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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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きっとガガンボダマシ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/04(Wed) 21:11:54 No.5161  引用 
翅後縁基部近くに湾曲した短いA1脈が見て取れる。間違いなく、ガガンボダマシでしょう。(分かるようになってきたぞ)
もう一種、我家で見つけました。窓ガラスと網戸の間にいました。斑紋はありません。体長は約7ミリ。画像一括閲覧ページのニッポンガガンボダマシの翅脈と合致しましたが、ガガンボダマシ科は翅脈だけで同定できるものでしょうか。
ニッポンガガンボダマシの生息状況など、さっぱり情報が見つかりません。


Re: きっとガガンボダマシ 投稿者: 投稿日:2009/03/04(Wed) 23:09:32 No.5162 ホームページ  引用 
触角が短くニッポンガガンボダマシTrichocera japonica Matsumuraである様にも見えますが、ガガンボダマシを写真から同定することは困難です。T. japonicaは北海道から九州まで分布していてこれも市街地でよく見られる種です。

Trichocera japonicaがニッポンガガンボダマシでT. nipponensisがヤマトガガンボダマシというのは紛らわしいですね。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/05(Thu) 00:46:11 No.5165  引用 
達磨様、ニッポンガガンボダマシに関する情報ありがとうございます。
ニッポンガガンボダマシの同定ポイントはどこにあるんでしょうか。
ガガンボダマシ科では翅脈に相違が見られない複数の種が存在するということでしょうか。
種の検索表はないんでしょうか。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:茨城_市毛 投稿日:2009/03/05(Thu) 12:02:28 No.5166 ホームページ  引用 
田中川様.

門外漢ですが,過去ログ等を見ると翅脈である程度のグループに絞った後,交尾器などで区別できるようです.なお,通常の写真での区別は一部の特徴的な種類を除いて困難なようです.

過去ログにニッポンガガンボダマシを含め色々なガガンボダマシの検討結果がありますので,参考にしてください.

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者: 投稿日:2009/03/06(Fri) 20:06:43 No.5172 ホームページ  引用 
田中川様
ガガンボダマシの翅脈はどれも大同小異で写真に写った翅脈から区別できるものは大変限られます。
翅の特徴だけから種が特定できる(ことがある)種は
ウスモンガガンボダマシの仲間(翅に模様がある)
コンゴウガガンボダマシ(翅の膜に毛が生えている、これは世界的に見ても本種だけの特徴)
チビガガンボダマシ(M1+2脈が枝分かれしない、恐らくタイプ標本以外には採集されていないもので、何かの種の翅脈の異常かもしれない、タイプ標本は行方不明)
イマニシガガンボダマシ(雄雌ともに翅が退化する)
くらいです。

もちろん、翅以外の外見的な特徴から種が特定できるものもいくつかありますが、ガガンボダマシの同定にはどうしても雄の交尾器を見なくてはなりません。それも生体や乾燥標本の写真ではなく、詳細が観察できるようにアルカリ処理を施したうえでの観察が欠かせません。
ガガンボダマシの交尾器は雄雌ともに構造が単純な種が多く、拾える特徴も少ない厄介な虫なのです。

