オドリバエの交尾を最近初めて観察しました。
5月下旬@山形県・山間部渓流沿いの潅木 未採集・未採寸ですが、駄目元でお尋ねします。 もし写真で名前が絞り込めるようでしたら教えてください。 交尾しながら獲物を食べている♀だけが脚の毛が黒々と発達している点が興味深く思いました(性的二型)。 ネット検索の画像を眺めていると、素人目にはアシブトオドリバエっぽいかな?と思いました。(当てずっぽう) ブログに追加の写真と動画がありますので、よろしければご覧ください。 http://sigma-nature-vlog.blogspot.jp/2012/06/blog-post_26.html 被写界深度が浅いため、完璧な一枚という写真が撮れてないのです。 よろしくお願いします。
あなたの撮影したオドリバエは,Empis (Polyblepharis)の1種で,未記載種です.同じ亜属のE. (P.)comsogyneに近似した種です.この掲示板のワード検索でPolyblepharisで検索すれば,私が示した本亜属の検索表があるので,検索を試みてみたらいかがですか.
なお,以前に撮影された画像をみました.これは別属のRhamphomyia (Vockerothempis) arakawae Matsumura, 1915の交尾中のものです.本亜属の配偶行動は私はこれまで観察したことがなかったので興味深く見せてもらいました.本亜属の♀の腹端部はPolyblepharisにみられるような細長くなっていないので,交尾器の結合状態は興味があるのですが,残念ながら画像では♀の翅で隠れてみえません.求愛餌はケバエ科のBibio属の1種です. なお,引用されている岩波の生物学辞典の記事は,一部に誤解を招く部分があります. 「動物が求愛またはつがい維持期間中において相手に食物を与える行動.(中略)オドリバエ科のEmpis, Hilara属や,ガガンボモドキの一種では配偶行動において雄は雌に適当な餌を与え,雌がその餌を摂食中に交尾を行う.雌はある程度以上の餌を与えられた場合しか交尾を許さず,また餌の大きさと交尾時間の長さとは比例する.この場合の餌は雌の卵形成に直接の影響を及ぼし,ナプシャルギフト(nuptial gift婚姻贈呈)と呼ばれることもある. (『岩波生物学辞典』より)」 引用文ではnuptialgiftを婚姻贈呈としていますが,これは求愛餌でしょう.行動そのものは求愛給餌行動,求愛餌を送ることが婚姻贈呈でしょう. また,「雌はある程度以上の餌を与えられた場合しか交尾を許さず,」もこのような場合があるかもしれませんが,求愛餌の大小で交尾が決まるとも思えません.♂は極端に小さいような求愛餌を通常は携えません.
三枝豊平さま
こんばんは。 お忙しいところ、いつも懇切丁寧な回答をありがとうございます。 >Empis (Polyblepharis)の1種で,未記載種です 恥ずかしながら亜属というものに馴染みがなくて、この書き方だと「昔はPolyblepharis属だったものが現在ではEmpis属とされている」とつい今まで間違った理解を勝手にしてました。 二名法を復習して「Empis属(Polyblepharis亜属)」という意味だと今ようやく分かりました…。(汗 Empis sp.とリネームしておきます。 形態学は色々と勉強不足でして、正直言って検索表は用語がちんぷんかんぷんで使いこなせないでいます。 実体顕微鏡も必要みたいですね。 >以前に撮影された画像をみました.これは別属のRhamphomyia (Vockerothempis) arakawae Matsumura, 1915の交尾中のものです. http://sigma-nature-vlog.blogspot.jp/2012/06/blog-post_22.html 一つずつお尋ねするつもりでいたのですが、これも正体が判明して嬉しいです。 おまけに獲物の方まで写真鑑定していただいて感激です。 『岩波生物学辞典』の記述の不備についても勉強になりました。 今後ともよろしくご指導願います。 |
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