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一寸のハエにも五分の大和魂・改
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飴色のアシナガバエ 投稿者:Campsicn 投稿日:2011/10/29(Sat) 22:58:41 No.7234  引用 
いつもお世話になっております。

さてまたアシナガバエで恐縮ですが、今年の10月中旬に神戸市で採集したアシナガバエです。とりあえずはなあぶ30号の田悟(2010)を見ていますと、その中でGen sp. 4とされている種と酷似していることに気づきました。

一体これはなんでしょう、とお伺いするばかりでは恐縮ですので、中国動物誌を参照してみたところ、Sympycninae亜科に属するHercostomoidesという属のものに非常に特徴が似ているのではないかという結論に至りました。なお、採集したこの個体はおそらく雌だと思いますが、中国動物誌では雌は未知とされています。

この属にはHercostomoides indonesianusという種くらいしかいなさそうなので、ほぼこの種ではないかと思いますが、いかがでしょうか。みなさんのご意見をお伺いしたいと思います。

その種の写真を公開しているサイトもありました。よろしくお願いします。

http://evolution.science.nus.edu.sg/Empidoidea/Hercostomoides_indonesianus.html


Re: 飴色のアシナガバエ 投稿者:Campsicn 投稿日:2011/10/29(Sat) 23:00:05 No.7235  引用 
書き忘れておりましたが、体長約2mmです。よろしくお願いいたします。

Re: 飴色のアシナガバエ 投稿者:茨城@市毛 投稿日:2011/10/30(Sun) 08:46:08 No.7237  引用 
Campsicn様.

確かに,中国動物誌だけを読むとHercostomoides属の可能性が高そうに見えます.

しかし,これを如何にして確認するかが大変な作業となるのです.

 中国動物誌に書かれているように,このHercostomoides属は近年Telmaturgus属から独立した属ですから,従来のTelmaturgus属との違いを調べなくてはなりません.
 なぜなら,World catalogによれば,全北区にはT. parvusが,旧北区にはT. tumidulusが,東洋区にはT.indonesianusと同時にIndonesia原産で記載された種類が3種ほど分布しているとなっていますので,混同している可能性を消去しなければなりません.

まずは,Hercostomides属を新設したMeuffels et Grootaert(1997)の論文を読み,Telmaturgus属との区別点を調べる必要があります.(Stud. Dipt.は北大農学部にあります)

 Meuffels et Grootaertの区別点が♀にも適用出来る特徴であれば,Hercostomoides属である可能性がより高くなります.

 その他,極東ロシア周辺に近縁の属が分布していないかという点も確認する必要があります.

次に,中国動物誌の分布を読むと,Hercostomoides indonesianusは中国でもかなりインドネシア寄りの地域に分布しているようですので,♂を探して交尾器を確認して同種かどうかの判断が材料がそろいます.
(交尾器を確認する際に,近縁属が♂交尾器で区別可能な種類であるか確認しておく必要があります.交尾器が図示されているからと言って,交尾器で確実に区別出来るとは限りませんし,個体変異及び地域変異の幅もある程度調べる必要があります.
 以前,私はヨーロッパ産の近似種の交尾器と日本産の交尾器だけを調べて区別可能と判断してしまい,恥ずかしい思いをしました(^_^;)
 旧北区に広く分布する種類の場合,ヨーロッパ,西部ロシア周辺,東部ロシア周辺,日本と4〜5地点ぐらいの交尾器を見ないと難しい種類の場合があるようです.両端の標本の交尾器では確実に別種と思えるほど形状の差が出ているのですが,中間地点の標本を何点か加えて見ていくと,連続的な変異との意見を否定出来なくなるのです)

結果的には,Hercostomoides indonesianusの近縁種という結論になりそうな気配ですが,日本から未記録の種類を確定するには,このような地道な作業が必要です.

Re: 飴色のアシナガバエ 投稿者:Campsicn 投稿日:2011/10/31(Mon) 00:10:12 No.7240  引用 
茨城@市毛様

確かに、中国動物誌だけで判断するのは無理がありましたね。危うく勝手に早合点してしまうところでした。未記録種の正確な同定には、地道な確認作業が欠かせないこと、肝に銘じておきます。特に分布の広い種は同定が困難になるようですね…。

Meuffels et Grootaert(1997)は取り寄せて確認してみたいと思います。偶然とれた個体なので、追加で採集できるかはわかりませんが、もし♂も採れたら交尾器も確認してみようと思います。

ご親切にコメントして下さり、ありがとうございます。また何か分かりましたら報告させていただくかも知れませんが、よろしくお願いします。

Re: 飴色のアシナガバエ 投稿者:Campsicn 投稿日:2011/11/13(Sun) 02:17:04 No.7258  引用 
だいぶ時間がたってしまいましたが、Meuffels et Grootaert(1997)を確認して、あらためて標本を見てみました。

まず一つ間違えていたことが。
雌雄で触角第3節の大きさなどが大分違うらしいということで気づいたのですが、この標本はメスではなくオスだったようです。尾端が脚で隠れてよく見えない上、交尾器自体もかなり小型のようです。


改めてMeuffels et Grootaertを見てみますと、Telmaturgusは

・オスの複眼が額部分で接する
・触角第1節に毛がない
・触角第2節は横長で、第3節に指状に突き出さない
・触角第3節は短く、端刺は基部付近から生じる
・胸部の地の色が金緑色
・後腿節に前方亜先端剛毛がある

などの点でHercostomoidesと異なるようです(あと2,3の相違点がありました)。これらの点についてはこの標本と一致しますので、やはりHercostomoidesで問題ないのではと思います。

ちなみにMeuffels et Grootaertでは、石垣島で採集されたこの属の標本がH. indonesianusと異なる特徴を持っており、別種なのではないかとの記述があります。もしかするとこの標本も、そっちの別種の方なのかも知れません。

ですので、やはり交尾器を詳細に観察したいのですが、下手に触ると脚などが取れそうですし、そもそもこのようなサイズのものを観察できる手立てがなく、どうしたものか思案中です(うちにある双眼実体顕微鏡では、この写真のサイズくらいまでしか見えません)。

正露丸を使って脚などの整形ができるとの書き込みがありましたが、このように時間が経った標本でも出来るのでしょうか…?


Re: 飴色のアシナガバエ 投稿者:茨城@市毛 投稿日:2011/11/13(Sun) 22:33:14 No.7262  引用 
Campsicn様.

中形種までは,軟化が可能ですが,微小種は整形するのは危険です.特に,剛毛などの脱落が顕著に起きます.

交尾器の観察には,腹部ごと外して,水酸化カリウム溶液で煮るか乳酸で煮るのが良いと思います.(体長や標本の古さで時間が変わるので結構厄介です.煮過ぎると透明になってしまい観察が困難です)

微小種の交尾器の解剖は,非常にデリケートですので,熟練していないと困難です.(私も,3年間の介護生活の間にすっか
り腕がなまってしまいました(^_^;)

これだ微小種になると,実体顕微鏡ではなく,光学顕微鏡での高倍率での描画が必要になると思います.

Re: 飴色のアシナガバエ 投稿者:Campsicn 投稿日:2011/11/14(Mon) 22:24:01 No.7263  引用 
茨城@市毛様様

やはり無理がありそうですね。交尾器を取り出して観察というのは経験がないため、いきなりこのような微小種で行うことはさすがに躊躇してしまいます。沢山の個体を確保できていれば挑戦してみたいとは思いますが…。

光学顕微鏡の入手も含め、まだまだやるべきことがいろいろありそうです。アドバイスありがとうございます。

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