横からの画像です。
撮影したのは,6月28日,那須塩原市沼ッ原湿原から白笹山に抜ける途中の湿った草原で,クロヅルの上で何匹か飛んだり止まったりを繰り返していました。
標本は1匹確保してあります。よろしくお願いします。
これはキバネオドリバエEmpis (Planempis) latroとは別の亜属に含まれるネウスオドリバエEmpis (Euempis) flavobasalis Matsumuraと同定しておいてよい種です.この学名のものは北海道の標本に基づいて発表されたのですが,これに良く似たものが本州から九州にかけて広く分布していて,各地で複雑に地理的変異を起こしています.その実態はまだ十分に解明されていません.日光周縁の集団はかつてEmpis (Euempis) tessellataというヨーロッパの種に同定されたことがありますが,これは妥当ではありません.この辺りの問題のやや詳しい内容は最近の北隆館発行の新訂原色昆虫大図鑑第3巻の478-479ページに解説されているので,図書館などに蔵書されていたら参照したらいいでしょう.
なお,「クロヅルの上で何匹か飛んだり止まったりを繰り返していました。」とのことですが,多分止まっていた上空に本種の群飛集団があったことと思います.本種は林間の空地などの2-5mほどの空間で群飛し,雄は自分の体よりやや小さい蝿やアブなどを捕らえて,これを雌への求愛餌にして,群飛し,飛来した雌にこの獲物を贈って,雌がこれを食べている間中交尾が継続します.交尾しているペアは群飛の近くの小枝などに止まって交尾を続けます.写真の雄は求愛餌を抱えていないので,おそらく群飛に参入していた個体ではないでしょう.求愛餌を抱えていても,なかなか群飛集団へ雌が飛来しない場合は,大きな求愛餌を抱えての飛翔は消耗するのでしょうか,近くの木の葉の上などで,雌が来るまで一休みする個体があります.
詳細な返答ありがとうございます。
近くの図書館には旧版の昆虫大図鑑しか無いのですが,オドリバエの項目を読みました。今度は,新訂版の大図鑑をそろえてもらいたいものです。
クロヅルの上の行動はしばらく観察したのですが,上空にまでは目がいきませんでした。今度見かけたときは上空も注意を払ってみます。
いろいろお世話になりました。