オドリバエについては,大概は三枝先生のオドリバエ科の絵解き検索で属まで判るようになっています.
http://diptera.jp/fly/dl/etoki-empididae.pdf また,属より細かな同定については,雄腹部末端にある交尾器が見える写真が必要となります. 過去ログを参考にして撮影してみてください. P.S. 双翅目の科までの検索は,新訂大図鑑等色々な文献があります. ネットでは,田中和夫(2000)屋内害虫の同定法 双翅目の科の検索表 が無料公開されています. http://ci.nii.ac.jp/naid/110007724383
市毛様
いつも貴重なご教示ありがとうございます。 ご教示いただいた、三枝氏と田中氏の検索表をダウンロードし、 検索にチャレンジしてみます。
検索結果を楽しみにしています.
市毛 様、 三枝 様
ご教示いただいた資料を基に検索しました。採集標本は三角紙で保管していましたが、写真撮影時よりもかなりいたんでいます。 まず、田中氏の検索表で検索した結果、オドリバエ科と推測されました。検索表(4)の図31bの翅脈の形状とよく似ています。画像の翅脈の名称は、それを参考に記入しました。 次に、三枝様の図解検索表で検索しました。その結果、Rhamphomyia属にいきつきました。以下に検索で少し悩んだ箇所を書きます。 検索NO.3は3本に少し悩みました。NO.26の口吻の長さは少し悩みましたが長いにしました。NO.28は観察に少し時間が掛かりましたが、検索図を参考に判断しました。NO.29の亜前縁脈(Sc)は見づらかったので数回観察しました。また、平均棍は脱落していたので、平均棍基部らしき場所の前方を観察しました。やや長い毛が9本ほど生えています。以上です。 ご教示よろしくお願いします。
HYさん:
投稿された画像のハエは,あなたが同定されたようにオドリバエ科のRhamphomyia属の種です。正解でした。この属には多数の亜属があって,お使いになった私の検索表にはそれら亜属は示してありません。Die Fliegenなどに示されているFreyの亜属の分類はヨーロッパの種を対象にしているので,アジアや北米の種に適用するのはかなり難しいところがあります。 画像の種はRhamphomyiaのPararhamphomyia亜属の中で暖温帯性のciliatopoda群に属する種です。この群は日本では主に秋に成虫が発生します。本州から沖縄,台湾,中国大陸全般,インドシナ半島北部に広く分布しています。 沖縄からRhamphomyia (Pararhamphomyia) yasumatsui Saigusa, 1963が知られていて,この種は1960年11月13日に沖縄本島の与那で採集された標本に基づいて記載したものです。Sieboldia,3(1): 147-148, fig. 9 が原記載(原公表)です。同時に奄美大島から記載されたR. (P.) ciliatopoda Saigusa, 1963があります。 あなたが画像の個体を採集した国頭村(比地など)では、yasumatsuiに加えてこの群の種が他に2種生息していて,いずれも晩秋に活動します。林間の空間で非常に大きな群飛集団を形成します。国頭村の3種の雄はかなり類似していて,雄交尾器の形態で識別できます。投稿された画像では交尾器の形状があまりはっきりしないので,これら3種のどれかは即断できません。琉球列島のciliatopoda群の♂交尾器の鉛筆画のラフスケッチを載せておきますので,それと比較してみてください(画像の作成がうまくいかないので,後ほど試みます)。 R. ciliatopoda群は,多くは脚が黄褐色で,中脛節の中ほどの前腹面に1本の長い剛毛を生じることが特徴です。
三枝 様
貴重なご教示、ありがとうございます。 早速、中脚節を観察しました。中脚節のやや長い剛毛の2倍の長さの長い剛毛が1本見られました。 色は白っぽい感じがします。また、この個体は国頭村(伊湯岳入口)で採集しました。 この採集個体はRhamphomyia sp. として記録しておきたいのですがよろしいでしょうか。
沖縄本島北部のciliatopoda群は3種で,それらの雄交尾器の概略の図は添付の上段の3種です。右がyasumatsuiでして,残りの2種は未記載です。中央の種が最も普通です。
これらの図と標本を比較してみて,左と中央の二つのいずれかに相当したら,Rhamphomyia (Pararhamphomyia) sp.(ciliatopoda group) として同定されたらいいと思います。 右の図に一致したら,それはRhamphomyia (Pararhamphomyia) yasumatsuiに相当します。 以上の同定で記録されたらいかがでしょうか。
三枝 様
貴重なご教示ありがとうございます。 採集した個体は、写真撮影後、腹部がとれてなくなっています。とても残念です。 それで、実体顕微鏡にデジタルカメラをくっつけて撮影した写真がありましたので、それを拡大して検索しました。 画像も粗く、毛なども判別できないのですが、全体の形態から三枝様のスケッチの上段右端に似ているように見えます。 粗い画像判定ですが、Rhamphomyia (Pararhamphomyia) yasumatsui と記録してよろしいでしょうか。
私も初めはyasumatuiと同定したのですが,画像がやや不鮮明なので疑問符付きの回答になりました。しかし,3種の内では交尾器のかたちからyasumatsuiである可能性が最も高いと思います。本種の雄交尾器では尾角突起が小型で深く抉られず,背板葉が小型で先端が細長く伸びず,挿入器の基半部がソーセージ状に太くなるのが特徴です。今回の写真にはこれらの特徴,特に挿入器の特徴がよく出ています。
腹部が無くなったとのこと。沖縄にお住まいなら,この仲間は秋にはいくらでも採集できます。比地渓谷のゲートから入ってトイレなどがある場所の林縁(大きなギョボクの周囲)や与那の琉大の亜熱帯センターの横から与那川沿いに山に入っていく果樹園の周囲の場所などには,11月から12月にかけて大きな群飛が5-8m上空にいくつも観察できます。配偶行動や求愛餌の種類などを観察するのも面白いと思います。 沖縄本島南部にも当然生息しているはずで,そこにどのような種が分布しているか興味あるところです。
三枝 様
貴重なご教示ありがとうございます。 また、交尾器の図までご提示いただき、感激しています。 この採集個体は、Rhamphomyia (Pararhamphomyia) sp. (R (P).yasumatsui の可能性がある)としておきます。次回(秋になるかもしれませんが)は、是非、交尾器の観察ができればと思います。 それから、昨年の12月に西銘岳で夜間灯火採集をしました。その時、今回の種とは異なるオドリバエを2種ほど採集しました。写真撮影をして、また、投稿したいと思いますのでよろしくお願いします。 本当に、ありがとうございました。 |
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