ニッポンガガンボダマシは中でも厄介な問題を抱えた虫で、原記載文(原文日本語)は
”体は褐、胸背は暗黄、翅は半透明、少しく暗黄を帯ぶ、脈は暗黄、平均棍は黄白、その先端は暗黄、腹部は扁く、尾端の付属物は褐色、脚は暗黄、付節は少しく暗色を帯ぶ、体長一分五厘、此は頗る細き触角を有するを以て他と区別すること容易なり”
という簡単なものです。これはニッポンガガンボダマシという種の特徴というより、ガガンボダマシ属に広く共通する特徴を述べているにすぎません。触角は細くて他と区別が簡単とありますが、この「他」は他のガガンボダマシのことではなくガガンボ一般のことを言っています。記載がこのようにあいまいなうえ、タイプ標本が行方不明で、現在は「タイプを見た」という人の記述や北海道大学に残されたガガンボダマシの標本からT. japonicaという種を推定しているという何とも頼りない状態です。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:田中川 投稿日:2009/03/07(Sat) 00:19:47 No.5173  引用 
茨城_市毛様、達磨様、いろいろ教えていただきありがとうございます。
実は私はしばらく愕然としておりました。
こちらにある画像と比較して翅脈が完全に一致していたのでニッポンガガンボダマシに間違いないと信じ込んでいました。投稿したのは念押しのつもりと身近なところでも見られたよとの情報提供の意図もあったのです。
ニッポンガガンボダマシはとにかく翅脈の一致を見たので同定できたけど(思い込みでしたけど)、他のガガンボダマシ科もきっと翅脈がみんな異なるものだろうと勝手に思い込み、こちらの目録にある14種くらいの検索表なら、どこかにきっとあるに違いない、研究者たちはなぜ隠そうとしているのかと疑心暗鬼に陥っていました。
今日も図書館や博物館を回って調べていたのですが、新訂の第3巻はどこにもなく、古い第3巻に5種のガガンボダマシを見つけ、平凡社の日本動物大百科に「冬に現れるガガンボダマシ科」の記述があるのを見つけただけでした。
ネット上もガガンボダマシの関係はほとんど見つかりませんでした。
ガガンボダマシの季節がやってきたのに、公開されている情報があまりにも少なすぎます。
種の違いなど、少しでも分かりやすく公にしていただけないと、いつまでもこんな状態が続いてしまいます。
双翅目に関してはこの掲示板を誰もが頼りにしていると思いますます。駆け込み寺みたいなところもあります。ここで解決できないことはどこへ持っていってもダメでしょう。とにかく頼りにしているのです。

Re: きっとガガンボダマシ 投稿者:三枝豊平 投稿日:2009/03/07(Sat) 03:03:40 No.5174  引用 
田中川さんの双翅目の同定についての不満,心情は理解できます.生態写真でどの程度同定できるかは別に書きました.

  日本での昆虫分類学の歴史の浅さ,特に記載分類学を研究できる大学の研究室の少なさ,分類学の研究を行なえる研究機関の少なさ,標本の蓄積をする博物館の少なさ,簡単に言えば昆虫分類学に対する社会の投資のあまりにも少ない状況が,あなたが今直面している現実の大きな原因です.

  しかし,自国の双翅類が容易に同定できると言う国は世界的に見ても決して多くはありません.おそらくそれらはヨーロッパの大部分の国だけである,と言っても過言ではないでしょう.カナダやアメリカ合衆国でも,状況は双翅目の科によっては日本と大同小異の場合さえあります.例えば,オドリバエ科のRhamphomyia属についてみると,おそらく北米の未記載種の方が日本のそれより多いでしょう.

  私がこれまでも折にふれてこの掲示板にも書いてきましたが,日本での双翅目の分類学的研究はヨーロッパなどでの研究に比べて,
(1)歴史が浅いこと,すなわち研究の蓄積がすくないこと,
(2)歴史の浅さと自然史博物館の歴史や数の少なさに起因する標本の蓄積が少ないこと,
(3)前述の通り研究者を養成する大学の研究室が少ないこと,
(4)研究者を雇用する場(大学,研究所,博物館など)が少ないこと,
(5)出版事情が悪く研究成果の出版がままならないこと、
(6)それに加えて,日本列島は昆虫の種数がヨーロッパなどに比べて著しく多いこと(一般的には英国の約3倍の種数があると概算できます),
 などなどの悪条件によって,結果的に著しく遅れています.

  その結果,多くの未記載種が自然に存在する,総説的な研究の出版が少ない,ということで双翅目の同定に困難をきたす状況が生まれています.

  現在でも日本列島に著しく多数(数十から数百種)の未記載種・未記録種がある科は,ガガンボ科(広義),ユスリカ科,ヌカカ科,キノコバエ科(広義),クロキノコバエ科(クロバネキノコバエ科),タマバエ科,ニセケバエ科,チョウバエ科,オドリバエ科,アシナガバエ科,ノミバエ科,ヤドリバエ科などです.さらに,種数の少ない科でも未記載種や未記録種の方が多い科はこれらに加えて,例えばホソカ科,クチキカ科,ヒメカバエ科,ヒラタアシバエ科,ヤリバエ科,クロツヤバエ科,アブラコバエ科,フンコバエ科,フンバエ科などたくさんあります.

