捕獲しました.
ガガンボのようにも見えますが、翅脈相や触角がかなり異形ですね。たくさん採れているようでしたら見せてください。
田中川様
生態も形態も興味深いですね。
似た感じの種は見たことないです。
こちらでも気にしてみたいと思います。
三枝先生,バグリッチ様,コメントありがとうございます.
今日も一日,現地で再調査してきました.少なくとも7キロメートルの間で随所に生息しておりました.全く飛びません.スゥィーピングしても入ってきません.入ってくるのはミギワバエやアシナガバエなどばかりです.
たくさん採れていますので,三枝先生には標本をお送りいたします.
頭部は見れば見るほど奇妙な形ですね。ありえないような触角や小腮鬚。見た瞬間アメンボか?と思いました。
翅脈相や生息場所を考えるとHexatomaのようにも思えますが、なにしろ触角が異形で、しかも飛べない。標本をお送りくださるとのこと楽しみにしています。
これは私も見たことがありません。Hexatoma (Hexatoma)の一種です。
日本から記録のある種とは特徴があいません。
触角の節が少ないのはこの属の特徴ですが、飛べないとは!
ご面倒ですが、私にも標本を頂戴できないでしょうか。
達磨様,コメントありがとうございます.
これまで採集できていたのは♂ばかりでしたので,本日も朝から夕方まで本種♀を探し回りました.中州にも入って調査しました.そしてようやく写真の雌をいくつか見つけました.雌は翅が長く,飛んでいます.雌の個体数は雄に比べ極めて少なく,雄が近づかない流れのある浅い水辺をうろついていました.
隣の宮川を調査しましたら,♂数個体を見つけました.おそらく水に流されてきたものでしょう.ためしに,雄を水の中を放り込んでみましたところ,脚を広げたまま身動きもせず流されていきました.
ようやく雌雄が揃いましたので,標本をお二人にお送りします.
雄が飛ばず,雌が飛ぶと言う翅の退化の例はガガンボでは他に例がないと思います。
♂が飛翔できなくて、♀が飛翔可能というのは、
1)雌雄の羽化場所などが接近していて、♂が強い飛翔力を持たないでも、♀と交尾可能となる、
2)一方、♀は産卵や摂食のためにかなりの移動力を必要とするので翅が発達する、
の2条件が生じている場合でしょう。
このような典型的な例がイヌビワコバチやイチジクコバチ類です。イチジク類の果実の中で羽化した♂は翅を欠き、羽化した♀と果実内で交尾し、♀は有翅で、果実から外界に脱出して新しい果実に産卵する。
本種の場合は、おそらく河岸でも幼虫の生育場所、蛹化場所がなり限定されているのではないでしょうか。♂♀はそこで交尾し、♀は新しい産卵場所を求めて移動する。♂は飛翔はできないが、発達した脚である程度の移動が可能で、そこで同系とは異なる♀と交尾する機会も残されている、ということでしょうか。
いずれにしても今回の発見は素晴らしいものと思います。
♀の翅が退化する方が、卵巣成熟の点から有利ですが、この場合は天敵からのリスクの増大、更に脚も退化すると移動力不足から種の分散が困難、などのマイナスがあります。生息場所が安定していると♀が無翅になっても生態的に不利はあまりありません。オオミノガ類のように♀が無翅無脚になると種の分散機構として1齢幼虫の空中バルーニングのような新しい分散手段が獲得されています。
> 雄が飛ばず,雌が飛ぶと言う翅の退化の例はガガンボでは他に例がないと思います。
Hackman (1964)は調査した?
