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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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Hilara sp.と思います 投稿者:バグリッチ 投稿日:2007/05/14(Mon) 21:28:05 No.3464  引用 
こんちは。

 埼玉の某所で毎年採れるもので、Hilara ではないかと考えました。
 腹部の根元の2-3節白いので、生時は 特徴的です。

 見た目が変わっているので、種名または ヒントがいただけましたら嬉しいです。

 宜しくお願いいたします。


Re: Hilara sp.と思います 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2007/05/14(Mon) 23:30:53 No.3466  引用 
小楯板scutellumの剛毛の数を数えてみてください.これが4本でしたら高知県簗瀬から2雌に基づいて記載されたHilara (Hilara) neglecta Frey, 1952です.本種は西日本では5月上旬に発生する低山地ないし山地渓流の最も普通の大型Hilaraです.雄は渓流面で羽化するユスリカやカゲロウなどを捕獲して,前脚第一付節から分泌される糸でくるんで,求愛餌とし,渓流の淵の上空1−2mの高さで直径2−5mの水平円形の群飛軌道で周回飛翔をします.交尾中のペアもこの群飛中か,それよりやや下をゆっくり飛翔します.本種はこの時期にはヤマメやアマゴの好個の餌となり,これらの渓流魚の胃を裂いて見ると本種で一杯の場合がしばしば見られます.
試みにインターネットで「オドリバエ」と検索してみてください.そのほとんどは渓流釣りの人々の話題の項目がです.それほど本種は虫屋より釣り屋に良く知られた昆虫で,これを擬したドライフライさえも作られています.
なお,雄の腹部基半部が白っぽくなる種はほかに,H. leucogyne,H. melanogyne, H. itoiが既知種でして,それ以外に少なくとも日本列島からは5種の未記載種があります.H. neglecta自体も北海道から九州にかけて雄交尾器に地理的変異がありまして,その扱い(亜種とするか異所的な種とするか)はかなり微妙なところです.H. melanogyneとその近縁未記載種(中部山岳で雌の翅が拡大する種)は触角第3節が赤褐色,生時の複眼も赤褐色ですので識別できます(これは黄昏群飛性のためでしょう).他の種は小楯板剛毛が6本以上です.それぞれ求愛餌採取と配偶行動が種特異的で,中には同じ水面を狩りの場とするH. neglectaの雄をもっぱら求愛餌にして,水面上50cm程の高さで距離2mくらいの水平往復軌道で群飛する種もあります.
Hilaraの配偶行動は多様で,行動生態的に大変興味あるところです.群飛を見つけたら,ゆっくり観察すると結構面白いものです.

Re: Hilara sp.と思います 投稿者:バグリッチ 投稿日:2007/05/15(Tue) 21:26:41 No.3468  引用 
アノニモミイア 様
 ご教示 ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

 本種のscutellumの剛毛の数は、画像のように4本でした。(見づらい画像ですいません)
 従いまして、ご教示によりますHilara (Hilara) neglecta Frey, 1952にあたる種であると思われます。
 念のため 触角も画像をつけましたが、触角は赤褐色でした。
 H. melanogyneとその近縁未記載種は、scutellumの剛毛の数は何本でしょうか?今後のために お伺いできましたら ありがたく存じます。

 宜しくお願い致します。
 


Re: Hilara sp.と思います 投稿者:アノニモミイア 投稿日:2007/05/16(Wed) 05:16:13 No.3472  引用 
最初に掲載された写真をもっと注意して見るべきでした.H. melanogyneの小楯板剛毛はH. neglectaと同様に4本です.H. melanogyneは触角が赤褐色であるほかに,雄の前脚第1付小節(metatarsus, basitarsus, 1st tarsomere)は脛節先端よりわずかに太い程度で,表現的には円筒型,長さも脛節長よりやや短い程度でneglectaより長く細い,前額(frons)は左右の複眼が極めて接近する為にHilara属としては例外的に狭く,前単眼(中央単眼,anterior ocellus, frontal ocellus, median ocellus)より幅がせまく(neglectaでは前単眼より遥かに幅広い),複眼の個眼(ommatidium)が前方で著しく拡大する,雄交尾器の背板葉(tergal lobe)に長い剛毛を生じる,雌では翅が全面的に暗褐色になる,等の特徴があります.前回の写真でも部分的に重なっているのでやや分りにくいのですが,第1付小節は長く,細く,また交尾器には長い剛毛がみえます.今回掲載された頭部の写真ですと,前額は前単眼より明らかに狭く,以上の特徴から本種は高知県のYanase(魚梁瀬)の栃谷,西川から5雄3雌に基づいて記載されたHilara (Hilara) melanogyne Frey, 1952に同定できます.

H. melanogyneの狩りと配偶行動の詳細は不明です.日中に淵の上で少数の雄が飛翔しているのや,夕暮れの上空にシルエットとしてしか確認できない時間に沢沿いの林道の上空2-3mを飛翔(おそらく群飛)していたのを観察したことがあります.谷沿いの岩陰などからキノコバエなどと驚いて飛び出してくることもあります.複眼が橙色を帯びること,複眼が前額で接近し,個眼が大型化すること,などは夕暮れ活動性との関連があるかと思います.

Re: Hilara sp.と思います 投稿者:バグリッチ 投稿日:2007/05/17(Thu) 21:20:32 No.3476  引用 
アノニモミイア様

 詳しいご解説に 御礼申し上げます。

 Hilara (Hilara) melanogyne Frey, 1952として、記録させていただきます。
 画像が悪い事で、混乱を招き、申し訳ありませんでした。

 しかし、近似種の情報も頂戴できました事、本当に勉強になります。
 残念ながら、狩りや配偶行動は観察できていません。
 是非とも、確認。撮影をしてみたいと思います。

 引き続き、宜しくお願い申し上げます。

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