  比較的手に入りやすい形で日本産の種がかなり同定できる出版物が出版されているのは,カ科,ユスリカ科,ケバエ科,コシボソガガンボ科,アブ科,アタマアブ科,ハナアブ科(不十分ですが),ショウジョウバエ科,ミギワバエ科,キモグリバエ科,ハモグリバエ科,クチキバエ科,ヤチバエ科,ツヤホソバエ科,ミバエ科,ハナバエ科,イエバエ科,ニクバエ科,クロバエ科,などで,ほかの科では亜科や属などに分かれて学術雑誌などに発表されている文献を集めればなんとか同定の手引きになる,と言う程度です.

  私が主に研究しているオドリバエ科(広義)でも日本産の既知種は200種足らずですが,実際には1000種以上は生息しています.残り800種以上についてそのほとんどは未記載種ですから,これらの新種の記載をしないと,日本のオドリバエ科の全貌は分からない,ということです.ヨーロッパはこれとほぼ同じ数の種をリンネの時代から2世紀半にわたって幾代ものヨーロッパ各国の研究者が研究して現在の研究状況になっているわけです.日本のオドリバエ科については,ほとんど私1代で標本の収集とこれまでの記載を続けてきたのが現状です.

  イエバエ科にしても,戦前からの研究暦があり,さらに戦後,加納先生,篠永先生のほぼ3代にわたる研究の末に,日本産250種ほどの総説として「日本のイエバエ科」が最近出版されたわけです.それでも,例えばクキバエ属については私が自分の採集物を少しばかり取り出しただけで,既知種より多い新しい種が見出されると言うのが現状です.

 本掲示板でしばしば同定の依頼があってもどうしようもないのが,ヤドリバエ科です.この科は高野先生が戦前に初期的な研究を行なった後に,嶌先生が私と同様にほとんど1代で日本列島の標本の収集を行い、相当数の新種などを記載していますが,まだまだ多くの未記載種や未記録種があります.次の代に相当する舘博士が安定して研究を続けうる状況になれば,本科の分類学的研究の将来はあるのですが,これも未定です.ヤドリバエ科のように分類が極めて難しく,かつ応用的にももっとも重要な双翅目の1科の研究状況がこのような現状になっています.

  10年ほど前には10数名の双翅類分類学者が大学や博物館に在籍していたのですが,現在は1/3以下の数になってしまっています.今後も増える可能性は大変小さいでしょう.

  田中川さんが,双翅類の同定について不自由を感じておられるのは,あなただけではありません.私たちも同様なのです.本掲示板でも,現職あるいはすでに退官,退職された双翅類の分類学者がいろいろな問い合わせに対応してくださると本当はありがたいのですが,今それは望むべくもない,といういところでしょうか.
  おそらくこれらの大部分の方々は本掲示板をご覧になっていないか,時折見られてもそのままになっているのでしょう.私も物好きで自分の専門に研究している科以外の質問などに可能な限り応えようとしていますが,これもおのずと限度があります.おそらく,私を知る人々は,そのような時間があれば(今これを書いている時間も含めて),もっと専門の研究をしたらどうか,と思われているでしょう.この機会に,明らかにしますが,アノニモミイア(Anonymomyia=無名のハエ)の名前で投稿しているのは私です.これまで,本名で示さなければならない場合に限って本名で投稿していました.

  自分の専門とする昆虫群だけに視野を絞っていると,ほとんど現状に不自由を感じないのですが,いったん他の昆虫群の同定の必要性を感じたときに,私も田中川さんと同じ思いをしてきました.例えば,イネの大害虫のセジロウンカ,セジロウンカモドキ,ヒエウンカ,ヒメトビウンカ,トビイロウンカなどを正しく同定しようとしたときに,自分の周りの文献をみて,ハタと行き詰ってしまいました.頼りになると思った北隆館の原色昆虫大図鑑では,ウンカ類の同定はほとんど不可能なのです.やむを得ず中国経済昆虫誌飛虱科を入手して,そこで日本産の種が載っているのを参照して初めてなんとか同定ができたか,と思っています.その困難さを感じたものですから,依頼を受けた財団法人九州環境管理協会のホームページに,ウンカ・ヨコバイ類の写真を載せる作業を始めるような状況になっています.

縷々厳しい現状を述べましたが,愚痴を言っても全く始まらないわけで,日本列島の双翅類の記載分類学をどのように発展させていくか,皆さんと共に考え,行動を起こしていきたいと思っています.

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