てる殿
Hackman1964とはNotulae Entomologicae 44(3) "On reduction and loss of wings i Diptera"のことでしょうか。読んではいないけど、雄だけ短翅になるガガンボの例がでてた?さすが、物知りだな。手元にあるなら申し訳ないけどPDFを送ってくれないかしら。僕の手元にはその5年後に書かれたByers 1969 "Evolution of wing reduction in crane flies (Diptera, Tipulidae)" というのがあるのだけれど、これにはこういう例はでてこなかったと記憶しています。といっても読んだのは何年も前だからもう一度読み返さなくては。いずれにしても1960年代と今では情報量が全く違うので、その後の論文を調べなくちゃだな。田中川さんが標本を送って下さるようなので、モノが届くまでに、少し調べておかなくちゃ。
Manual of Nearctic Dipteraの該当部分では、仮に片性に出ても♀-だけとか断定していましたが、とある論文には♂-/♀+がTipulidae (incl.Limoniidae)にある、という明瞭な文脈でご指摘のHackman (1964)が引用されているのです。甲虫のことではないので原著にはあたっていません。
まあしかし、いい加減な引用もあれば、原著にあたると小躍りするような発見もしばしばあることであるし、そのうち機会があればチェックしてここでご報告します。
では、Hackman, 1964は改めて入手しようとおもいます。ところで、「とある論文」というのを教えてもらえないでしょうか。こうした例があるかどうか、検索中で、この情報については藁をも掴む心境なもので。是非。
Hackmanの論文はpdfを作ってあるので、達磨さんとてるさんは必要なら送ります。てるさんの最近のメルアドは知りません。
Notulae Entomologicaeは、米国の文献検索サイトのBiodiversity Heritage Libraryにも収蔵されていないようですね。てるさんは外国の文献に詳しいと思いますが、ヨーロッパでBHLのようなサイトがあったら教えてください。
三枝先生。PDFありがとうございました。さっと目を通すと、”Molophilus ater で雄は短翅(軽度に)、雌は翅が発達”とありました。さすがはてる、たよりになります。で、じゃあ、このM. ater はどんな虫なのかとわたしのガガンボライブラリーで調べたところ、Hadley, 1969. The Adalt Biology of the crane-fly Molophilus ater Meigen. J. Animal. Ecol. 38. というドンピシャの論文がでてきました。しかし困ったことにはこのなかに、”本種の特徴は雄雌ともにsub-apterousなことで、ムネ+腹部が3〜4.5ミリなのに対し、翅は1.8ミリ”とあることです。振り出しに戻った感があります。
まずは三枝先生。達磨氏の解説でHackmanの要点は明らかになりましたので、送付のお手間は不要です。
とある論文というのはThayer 1992で、必要ならstaphylinidae, wing dimorphismで検索して、正確なcitationを確認してください。
田中川様
標本届きました。なかなか変なガガンボです。
ありがとうございました。
よく調べてみます。
実物標本を見て、Hexatomaとしてはかなり小型であるのに、ちょっと驚きました。それに、写真に現れていたように小腮鬚の第3小節が奇妙に球状に肥大していることや、♂の腹部背板が光沢のある黒色で、交尾器の生殖基節が大変太くて長い点も注目されます。♀の腹端部はHexatomaではこんなに短くなっているのかほかの種についてはよく知りません。触角も単に短いだけではなくて、かなり太目です。
いずれにしても♂短翅状態も含めて特異な種です。中室を持たないので属はおそらくHexatoma亜属でしょうが、詳しくは達磨さんが調べてまたこの掲示板に書き込んでくれるでしょう。
是非現地で発生地やその状況、できれば交尾行動など観察してみてください。大変興味があります。
♀を見つけた3日後の26日に現地へ行きましたところ,個体数が激減しておりました.100分の1くらいに.数百いたはずが,数匹しか見つけられませんでした.交尾行動を観察したいと思っておりましたが,残念です.今月中にもう一度出かけてみます.
生息地の写真を添付しました.川の流れに沿った砂地にいました.淀み周辺では見つかりません.各地に普通に見られそうな風景の中に,時たま変な生き物が見つかることがあるんですね.
本日,交尾行動を1回だけですが,観察できました.午後1時半頃です.交尾時間は約3分でした.
こんな所に何十もの個体がおりました.砂が崩れている所とその下の水際までのわずかな空間です.♀は水際に固執しておりしました.私は川の中から観察,私が歩くと波が立ち,何匹かの♀が流されていましたが,すぐに翅を広げて滑空するように元の位置へ戻っていきます.
浅瀬の水の中に入って,時々じってしている♀.よくみると,砂粒に黒く小さな細長いものがくっついています.現地では気づきませんでしたが,この仲間の卵って,こんな感じのものなのでしょうか?
サイズからみても、卵である可能性大です。
田中川さん。集合場所、交尾状態、産卵(おそらく。黒いのは私も卵と思います. キリウジガガンボの卵にもよく似ています)とさまざまな生態情報が得られて、御同慶です。珍しい種を見つけてもなかなかそこまでいろいろな生態が観察できることはほとんどないのですが、個体数が多いことも幸いしたでしょうが、何しろ田中川さんの熱意の賜物でしょう。
たくさんの個体が集まっている場所の♀はおそらくすでに交尾しているはずです。生かして持ってきて容器などに水に湿らせたペーパータオルかティシューを敷いて、そこに入れると、たぶん簡単に産卵するだろうと思います(Tipulaなどの経験から)。卵もとれるし、少なくとも1齢幼虫が得られると思います。
達磨様,三枝先生,コメントありがとうございます.
やっぱし,卵でしたか.
本日の日没時に♀を捕まえようと現地に行きましたら,昨日の場所には1匹もいませんでした.暗くなってきたので捜索もあきらめました.
ひょっとすると,彼らは集団となって産卵場所をあちこちと移動しているのでないでしょうか.今日は中洲,明日は10メートル先の砂場へと・・・などなど.
もう一度,あの集団を探しに出かけなくっちゃ.
多くの個体が集まっている場所が変化するのは、本当になぜでしょうね。時間、日射、風などいろいろが条件が関係するのでしょうか。♂が飛翔力がないのだから、そんなに移動はできないと思うのですが。それぞれの場所が羽化場所であって、その近くに1,2日ほど留まってから移動・分散していく、という可能性はどうでしょう。まあ、あまり考えられないですね。