コメント入れないと投稿できないのね・・・・・・・・
実体顕微鏡の透過撮影ではなく、光学顕微鏡写真です。
写真はEmpis (Xanthempis) japonica Freyです.本種は北海道では平地から山地にわたって6月頃にかなり普通の種です.この仲間はヨーロッパでは種分化が進んでいますが(20種あまり),日本列島では淋しいものです.今のところはっきりした個体の分布は北海道のみです.
日本から命名されたものはあと一つ,Empis (Xanthempis) sesquata (Ito, 1961)があります.これはKaryosan (Aki)が模式産地で1953年6月3日に採集された1雄によって記載されたものです.後記するように伊藤先生はXanthempisを属と扱って本種を記載しています.本種はjaponicaより胸部中央黒条が遥かに広く,中胸前半部の両側に1対の楕円形の小暗斑をもち,小楯板が暗色です.また,雄交尾器の背板葉(tergal lobe;2対ある突出物のうち下側のもの)の先端が細く延びるように尖っています.私は同じ広島県の吉和で採集された1雌を持っています.
しかし,中部地方(山梨増富;長野島島;岐阜天生)では上記2種の中間的な形質を持った個体が少数採集されています.本州ではかなりの珍品です.また,九州(福岡古処山)でも1雄が採集されており,これはテネラルなので斑紋は明瞭ではないのですが,sesquataに近い交尾器を持っています.6月頃に森林の下草を掬うと採集できますので,注意してみてください.なお,本亜属のように橙黄色のEmpisは中部山岳でPlanempisのitoiana群に1種ありますが,Xanthempisのように後頭部が漏斗状に長く伸びないし,触角も短いので区別できます.
Xanthempisは配偶行動が特異で,葉の上などで求愛給餌なしに行われると言われています.
EmpisおよびRhamphomyiaの亜属などの分類は現在極めて流動的で,その上Collinのように亜属としながら学名をあたかも属であるかのように表記したりする研究者もあるので,ますますややこしくなっています.1.亜属を属に昇格するにしても,特徴の程度がまちまちなので一斉昇格とはいかないので,昇格基準が難しい;2.EmpisのR4脈が明らかに消失したRhamphomyiaの特定亜属の種が見られる;3.両属のみならずHilara属(ミナモオドリバエ属)を含めた北半球の3属の間を埋めてかつそれらのを結ぶ三角形(形質群の)からはみだす多くの種が南米からオーストラリアにかけて分布しており,これらに対していくつかの属が提唱されている;4.それよりなによりランクは別にしてEmpisやRhamphomyiaの内部のグルーピングがまだまだ極めて不十分,と言うのがこれらの分類階級をどうするかについての困難の原因です(日本列島だけで両属あわせて400種以上生息;中国大陸などは推して知るべしで,北米のRhamphomyiaも記載率20%くらい).それで,Xanthempisも当面はEmpisの亜属扱いをしています(旧北区のカタログも同様).Xanthempisは一番先に属に昇格しても良いものです.
アノニモミイア様。
毎回詳細な解説ありがとうございます。
日本などの分類が遅れていると思っていましたが、北米など世界的に解明が進んでいないのですね。
先日、ガガンボについて栃木の某氏より話を伺った際も、Tipula属など世界中に分布する属は例外が出てくるので境界が難しいと言っていました。
今後ともよろしくお願い致します。