誰からもコメントが付かないようなので・・・
オガサワラツリアブAnthrax ogasawarensis Matsumura, 1916は,松村松年が新日本千虫図解 巻之二で記載した種類で,同書と日本昆虫大図鑑(1931)に図示解説されています.
私は,Anthrax ogasawarensisのタイプ標本しか見たことがありませんが,写真より細めで暗い色調の標本でした.(確かに,翅前縁の黒色部の形状は非常によく似ているので,タイプ標本の状態が悪かったのかもしれません.)
World catalog of bee fliesによると,現在ではExhyalanthrax ogasawarensisとなっており,写真の個体は同属のExhyalanthrax aferと非常に酷似しています.
極東の昆虫の検索によると,Exhyalanthrax aferはヨーロッパから南シベリア・中国に分布しており,東洋区やエチオピア区にも分布する広域分布種のようです.
両種の相違点について興味が出たので,京都の師匠に電話して聞いてみました.
結果,本州産の個体についてもBishop Mus.の専門家に同定してもらった結果,Exhyalanthrax ogasawarensisであるとの回答を貰っていたとのことでした.
また,本種は本州西部の海岸沿いで稀に得られるそうで,他にも何箇所かで採集されているそうです.
茨城_市毛様、いろいろとお調べいただきありがとうございます。
Exhyalanthrax ogasawarensisの雌雄の違いを図示したDr. Evenhuisさんの論文がPDFファイルで見られることが分かりました。
これを見ますと、私の撮った個体は♀よりも♂のほうに近いと思います。翅前縁の暗色部が♂のものと一致します。翅脈も♂のほうにより近いと思います。
しかし、悩ましいことに同属のExhyalanthrax aferが外国のサイトに画像が出ておりますが、これを見ますと、翅前縁の暗色部はオガサワラツリアブ♂と同じです。翅脈は複数の箇所で微妙に違っていますが、オガサワラツリアブ♂に近いものです。
私の写真の個体は翅の暗色部と翅脈が外国サイトのExhyalanthrax aferと一致しているのでは思います。また背面や腹部の見た目も同じように見えます。
オガサワラツリアブの背面や腹部に関しては資料が無く、比べようがありません。
つまり、Exhyalanthrax ogasawarensisとExhyalanthrax aferとでどこが違うのかが分からないのです。
ただ、『鈴鹿市の自然』717p図3のオガサワラツリアブの個体とは翅の暗色部と翅脈が合致しますので、先の論文と合わせて判断すると私の撮ったものも図3のものも♂と判定できると思います。
Dr. Evenhuisさんの先の論文については誰かがきちんと検証してくれることを期待します。翅脈の微妙なカーブや狭まり具合が気になっています。