知り合いからマレーズトラップで採集したハナアブ科が回ってきました。かなり点数の高い種類が入っていたので、わたしも超簡易型マレーズトラップをブナ林内にセットしてみました。
六本脚で安く売っているマレーズトラップですが、捕虫器がチャチなので捕虫効率が多少低いかもしれません。
1週間後の容器内の写真です。
倒木に沿ってセットしたので、予想通りのハナアブが入りました。 マレーズトラップを安く作るためか、捕虫器部もオールネットなので、アルコールの蒸発や雨水の流入などを心配しましたが、意外と大丈夫でした。 今度は、普通のマレーズのように壁の部分を黒く染色しようと思います。(追加のマレーズは1ヵ月後に入荷予定) ハナアブ以外の双翅目は、キノコバエ類がほとんどです。 勉強の為、同定に挑戦してみようと思います。
トラップの中から見つけた、Ditomyiidaeケズメカ科のSymmerus elongatusという種類です?
5mm程の大きさのキノコバエの仲間で、顕著な翅脈を持っていますが、環動昆研の双翅目昆虫の絵解き検索では収録されておらず、新北区の双翅目マニュアルMNDで調べました。(チャボキノコバエ科Diadocidiidaeも絵解き検索に有りません) 他のキノコバエはどうなったかというと、 ・クロバネキノコバエ科は旧北区のマニュアルCMPDに収録されているのですが、検索キーがpalpiの剛毛だったり、感覚器だったりで、プレパラートを作らないと見えない(T_T) また、日本産昆虫目録を見るとCMPD未収録の属が有ります。 ・キノコバエ科は旧北区のマニュアルCMPDに収録されていません。やはり多様過ぎてまとめきれないのですかね。 ソーティング後の残された双翅目を見ると、キノコバエ類とタマバエ科がほとんどなのですよ。もったいない・・・・
同じく、マレーズトラップで得られたオドリバエ科EmpididaeのTachydromia属の1種です。
体長2mm程のとても小型のオドリバエです。翅に紋があるEmpididaeの現物は初めて見ました。 この種は、科の検索で悩みました。ふつう、オドリバエ科は翅にcup室を持つと思っていたので、絵解き検索ではたどり着けず、CMPDの科の検索で落としました。 埼玉県昆虫誌に同属が載っていますが、この種は中脚の腿節に特徴的な構造を持っているので、たぶん違う種類でしょう。 こんな小型の種類が採れるのもマレーズトラップの有利な点ですね。
Tachydromia sp.の翅脈です。
cup室が無く、A1脈がかろうじて生じているように見えます。 新北区のマニュアルMNDのEmpididaeを見ると、Tachydromiaは、通常帯状の斑紋を持つと書かれています。この個体も、かすかに帯状に紋が流れて見えます。
前の発言で、キノコバエ科は旧北区のマニュアルCMPDに収録されていませんと書きましたが、AppendixにSciaroideaキノコバエ上科として集録されていました。
失礼しました。
ブナ林の山中に設置された、六本脚の格安マレーズトラップ。
前回に続き、カミキリムシにより捕虫部に穴が空いていました。赤テープは前回の穴の応急処置です。 犯人は、今回入っていたコバネカミキリかな。 やはり、格安は短期設置専用かも?
応急処置の赤テープを外して前回の穴も写してみました。
前回以上に大きな穴。しかも反対側も穴が空いています。 来年は数を増やして色々やってみたいので、冬の間に対策を練らなくては(^_^;) このブナ林用には、アメリカから2万円程度で買える軽量タウンズ型マレーズを2基購入しようと考えています。 http://home.acceleration.net/jwhock/pd_ift.htm
中脚腿節の切り込みは、交尾の時に雌の翅をつかむため。
ナンテ言うのはうがった見方でしょうか?
