息していることと思います.♂は渓流などの上空1-2mの空間で求愛餌を捕るために飛翔していますし,この時期に開花するツワブキやキク科の花に吸蜜に集まっています.みなさんそれぞれの地方で注意してみてください.
なお,Empisのほかに,Rhamphomyia属でPararhamphomyia亜属のciliatopoda群が秋季に発生します.中部山岳のR. rotundicauda,南西諸島のyasumatsui,ciliatopodaが命名されていますが,ほかに西日本の低山地に1種,沖縄本島や八重山群島などにいくつかの種が生息しています.いずれも林間のギャップや林道上の空間で大きな群飛を形成します.
R. ciliatopoda群以外にもPararhamphomyiaの所属群不明の種が熊本の平地で晩秋に採集されています.本州中部から関東の山岳部では晩夏から初冬にかけて大型のEorhamphomyia亜属の1種が発生します.これは細長い体と橙色の脚が特徴的です.
Hilara属の少なくとも1種(黒色の小型種)は晩秋から発生し,これは九州の平地では正月にもまだ活動を続けています.
以上が私の知っている秋季に発生するEmpidinae亜科の種です.
三枝豊平様
秋のオドリバエについて,詳しく解説していただきありがとうございます.吸蜜に集まるオドリバエを探してみたいと思います.なお,標本は提供いたします.