田中川様.
写真のメバエは,M2脈沿いの暗化部が連続していないので, Myopa chuncheonensisのようにみえます.体長はどのくらいですか?
チュンチョンマダラメバエは私が Myopa chuncheonensis Stuke et Maeta, 2002の同定ラベルにつけている和名です.
ナカホシメバエMyopa testaceaやナカホシメバエ黒化型M. testacea japonicaに近縁ですが,やや小型で小楯板が黒〜暗褐色,♂交尾器のacrophallusが長い特徴を備えています.
ナカホシの黒化型との区別が難しいです.
北海道から九州まで,主に平地丘陵部〜低山地に分布しています.
なお,M. chuncheonensisの原記載は,2002年の日本昆虫分類学会会報で,容易に入手出来るはずです.
茨城@市毛様
早速のご回答ありがとうございます。標本の体長は約7ミリです。
やはり、ナカホシメバエではなかったのですね。ナカホシメバエの画像がなかなか見つからないし、同属他種との違いもさっぱり分からなく、難儀しておりました。
チュンチョンマダラメバエの和名で記録されたのは、はなあぶ35号が初なんですね。和名新称もうたっていないし、日本昆虫目録にも和名が出ていなかったので不思議でしたが、謎が解けました。
M.chuncheonensisの形態の特徴や分布など、いろいろ教えていただきありがとうございます。
原記載の入手も図りたいと思います。また、ナカホシメバエも見たことがないので、早く見つけたいものだと思います。
田中川様.
今度の昆虫目録のConopidaeは,数か所足りないところがありますね.
・Thecophora pusillaが載っていますが,これは2006年にThecophora cinerascensのシノニムになっています.
・昆虫総目録の時から問題になっていたオオズクロメバエの学名の件も2004年に再検討されてA. nipponinsisに戻ったので,
Archiconops niponinsis
= A. erythrocephalus Camras, 1960 (not Fabrucuys)・・・
と注記してほしかったですね.
(Pleurocerinella dioctriaeformisは見解の相違で結構ですかね(^_^;)
Myopa属については,こんな感じの検索で同定できないかと思っています.
1. 翅のr-m脈周辺は暗化せず,翅全体に暗色部を欠く.中型種(5-7mm).小楯板は黒色.腹部背板は広く黒色.顔の下部に長白色の頬髭を密生しない.…………M. nigriventris セグロマダラメバエ
- 翅のr-m脈部に暗色斑を備えるか,翅に不明瞭な暗色部がある.通常顔の下部に長白色の頬髭を密生する.…………2
2. 翅のr-m脈部に明瞭な暗色斑を欠くが,翅の大半に不明瞭な暗色部を備える.r-m脈は白い.4.5-10mm.…………M. buccata マダラメバエ
- 翅のr-m脈部に明瞭な暗色斑を備える.…………3
3. 通常,翅はm-cu脈部の暗色斑を欠くが,日本産ではしばしば翅の前半とm-cu脈周辺がやや暗化する.小楯板は赤褐色.中型の個体が多い.5.5-10mm.…………M. testacea ナカホシメバエ
- 翅はm-cu脈部の暗色斑と前縁に沿った暗色部を備える.M1+2脈沿いの暗化部は連続しない.♂交尾器のacrophallusは長い.…………4
4. 翅は前半と翅端部がやや曇り,M1+2に2分枝を備える.…………M. maetai マエタマダラメバエ
- 前種同様,翅の前半と翅端部がやや曇るが,M1+2に2分枝を欠く.中胸背盾板後縁と小楯板は黒〜暗褐色.小型の個体が多い.3.5-7.0mm.…………M. chuncheonensis チュンチョンマダラメバエ
23:35 検索の一部を修正
茨城@市毛様
Myopa属の検索表、こんなのを待ち望んでいた人は多いと思います。一つの科あるいは一つの属の全種にわたる多くの標本を集めないと作れないですよね。おもてに出していただいて、本当にありがとうございます。
さらに絵解き検索やらカラー写真やら使ったものをどんどん談話会の機関誌に発表していただけたらと期待しています。
新訂原色昆虫大図鑑第3巻のメバエ科各種の記載を読んでいて、ナカホシメバエとクロフタオレメバエの項に第1脈とか第3脈とかいう聞きなれない用語が使われているのに気が付きました。何でしょう?
田中川さん。
メバエ科の翅脈の名称について疑問を呈されています。新訂原色昆虫大図鑑第3巻で私の実際の担当は全く新しく新訂版のために私が撮影作成した129-139図版で扱われている諸科と双翅目の概説です。メバエ科など一部は改訂の担当を了承しないのに私の担当にされています。メバエ科についてあらためて見てみますと,旧版の宮武睦夫さんの記述と全く同じですから,本来はこの部分の執筆者は旧版の宮武さんにすべきものです。
それで,翅脈相ですが,どうやら第1,2,3脈はそれぞれSc, R1, R2+3脈に相当するようです。これらの脈は例えばSmith, 1969のHandbooks for the identification of British insectsのConopidaeでは,それぞれSc,R1+2,R3脈とされています。もちろん第1,2,3脈のシステムは私が概説で示している翅脈名称体系とは別のものです。
,
三枝豊平様
早々と疑問を解き明かしていただきありがとうございます。
なかなか採集できないメバエ科ですが、今年も調査に精を出そうと思います。