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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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オトシブミの揺籃から出てきたハ... 投稿者:コガネ虫女子 投稿日:2012/12/07(Fri) 14:11:54 No.8028  引用 
はじめて投稿させていただきます。
夏にナミオトシブミの揺籃を飼育していたら、キモグリバエ科と考えられる小さなハエがたくさん出てきました。キモグリバエ科のハエではこのような事例はよく知られているのでしょうか。
また、たくさんの揺籃をひとつの容器で飼育していたのではっきりとは分からないのですが、羽化したオトシブミの数は多くありませんでした。幼虫が寄生されていた可能性はあるでしょうか。何かご存じのことがありましたらよろしくお願いします。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:茨城@市毛 投稿日:2012/12/07(Fri) 16:50:26 No.8029  引用 
コガネ虫女子様.

旧北区の双翅目マニュアルには下記のように記されているので,キモグリバエ科の一部の属は腐肉食や肉食性のようです.
したがって,揺籃内の幼虫や幼虫の死体から羽化してくる可能性は高いと思います.

The larvae of some species were found in dead caterpillars or in beetle larvae, in cocoons of Lepidoptera, in Aculeata nests (Anatrichus, some Polyodaspis). Some are carnivorous in acridid pods (Lasiambia palposa, L. costalis), in oothecae of Mantidae (Kurumemyia, some Lasiambia), in egg masses of spider (Pseudogaurax, Speccafrons). The larvae of Thaumatomyia live in under ground among root aphids and feed on them or feed on Coccoidea on twigs of trees.

P.S. そういえば,これに書かれているのは,オニグモヤドリキモグリバエPseudgourax chiyokoae KanmiyaやカマキリヤドリキモグリバエKurumemyia ongamea Kanmiyaという日本に分布している種類のことでした.

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:コガネ虫女子 投稿日:2012/12/07(Fri) 21:32:07 No.8031  引用 
早速のご回答有難うございます。
WEB上にあった2種の写真を見た限りで、しかも現在手元に標本がないのですが、どちらかというとカマキリヤドリバエの方に似ているようです(特に前胸後縁の形など)。ただ、脚の色が脛節の途中からかフ節から褐色であった点で違うように思います。メスの産卵管が鋭く尖っていたのが印象的だったので、捕食寄生性のハエかと思ったのですが、日本以外には甲虫の幼虫に寄生する種がいるという事で理解しました。丁寧なご回答有難うございました。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:ezo-aphid 投稿日:2012/12/09(Sun) 13:13:50 No.8032  引用 
コガネ虫女子さま

大変興味深く拝見しました。
Kanmiya(1983)の報文21-24pに日本産キモグリバエの寄主が載っていますが、オトシブミの揺籃に関連したものはありません。キモグリバエでは記録が無いように思われます。
茨城@市毛さんがご紹介の「旧北区の双翅目マニュアル」の文章の前段には、以下の記述があります。
The larvae have varied habits, but are insufficiently investigated at present. Many species are saprophagous, feeding in frass left by other insects, decaying vegetable matter, sometimes in bird nests or in excrement and in dead animals. Many species live in decaying plants prefering in shoots of grasses and sedges.
幼虫の食性は多様で、現状では良くわかっていない。多くは腐食性・・・・・・、(他方で、イネ科・カヤツリグサ科の内部生長点を食べる幼虫群もたくさんいます)。
このことから、これがキモグリバエ科とすれば、「幼虫は揺籃を食べているのでは?」と想像します。いずれにしろ標本がないと論議になりませんので再捕獲が必要ですね。その際、1揺籃あたりの幼虫寄生数や、寄生された揺籃を分解してオトシブミ幼虫(または蛹)の状態などを調べ、何を食べているのか確認したいものです。これらがそろうと貴重な知見になると思いますので、ぜひ再挑戦して下さるようお願いします。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:ezo-aphid 投稿日:2012/12/09(Sun) 15:13:44 No.8033  引用 
コガネ虫女子さま

追伸:ところで、この観察はどこの県で、どの樹種の揺籃でなされたものでしょうか? また、キモグリバエの羽化は、オトシブミの羽化に先立つものでしょうか?
ご教示いただけると有難く存じます。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:コガネ虫女子 投稿日:2012/12/09(Sun) 18:18:00 No.8034  引用 
ezo-aphid 様

貴重な情報を有難うございます。揺籃は青森県でクリの木の下に落ちているのを採集しました。採集時は揺籃はまだ緑色でした。ただご指摘のように、ハエの存在に気付いたのは、オトシブミが羽化し始めてからでしたので、揺籃を食べていてオトシブミと一緒に出てきたのかもしれません。ハエの成虫標本は現在私の手元にないだけであるんです。それでキモグリバエ科らしいということがわかりました。標本が戻ってきたら、またご教示いただければ幸いです。よろしくお願いします。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:ezo-aphid 投稿日:2012/12/10(Mon) 18:01:14 No.8035  引用 
コガネ虫女子さま

あ、お隣りでしたか。落下した揺籃だけに寄生しているのか、という点も注目したいですね。
キモグリバエ科の同定については、過去の相談をご覧になってお判りの通り、比較標本を持たない素人にとっては大変難しいもので、とくに概観で明瞭な特徴が無いものは雄交尾器を確認する必要があります。したがって、最終的には上宮先生に(了承して頂ければですが)標本を見ていただくしかないだろうと思います。複数の雌雄個体を準備しておきたいですね。

