お忙しいところ失礼いたします。
ヒトリガの幼虫を飼育していた際、双翅目の幼虫が表皮を食い破って出てきました。それの成虫を同定しようとしたのですが、絵合わせくらいしかできず挫折しました…。 出来れば種名まで教えて頂けると幸いです。 宜しくお願い致します。 ヒトリガ幼虫の採集場所は北海道札幌市で、 採集日は2011年6月21日-7月14日です。 個体は70%アルコールで保存しており、状態は良くありません。
A-2
上個体と同じ個体です。
写真の寄生蠅はすべてヤドリバエ科Tachinidaeの種であることは間違いないでしょう。日本には数百種以上のヤドリバエ科のハエが生息していると言われています。そして、ヤドリバエ科の同定はごく一部の顕著な種を除くと、専門家が標本を検して初めて可能だろうと思います。
この科の分類学の研究論文から判断しますと、日本でヤドリバエ科を的確に同定できる専門家は九州大学に2名おられるだけでして、しかもその方たちは本掲示板には出てきていません。 研究論文作成などのために同定が必須であるという場合に限って、彼らに同定を依頼すればしてもらえる可能性はあります。 このように、現在(おそらく将来何十年も)日本でヤドリバエ科の「名前を単に知りたい」という希望は、一部の顕著な特徴を持っている種を除くと、叶えられない状況です。生物多様性の重要性が一見強調されているような昨今ですが、残念ながらわが国では双翅目に限らず昆虫分類学を専攻できるようなポジションや研究費の支給を国や地方自治体がほとんど行っていないというのが現状です。
質問様.
アノニモミイア氏が述べているようにヤドリバエ科は他のハエに比べ多数の種類が日本に分布しています.当然,属数も多く検索が非常に厄介です.旧北区の双翅目マニュアルでのヤドリバエ科の検索表は,549ものcoupletから成り立っているので,これを見ただけで大半の人は投げ出します. また,毎度のことながら,体全体の毛の配列を見ないと属を調べるための検索表を使えません.ヤドリバエ科の場合,人間に例えると首の付け根にある前胸腹板の形状や剛毛の有無などまで見なければならないので,時には乾燥標本の頭部を外して観察することもあります. 今回の場合,ヒトリガArctia cajaがHostとのことですので,H. Shima(2006)A Host-Parasite Catalog of Tachinidae (Diptera) of Japan(ヤドリバエ科の寄主目録)を元に推測していくと,A及びBはCarcelia属の1種の可能性が高いと思います.Dの種類も見た記憶はあるのですが,標本が出てきません. 実際には,この寄種目録に記録されていない種類も寄生する可能性があるので,標本を精査しないと属を特定することすら困難です.
とても早い回答有難うございます。
同定が難しいとは思っていましたが、 ヤドリバエ科がそこまで属数、種数が多く、困難なものだとは初めて知りました。 述べてくださった内容を知れただけでもとても勉強になりました。 アノニモミイア様、茨城@市毛様有難うございました。 |
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