ひっくり返して撮影.翅長は約7ミリ.いかがでしょうか.
このオドリバエはRhamphomyia属のCalorhamphomyia亜属の1種です。♀ですのでただちに種までの同定はできません。
本亜属に限らずEmpis属や一部のHilara属でもこのような膜状の突出物が生じます。この突出物は死後にも出ていることもありますが,私の観察では,Calorhamphomyiaの1種やカナダのRhamphomyia longicaudaでは,群飛中の♀がこれを出していました。
Nuptial giftを与えるオドリバエの群飛では,giftを持った♂が群飛の主体の場合は,これに♀が加わってただちに交尾して,その後は群飛から普通は離れます。一方,giftを持ってくる♂が少ない場合は♀だけの群飛が生じ,これに時折giftを持った♂が加わるとただちに交尾して,群飛から離れます。このようなわけで,オドリバエの群飛はほとんど♂だけ,ほとんど♀だけという二通りの群飛が見られますが,両性の個体数が著しく多い場合は♂♀混合の群飛も見られます。
私が観察したのはCalo.の場合は雌だけの群飛,longi.の場合は両性混合または♀だけの群飛でした。
この付属物については,♀が自らの卵巣が成熟しているように腹部を大きく見せかけて,そのような♀はすぐに産卵する可能性が高いのでこのような♀を♂が好んで選んでgiftを送るのであろう,という説があります。しかし,この説が成立するためには,♂が腹部の大きい♀を選択するということが実証されないと難しいしい上に,すべての♀が同様な行動を群飛中にするのであれば,♂にとってはいずれの♀も選択対象になり,結果的にこの突出物を出す効果がなくなってしまいます。私はこの説にはかなり疑問を持っています。
私が考えているのは,
1.この突出物は皮膚腺で,ここからフェロモンを分泌して,これに♂も♀も惹かれるのであれば,群飛が形成しやすくなる。
2.♂の少ない群飛の場合には,♀はながく群飛中で飛翔することになり,エネルギー消費が大きい。これを防ぐためにこの部分を広げて空中にとどまりやすくしている。(♀の脚に羽状剛毛が発達するのも,私はこのためと思っています)。
の二つの仮説です。
この膨らみがどのようにして突出するのか,
内部の構造はどうなっているのか,
自然状態でのこの突出物に関する行動をよく観察する,
の3点が今後の課題です。
三枝先生,いつもありがとうございます.
この突起物は♀だけにできるもので,複数の属にみられるものであることを初めて知りました.
見つけた場所へ又出かけてみます.