ご教授よろしくお願いいたします。
hitachinaka様.
過去ログでも何度も書かれているように,ヤドリバエ科は非常に種類が多く,かなり特色のある一部の種類を除いて生態写真での同定は困難です.アマチュアが正確に同定するには,全身の剛毛の分布状態や長さ,♂交尾器等の精査が必要なようです.
今回の写真はGonia属の一種と思われ,オオズクロスジハリバエGonia chinensisが一番近いと思います.
セスジハリバエTachina nupta micadoは,腹部中央にある縦の黒い帯が非常にはっきりとした種類で,同属の近似種が13種以上日本に分布しているようです.
なお,ネット上に散乱しているヤドリバエ科の画像については,一々反論する気力もないほど間違いが多いので困りものです.
画像は市毛さんの示唆の通りGonia属(オオズハリバエ属とでもいいましょうか)の仲間です。本属は写真でも特徴が分かるので属までは同定できますが、市毛さんの言われている通りヤドリバエ科を始めイエバエ、ニクバエ、クロバエなどの仲間は画像では属の同定も難しいものが多いのが実態です。この仲間に限らず、双翅目(ハエ目)の昆虫は、甲虫類の多くや鱗翅類とは異なり、適切な角度で撮影された画像でも、生態写真では種はおろか属などの同定も困難です。それは翅脈の微妙な位置関係、体や脚に生じている剛毛の分布状態をはじめ、♂交尾器の微細な構造を調べないと、種の同定が困難な場合が一般的だからです。
セスジハリバエはヤドリバエ類では最も同定が容易な種です。これは大型のヤドリバエで、腹部は橙赤色、その中央に黒いやや幅の広い縦条が一本走っています。今回の画像の種のように、褐色がかった色彩ではありません。
今、日本でヤドリバエ類の多くを正しく同定できる研究者は1−2人しかいませんし、これらの方々でも上記のとおり画像で同定することは困難だろうと思います。ですから、市毛さんが言われているように、ネット上に出ているヤドリバエの画像で名称がついているものの大部分は信用できないと思うべきでしょう。
ご回答いただきありがとうございました。
ここ1年程、散歩をしながら虫を見つけては撮影し、
個人的なアルバムを作ることに凝っております。
まだまだ初心者ですが、今後も皆様の投稿を読んで、
勉強して知識を広げていきたいと思っております。
丁寧なご回答に感謝しております。
画像のヤドリバエは、この仲間の専門家の舘卓司博士によると、市毛さんが推定した通り、Gonia chinensis (Wiedemann) オオズクロスジハリバエだそうです。