チョッキリの揺籃を食べる「寄生者」について、知見がありますのでご紹介します(河野広道、1977「森の昆虫記2-落し文扁」128-136頁)。イタヤハマキチョッキリの揺籃には、成虫の体長10mmほどになるイタヤマダラメイガ Etielloides curvellaが寄生し、土中で越冬蛹となります。その平均寄生数は1揺籃あたり3頭だそうです。これほど大きな寄生者が3頭も育つのですから、体長2-3mmのキモグリバエなら、複数寄生は容易だろうと想像します。詳しいことは本文をご覧ください。
管理人さまへ:ハエから逸脱した情報の書き込み、お許しください。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者: 投稿日:2013/01/12(Sat) 20:07:25 No.8064  引用 
コガネ虫女子様

やっとこ、同定がついたよ。
どうやっても腑に落ちる属の検索ができなくて、苦戦しましたが、雄交尾器を引っ張りだして絵合わせ(←職業ハエ屋としてお恥ずかしい。)でなんとか。引き慣れない検索表を引くのは大変。Kanmiya, 1983の図(左)と比較してみてください(右の写真がお預かりした標本)。キモグリバエ科ChloropidaeのPolyodaspis ruficornis (MacQuart, 1835) トゲヘリキモグリバエでよいと思います。詳しい方、ご意見を頂けますように。


Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:ezo-aphid 投稿日:2013/01/13(Sun) 16:39:28 No.8065  引用 
The biology of the grass fly Polyodaspis ruficornis Kiauka & Narchuk(1972) Entomlogical Review 51(4):434-438.をコピーしてきました。
幼虫はとても幅広い環境で見つかり、食性は(柔軟性がありすぎて)単純には決めつけられないようです。要約には「植物または動物由来の腐廃物、昆虫の糞、果実・頭花などの生植物の一部、幼期昆虫の偶発的寄生」としています。他の昆虫と見つかる場合は、アワノメイガ類・モモシンクイガ類など、植物穿孔性の蛾類の例が多いようで、それらの糞・遺体を食べたり、幼虫の内部寄生もあるとしています。
揺籃については、ロシアアカデミーの所蔵標本2例だけで、腐食性か?とあるだけで、ちゃんとした食性などの報告は無さそうです。1)沿海州のポプラ揺籃(Byctiscus rugosus)、2)沿海州のハンノキ揺籃(Apoderus coryli) 。
詳しくは報文をご覧ください。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:コガネ虫女子 投稿日:2013/01/14(Mon) 00:02:16 No.8066  引用 
達磨さま

金曜日の午後にお渡ししたのに、もう同定が終わられていたとは流石です。有難うございます!明日の夜、お話できるんでしたよね?よろしくお願いします。

ezo-aphidさま
長らく書き込みをぜず失礼しました。
いろいろとご教示いただき有難うござます。
私の方でも調べました結果、トゲヘリキモグリバエはエゴツルクビオトシブミの捕食寄生者で主な死亡要因のひとつとなっていました(Effects of leaf quality and microhabitat on the survial of a leaf-loalling weevil(Attelabidae). Ecological Research 22,150-155、2007.) 。茨城@市毛さんから最初にご指摘いただいたように、Polyodaspis属ということからも、甲虫の幼虫を捕食している可能性は高いと考えていいのですよね?ご紹介していただいた文献がすぐに手に入らないので伺ってしまいますが、ご教示いただいたロシアアカデミーの所蔵標本のトゲヘリキモグリバエが出てきたポプラ揺籃とハンノキ揺籃というのは、ナミオトシブミの揺籃と理解してよいのでしょうか?

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者:ezo-aphid 投稿日:2013/01/14(Mon) 12:15:31 No.8067  引用 
このキモグリの食性については、(寄生状態を直接的には確認しにくいため)どうしても歯切れの悪い説明になってしまいます。
先の論文で、トゲヘリキモグリバエのクルミ果実への寄生状態について述べられています。ルーマニアの例では、1250個の果実のうちキモグリの幼虫・蛹がいたものが330個(26%)、そのうちモモシンクイガ類の被害があったものは127個(10%)だそうです。つまり、6割ほどの幼虫はクルミ単独で生育でき、4割ほどは蛾類の侵入食害に同伴して(食物は不明ですが)いることになります。それゆえ、先の説明のように、さまざまの有機物を食料としている、と要約されています。
その結論では、「P. ruficornisなどのような食性は、寄生性とはみなせず、偶発的捕食者(facultative predators)と考えるべき」と言ってます。
Anatrichus pygmaeusの例(Mushi 47:111-117. Wongsiri et al.(1974))では、メイガ幼虫で飼育でき死体まで利用するが、これが捕食者なのか腐食者なのか不明、としています。

オトシブミの種類は、それぞれカッコ書きに学名を記してありますので、ご確認ください。

Re: オトシブミの揺籃から出てき... 投稿者: 投稿日:2013/01/15(Tue) 17:44:39 No.8072  引用 
ezo-aphid様
この掲示板で情報の提供などお世話になっているコガネ虫女子が直接連絡を取りたいと申しております。その名のとおり「女子」なので、直接名前や連絡先を掲示板に書き込みたくないとのことで、相談を受けました。私はこの板上では素性がわれておりますので、私(中村剛之)まで、ご一報頂けないでしょうか。よろしくお願いいたします。

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