No.4888に三枝先生からガガンボダマシの翅脈相の画像が提供されていたので、合わせてみました。
R3脈に若干のズレがみられますが、ガガンボダマシの種まで同定するの翅脈相からでは無理との過去の書き込みもありましたが、この程度でガガンボダマシの一種と同定できるのでしょうか。
生態写真です。
正解です.ずいぶん正確にTrichoceridaeの翅脈相が描かれていると思います.努力された成果だと思います.虫に対する理解が深まることと思います.
この科の特徴はCuP脈とA1脈の2本があって,A1脈が大変短く強く翅縁に向かって湾曲するのがこの科の特徴です.ガガンボ科 Tipulidae(現在は3つの科に分割されています)ではA1脈が長くこのように強くは湾曲していません(旧来の解釈ではA1脈とA2脈という解釈でして,現在でも多くの文献ではこのように示されているので注意が必要です.旧来の解釈はさまざまな根拠から明らかに間違いですが,習慣というもので,間違ったことに気付かないか,気づいても相変わらず使っている場合が多いようです).
なお,この科にはTrichoceraとParacladulaの2属があります.少し観察しにくいのですが,付節(正確な漢字は人偏が足偏です;5節にわかれている)の最初の節がかなり長いのがTrichocera,きわめて短いのがParacladulaです.これからは両種とも早春に向かって庭先などで群飛うするので採集できます.少し倍率の高い虫めがねでもわかると思います.ともに日本にある程度の種が生息していて,翅に顕著な斑紋がない種の同定は♂交尾器の検査が必要になります.
交尾器の検査というのも,それほどややこしいことではありません.双翅類の群にもよりますが,物によっては拡大率のたかいデジカメの画像でもわかることがあります.
要は,腹の後半をハサミか何かで切って,これを10%程度の苛性ソーダまたは苛性カリに1日ほどつけて,それを水にいれて,水をかき回すようにして液の成分を薄め,新しい水に酢を1,2滴いれたのに腹を移して数分置きます.これをできればグリセリンの液につけておけば観察も保存もできます.グリセリンがなければ浣腸の液で十分です.なお,苛性ソーダや苛性カリが入手しにくいかもしれません.白い粒ですが水溶液にしてもタンパク質を分解するので,肌や毛織物につけるとその部分を分解してしまいます(ぬるぬると溶けてきます).注意が大事です.苛性ソーダを使わなくても,乳酸で処理する人もいます.キッチンハイターもアルカリですからあるいは使えるかもしれません.まだ試みてはいませんが,これだと同時に脱色される可能性があります(色の黒いものはかえって淡くなっていいかもしれません).材料が水やグリセリンの表面に浮いて困るときは,台所の中性洗剤を10倍くらいに薄めたものをごく微量のを加えると,界面活性が高まって沈みます(交尾器や腹部の内部に空気は入っているとそれでも浮きますが,洗剤処理をしないよりましです).先の細いピンセットがあるとしやすいです.近頃はホームセンターなどでも売っています.砥石ややすり,グラインダーなどでさらに細くすると使いやすいです.
アノニモミイアさん、ありがとうございます。
翅脈相の図にやっと手が掛かったところなので、交尾期の検査の領域にまでベルアップするのはこの先の課題とさせていただきたいと思います。
まだ、どの種類に対して、どんな情報が同定に必要になるのかの判断が付かない素人なので、少しずつ教えていただこうと思います。
よろしくお願いします。