Acleris様。
意外と当たっているかもしれませんね。 同じ種類の雌を調べれば解りそうです。 来年も同じ場所にマレーズトラップを設置しようと思うので、雌が採れたら面白いな(^。^)
スレッドが長くなってしまうのですが、画像が勿体無いのでここにコメントします。
昨年掲示したオドリバエの1種Tachydromia sp.で、写真のように中腿節下部に特徴のあるくぼみ(捕獲用?)があります。 Key to the insects of Russian Far Eastに収録されているTachydromiaのKeyを見ると、極東ロシアの種類は胸背に銀色の斑紋を持つものがほとんどで、本個体のような斑紋を持たない種類はT. umbrarum HalidayとT. mongolica Shamshevの2種となります。 しかし、T. umbrarumのような胸背後部黒色刺毛や中脚基付節が特別に長いような特徴はありませんし、T. mongolicaのような翅の斑紋や前腿節中央部の褐色のリングもありません。 アドバイスよろしく御願い致します。
Tachydromia属は私の手元には日本産のものが約30種あります.多くは翅に帯状の斑紋を持っていますが,今回示されたように亜翅端に暗斑をもつ種や翅が全面的に暗色の種など様々です.本属は広い葉(フキなど)の上であたかもアリのように行動して,小昆虫を捕食したり,また岩の上で同様の行動をします.特に岩上で活動する翅に斑紋を持つ種はアリへの擬態と考えられます.通常はゆっくり歩いて獲物をさがしていますが,一旦危険が迫ると敏速に逃げ回ります.吸虫管などで追い詰めると最後は飛翔します.同様の行動はTachypezaにも観察され,本属の場合は捕食の為のパトロール域は主に樹皮がはがれた立ち枯れの木,樹皮がスムーズな木(例えばブナ),電柱などです.腐れかけた木材の堆積でも多数の本属の個体を観察できる場合がありますが,これらの多くはテネラルで,その場で羽化したばかりのものでしょう.
問題の中腿節の抉れですが,本属には雄がここに様々な変形を起こす種があり,これらはいずれも雄に限定されています.そして,Tachypezaと共に,本属は前脚で獲物を確保しますから,雄の中脚は必ずしも捕獲脚としての変形とは思えません.根気強く河原の岩の本属の行動を観察すれば折々交尾個体も観察できます.しかし,大変小形なので果たして雄がこの中脚を交尾の際にどのように使っているかは観察がやや困難でしょう. なお,双翅類ではヤリバエ科で雄の前脚,特に付節が変形するものが多く,この場合は交尾の際にこの変形した付節を雌の翅の前縁部にかけてしっかり掴む機能を持っています. 写真の種は恐らく私も採集していると思いますが,もし,将来研究する場合に標本のご援助をいただければありがたいです. 次はSymmerusですが,本属はelongatus, brevicornis, antennalis, fuscicaudatus, akikoaeの5種が邦産です.ただし,写真で同定されているS. elongatusには,外観的に極めて類似した未記載種があります.これは雄の後脛節腹面に短く且つ太い刺毛がやや直立して密生しています.正確な同定にはこの特徴も含めて原記載の交尾器の図を参照されるのが良いかと思います. Symmerus属の幼虫はやや硬い朽木に穿孔しています.羽化時には雄は日中このような朽木に沿ってあたかもハチがとんでいるように活発に飛翔して羽化する雌を探索します.本属は邦産の未記載種がもう1種あり,これは台湾のS. pectinatusと同様に雄は櫛歯状の触角を持っています.邦産種の多くは幼生期を調べていますが,蛹の胸部突起などに変形があり,種特異的な形質がみられます.中国大陸には多数の未記載種がいて,日本産のものは中国の出店のようなものです.
アノニモミイア様、詳細な解説ありがとうございます。
Tachydromia属は日本に約30種もいるのですか!改めて勉強になります。標本については、必要とあればお送りします。 Symmerus属も新たに近縁種が確認されているのですね。交尾器は解剖していませんが、原記載の図とほぼ同一と見えます。また、後脛節腹面に密生した刺毛もありませんのでS. elongatusで良さそうです。 キノコバエ類は北大の博士課程にKeroplatidaeを研究していた若手がいたのですが、就職して線虫の研究に転向してしまったようで残念に思っております。 |
- Joyful Note -
- Antispam Version -