この日は翅に同じ斑紋を持つハエばかりを追いかけました。
別角度から
写真で見る限り、Conchopus convergens Takagiクロスジクチナガイソアシナガバエの♂の可能性が高いと思います。
採集して、北隆館の新訂原色昆虫大図鑑第3巻の検索表を引いて確認する必要があります。
三枝豊平さま、早々に見ていただきありがとうございます。
検索表の解読はなかなか捗りません。
同じ科でも翅脈の様子が異なりますと、どれが何脈やら何室やら、こんがらがってきます。
クロスジクチナガイソアシナガバエ♂と思われる個体の翅脈図をいろんな図鑑類を参考にして試作してみました。どうも間違っているように思います。間違いを指摘していただきますようお願いします。
あなたの図で、
M1脈はM1+2脈
M2脈はM3+4脈
CuA1脈はM3+4脈の中央節(middle section)
A1脈はCuA+CuP脈
R脈はR1脈
M1室はM1+2室
です。
なお、細部については添付した図を参照ください。これはConchopus signatus近似種の翅の基部です。これと北隆館の新訂原色昆虫大図鑑第3巻の269ページのLispeの図と比較してみるともっとはっきりします。なお、この図で破線で示しているM3+4脈の基部は、アシナガバエ科ではほとんど消失してしまい、ごく先端部が痕跡的にかろうじて認められます。その結果第2基室と中室は合体しています。CuP脈は途中がほとんど消えて、更に先の方でCuA脈と融合しています。
この脈相の相同性(名称のシステム)は従来のものと異なっています。これは私やWoottonらの新しい解釈です。これも新訂原色昆虫大図鑑に詳述してあります。
なお、あなたが図示されたものは、前便でC. convergensらしいといいましたが、この図を見る限りではC. poseidonius Takagiにきわめて良く似ています。検討しますので、雌雄の標本を数頭採集してお送りください。10頭ほどまでは同じ三角紙に包んで、壊れない小さな箱に入れて送っていただければ大丈夫です。なお、三角紙の中にティシューの薄い一枚を敷いておくと標本が動かないので、輸送中の壊れが起こらないでしょう。
三枝豊平さま、詳しく教えていただきありがとうございます。
翅脈図は作り直しました。これで翅に関しての図鑑の記述はなんとか理解できそうです。
標本による検討をしていただけるとのこと、お言葉に甘えて、早速手配いたします。
なお、昨秋ご厄介いただいたキモグリバエ科のFormosina cinctaがこの時期、近くの砂浜海岸一体で多数生息していることがわかりましたので、これの標本もお届けしたいと思っております。
今度示されたあなたの図の翅脈などの名称は間違いありません。
前便で「破線で示してあるCu3+4」と書きましたが、これはお分かりと思いますが、M3+4の間違いでした。すでに訂正してあります。Woottonの綴りについても、訂正しておきます。
標本など、お手数をおかけします。
三枝豊平さま、翅脈図のチェックありがとうございます。
この仲間は雌雄で翅脈が異なるので、♀のも合わせて作り直しました。♂の翅も別個体のを使いました。
標本の検討結果が楽しみです。
田中川さんから標本が送られてきまして、精査しましたところ、この種はC. poseidoniusに類似した未記載種であることがはっきりしました。その結果は下記の通りです。
C. poseidoniusが九州、convergensが四国にそれぞれ分布していまして、両種は1単系統群を構成しますが、相互にやや系統的に離れています。今回の種はその中でもposeidoniusにより近縁の種です。本種は九州ではposeidoniusと混生しています。両種の相違点は以下の通りです。
♂後腿節。
C. poseidoniusでは中央部が腹側に強く張り出さず、基部1/4にやや長めの剛毛をやや密に生じ、その長さは後腿節の厚みに満たない。
本種では中央部1/3の腹側が著しく肥大して張り出し、そこに先端の湾曲した長剛毛を密生し、その長さは後腿節の厚みを越える。
♂後脚第1付節
C. poseidoniusでは基部2/5が著しく肥大し、その厚みは先方3/5の約3倍弱、その部分の後腹面に10本ほどの長剛毛を密生する。
本種では基部がやや太めであるが、その厚みは先の部分の2倍弱で、その部分の後腹面に数本以内の長剛毛を生じる。
このほかに、翅の脈相や斑紋に微妙な差が認められますが、表現しにくいところです。
三枝豊平さま、標本の精査、ありがとうございます。
未記載種とのこと。記載についてはひたすら先生にお願いしたいところです。先生にして「表現しにくいところです」と言わせるほどの「翅の脈相や斑紋に微妙な差」があるとの由、興味深いところです。
ナミイソアシナガバエ属について、めっちゃ物知りになった気分です。