鴨川@房総半島 様
おはようございます.山口県のさんごです.ニクバエ・クロバエを調べているものです.
お写真のサイズが小さいので剛毛がよく見えませんが,経験的にはニクバエ科の♀のような感じがします.
ニクバエ科とクロバエ科の区別ですが,やはり胸部の剛毛が一番確実なようですが,これを文章で表現されるとなかなかとっつきにくいですよね.
北隆館の「新訂原色大図鑑III」,「ハエ 生態と防除」に両者を区別する検索表と,倉橋博士著「日本産クロバエ科の種目録」にクロバエ科の特徴が,それぞれ微妙に違った表現で,いずれも分かりやすく記されていますので,一度見られることをお勧めします.ただし「ハエ 生態と防除」に引用されているFanの図はやや解りにくいと感じます.
以後は,ニクバエ科とクロバエ科に絞って(イエバエ科やヤドリバエ科はすでに除外されているとして),かつ日本産のものに限定した話として読んでください.
剛毛以外の区別点として,北隆館の大図鑑や「ハエ 生態と防除」に記されているように,腹部の色彩が有用と思います.わずかでも青,緑,紫などの金属光沢があれば,ニクバエ科ではありません.逆はいえません.クロバエ科で黒や灰色のものはいます.
腹部にはっきりした市松模様(チェッカーフラグ模様)があって上記のような金属光沢がないものは,ニクバエ科ニクバエ亜科とみてまず間違いないですが,ニクバエ科でもヤドリニクバエ亜科やヤチニクバエ亜科では市松模様がありません.しかも,ニクバエ亜科でも古い個体で鱗粉が落ちているものでは市松模様がわかりにくかったりしますので,これも逆はいえないということになります.
あと,日本産ニクバエ科では♂の複眼が明らかに相接するものはいません.
もう一点,♀ではっきりとした産卵管状の構造があるニクバエは日本産ではいないと思います.
以上から,ニクバエ科を否定することは比較的容易なのですが,どちらかに確定するとなると,やはり胸部の剛毛をみるのが確実でしょうね.
長文のわりにわかりにくいですね.
お役に立てたでしょうか?
さんごさま
お礼が遅くなってしまって申し訳ありません。
ご丁寧な解説ありがとうございます!!今後は以上の事も参考にして同定していこうと思います。
ちなみに件の図鑑ですが、こちらは運がいいのか悪いのか、絵解きで乗っていてわかりやすいと思いきやこの部分だけ言葉がないので理解できなかったのです。アドバイスを参考にして確実にわかる種どうしで比較して解読してみます。
鴨川@房総半島 様
多少でもお役にたててよかったです.
みたことはありませんが,海外には緑色や青色のニクバエがいるようですので,先の話はあくまで本邦産の既知種限定での話です.そんなのが本邦でも見つかったらうれしいですが,ちょっと困りますね.
くどくてすみません.
鴨川@房総半島 様
さんごです.
突然ですが,先日のNo.8585で,間違い,というかウソを言いましたので,訂正させてください.
日本産ニクバエでも♀に「産卵管」状の構造があるものがいました.ギングチバチヤドリニクバエ Oebalia minutaです.実物は見たことがないのですが,Kontyu39(1):62-63 (ここではPtychoneura属とされています)に♀の「産卵管」の図が掲載されています.Oebalia属のほかの種も同様の構造を持っている可能性があります.
ということで日本産のものに限定しても,♀の産卵管をもってニクバエ科であることを否定することはできないことになります.
浅はかな知識なのに知ったような顔をして書きました.ごめんなさい.