最近のオドリバエ上科やキノコバエ上科の研究状況は、数十年前に私がこれらの群の研究を始めたころとは大変様変わりして、多数の研究者が成果を競い合う様は、まさに、生き馬の目を抜くがごとき、状態です。私が研究を始めたころは、オドリバエ上科はカナダでChillcott,フランスでVaillantらが研究していて、高名なフィンランドのFrey、米国のMelanderや英国のCollinは亡くなったか、老境でした。キノコバエ上科も同様でした。
オドリバエ科(広義)に限ってもその後、Smith, Sinclair, Cumming, Chvala, Plant, Papp, Daugeron, Grootaert, Wagner, Bartak, Rafael, Shamshev, 楊さん、等々、おびただしい研究者が現れています。
私がのんびりと構えている間に、みなさん次々と新しいものを見つけては即時発表する状況になりました。今回バグリッチさんのこのオドリバエも私が未記載属であるとしたものですが、2001年にPapp, L. & Fordavari, M.によって新属として記載されました。属名はChvalaeaです。チェコの研究者Chvala博士に献名されたものです。東欧にLeptopeza rugosiventris Stroble, 1910という種があり、標本は見なかったのですが、記載から私が未記載属としたものに含まれると思っていましたら、それをタイプ種にして記載されました。
日本産はバグリッチさんのと同じ1種ですが、この仲間は台湾から中国、東南アジアからパプア・ニューギニアまで広く分布し、多数の種から構成されています。この属は私がPimplogasterの属名で英国のSmithと新属で記載しようと試みたのですが、Smithからgasterの語尾に異議がでまして、頓挫していたものです。腹部の状態がヒメバチ科の1種を思い起こさせるような、硬くて多数の点刻があるものです。
同じ論文で、Megagraphaの1種も記載されています。この属は北米からのもので、その後日本から韓国、中国、ネパールにかけて相当数の種が生息している実態を私は把握しています。
Chvalaeaの論文は、
Papp, L. and Foldavari, M. (2001). A new genus and three new species of Hybotidae with new records of the Hungarian Empidoidea (Diptera). Acta Zoologica Academiae Scientiarum Hungaricae 47(4): 349-361.
です。ネットで検索できるはずですが、もし入手できなかったら、バグリッチさん、ご連絡ください。
三枝先生
詳細にご教示賜り、深謝申し上げます。
検索結果が正しかったことと、新属の名称がChvalaeaであること、さらにこれまでの経緯などが良くわかりました。
ご紹介いただきました文献は、ネットで入手できました。
この中の全体図は、私の画像と非常によく似ていて、同属であることが一目でわかりました。
このような面白い形態の種がいるオドリバエ科は 本当に興味深いです。
同じく秩父で採りましたオドリバエでわかりそうで わからない種がいくつかありましたので、改めまして お伺いしたいと思っております。
引き続き宜しくお願い申し上げます。